銀魂~戦友の帰還と別れ~ 作:青短
桂は、用があるという理由で、一時離脱。
座る葵の向かいに座る、にこやかに微笑む新八の姉、妙(通称、お妙)……
「まぁ、銀さんのお友達でしたか」
「はい、上野葵といいます。
えっと……」
「申し遅れました。
私、新八の姉の妙といいます」
「妙さんかぁ……よろしくね!」
「そして、僕はお妙さんの、未来の旦那」
突然テーブルの下から出てきた近藤勲……その瞬間、お妙は近藤の頭を殴り飛ばした。
「わぁ……凄い力……
って、勲さん!?」
吹っ飛ばされた近藤のもとへと、葵は慌てて駆け付けた。
目を覚ました近藤は、葵の姿を観るなり驚きながら、起き上がりその場に正座した。
「す、すいません!!失礼な態度を、お許しください!!葵殿!!」
「(今頃……)
勲さん、別にそんな方苦難なくていいのよ?
もっと気楽にいこうよ!」
「は、はい!」
「何なんです?この光景……」
「あの変態ゴリラと、葵姉さんは知り合いアルか?」
「そういえば、自己紹介の時言ってましたね……
宇宙探偵してて、真選組と組んだ時があったって……」
「そういえば、言ってたアル」
「ねぇ、新ちゃん。
葵さん、本当に銀さんのお友達なの?」
「え?あ、はい。
銀さんと桂さんは、そう言ってました」
「姉御、どうかしたアルか?」
「なんかねぇ……こう、銀さんと……
うんうん、やっぱり何でもない」
「姉上?」
「ねぇ!神楽ちゃん!八さん!」
近藤と共に、戻ってきた葵は新八と神楽の名を呼んだ。呼ばれた二人は、葵の方へと顔を向けた。
「何です?葵さん」
「どうかしたアルか?」
「お腹空いちゃったから、どっか食べに行きましょうよ!」
「あぁ、いいですね!」
「早速行くアル!」
「あら、だったら私がお昼ご馳走しますけど?」
「そんな、ご迷惑です」
「いいのよ」
「でも……」
「い、行きましょう!姉上も行きましょう!」
「い、行くアル行くアル!銀ちゃんも行くアル!」
畳の上で寝ていた銀時を起こす神楽……
押されて外へと出ていくお妙と新八達を見ながら、葵は寝ぼけている銀時に近寄り話した。
「アンタの周りの人って、みんな愉快で優しい人達ね」
「優しいは余計だ、優しいは」
「相変わらず、素直じゃないんだから」
「ほっとけ」
「もう……」
「銀さーん!葵さーん!
早く行きましょう!」
二人を呼ぶ新八の声に、銀時は反応し部屋を出て行き、そんな背中に少し笑った葵は、彼の後を追いかけた。
ファミリーレストランへと来た銀時達……
それぞれが、それぞれのメニューを頼んだ。しばらくして、頼んだ食事が運ばれてきた。
「あんた、また甘い物?
少しは控えなきゃ、体に悪いよ」
「うるせぇ。糖分はな、頭を働かせるとき一番いいんだ」
「アンタ、いつ頭使ったの?」
「いつも使っている。
つーか、テメェも塩分控えろ!!どんだけ掛けんだよ!!」
向かいに座る葵の食事には、てんこ盛りになった塩が掛かっていた。
「塩分は、体の疲れを取るんだ。これくらい必要なんだ」
「テメェは取り過ぎだ!!だから、胸小せぇんだろうが!!」
「塩分と胸のサイズは関係ない!!
それに、私の胸が小さいのは、戦場に出たからだ!!」
「戦場に出ても、胸は普通にデカイ奴はいる!!」
「それは異常だ!!」
「テメェを基準に考えるな!!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着きなよ」
口喧嘩する二人を、慌てて止める新八……
止められた二人は、喧嘩を止め食べ始めた。
「はぁ……全く…」
「ねぇねぇ、葵姉さん」
「?」
「戦場に出ると、胸が小さくなるのは本当アルか?」
「本当よ。
私の女の戦友たちは、みんな胸小さかったもん」
「じゃあ、姉御の胸はそのせいあるか!?」
「神楽ちゃん、私戦場に何て出てないわよ?」
「妙さんは、顔の美貌と引き換えに胸が小さいの!」
「まぁ、葵さんったら!」
頬を赤くし、喜ぶお妙……
お妙を喜ばせた葵を、三人は引いた目で見た。
食べ終わった四人……
外へ出た神楽は待っていた定春に戯れながら先頭を歩いた。その後を歩く新八とお妙……
三人の後ろを並んで歩く銀時と葵……
「こんな楽しい時間、久しぶりだなぁ……
付き合ってくれて、ありがとね!銀」
「礼なら、あの二人に言え。俺に言って、どうすんだ」
「人一倍、付き合うのが苦手なアンタが、私なんかのためにここまで付き合ってくれたじゃない。だからお礼言ってんのよ」
「言葉だけじゃなぁ……」
「そう……なら」
銀時の頬を寄せ、自分の唇を当てる葵……
銀時は、頬を赤くし固まった顔で葵の方へ眼を向けた。唇を放し、葵は微笑んだ。
「……これなら、文句ない?」
「……」
その様子を、振り返った三人は目撃してしまい、その場で固まっていた。三人の視線に気付いた銀時は、顔を赤くして慌ててた様子で、何か言い訳をしようとした。
「こ、こここ、これはだな!!そ、そそ、その」
「おまじないよ!」
「え?」
「おまじないアルか?」
「えぇ!
戦場にいた頃、必ず全員生きて帰れますようにって、みんなの頬にキスしてたの!
ね!」
銀時の方を振り向き、ウインクする葵……
一瞬銀時の目に映った戦場にいた頃の葵の姿……
(……やっぱり、変わってねぇなぁ……)
「銀さん?」
「銀ちゃん?」
「?!
な、何だ?」
「どうしたアル?顔赤いアルよ?」
「な、何でもねぇよ」
二人をどかし、先を歩きだす銀時……そんな様子に、葵は微笑み後を追っていった。
〝ドーン"
「!?」
「な、何だ?!一体」
突然二人が歩く道に落とされた爆弾……
「ようやく見つけたぞ……
塔野葵!!」
その名前を呼ばれた葵は、突然の恐怖に見舞われ、銀時にしがみ付いた。そんな葵を観た瞬間、銀時の記憶に蘇る幼少の頃の彼女の怯え方と、今の怯え方が全く似ていた。
「葵、お前……」
「そこの者、お前にしがみ付いている女を渡してもらおうか?」
「何で、テメェらみたいに野郎に、こいつを渡さなきゃいけねぇんだ?
新八、神楽!葵を連れて行け!」
「あ、はい!」
「葵、神楽達と行け」
「け、けど……」
「早く行け!
俺も後を追いかける!」
「…・・・銀」
「テメェのおまじない貰ったんだ、大丈夫だ」
「……」
木刀を手に取る銀時……
その背が一瞬、葵の目には戦場で戦っていた、あの白夜叉時代の銀時の姿が見えた。
「……」
「葵姉さん、行くアル!」
「葵さん、行きましょう!」
「……すぐに追いつきなさいよ!!」
そういうと、二人に支えられ立ち上がった葵は、その場から走り去っていった。