遊戯王ARC-V―奇術師と呼ばれたデュエリストのセカンドライフ―   作:えんとつそうじ

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今回で対零児戦は最後になります。

前作とは少しばかし違う感じになっていますので、そこらへんの違いを楽しんでくれると幸いです。

※いろいろ感想によりご指摘を頂いたため、修正箇所がいくつかあります。ネタばれになりますので修正箇所は後書きに。


第七話 奇術師の決闘VS異次元の王⑤悪魔のペンデュラム

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

零児

LP:3900

手札:1枚

場:DDD反骨王レオニダス

  DDD死偉王ヘル・アーマゲドン×3

魔法・罠:リバースカード×1

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

【ペンデュラム召喚】

 

 義弟である遊矢が生み出した最新の召喚方法。

 

 未だ遊矢しか使うことができないはずのその召喚方法により3体のモンスター「DDD死偉王ヘル・アーマゲドン」。そのあまりの威圧感にクオンは飲まれかかるが、なんとか気を取り直して踏みとどまると、冷や汗を流しながらも、皮肉げな笑みを浮かべる。

 

「……なるほど、さすがはレオ・コーポレーション。ペンデュラム召喚のメカニズムを既に解明していたとは」

「まだ、試作品ではあるがね。それでも実際に使うには十分だと自負しているよ」

 

 僅かに笑みを浮かべながらクオンに答える零児。しかし次の瞬間、その笑みをデュエリスト特有の闘志によって消し去ると、言葉を続ける。

 

「それでは、まずは魔術師の少女に消えてもらおう。DDD死偉王ヘル・アーマゲドンで、ブラック・マジシャン・ガールに攻撃!!」

 

 その霊児の言葉により一体のヘル・アーマゲドンの体から紫色の光線が放たれる。

 

「させるか!!」

 

 ブラック・マジシャン・ガールが破壊されようとしたまさにその瞬間。クオンはフィールド上に浮かぶ光の玉を足場に、軽やかに空中を駆けながらその中に1つに引っかかっていたアクションカードを手に取り、宙返りしながらその場で着地すると、そのまま発動させる。

 

「私はアクションマジック「回避」を発動!このカードで相手モンスター1体の攻撃を無効とする!!」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

回避

アクション魔法(未OCG)

相手モンスター1体の攻撃を無効とする。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 回避の効果により、ブラック・マジシャン・ガールの目の前に光の防壁が貼られた。

 

 これでブラック・マジシャン・ガールの破壊は免れると思われたが、突然その防壁は破壊されてしまう。

 

「なッ!?」

 

 なにが起こったかわからず驚愕の声を上げるクオン。咄嗟に対戦相手の零児の方に視線を戻すと、その手には1枚の魔法カードが握られていた。

 

「悪いが私もアクション・マジックを発動させてもらった。この「対抗奇術」をね」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

対抗奇術

アクション魔法(作者オリジナル)

1000ライフポイントを支払うことにより、相手の魔法の発動を無効にする。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 対抗奇術。このカードは1000のライフポイントを支払うことにより、相手の魔法カードの発動を無効にするアクションマジック。

 

 どうやら、零児はクオンが1体目のヘル・アーマゲドンの攻撃を無効にすることを読んでいたらしく、いつの間にか拾っていたこのカードの効果により回避の効果を無効にしたらしい。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

零児

LP:3900→2900

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

 

「これでブラック・マジシャン・ガールにこの攻撃を防ぐ術はない。行け、ヘル・アーマゲドン!!」

 

 零児の言葉の通り、防壁を失ってしまったブラック・マジシャン・ガールに、ヘル・アーマゲドンの攻撃に対抗するすべはなく、零児の号令と共に発射された破壊の光に呑まれ、そのまま破壊されてしまう――――はずだった。

 

 しかし、クオンも一流のデュエリスト。未だ飄々とした笑みを崩さず、指を一つ鳴らして1枚のリバースカードを発動させる。

 

「ならば、私はリバースカード、「ブラック・イリュージョン」を発動!!」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

ブラック・イリュージョン

通常罠

(1):自分フィールドの攻撃力2000以上の魔法使い族・闇属性モンスターは、

ターン終了時まで、戦闘では破壊されず、効果は無効化され、相手の効果を受けない。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 クオンがそのリバースカードを発動させると、ブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールの前に、大きく「BM」と書かれた盾が出現し、ヘル・アーマゲドンの攻撃を受け流した。

 

「このカードは自分フィールド上の攻撃力2000以上、魔法使い族・闇属性モンスターを、戦闘による破壊、そして相手のカード効果により干渉から守護するトラップカード。このカードの効果により、このターン私のフィールド上のブラック・マジシャン。そしてブラック・マジシャン・ガールは破壊から免れることができます」

 

 だがそんなクオンの言葉にも、零児は冷静な態度を崩さない。

 

「だが、そのカード効果では戦闘ダメージまでは防げないはず。ならば戦闘ダメージだけでも受けてもらおう。――――私は2体目のヘル・アーマゲドンでブラック・マジシャンを攻撃!!」

 

 零児のその言葉と共に、2体目のヘル・アーマゲドンの攻撃が、ブラック・マジシャンに向かって放たれる。

 

 ブラック・イリュージョンの効果により、その攻撃は先程のように盾で受け流されるが、衝撃までは受け流すことができず、クオンはそのライフにダメージを受ける。

 

「ぐ、ぐう…ッ」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

クオン

LP:3000→2500

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 苦悶の声をあげるクオン。だが、零児はそんな彼に構わずさらなるモンスターに命令を下す。

 

「さらに3体目のヘル・アーマゲドンの攻撃」

 

 ヘル・アーマゲドンの攻撃により、ブラック・マジシャンにさらなる破壊の光が降り注ぐ。

 

 そしてそれによって発生した衝撃波がクオンに襲いかかった。

 

「がッ!?」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

クオン

LP:2500→2000

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「最後にレオニダスでブラック・マジシャンに攻撃」

「く!?」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

クオン

LP:2000→1900

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 黄金の悪魔の剣撃の衝撃にクオンは僅かに眉をしかめたが、なんとか持ちこたえる。

 

「……ふむ。このターンで終わらせようと思っていたが、流石にそう簡単にはとらせてもらえないか。ならば私はカードを1枚伏せてそのままターンを終了するとしよう」

 

 そして絶体絶命の危機的状況で、ターンはクオンへと移行する。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

零児

LP:2900

手札:1枚

場:DDD反骨王レオニダス

  DDD死偉王ヘル・アーマゲドン×3

魔法・罠:伏せカード1枚

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 このターンで逆転できなければ自らの敗北は確実だと考えたのか、久遠は今までで最も力強くカードをドローする。

 

「私のターン。ドロー!!!」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

クオン

LP:1900

手札:2枚

場:ブラック・マジシャン

  ブラック・マジシャン・ガール

魔法・罠:伏せカード1枚

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 ドローカードを確認した久遠は僅かにほっと息をつく。

 

 それは直接逆転に繋がるカードではないが、逆転できるかもしれない(・・・)カードだったからだ。

 

 そして久遠はその喜びのままにその魔法カードを発動させる。

 

「私は魔法カード「運命の宝札」の発動します」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

運命(うんめい)宝札(ほうさつ)

通常魔法(未OCG)

サイコロを1回振り、出た目の数だけ自分のデッキからカードをドローする。

その後、出た目の数だけデッキの一番上からカードをゲームから除外する。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 このカードはサイコロを振り、出た目の数だけ自分のデッキからカードをドローし、その後出た目の数だけデッキの上からカードをゲームから除外するドローソース。

 

 そのカードの効果に従い、空中でソリッド・ヴィジョンでできたサイコロが振られた。

 

 そしてその結果出た目は………「5」。

 

「よし。これで私はカードを5枚ドローできる。ドロー!!」

 

 そして5枚のカードをデッキから引いた久遠。それを確認した久遠は、驚きで目を瞠る。

 

 彼はここで見事に引き当てたのだ。逆転のコンボへと必要な全てのキーカードを。

 

「揃った、逆転の方程式が」

「なに……?」

 

 久遠の言葉がよく聞こえなかったのか、訝しげな声を上げる

 

 しかし、彼は零児の呟きにただ笑みを浮かべて返すと、1枚のカードをデュエルディスクへと叩きつける。

 

「私はまずはこのカード「ガガガマジシャン」を召喚させていただきます」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

ガガガマジシャン

効果モンスター

星4/闇属性/魔法使い族/攻1500/守1000

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に

1から8までの任意のレベルを宣言して発動できる。

エンドフェイズ時まで、このカードのレベルは宣言したレベルになる。

「ガガガマジシャン」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

このカードはシンクロ素材にできない。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 クオンのフィールドに現れたのは、まるで特攻服のような黒い衣装に身を纏った男性の魔術師。

 

 その鋭い眼差しで、零児を睨みつける。

 

「このモンスターは1ターンに1度、そのレベルを1から8までの好きなレベルに変更することができる。私はその効果によりガガガマジシャンのレベルを6へと変更」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

ガガガマジシャン

レベル4→6

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 ここに来て、やっと彼の狙いがなんなのか理解したのか、零児はその顔に納得の色を見せる。

 

「レベル6のモンスターが2体。――――なるほど、エクシーズ召喚か」

That's right(そのとおり)。さあ、そろそろショーのクライマックスと行きましょう。――――私はレベル6のブラック・マジシャン・ガールとレベル6にしたガガガマジシャンの2体でオーバーレイネットワークを構築!」

 

 すると、ブラック・マジシャン・ガールとガガガマジシャンの2体が上空に出現した光の渦の中に飛び込んで、一つに交わる。

 

 そして、その渦の中からそのモンスターは現れる

 

「真なる魔術師の力を受け継ぐ乙女よ。今同胞の魂と混じり合い、新たな力を持って我が元に舞い降りよ。エクシーズ召喚。魅了の魔力を持つ美☆魔☆嬢ここに降臨!レベル6「マジマジ☆マジシャンギャル」!!」

 

 すると、渦の中から先ほどまでフィールド上にいたブラック・マジシャン・ガールとそっくりな、しかしそれでいて明らかに存在感が違う1人の美少女が舞い降りる。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

マジマジ☆マジシャンギャル

エクシーズ・効果モンスター

ランク6/闇属性/魔法使い族/攻2400/守2000

魔法使い族レベル6モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

手札を1枚ゲームから除外して以下の効果から1つを選択して発動できる。

●相手フィールド上のモンスター1体を選択し、

このターンのエンドフェイズ時までコントロールを得る。

●相手の墓地のモンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 零児は突如現れたその美しい魔女に目を奪われかける自分を自覚しながらも、なんとかそこから視線を反らすと、クオンを睨みつける。

 

「だが、所詮は攻撃力2400。ヘル・アーマゲドンには及ばない」

 

 そんな彼の言葉に、しかしクオンは余裕の笑みを崩さない。

 

「そう、焦らないでくださいよ。このカードの真価はこれからです。―――マジマジ☆マジシャンギャルの効果を発動!このカードのオーバーレイユニットを墓地へと送りさらに手札を1枚除外することにより相手モンスター1体のコントロールをこのターン、エンドフェイズまで奪うことができる!!」

「なんだと!?」

「私は手札のトーラの魔導書を除外し、あなたのヘル・アーマゲドン1体のコントロールを奪わさていただきます。魅了の魔法(チャーム・マジック)

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

トーラの魔導書(まどうしょ)

速攻魔法

フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択し、

以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このターン、選択したモンスターはこのカード以外の魔法カードの効果を受けない。

●このターン、選択したモンスターは罠カードの効果を受けない。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 そのクオンの指示と共にトーラの魔導書をゲームから除外すると、マジマジ☆マジシャンギャルは1体のヘル・アーマゲドンの前に飛び出てウインクすると、彼女の体からピンク色のハートが飛び出て、アーマゲドンに当たる。

 

 するとアーマゲドンの瞳がハートの形になり、そのアーマゲドンはそのまま自身の居場所を零児のフィールドからクオンのフィールドへと移動した。

 

 そんな様子を見ていた零児は屈辱で歯噛みする。

 

「(くッ!?まさかこんな効果があるとは……。だがたった一体のコントロールを奪ってもせいぜい相打ちさせるのが関の山。逆転とは言い難いはずだがどうする気だ?)」

 

 そんな彼の内心を見透かしてか、クオンは笑みをさらに深めるとエクストラデッキから逆転の最後のカードを取り出した。――――そう、自身の持つ真の切り札(・・・)を。

 

「さあさあ、紳士淑女の皆さん!これより当劇場の主役を皆さんに紹介しましょう!!私はマジマジ☆マジシャンギャル1体で再びオーバーレイネットワークを再構築!!」

「なに!?オーバーレイネットワークの再構築だと!!」

 

 『オーバーレイネットワークの再構築』。それはLDSのエクシーズコース所属の志島北斗も魅せた、エクシーズモンスター1体を使い更なる強力なエクシーズモンスターを呼び出すという才あるデュエリストのみに許された技。

 

 これを行うということはつまり、

 

「(さらに強力なエクシーズモンスターを召喚するということ!!)」

 

 密かに戦慄する零児をよそに、久遠は両手を広げると、自身の切り札を呼び出すために天へと叫ぶ。――――そしてそのモンスターは現れた。

 

「伝説の中に生きる黒の魔術師よ。今こそ仲間の力をその手に、その真なる姿を顕現させよ。我が手に勝利を!!

 

 

 

 

 

 

 ―――エクシーズ召喚。出でよ、ランク7「幻想の黒魔導師」!!」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

幻想(げんそう)黒魔導師(くろまどうし)

エクシーズ・効果モンスター

ランク7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2100

レベル7モンスター×2

このカードは自分フィールド上の魔法使い族・ランク6の

エクシーズモンスターの上にこのカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる。

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

手札・デッキから魔法使い族の通常モンスター1体を特殊召喚する。

また、魔法使い族の通常モンスターの攻撃宣言時、

相手フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。

選択したカードをゲームから除外する。

「幻想の黒魔導師」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 クオンが召喚した、どこか彼のエースモンスターであるブラック・マジシャンに酷似したその魔術師の姿に、しかし零児は今度はブラック・マジシャンやブラック・マジシャン・ガールを召喚した時のような驚きは見せず、どこか困惑したような表情を見せる。

 

「幻想の黒魔導師だと……?見たことがないが、ブラック・マジシャンを模したモンスターのようだな」

「ええ。海外のとあるカード会社が特別に一枚だけ制作したカードで、偶然参加していた大会で優勝賞品になっているのを私がいただいてきたというわけです。だからあなたが見たことが無いというのも仕方が無いかもしれませんね」

「なるほど……」

 

 クオンの言葉に得心がいったとばかりに僅かに頷く零児の姿を確認すると、クオンは話を続ける。

 

「それではデュエルを続けます。――――私はここで手札の魔法カードセフェルの魔導書を発動。このカードは手札にあるこのカード以外の魔導書カードを相手に見せることで、このカードの効果を自分の墓地の通常魔導書カードと同じ効果にすることができる。私は手札にある「ネクロの魔導書」を公開することにより、私はこのカードの効果をヒュグロの魔導書と同じ効果に変更する」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

ネクロの魔導書(まどうしょ)

装備魔法

自分の墓地の魔法使い族モンスター1体をゲームから除外し、

このカード以外の手札の「魔導書」と名のついた

魔法カード1枚を相手に見せて発動できる。

自分の墓地の魔法使い族モンスター1体を選択して

表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。

また、装備モンスターのレベルは、

このカードを発動するために除外した

魔法使い族モンスターのレベル分だけ上がる。

「ネクロの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 クオンの言葉とともに、フィールドに出されていたセフェルの魔導書の画面が塗りつぶされ、ヒュグロの魔導書へと入れ替わる。

 

「既に知っていると思いますが、ヒュグロの魔導書の効果はフィールド上の魔法使い族モンスターの攻撃力を1000ポイント上昇させるバンプアップ効果。この効果により、私は幻想の魔導師の攻撃力を1000ポイントアップする」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

幻想の黒魔導師

攻撃力2500→3500

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「さらに私は幻想の黒魔導師の効果を発動。1ターンに1度、このモンスターのオーバーレイユニットを取り除くことにより手札、デッキから魔法使い族の通常モンスターを特殊召喚する。私はデッキから2枚目のブラック・マジシャンを特殊召喚!!」

 

 幻想の黒魔導師は自身を取り巻く光の玉を一つ杖に吸収させると天に掲げる。

 

 すると空中に光の玉が出現し、その中から2体目のブラック・マジシャンが再びクオンのフィールド上に現れた。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

ブラック・マジシャン

攻撃力2500守備力2000

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 問答無用で上級モンスターをフィールドに呼び出すその強力な効果に、しかし零児は冷静な表情を崩さず、僅かに眉を潜める。

 

「確かに強力な効果だが、今更そのようなモンスターを呼んだところでなにができるというんだ?」

 

 零児のその言葉に、しかしクオンは余裕の笑みを崩さず、さらなる魔法カードを発動させる。

 

「私はさらに魔法カード「千本(サウザント)ナイフ」を発動。このカードはフィールド上にブラック・マジシャンが存在する場合に発動可能な専用スペル。その効果は相手フィールド上のモンスター1体を破壊する」

「なッ!?」

「私はこの効果により、ヘル・アーマゲドン1体を破壊する」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

千本(サウザンド)ナイフ

通常魔法

自分フィールド上に「ブラック・マジシャン」が存在する場合に発動できる。

相手フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 魔法カードの発動と共に千本のナイフがブラック・マジシャンの周りに出現したかと思えば、そのナイフがそのまま1体のヘル・アーマゲドンへと降り注ぎ、そのままそれを破壊した。

 

 その光景に、零児は僅かに顔を歪めながらもひとつ舌を打つ。

 

「……だがペンデュラムモンスターは破壊された場合エクストラデッキに戻り、次のターンには再び召喚できるようになる。そして私はDDD死偉王ヘル・アーマゲドンの効果を発動する!!」

 

 するとフィールド上に残った1体のヘル・アーマゲドンのオーラが倍増し、その攻撃力が上昇する。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

攻撃力3000→6000

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 その姿を見て、観覧席の権現坂が叫び声を上げる。

 

「攻撃力6000だと!?」

「そう、DDD死偉王ヘル・アーマゲドンは一ターンに一度、戦闘・効果で破壊されたモンスターの攻撃力分その攻撃力を上げることができる。つまりこれは先ほどのアーマゲドンの攻撃力分その力を上げたわけだ。君のそのモンスターたちではこいつを超えることなどできるわけがない」

 

 それはこの状況を見れば誰もがわかる現実。まさに『絶望』と呼ぶに相応しい絶体絶命の状況だった。

 

 しかしそんな中、クオンはハットで目元を隠すと、その口元を不敵な笑みに形作る。

 

「――――それはどうかな?」

「……なんだと?」

「バトル。ブラック・マジシャン!でDDD反骨王レオニダスへと攻撃!!」

「なにッ!?」

 

 突然のクオンのまさに蛮行ともいってもいい行為に零児は驚愕の声を浮かべる。

 

 そして彼の行動に驚いたのは零児だけどはなく、観覧席にいた面面も同じく驚きの顔を浮かべていた。

 

「なんだとッ!?」

「なにをする気だ、あいつ!!」

「自爆する気?」

 

 だがそこでクオンは口を開くと、その効果を発動させる。―――自身の逆転の一手となるカードの真の力を。

 

「私はこの瞬間、幻想の黒魔導師の更なる効果を発動!!1ターンに1度、魔法使い族の通常モンスターの攻撃宣言時、相手フィールド上のカードを一枚ゲームから除外することができる!!」

「なに!?」

 

 そのあまりの効果に、今日一番の驚愕を見せる零児。

 

 だが、それも仕方ない。

 

 つまりこのカードは魔法使い族の通常モンスターさえいれば、1ターンに1度とはいえ、毎ターン問答無用で相手フィールド上のカードを除外できる。

 そしてペンデュラムモンスターは破壊されればエクストラデッキに戻り、次のターンになれば再度呼び出すことができるが除外されてしまってはどうすることもできない。まさにペンデュラムの天敵といってもいい効果だったのだから。

 さらにDDD反骨王レオニダスは、実は契約書やDDの効果を発動する際に発生する自爆ダメージを無効にすることができる、零児の戦術の中核となる重要なカード。

 

 ペンデュラム召喚の弱点をつき、さらに確実に零児の戦力を減らす、まさに見事な手だった。

 

 そしてクオンは幻想の黒魔導師とその視線を一瞬合わせながらも頷くと、その手を一気に振り下ろす。

 

「幻想の黒魔導師。破滅の魔術―ブラック・コア!!」

 

 すると幻想の黒魔導師の杖から黒い球体が出現し、零児のフィールドに最後に残ったヘル・アーマゲドンがそれに吸い込まれる。

 

 そして、攻撃対象がいなくなったことにより、ブラック・マジシャンの攻撃力は中断させる。

 

「………だがまだ私のフィールド上には2体のヘル・アーマゲドンが残っている。これでは私にダメージを与えることはできんぞ?」

 

 だがそんな零児の言葉に、クオンはただニヤリと笑みを浮かべる。

 

「対象がいなくなったことにより、私はブラック・マジシャンの攻撃を中断。――――そして私は幻想の黒魔導師でヘル・アーマゲドンに攻撃します」

「なッ!?ばかな、ヘル・アーマゲドンの攻撃力は6000。いくら強化したとはいえ、幻想の黒魔導師では倒すことはできないぞ!!」

 

 観客席の誰かから聞こえてきたその言葉に、クオンは内心苦笑する。

 

「(まあ、そう思うのも仕方ありませんね。傍から見ればただの自爆と同じでしょうし。――――だからこそ、驚かせがいがあるというものですが)」

 

 そして、彼は最後のカードを発動させた。

 

「ここで最後の伏せカード「禁じられた聖杯」を発動!!フィールド上の効果モンスターの効果をターン終了時まで無効化することができる」

「なんだとッ!?」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

(きん)じられた聖杯(せいはい)

速攻魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は

400ポイントアップし、効果は無効化される。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 聖なる水を浴びせられたことにより、ヘル・アーマゲドンの体を包み込んでいたオーラが全て消し飛んだ。

 

「私はこのカードの効果により、ヘル・アーマゲドン1体の効果を無効化することにより、ヘル・アーマゲドンの攻撃力は3400ポイントに減少します」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

攻撃力6000→3400

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 まさかの反撃に驚愕の表情を浮かべる零児。それに対してクオンは最初と同じく飄々とした笑みを浮かべる。

 

「これで幻想の黒魔導師の攻撃力はヘル・アーマゲドンの攻撃力を超えた。行け、幻想の黒魔導師。超古代(ハイ・エンシェント)黒・魔・導(ブラック・マジック)!!」

 

 幻想の黒魔導師の杖先から巨大な魔力の波動が出現する。

 

「むうッ!?」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

零児

LP:3900→LP:3800

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 僅かに苦しげに呻き声を上げる零児。

 

 そんな彼の様子に、しかしクオンはチャンスとばかりに攻撃の手を緩めない。

 

「私はヘル・アーマゲドンの破壊に成功したため、ヒュグロの魔導書の効果によりデッキから2枚目のトーラの魔導書を手札に加える。――――さらに私はヘル・アーマゲドンで直接攻撃!!」

 

 マジマジ☆マジシャンギャルで零児からそのコントロールを奪い取ったヘル・アーマゲドンから放たれた破壊の光が、元の持ち主であるはずの零児へと降り注ぐ。

 

「!?零児さん!!」

 

 息子のまさかの絶体絶命の危機に、観覧席から悲痛な声を上げる赤馬理事長。

 

 しかし、あわやそのまま敗北しかねないその状況に、零児は全く諦める様子を見せず、その瞳を鋭く光らせると、そのリバースカードを発動させた。

 

「私はその攻撃に対し、トラップカード「カード・ブロック」を発動!!」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

ガード・ブロック

通常罠

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 ガード・ブロックの効果により、零児の周りに光の膜が貼られたかと思うと、そのままその膜がブラック・マジシャンの攻撃を防ぎきった。

 

「このカードは戦闘ダメージ計算時に発動できるトラップカード。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージを0にし、私はデッキからカードを1枚ドローすることができる。ドロー!!」

 

 勢いよくデッキからカードをドローする零児。そんな彼の姿に勝負を決められなかった悔しさで僅かに歯噛みするクオンであったが、首を僅かにふり気を取り直すと、自身のモンスターにさらなる命令を下した。

 

「ならば2体目のブラック・マジシャンで攻撃です。行け、ブラック・マジシャン。黒・魔・導(ブラック・マジック)!!」

 

 ブラック・マジシャンの杖から放たれた強力な魔力の波動。

 

 しかし零児はその攻撃に不敵に笑うと、手札から1枚のカードのモンスターをフィールド上に出現させる。

 

「私はその直接攻撃に対し、手札のバトルフェーダーの効果を発動。相手モンスターの直接攻撃の際、このカードをフィールド上に特殊召喚することにより、このバトルフェイズを終了させる」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

バトルフェーダー

効果モンスター

星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。

このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、

フィールドから離れた場合に除外される。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 突如フィールド上に出現した振り子の悪魔に、クオンは驚愕の表情を見せる。

 

「な……ッ!?バトルフェーダーだと。まさかガード・ブロックの1ドローで引き当てたとでもいうのか!!」

 

 クオンのその言葉に、零児はいつもの冷静な笑みとは違う、気のせいか少し得意げな顔で答える。

 

「生憎と運はいい方なのでね。さて、次はどうする?」

「………私はカードを2枚伏せてこれでターンを終了。私のターンが終了したことによりヘル・アーマゲドンのコントロールがあなたのフィールド上に戻ります」

 

 クオンのフィールドから零児へとヘル・アーマゲドンのコントロールが戻ると共に、クオンから零児へとターンが移行する。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

クオン

LP:1900

場:ブラック・マジシャン×2

  幻想の黒魔導師

  ヘル・アーマゲドン

魔法・罠:伏せカード×2

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 零児は自分のフィールド上にヘル・アーマゲドンの姿が戻ったことを確認すると、デッキからカードを勢いよくドローする。

 

「了解した。私のターン、ドロー!!」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

零児

LP:3800

手札1枚

場:バトルフェーダー

  ヘル・アーマゲドン

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 ドローしたカードを確認しながらなにやら考え込んでいる零児の姿に、クオンは口元に笑みを浮かべながらも、警戒からかその瞳を鋭く光らせる。

 

 相手の場にいるモンスターの攻撃力が自身のモンスターの攻撃力より上だということもあるが、彼が警戒している理由はそれだけではない。実際にデュエルする姿を見たことはないが、聞こえてくる噂から凄腕のデュエリストだと考えてはいたが、まさかここまでやるとは思っていなかったからだ。

 

「(さすが今は表舞台から姿を消しているとはいえ、未だに最強とも噂されることもある天才デュエリスト。さすがに一筋縄ではいかないようですねえ。――――それに幻想の黒魔導師の効果によりレオニダスの除外に成功したとはいえ、未だ彼のエクストラデッキには2体のヘル・アーマゲドンが眠っている。それはいつでもペンデュラム召喚に呼び出され、フィールド上に存在するヘル・アーマゲドンと合わせて3体のヘル・アーマゲドンの攻撃により、私のフィールドは今度こそ壊滅してしまう。下手したらこのターンで負ける可能性も否めない。………まあ一応、対策は用意してはいますけどねえ)」

 

 クオンはその視線を自身の場にある、2枚の伏せカードへと落とす。

 

「(私が今伏せたのは魔法使い族モンスターへのへの魔法・罠カードの干渉を防ぐトーラの魔導書。そしてもう1枚は攻撃反応型最強のトラップカード「聖なるバリアミラーフォース」。例えまたペンデュラム召喚でモンスターを大量召喚しても、このカードで全滅させることが可能のはず)」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

(せい)なるバリア -ミラーフォース-

通常罠

(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「(これで彼がどのような行動をしてきても対処はできる。………さて、彼はこの布陣をどうやって突破するでしょうか)」

 

 どこか期待しながら、零児へと視線を戻すクオン。

 

 彼のデュエリストとしての勘がいっていたのだ。

 

 彼はこのままで終わることはない。何かとんでもないことをやってのけると。――――尤も、デュエルがこのまま続けばの話だったが。

 

「なにッ!?」

「……これは?」

 

 それは突然起こった。

 

 零児のペンデュラムスケールにセッティングしてあった魔導賢者ケプラーとガリレイの体から、なにやら機会がショートしたような音がしたかと思えば、体から電流をはじけさせ、光の柱に記されたそれぞれのモンスターのスケールがどんどん減少していき、とうとう2体のスケールが2から5までへと減少してしまう。

 

 そしてその現象の影響か、それと同時に彼の場にいたヘル・アーマゲドンが巻き込まれるように爆発を起こして、そのまま破壊されてしまった。

 

 クオンはなにが起こったかわからないようで呆然としていたが、零児はなにが起こったのか察したようで、目を細めながらも舌打ちを打つ。

 

「なるほど、ここまでが限界か」

 

 そして観覧席にいた遊勝塾の面々も思いがけない事態にしばし呆然としていたが、どうやらその事態がクオンに有利に働きそうなことは理解できたようで、ここぞとばかりに声援を送る。

 

「行けー、今だ!!」

「これは好機だ」

「今なら、3と4のモンスターしか呼べないはず!」

「がんばれー!!」

 

 クオンはそんなちゃっかりした声援に今は相手のターンなんですけどねえと苦笑しつつ、零児の方に視線を戻すと、彼は今のフィールドの状況になにか思うことがあるのか、光の柱の中にいる二体のペンデュラムモンスターを視界に入れながらもなにやら思考に耽っていた。

 

「(所詮はプロトタイプ。まだまだ安定しない。しかしこの状況は………まさかッ!?)」

 

 と、そこで零児はなにかに気づいたようで、片手で顔全体を覆うと突然笑い出した。

 

「ふふふふ、ふははははははははは!!なぜ、気づかなかった。ペンデュラムも完成形ではないことに」

「……なに?」

 

 零児のその言葉に、クオンは不審そうに眉間を寄せる。

 

 そして観覧席にいるもう一人のペンデュラム召喚の使い手である遊矢も、零児の言葉に驚きの表情を示す。

 

「ペンデュラムも……完成形ではない?」

 

 詳しく事情を聞きたいところだが、だが零児はそんな彼らにかまわず話を続ける。

 

「私には見えた。ペンデュラム召喚の更なる進化の可能性が。今、それを実証してみせよう!」

 

 そういうと零児は片手を天上へと高く上げる。

 

 するとクオンはなぜか彼から受ける威圧感が急激に増したような感じを受けはじめた。

 

「(なんだ?やつはなにをしようと……?)」

 

 だが、そこでとある人物の叫び声により、デュエルに邪魔が入ってしまう。

 

「――――なんですって!?」

「ん?」

「え?」

 

 観覧席から聞こえてきたその声に、零児とクオンは二人ともその視線を声の発生源の方へと移動させる。

 

 するとそこいたのはLDSの理事長、赤馬日美香だった。

 

 彼女は部下らしき男から小声でなにか伝えられており、それを横で聞いていたLDSの生徒光津真澄が、普段は男子生徒から「可愛くない」と陰口を叩かれるぐらいの冷静沈着さから一転、驚きの声を上げる。

 

「マルコ先生が!?」

「零児さん!!」

 

 そしてそれは赤馬理事長にとっても一大事だったようで、彼女は普段の自信に満ち溢れた表情から一転、縋るような視線を自らの息子へと向ける。

 

 そんな母親の顔を見た零児はなにやら只ならぬ気配を感じ、デュエル中ではあるが何が起こったのか事情を聴くために、自身のデュエルディスクで自身の腹心である”中島”と回線をつないだ。

 

「どうした、中島?」

 

 そして中島から事情を聴いた零児は表情を僅かに強張らせると、先ほどのやる気はどこへやら。デュエルディスクを停止させると、出口へと速足で歩きだす。

 

 そんな彼の突然の行動に、先ほどまで呆然としていたクオンは我に返ると慌てて口を開く。

 

「ちょ、ちょっと?」

「この勝負預ける」

「はあ!?」

 

 いきなりのその言葉に思わずクオンはいつもの飄々とした調子を崩し素っ頓狂な叫び声をあげてしまうが、そんな彼の様子に零児はくすりとも嗤うこともなく、クオンに対して言葉を続ける。

 

「緊急の用件ができた。この決着はいずれまたつける」

「は、はあ……?」

 

 最後に思わぬ言葉を受けてクオンは結局間抜けな声しか出すことができず、零児もそんな彼を一瞥すると、そのままその場を去ろうとしたのだが、そんな彼に声をかける者が。

 

「待って!!」

「ん?」

「おや?」

 

 その声にクオンと零児が振り向くと、そこには走ってきたのだろう。いつの間にか息を切らしたクオンの義弟である遊矢が立っていた。

 

 遊矢は息を整えると真剣な、それでいてどこか怯えたような表情を浮かべながら口を開く。

 

「あ、あんた名前は?なんでペンデュラムを!」

「……なるほど、榊遊矢。榊遊勝の実子か」

「!?父さんのこと知ってるのか?」

「もちろん。君の父上、榊遊勝のことは、アクションデュエルに新しい可能性をもたらした開拓者(パイオニア)として深く尊敬しているよ。尤も養子がいるなんて話は今の今まで聞いたことなかったが」

 

 そういうと、零児はチラリとその視線をクオンへと視線を一瞬向けた後、再びその視線を遊矢へと戻す。

 

「あいにくと、ペンデュラムのことは企業秘密でもあるから詳しくはいえないが、とりあえず自己紹介だけはしておこうか。――――私の名前は”赤馬零児”。一応レオ・コーポレーションの社長をしているよ」

「…赤馬……零児………」

 

 噛み締めるように零児の名を口にする遊矢。そんな彼に構わず零児はその場で踵を返す。

 

「いずれ君とも戦ってみたいものだ」

 

 そんな言葉を残し、零児は今度こそ遊勝塾を後にするのだった。

 




感想や誤字脱字の報告などお待ちしております。

※修正箇所

1.ヒュグロの魔導書の効果でバンプアップした幻想の黒魔導師がヘル・アーマゲドンを破壊した際、魔導書カードのサーチを忘れていたため、サーチする場面を加えました。

2.オリジナルアクションマジックの対抗奇術が強すぎるとご指摘を受けたため、ライフコストを加え、無効にできるカードを魔法のみに限定した。

3.零児のライフを0にすることができる道筋があったのだがそれに気づいておらず、このままでは勝てるデュエルを手加減した感じに見えてしまうため、ガガガマジシャンを召喚してからのデュエルの流れを修正した。


一応以上となります。
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