あの日、僕らの世界にヒーローは、現れなかった。 作:marimo72
ここは学園都市と言われる超能力という非現実的な能力を科学的に開発するという名目で作られた街である。周囲は高い外壁に囲われており、街に入るものはセキュリティチェックを必ず受けなければならないう、外からの人間や情報を完全にシャットアウトしている街である。また、学園都市というだけあり、能力開発に特化した学校が都市内には無数にあり、実に住人の230万人のうち、8割を学生が占める、まさに学園都市である。
その学園都市の能力開発により、開花した超能力にも序列があり、その中でもトップクラスの超能力者、通称レベル5に君臨するのは230万人のうち、たった7人である。彼らはその自身の能力を行使することでたった一人で一個軍隊に匹敵する力を持つと言われている。
そんなレベル5の一人、人格破綻者が多いとされている超能力者の中でも比較的マシな人格をもつ、常盤台中学2年の御坂美琴はとあるファミレスに友人たちときていた。
その友人の一人、佐天涙子が御坂に話しかける。
「あのー御坂さん、つかぬ事をお伺いしますが」
御坂は佐天に視線をやりながら、何、どうしたの?と切り返す。この少女、佐天涙子は無類の噂好きであり、恋愛関係から都市伝説までと非常に幅広い。今回もそんな内容なんだろうなと思いながら御坂は佐天の返答を待っていた。
「小さい頃とか!御坂さんがレベル5になる前に他のレベル5の方たちと会ったり!とかありませんか?!」
佐天は興奮した様子で、ファミレスの机を勢いよくバン!と叩きながら御坂に顔を近づけ、問いかけてくる。
御坂が答えようと口を開きかけたときに、お姉さまに近づきすぎですわ、という横やりが入った。
「いくら佐天さんでも許せませんの」
とお嬢様口調のツインテールで髪色がピンクに近い彼女、御坂の後輩でもある、常盤台中学1年の白井黒子はやや憤りながら佐天を睨み付けた。
「あは、これはこれはすみません」
ひょうひょうとした様子で頭を搔きながら佐天は自分の席へと腰を下ろした。
「あ、ありました。これですね。レベル5が実はとっても仲良しだった?!学園都市アイドル計画!ってなんですかこれ…」
自身のノートPCで探しておきながら、佐天の目当ての都市伝説サイトにたどり着くとくだらないなあとつぶやくのは、佐天の親友であり、柵川中学1年の初春飾利であった。造花をこれでもかというくらいつけたカチューシャをつけた比較的温厚な性格の彼女ではあるが、とんでもないウィザード級のハッカーである。
紹介が遅れたが佐天涙子は特に特技などや能力はないものの、初春や白井、そして御坂さえをおさえて中学1年とは思えないプロポーションの持ち主である。
性格は温厚ではあるが興味を示したものには目がないものの場の空気が読める常識人ではある。
対して白井黒子は御坂狂であり、お姉さまと呼んで、尊敬やら憧れやらを吹っ飛ばしたいわゆる恋愛感情を御坂に対して持っているものの、学園都市でもごく少数という能力、空間移動・テレポートをもち、学生の自治組織風紀委員・ジャッジメントに所属しており、正義感にとても溢れ、自分の信念をしっかりともっている。ちなみに初春も風紀委員に参加しており、彼女もまた、強い信念と正義感の持ち主である。
そんな彼女たちの中だけではなく、この学園都市でトップクラスの能力・電撃使い・エレクトロマスターをもつのが御坂だ。御坂の電撃の使い方は多岐にわたり、絶対的な破壊力を持ち、通り名にもなっている、レールガンや磁力やハッキング、電気を通せば大抵のものは操れる。通称、常盤台のエース、電撃姫などと呼ばれている。
そんな彼女たちが今話題に出しているのは佐天がネットで見つけてきた都市伝説の一つ、
レベル5はとっても仲良しだった?!学園都市アイドル計画!
についいてである。
「くだらないとはなにかね?!初春!ちゃんと内容見た?!」
意気込んだ様子で再び身を乗り出したのは佐天である。
はい、といってノートパソコンの画面を全員に見えるように差し出す初春。
それに一応目を通す御坂と白井。
「…学園都市における超能力者見込みのあった序列7位までの能力者たちを一堂にあつめ、幼少期から学園都市の顔とすべく、アイドル目指してレッツゴー☆…」
「学園都市の看板となれば彼らによる広告収入、またはトップに君臨する彼らに生徒たちの羨望の眼差しが向けられ、能力開発も潤滑に…」
そこまで読んで佐天を除いた三人は呆れた様にドリンクバーから持ってきた各々の飲み物をすする。
佐天だけはいまだ意気込んだ様子である。
「どうです?!これ!実際にあったら御坂さんは元アイドルだし、残りのレベル5の皆さんもイケメンや美少女、美女にきまってるじゃないですかあ!」
「注目する点はそこですかっ」
思わず初春がツッコミをいれた。佐天はひょうひょうとした様子で有名人と友達になれたかも!などと言っている。
「あ!御坂さんはもちろんですよ!」
「はいはい、ありがとうねー佐天さん」
完全に棒読み状態の御坂である。
「相変わらず佐天さんはミーハーですのね、わたくしは!お姉さま一筋ですが!!!!」
自然と、アイドル歌手によくある応援うちわやらそのほかの応援グッズで自身を応援する白井が目に浮かんだ御坂は、またも棒読みで、はいはい、と返す。
「それにしても」
切り出したのは初春だった。
「こんな計画が本当だったら、今ごろ学園都市で何か事件があったらヒーローみたいに、御坂さんみたいにかっこよく解決してくれるレベル5の人たちがいたんでしょうか」
そしたら風紀委員の仕事も少しは減るのかもしれないなーなどと続けると白井の軽い脳天チョップが入り、初春は涙目になりながらなんですかーと頭を押さえながら問いかけた。
「たとえ、そうであっても、事件は必ず起きますわ。ですからわたくしはわたくしの信念と正義を信じて、風紀委員として動くだけですわ」
白井はさも当然のように言ったが瞳は真っ直ぐと何かを見据えていた。
佐天が思わず白井さんかっこいい!と言いながら拍手を送っている。対して初春も当たり前ですなどと言いながら、
「わたしもわたしの信念と正義に誓って、自分が正しいと思った行いをするまでです」
とつづける。頭を押さえながら。なんとも締まらない光景ではあるが。
「あはは、初春もかっこいーなー!まったくもう!締まらないけどね!」
「そこは言わないでくださいっ」
佐天は初春の頭をわしゃわしゃと撫でる。
御坂はそんなことをいう彼女らを心底頼もしいと感じていた。
今まで共に解決してきたあらゆる事件を思い出しながら。
そこで、初春があっ、と声を上げた。
何かと一同が初春と彼女のノートパソコンを見つめる。
「このサイト、なにかおかしいですねえ。なにか暗号化されてるような…」
と。言われても残りのメンバーにはただの都市伝説サイトにしか見えないが。ハッカーである初春には何かが変に見えるようだが。
白井は風紀委員の腕章を取り出しながら初春に告げる。
「初春、そろそろ巡回の時間ですわよ」
初春は、また、あっと声を出してわたわたと準備を始める。
「それでは佐天さん、お姉さま、わたくしたちはこれで」
と言いながら席を立つ。初春もあわてて続きながらまたですーと席を立とうとしたところを御坂が引きとめた。
「初春さん、悪いんだけどさっきのサイト、わたしのPDAに後で送っといてくれる?」
「? はあ、いいですけど」
突然の申し出に?マークを浮かべる初春だが後ろから白井の声がかかる。
待ってくださーい!といいながら彼女たちはあわただしく席を立って行った。
佐天はファミレスの時計を見ながら、
「まだ朝の10時だっていうのに」
風紀委員は祝日も働くんですねえと続けた。
そう、今日は十月九日。学園都市の独立記念日、祝日である。
御坂はそうね、と返しながら、初春からすでに送られてきた都市伝説サイトに再び目を通していた。
今までの経験からして、これには裏があるのでは、と思惑したからである。
そんな御坂を横目に佐天は飲み物の残りをすすった。