鼠、鼠、鼠.....
空中戦艦フリードリッヒ・デアグロッセの格納庫は
マウスシードで埋め尽くされていた。
しかもこの鼠の厄介なところは石仮面の力により
そのすべてが吸血鬼化しているのだ。
奴らを倒すためには、太陽の光を浴びせるしかない。
そしてそれができるのは、黄金の意志を持った者にしかできない。
ジョセフ....そして浦島の戦いは
ナチス残党の野望を打ち砕くため、太陽の力を借りて
闇の住人に戦いを挑む。
第一六話「波紋法の弱点」
「こいつでラストだ!!!」
襲い掛かるマウスシードを波紋法を纏った体で戦う浦島は
格納庫にいるマウスシードをすべて撃退した。
だが、休む間もなく襲ってきたマウスシードを相手にするあまり
浦島の体に相当の負担がかかっていたのも
長時間にわたる戦いの影響だろう。
それを待っていたかのように、奴が現れた。
「ご機嫌よう仮面ライダーLOST。
私の計画を邪魔しに来たようだが、それは無謀なことだ。
このフリードリッヒ・デアグロッセは
我がドイツの航空・造船技術を結集した最終兵器なのだ。
貴様ら波紋戦士に落とされるような船ではない!!」
黒々としたドブネズミのようなコピー怪人の死体を踏み
白い体毛のマウスシードが近づいてきた。
「第一降下部隊が全滅とは恐れ入ったものだ。
だが、その疲弊しきった体で私と戦えるかな?」
マウスシードはその発達した前歯を武器に浦島に襲いかかる。
噛みつかれる寸前でかわした浦島は、すぐさまマウスシードと距離をとった。
「こいつの前歯は危ないな....一度距離を置いてから攻撃を仕掛けよう」
シード怪人の特徴として、主に近接格闘を重点に置いていることがあげられる。
俺自身もそうだが、動物に飛び道具などなかなかないため
爪や牙、発達した筋肉を生かした攻撃などに絞られていくのだろう。
こいつが動物の怪人であったらの話だが....
「この体を舐めてもらっては困るぞ!!!
空裂眼刺驚≪スペースリバー・スティンギーアイズ≫!!」
マウスシードの眼から高圧で噴射された体液が浦島に向かって発射された。
何か来るであろうと予感していた浦島はすかさず回避行動に移る。
「目からあんなものを出せるなんて....
吸血鬼とソウルシードの組み合わせるなんて、厄介なことをしてくれやがったな」
空裂眼刺驚をかわした浦島にマウスシードの前歯が光る。
「甘いぜ!....ライダァァァパンチッッ!!!」
浦島の拳はマウスシードの分厚いシャベルのような前歯を砕き、
口から後頭部に突き抜けた。
ただのシード怪人ならここで勝負はついていただろう。
間違いなく浦島の勝ちだ。
だが、浦島はここで重大なミスを三つ犯していた。
それは吸血鬼でもあるマウスシードを倒すためには
波紋エネルギーを打ち込まなくてはいけなかったこと。
そして相手が波紋法についての十分な対策を取っていたこと。
相手の懐に入り込むということは、カウンターのカウンターがあるということを...
「かかったな仮面ライダーLOST!!!
くらえ!!ドイツBC兵器の結晶、VXガス噴射装置!!!」
マウスシードの肩から紫色の気体が噴出され、浦島の口に入る。
それはまさに波紋戦士の力の源である呼吸をさせないために
作り出された禁じられた兵器『毒ガス』であった。
「ッッ!!!呼....吸が....出来...ない....」
浦島が吸い込んだガスは人間であれば即死させるほどの猛毒ガスであった。
その威力はたとえ改造人間として、強化された体であっても
呼吸困難に陥らせるだけの威力は備わっているのだ。
「フハハハハ。呼吸ができない気分はどうだ?仮面ライダーLOST。
波紋エネルギーがない貴様ら波紋戦士など、手足をつながれた猛獣同然ッッ!!
恐れるに足らない存在なのだ」
波紋を練れない以上有効打を打てない浦島。
逃げようにも通路はマウスシードの死体が山積みになっており
小さなスペースすらもない。
退路は塞がれた。
目の前にいるのは、現時点で倒せない敵....。
普通の戦士ならば、マウスシードに立ち向かって死ぬか、通路を何とか作ろうとして
背後を取られて死ぬかの二択に絞られるだろう。
だが、浦島は違った。
最後の力を振り絞って後ろにある壁に向かって走り出したのだ。
それは絶体絶命の恐怖から逃げるために走り出したわけではない。
この状況を打開するための手段として、後ろの壁に向かって走り出したのだ。
「ライダァァァ....」
壁を足場にマウスシードがいる方角に反転させ、体をドリルのように回転させた。
「スピンキィィィィク!!!!」
ドリルのようにマウスシードを突き破った浦島は、
その勢いを利用して通路の邪魔となる死体の壁を突いた。
ただのライダーキックではマウスシードを体を突いて通路をふさぐ壁を突破できないと
判断した浦島は、マウスシードに背を向けることで相手から自分が錯乱したと思わせ、
一瞬の気の緩めさせ、後ろの壁を利用し反動をつけたうえで
ライダーキックにスピンをつけることによって、通常のライダーキックの五倍の威力を発揮することができたのだ。
死体の壁を突き破った浦島だったが、最後の力を振り絞った一撃であったため
最後の一体を突いた所で力尽きてしまい変身が解け、その場に倒れこんでしまった。
「窮鼠猫を噛むとは、このことか....だが力尽きてしまってはしょうがないな」
胴体に大きな穴を開けながらも、何事もなかったかのように体を再生させ、
浦島に近寄る影が一つ....マウスシードである。
波紋エネルギーが伝わっていない攻撃は対吸血鬼においては無効である。
それがどんなに強大な威力であっても、
波紋が伝わらなくては再生能力をもつ吸血鬼は倒せないのだ。
「WRYYYYYYY!!!!所詮貴様らは駆られる立場の生物。
どんなにあがこうと最後は惨めな死が待っているのだ!!」
マウスシードはその眼にありったけの体液を集め、浦島に向かって噴出する体制をとった。
動けない浦島はどうする事も出来ない。
しかし、浦島にはまだ希望があった。
邪魔な障害物は取り払ったのだ。
猛獣の雄たけびのように勇ましいエンジン音が聞こえ、
自分『達』の勝利を確信する。
「テメーの次のセリフは『さよならだ機械人間』だ」
「さよならだ機械人間ッッッ!!!」
マウスシードが噴出した体液は通路から現れた何者かによって防がれた。
「待たせたな空也。時間稼ぎご苦労だったな。こっちの作戦は成功だ」
通路から現れたのはライトチェイサ―を操るジョセフだった。
空裂眼刺驚を巻いていたバンダナに波紋を通してはじいたのだ。
「貴様が次の相手か....だがここはすでにベルリンのようだな。
かわいい私の分身たちをこの街に放つのが、この作戦の肝なのだからな」
「次のセリフは『いまさらこの船の動力を止めたとしても、街に落ちてしまえば
作戦は成功したも同然なのだ」という」
「いまさらこの船の動力を止めたとしても、
街に落ちてしまえば作戦は成功したも同然なのだ―!!!」
マウスシードの高笑いと同時に機関が停止し、急降下が始まった。
「この位置で機関を止めれば三分後にはポツダム広場に落下するだろう。
ポツダム広場にはこの船を止めさせるだけの広さはあるからな。
そしてこの中にいるネズミを焼き払うために、巨大紫外線碇照射装置を設置させてある。
落ちてくるこの船に紫外線を照射していればネズミどもは一匹残らず焼却処分さ。
テメーの次のセリフは『すべて計算通りだったのか』だ。このウスノロめ!!!」
「すべて計算通り....ハッッッ!!!」
浦島がここで大暴れしたのは、マウスシードをここに釘付けにして
ジョセフがタイミング通りに機関室を止めるための囮作戦だったのだ。
それに気づいたマウスシードだったが、時すでに遅し。
巨大紫外線照射装置は作動し、館内にマウスシードたちはすべて蒸発していく。
「おのれぇぇぇジョースタァァァァ!!!!」
人口の太陽光に燃やされていくマウスシード。
その姿はまばゆい光と共に消えていく。
「こうしちゃいられねぇ。空也、ここを脱出するぞ」
ジョセフは毒ガスにやられた浦島をライトチェイサ―に乗せ、
フリードリッヒ・デアグロッセから脱出した。
上空100mくらいのから飛び出したので地面と接触するまで時間はない。
「脱出するのは良かったが、これどうやって飛ばすんだ?」
つい先ほど乗ったばかりのジョセフでは、
ジェットブースターを発動させることはできなかった。
車体はバランスをとりながらも地面に向かって落ちていく。
「だから飛行機に乗るのはいやだったんだ~!!助けて神様!!!」
地面とぶつかるその瞬間、後ろにいた浦島がハンドルを握り
最小限の衝撃で着地することに成功した。
まさにそれは神業。
仮面ライダーとなったことで人間の限界を超えたトレーニングをできるようになった浦島が
積み重ねてきた技術の成果があったのだ。
「じいちゃんから飛行機を操縦していた話を聞いててほんとによかった....
付け焼刃だけど、何とかなるもんだな」
「助かったぜ空也.....二度とこのバイクには乗らんがな」
巨大紫外線照射装置といくつもの重火器の猛攻を浴びた
空中戦艦フリードリッヒ・デアグロッセは第二次世界大戦終りの地
ポツダム広場でその役割を終え、眠りについた。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
波紋の弱点として、呼吸ができなくなっては使うことができないので
ブロッケンマンさながらの毒ガス攻撃でLOSTを苦しめてみました。
特殊能力や武器があると敵の個性が書きやすいです。