仮面ライダーLOST   作:九番ライト

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GS美神編
第十八話「男はつらいよ(その一)」


ジョセフと飲んだ店にあった世界のドアを開けると

そこは無数にドアが漂う空間ではなく、浦島の前に扉が三つだけあった。

 

あきらかにおかしい....

 

なぜなら今まではZのの世界に行く選択肢が無数にあったはずだ。

 

これはもしかしたら、この三つのドアにZのいる世界があるのかもしれない。

俺は直感を頼りに右のドアを開けた。

 

そこは巨大な怪物を空を飛ぶ人間が何かを放射して戦っているのがぼやけて見える。

ここは違う....だがこの世界にもシード怪人はいるかもしれない。

俺は奴らから人々を守るために戦う。

それが仮面ライダーとして生きることを誓った俺の使命だからだ。

ゆっくり自分の足を前に踏み出し、この世界に入っていった。

 

 

第十八話「男はつらいよ(その一)」

 

 

何か出てきそうだな。

 

この部屋に入って最初に感じたのは、高校時代に友人と見たホラー映画の雰囲気そっくりだった。

 

割れた窓ガラス

 

ところどころ隙間の見える床

 

カビで覆われた壁

 

ここが廃墟であることはこの三つだけでも判断できる。

 

そして廃墟につきものなのが悪霊か怪物だ。

 

怪物はジョセフと共に戦ったから、次は悪霊だろうか?

 

いずれにせよ悪い予感しかない....。

だったら前を進むことしか解決策はないのだ。

歩くたびに軋み、今にも抜け落ちそうな床を恐る恐る歩く。

前にあったドアの下にはソフトボールくらいの穴があった。

その穴を覗くと、底が見えないほど闇で覆われていた。

 

その闇の底から何かが動いているのに気付いた俺は

ドアを突き破って、次の部屋に入った。

 

突き破った部屋の先は舞踏会場のような大きさの大広間だった。

 

しかし、そこにいるのはかつて人間だった者たちであふれかえっていた。

 

悪霊....ホラー映画に出てくるあの悪霊だ。

 

オカルト好きなら涙モノだが、あいにく俺はこういったものには興味がない。

 

悪霊たちは侵入者の存在に気付くと、一斉に向かってきた。

 

敵意の表れだろう。

 

逃げ場はすでにない。

 

俺に残されたカードは一つだけ....

 

深く息を吸い込み呼吸を整える。

 

練り上げられた波紋は肺から拳に伝わり、迫りくる悪霊へカウンター気味に拳を放つ。

 

「山吹色の波紋疾走!!!!」

 

魔を払う太陽の色を纏った拳は、一撃で向かってきた悪霊を消滅させた。

どうやら波紋は悪霊にも効果があるのだな。

それさえわかってしまえば、あとは時間の問題だ。

次から次へと襲いかかる悪霊軍団を波紋で叩き伏せる。

悪霊を倒していくうちに一つの疑問が頭に浮かんできた。

それは悪霊がどこか時間稼ぎをしているかのように行動しているようだった。

霊感はあるわけではないが、なんとなくそう感じるのである。

非現実的な話だろう。すでに人間ではない俺が第六感で危険を感じ取っているのだから。

 

悪霊が半分くらいになったところだろうか。

何かに奴等が怯え始めたのだ。まるで天敵に怯える小動物のように。

 

「いったい宝石なんてどこにあるじゃー!!」

 

「時価20億円の宝石よ!この屋敷にあるのは確かなのよ!!

あんたの時給の何万倍の価値がある宝石なんだから!!

 このままタダ働きなんて死んでもやーよ!!!」

 

「まあまあ美神さん、シロちゃんたちが事務所で待ってますし帰りましょう?」

 

天井を突き破って降ってきたのは、赤いバンダナがトレードマークの少年と

橙色の綺麗な長い髪の美女、そして巫女装束の少女の三名である。

 

これに奴等は怯えていたのか?

確かに幽霊屋敷にいるのに余裕たっぷりでいるのだから

肝は据わった人たちなんだろう。

 

しかし、長い髪の美人とバンダナを巻いている少年は悪霊を倒すよりも

指輪を探すことの方が大事なようで、大広間を片っ端から荒らしている。

その眼はまさに獲物を探す猛獣の眼であった。

 

「美神さん、あそこで人が戦っていますよ」

巫女装束の少女は俺の存在に気づき、血眼になって指輪を探している美神という女性に

報告した。

 

「おキヌちゃん、この屋敷は完全に封鎖されていて私たちのほかには人間なんていないはずよ」

 

「でも、あそこで霊波を出している戦っているのは、間違いないです」

 

美神は自分の仕事を横取りきたもぐりのゴーストスイーパーだと一瞬推測したが、

彼の拳から放出されているエネルギーは霊力とは似ていても、根本的に違うものだと感じられた。

 

「そこで戦っている坊主のあんた!何者だかしらないけど、人の仕事の邪魔をしないでくれる?」

 

「坊主じゃない!!これだけ髪が伸びたら、すでに坊主のカテゴリには入らないんだ!」

 

悪霊たちと戦う中でついつい気に障り、見ず知らずの女性に怒鳴ってしまった浦島。

敵意はないことを釈明すればよかったが、これで美神令子の怒りに触れてしまったことは明確であった。

 

「横島クン、宝石探しはいいからあの坊主頭を取り押さえるのよ!」

 

浦島の霊力の異質を確かめるべく、まずは最強の丁稚である横島を戦わせて

情報を取ろうとする美神。

浦島のエネルギーがこちらの世界の霊力と呼ばれるものではないことに気付いていた。

 

「やめましょうよ美神さん、悪そうな人ではなさそうですよ」

 

完全に戦う気満々である美神を止めるおキヌであったが、時すでに遅し。

指輪探索を打ち切った横島が浦島に襲い掛かる。

 

「なんだか知らんが、恨むなら俺じゃなく美神さんを恨んでくれー!!」

 

横島の右手から放たれる霊波刀が浦島に襲いかかってきた。

 

「波紋疾走!!」

 

振り下ろされた霊波刀を波紋で受ける浦島。

すさまじいエネルギー同士のぶつかり合いで、周囲にいた悪霊たちのが霊波の放出によって

消滅していく。

 

「この坊主頭....結構強いぞ」

 

「このバンダナ、見た目は馬鹿っぽいがかなり攻撃が重い....」

 

その一撃で互いの内に秘める強さを感じ取った二人。

間合いを取って、相手の出方を見ることにした。

攻撃力は今のところ互角と見た。

しかし、こいつにはまだ何かある。

戦いの中で徐々に戦いの空気を感じ取れるようになってきた浦島。

その予想は的中する。

 

横島は指先に霊力を集め、《珠》を作り出した。

その《珠》に念を込め、浦島に向かって投げつけた。

その透明な《珠》には《爆》の文字が浮かび上がっていた。

彼の最強の万能武器である『文殊』である。

 

怪しい何かを横島が投げたことに気付いた浦島は

とっさに避けたが、文殊の大爆発に巻き込まれてしまった。

 

致命傷ではなかったが、そのダメージは浅くない。

 

「人間相手だと思っていたが、こいつはヤバいぜ」

 

切り札を使うため、変身のポーズを取る浦島。

だが、思わぬ来客により

浦島はスイッチを入れることはなかった。

 

「いや~さすが日本一のGSですね。この屋敷に住みついた悪霊をこんな簡単に払ってしまうとは」

 

大広間中央にある扉を開けて登場したのは、

小太りのシルクハットをかぶった紳士と両脇にはSPが二人ついていた。

 

「依頼主の富永卿ね。時価20億円のルビーはいったいどこにあるの?

 屋敷のあちこちを探したけどどこにも見当たらないわ。

 それに同業者を勝手に呼ぶなんて、これは契約違反よ」

 

見つからないルビーに嫌気がさした美神は富永卿へ契約違反ではないかと詰め寄った。

 

「申し訳ございません。『アイーダの涙』を手にするのにふさわしいかどうか

 こちらで判断するために、屋敷にあるという嘘を言って依頼をしてしまいました。

 その点に関してはお詫び申し上げます。

 ですが、GSは美神事務所以外で依頼はしていません。

 私も初めてお会いする方です」

 

その凛とした表情はこの言葉に嘘はないという自信に満ち溢れていた。

 

富永卿はSPが持っている頑丈そうなケースを美神へ差し出すと

鍵を開け、中身を見せる。

そこには妖しく光る大きなルビーが厳重に保管されていた。

 

「こちらが『アイーダの涙』です。どうぞお手を触れて本物かどうか確かめてください」

 

時価20億円のルビーを目の前にし、いつもなら黒字の換算をする美神であったが、

ある疑問が美神の金に対する欲を抑えていた。

それは、ただの宝石を手にするのに悪霊を倒して腕試しをさせる必要があったのか?

そして霊能力者の第六感が危険信号を発しているため、素直に受け取ることができない。

 

「おやー?お気に召さないようですね。では、助手の横島さんに受け取ってもらいましょうか」

 

美神に背を向けた富永卿はその足で横島の下へ向かい、『アイーダの涙』を差し出した。

 

「横島クン、そのルビーは危険よ!下がりなさい!!」

 

美神は『アイーダの涙』から漂う異様な雰囲気に危険を感じ取り、

横島に注意するが、時すでに遅し。

 

横島は『アイーダの涙』に触れてしまった。

妖しい光があたりを包み、宝石から触手が飛び出し、横島の体を宝石の中に引きずり込む。

 

「うわああああああ美神さぁぁぁぁん!!!」

 

一気に上半身を飲み込まれた横島。

宝石から放たれる強烈な光のせいで美神とおキヌの目はくらまされている。

このままでは体ごと飲み込まれてしまう。

 

「オラァァァァ!!!!」

 

人間では直視することができない強さの光をものともせず、

浦島が『アイーダの涙』に拳を突き刺した。

パンチの衝撃で玉体にひびが入り、横島を取り込もうとする一旦触手の動きが止まった。

しかしすぐに新たな触手が浦島の体を縛り上げた。

 

「この野郎!!!」

 

宝石の発光が収まり、すぐに神通混で『アイーダの涙』をたたき割った美神。

強大なエネルギーの放出とともに、横島の体が飛び出てきた。

 

「横島クン、しっかりしなさい!!」

 

美神の呼びかけに横島からの応答はない。

その体はまるでもぬけの殻であった。

 

「おのれ....よくも霊力を手に入れるチャンスを私から取り上げたな。

 『アイーダの涙』が壊された以上、次の霊力補給がお預けとなるではないか。

 覚えていろ美神令子!!」

 

先ほどまでの紳士ぶりとは180度反転し、すぐに逃げ去る富永卿。

美神はそんな富永卿をぶん殴りたかったが、それ以上に横島が心配だった。

 

「しっかりしてください横島さん!!」

 

おキヌの悲痛な叫びにも反応しない。

 

体は仮死状態であるため、必ず霊体がどこかにあるはずだ。

辺りを見渡しても、そこには浦島が爆発によって気を失っているだけで

横島の霊体の姿はなかった。

 

「どこに行ってしまったのよ、横島クン.....」

 

冷酷無知ないつも態度はどこにもなく、最悪のケースが美神の頭をよぎる。

だが、そんなケースは彼には絶対起こらないと信じていた。

なぜなら彼、横島忠夫は数々の生死の危機を乗り越えてきた驚異的な生命力が

彼を何度も生還させていたからである。

 

「あ~死ぬかと思った」

 

間の抜けたセリフで起き上がってきたのは、先ほどまで失神していた浦島だ。

 

「どうしたんですか美神さん?....って!!!なんで俺の体がそこにあんの!!!」

 

俺の体と言って浦島が指差すのは横島の体である。

 

「まさかあんた横島クン....あの衝撃でそいつの中に入ったのね。

 じゃあハゲ頭の霊体はどこに行ったの?」

 

 

「ハゲじゃない!!!!坊主だ!!!」

 

横島の霊体を弾いて出てきたのは、浦島の霊体であった。

つまり浦島の体に横島と浦島の霊体が存在しているということになる。

一つの体に二つの魂が入ることなどありえないはずだ。

 

「横島クン、あんた本当に横島クンなの?」

 

「あたりまえじゃないですか美神さん。体が変わろうが

 美神さんへの愛は変わってないですよ!!!」

 

浦島の体で美神にセクハラをしようとする横島。

しかし、美神のカウンターパンチが顔面にヒットし、地面にたたき伏せられた。

 

「俺までダメージをくらうのかよ.....」

 

自分ではない赤の他人に体を奪われるとは考えてもいなかった浦島。

その威力は今まで受けたことのない程の威力だ。

 

「ところであんたなんて名前なんだ?」

 

「俺は浦島 空也。ただの旅人だ」

 

横島の問いに対し、浦島は答える。

人から見ると一人芝居をやっているようにしか見えないが、

魂が二つあるのはしょうがない。

 

 

かくして浦島と横島の一身二魂生活は始まったのであった。

 

 

 




GS美神編突入しました。

現在原作が手元にないためセリフは、
ほかの方の二次創作を参考して書いております。

GS美神は脇役たちの個性が強いので
できるだけ多く出して話を盛り上げたいですね。
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