後楽園球場.....俺が物心ついたときには、既に東京ドームになっていた。
俺もじいちゃんに連れられて野球を観に行ったが、
「月明かりのないナイターはどこか寂しい」とじいちゃんは悲しそうな顔でポツリと漏らした。
きっとじいちゃんは後楽園球場が好きだったんだろう.....
じいちゃん.....俺は今、その後楽園球場にいるんだぜ....
『友』の戦いを見届けるためにな...
第十一話「明かされる謎!!の巻」
熱狂に包まれた観客席はすべて埋まり、立ち見をしている人が多く見られる。
そのほとんどがキン肉マンのサポーターだ。
俺は超人ではないので控え室には入れず、テリーマンとウォーズマンが
スパーリングのパートナーを務めていた。
それにしても、キン肉マンの人気がこれほどまでとは想像もつかなかった。
これが超人オリンピックV2チャンピオンの証......
「もう間もなく、試合開始ですのでもうしばらくお待ちください」
会場にアナウンスが流れ、観客のボールテージが更に上がる。
これが超人レスリング.....この人々の期待を背にキン肉マンは戦うのか...
「両者入場ーっ!!」
その声とともに赤コーナーのキン肉マンが登場する。
「ぎゅ~どんひ~とつに300円~」
人生で初めてこんなに音痴な奴を見た。
音程もクソも何もない......そこにあるのはただの雑音だ!!
耳を塞ぎながらもキン肉マンの勇姿を見ようと顔を上げると、
演歌歌手の格好をしたキン肉マンとミートが入場していた。
周りには牛丼屋の登りが立っている。
こいつのギャグのセンスは高すぎてついていけんな...
だが、周りの観客には受けているようだった。
「続きまして....青コーナー、THEハートマンの入場です!!」
カツン、カツン、カツン
暗い入場口から出てきたのは乱れのない行進をするハートマンだった。
俺も国防大にいたころにやっていたが、俺ほどの行進は見たことがない。
テンガローハットをかぶったハートマンがリングに入り、
審判の説明を受けいよいよ戦いのゴングが鳴る。
開始早々先に攻撃したのは、キン肉マンであった。
ハートマンに向けドロップキックを放ったが、ハートマンの素早くロープに移動し
キン肉マンの側面を持ってジャーマンスープレックスを態勢に持って行った。
「なんのこれしき~っ!!」
キン肉マンがジャーマンスープレックスを外そうと一瞬脇を開くと
すかさずハートマンはドラゴンスープレックスに態勢を持っていき
キン肉マンの脳天をキャンパスに叩きつけた。
脳天をたたきつけられたキン肉マンであったがすぐに立ち上がり、
ポールに駆け上がり空中からエルボースタンプを打ち込む。
「貴様の攻撃には隙がありすぎるぞぉぉぉ!!!
喰らえーっ!!チェーンソーハット!!!」
ハートマンは被っていた帽子をキン肉マンに投げつけると
帽子のつばがチェーンソーのように回転し、キン肉マンの胸元を切り裂いた。
「おわーっ!!!」
キン肉マンが態勢を崩し落下したところを、ハートマンがキャッチし
パイルドライバーでキン肉マンをキャンパスに突き刺した。
「ハートマンの電光石火の攻撃により、キン肉マンがダウンーっ!!!
さすがのキン肉マンも二度も脳天をやられるとなかなか立ち上がれません」
「王子ーっ!!立ち上がってください!!ハートマンが狙っています!!」
ミートの言うとおり、ハートマンはポールに上りキン肉マンの脳天をめがけ
ニードロップを仕掛けてきた。
「何度もお前の攻撃をくらうものかーっ!!」
キン肉マンはハートマンの膝をキャッチしアキレス腱固めに入った。
「早くギブアップせんとお前のアキレス腱が切れてしまうぞい」
並みの超人なら痛みに悶えていたが、このハートマンは不敵な笑みを浮かべていた。
「こんなカビの生えた技で俺に勝てるなと思うなーっ!!」
ハートマンは体の柔軟さを生かし、アキレス腱固めを脱出し
キン肉マンの右腕に脇固めを掛けた。
右腕に電撃を走り、キン肉マンもすかさずハートマンの顔にキックを入れ
技を解除させた。
「こいつ...強い...まるで私に技を掛けさせる隙を与えてくれん...」
「あたりまえだキン肉マン!!
貴様の情報はアメリカ超人界から情報を受け取り研究さえてもらった。
そして私は半世紀この戦場で戦ってきた経験がある...
貴様がこの勝負に勝てる要素などないのだ!!!」
ハートマンの言葉に対して、キン肉マンはミートにアドバイスを求めた。
「王子...奴は自分の技と経験に自信を持っています。
奴が必殺技を掛ける一瞬のタイミングにすべてを掛けましょう」
「わかったミート。奴の必殺技を受ければよいのだな」
キン肉マンはアドバイス通りにハートマンに猛烈なラッシュをかける。
一見キン肉マンの攻撃に手を出せないハートマンが防御をするしかないという
図式になっているが、ハートマンはキン肉マンの隙が出る所を待ち
一気に必殺技を掛けに行こうとしていた。
速攻に次ぐ速攻...ハートマンのファイトスタイルが見えてきたミートは
ここでハートマンの必殺技をかけてくるであろうと予測し、
キン肉マンにわざと隙を作らせる無駄なラッシュを行わせていたのだ。
キン肉マンがわざと作った一瞬の隙を逃さず、ハートマンがキン肉マンを空中に蹴り上げる。
「今だ!!!」
キン肉マンはミートの予想通り浦島にかけたブロウクン・ハンマーで来るという確信があったため、
キャッチしようとするハートマンを逆に捕まえてパイルドライバーを仕掛けようとしていた。
だが、ハートマンの戦場の勘は
自分のバックを取ろうとするキン肉マンをバックブリーカーで捉えた。
「これが俺の必殺技だ!!!ヘブンズ・ハンマー!!!!」
アルゼンチンバックブリーカーで捉えられたままキン肉マンの脳天はキャンパスの叩きつけられた。
「そんな!!ハートマンにこんな必殺技があったなんて!!」
「そこの坊主よ~俺の実力を甘く見ていたようだな~
それにしてもこんな奴がチャンピオンとは、超人界も腐ったものだな」
ハートマンの言葉に観客席で観戦していたテリーマンとウォーズマンが何か言いたげだったが、
必死に口を堪えている。
リングで戦っているのはキン肉マンであり、自分たちは単なる正義超人の一人でしかないため
発言権などないからだ。
☆☆☆☆☆
圧倒的に不利な試合展開....
あの時俺がキン肉マンを止めていれば...
そんな自責の念にかられ、俺は思わずリングから目をそらしてしまった。
「一方的な展開になってきたようだね。ハートマンとかいったか....
奴の戦いに対する執念は素晴らしいものだ。完全にソウルシードと一体化しているよ」
先ほどまで隣には他の客がいたはずなのに、今俺の隣にはZが座っていた。
「Z!!なぜここにいる?!!」
「超人レスリングを観たい....ではいけないかなロストナンバー?」
「そんな見え見えの嘘を...何が目的だ!!!」
浦島の突然の怒りに周りの観客がざわつき始める。
「まあ落ち着きたまえ、ここにいる観客はすべて殺せるぐらいの力なら持っている...
この言葉の意味は分かるよね?」
つまりこの会場にいる観客は俺が何かしようとしたら、いつだって殺せる...
数万人の人質というわけか....
浦島は心を落ち着け椅子に座った。
「試合観たいと言っていたな...だったらちょっとぐらいの質問をしてもいいよな?」
こちらから手を出せない以上、相手のペースに飲まれるしかないだろう。
だったら、今のうちの奴の目的を知るぐらいならできるのではないか?
俺はそう考え、Zに質問をすることにした。
「僕は君くらいなら五分もかからずに倒せるからね。何を聞いても構わないよ」
隠す気などない...その余裕に満ちた顔がなんともZらしい。
「では、聞かせてもらうぞ。お前の目的はなんだ?」
「僕は争いのない世界をソウルシードの力で作りたい...
人間が争いを続けるから地球はいつまでも泣いているんだ。
僕は地球の涙を止めるために、世界の『壁』を見つけ
数多の世界にソウルシードという戦争根絶の種を撒くのが僕の神から与えられた使命なのさ」
戦争を止めるために、希望の種であるソウルシードを撒く...
大層なことだが、そのソウルシードを植えられた者は自分の意思ではなく
操り人形のようにこいつのいうことを聞くだけではないか。
それで本当に争いをなくせるのか?
俺はそんな疑問を抱きつつも次の質問に移る。
「さっき『ハートマンはソウルシードと完全に一体化している』といったが
ソウルシードと一体化することで、植えられた人間はどうなるんだ?」
「ソウルシードは人間の生命活動において一番重要な『願い』『執念』『決意』
といった感情を糧として成長していく。
前のフェニックスは『生きたい』という感情がソウルシードに反応し、
あの姿になったけど、あの少年の意識は君の呼びかけによって『助かりたい』という
『願い』に変わっていき、ソウルシードの感情と不一致して体内に排出されたんだ。
だが今回は違う。ハートマンの『戦いに対する執念』は完全に奴の体内の中で
ソウルシードの花を開かせた。だから奴には君と同じようなベルトがついているだろう。
それが君と同じ完全に花を開かせた状態....
つまり完全にソウルシードの力を手に入れた者の証なんだよ
花を開かせたものは完全に自分の野性を解き放った野獣となり、
僕の腹心となって世界から争いをなくしてくれるだろう...」
だから、奴は今まで戦ってきた奴とは別格に強かったのか。
納得した浦島であったが、同時になぜ俺が湧きあがる理性をコントロールできるのか疑問に思った。
「では、なぜ完全に花が開いている俺は野性を理性でコントロールできるんだ?
開花しているのであれば、俺も奴らと同じ野獣となっているはずじゃないか」
「それは君の中にあるもう一つのソウルシードが君の理性となっているのだ。
君のソウルシードを入れる前に、遺伝子の中にソウルシードの情報が刻まれていたんだ。
それがNo,1が植えたソウルシードに反応し、君が仮面ライダーとやらになる決意をした時に
その花も開花したんだ。通常ではありえないことだが、君は現にその名前を名乗って
僕の邪魔をしているんだ。そうとしか考えられない」
やはり、親父は大和の乗組員としてゾドラと戦った時に、ソウルシードを植えられていたんだ。
自分の中で立てていた推測は確信に変わった。
その時、リングではキン肉マンが絶体絶命のピンチを迎えていた。
キン肉マンのノベルを参考にして試合を書いてみましたが
漫画以上に技の掛け合いとなっているので、どうしてもテンポが速くなってしまいます。
キン肉マン編は次回で完結です。