仮面ライダーLOST   作:九番ライト

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第二十一話「男はつらいよ(その四)」

東京某所、井川建設本社ビル

 

何の変哲のないその建物は、美神たちの前にそびえ立つ城であった。

 

おそらくこの中に富永が仕掛けた罠が待ち受けているだろう。

 

美神は霊能力者ならではの勘の良さがそう告げていた。

 

「じゃあ私とおキヌちゃん、シロ、タマモは除霊に行ってくるわ。

 横島クンと浦島クンはここで待っているのよ」

 

美神の作戦は、とりあえず仕事を引き受けに建物に入り

迅速に仕事を片付け、手薄になった横島たちを狙う富永の出方を見て

戦うというものだった。

 

もしも横島たちが襲われたとしても、

ボディである浦島が何とか時間は作ってくれそうなので問題はなかった。

 

 

「了解したぜ美神さん。俺は横島とここで囮になるってわけだな」

 

作戦の概要を聞き、了承する浦島。

相手の目的が横島である以上、罠が仕掛けてあるだろう建物の中に入るのは

こちらからしても不利である。

 

だったらいっそ弱点を外して、囮にしてしまえばいいというわけだ。

 

文殊もすでに三つあるし、最後の一個ができれば形勢逆転、一気に攻勢にも出れる。

 

しかし気になるのは、相手が霊体だけなら美神たちでも何とかなるが

それ以外の敵が来た場合はどうするということだった。

 

そう、たとえばシード怪人が悪霊と手を組んだり.....

 

 

 

第二十一話「男はつらいよ(その四)」

 

 

 

「お待ちしておりましたよ美神さん」

 

そういって井川建設のビルから出てきたのは、富永 恭一郎であった。

 

まさか敵の親玉が正面に出てくるとは、思わなかったので

美神も驚きを隠せないようだった。

 

「愛する人を守るため、神から与えられたこの姿.....その目に焼き付けるがいい」

 

一瞬にして異形の姿に変えた富永。

 

頭部から生える太く鋭い角。

 

雄々しく鉄板を重ねたように逞しい体。

 

地の底を揺るがすような咆哮が美神たちを襲う。

 

「牛鬼でござるか!!拙者が相手になるでござる!!」

 

右手の霊波刀で富永に斬りかかるシロ。

その霊気の刃は完全に相手を叩き斬ったかに見えた。

 

「コイツ.....霊体じゃないッッ!!」

 

霊体を感触が全くない....それはつまり相手にダメージを与えていないということになる。

攻撃を終えた隙を富永は見逃さなかった。

 

「喰らえ!!人狼!!」

 

頭部の太く鋭く尖った角を突き刺さそうとする富永だったが、

突然狐火が迫ってきた。

 

 

「ボケッとしてんじゃないよ!!バカ犬」

 

間一髪の所でタマモの攻撃がシロを救った。

 

「かたじけない!」

 

 

シロはすぐさま距離を置き、富永の攻撃が範囲から逃れた。

 

 

「違霊圧が全く雪之丞たちとは全く違う。なんなのコイツは.....」

 

今まで戦ってきた魔族とは違い、霊圧が感じられない相手に戸惑う美神。

目の前にいる怪物は明らかに自分たちを殺そうとしている。

 

「奴らはシード怪人.....己の欲望に最も忠実な生物兵器だ。

いくら美神さんでもこいつは止められない。早く逃げるんだ」

 

 

姿を表した敵を目の前にし、変身の構えをとる浦島。

だが、ソウルシードは横島の霊波を受けて動く気配はない。

変身不能.....おまけに相手は目の前で虎視眈々と俺たちを狙っている。

絶対絶命とはまさにこの状況のためにあるのだろう。

 

「もーダメだぁぁぁぁぁ!!!!死ぬ前に美神さんと一発やっッッッぶ!!」

 

 

「己は早く文珠を出さんかー!!」

 

人生の最後を悟った横島は獣のような速さで、美神を押し倒そうとするが

美神の華麗なカウンターパンチを受けて、地面にたたき落とされた。

もちろんダメージは肉体である浦島に蓄積される。

 

―絶体絶命のピンチで、美神さんは何かを待っているような感じだ。

 そうでなければ、この状況で横島の暴走を冷静に対処できないはず。

 一体美神さんは何を待っているんだ?

 

浦島の予想はこうだった。

美神は最初浦島たちを囮にしようとしていたのだから、

作戦は二段構えにしているはずだ。

例えば、囮の俺たちに襲いかかる悪霊を、

後ろから救援が到着して攻勢をかけることなど考えているはずである。

 

ならば話は簡単だ。

何かを待っているなら、何かが到着するまで時間を稼げばいい。

俺の武器はこの鋼の体だけじゃない。

波紋法やライトチェイサ―だってある。

奴を倒さなくたっていい時間を稼げれば勝機がある。

 

「時間稼ぎなら、こうすればいいじゃねーか」

 

その結論に達した浦島に対して、横島がある作戦に出る

横島はその場にあった布をライトチェイサ―の車体に結び、

バッファローシードに向かって発進した。

 

「そんなぼろ布が何だっていうんだ!!」

 

バッファローシードはそう口では言いながらも、

明らかに鼻息を荒くし、頭に血が上っていた。

そして向かってきた浦島へ突進を仕掛ける。

 

「かかりやがったなバカ牛め!!」

 

浦島はバッファローシードと衝突するギリギリのところで

ひらりと突進をかわし、闘牛士のように布をゆらして

バッファローシードを挑発する。

 

「貴様ぁぁふざけやがって!!そのバイクごと串刺しにしてやる」

 

完全に浦島たちの挑発に乗ったバッファローシードは、

浦島たちのことしか見ていない。

つまり注意をそらすことに成功したのだ。

 

「でかした横島クン、浦島クン。シロはおキヌちゃんを守って後方に下がって

 タマモは上空でヘリがこちらに向かってないか見張るのよ」

 

横島の機転と浦島のバイクテクニックで相手の注意を引き、

時間を確保することに成功した美神は、ICPOの西条に召集をかけてもらい

GSたちが集まるのを待っていた。

富永が魔物に魂を売っているとなれば、オカルト犯罪防止法違反により

日本の土建屋業界の信用にかかわる問題となる。

今や世界中に戦略を広げた富永グループが潰れてしまっては

多くの労働者が仕事をなくしてしまうだろう。

それだけは防ぎたいので、問題を起こした富永を秘密裏に逮捕し

グループは何も知らないままトップを交代させて存続させるという苦肉の策を

日本政府は取ることになり、美神に仕事を依頼していたのだ。

 

「日本政府からの依頼となれば、相当もうかるはずよ。

 バブルがはじけたんだから、こういう仕事もやってかないと

 GSだって厳しいんだから」

 

さらっとGSの内部事情をこぼし、契約金のことで頭がいっぱいになってきた美神。

その一瞬の気の緩みが後ろから迫り来る霊体の接近を許していた。

 

「美神さん危ないッッ!!」

 

霊体の接近に気づいたのは横島だった。

助けにいこうにも肉体である浦島はバッファローシードの攻撃をかわすので精一杯であり、

美神の危機に気づいていなかった。

おキヌやタマモも霊体の接近に気づいていない。

その場で霊体に気づいているのは横島ただ一人であった。

美神を助けれるのは自分だけ.....しかし文珠はまだ4つに達していないため

幽体離脱することはできない。

どうしようもない無力感が彼を襲っていたのであった。

 

「うるせーぞ!ナレーション!!俺の煩悩パワーを甘く見るな!!」

 

横島の煩悩が美神の体に集中した。

彼の霊力の源は並大抵ならぬ煩悩である。

これまでの戦いでもこの男の底力が戦況を逆転させてきた。

 

「あの体に傷つけなんてつけさせるかー!!」

 

足りなかった最後の文殊を生成するため、横島の全霊力が一つの塊となっていく。

 

「もう少し...もう少しで文殊ができるんだ!!」

 

あと少しの所で文殊ができるところで霊力の限界が来てしまう。

 

「浦島!!お前の力を貸してくれ!!」

 

「もうやってるぜ!!半身!!」

 

横島の霊力で足りなかった文殊がその姿を完全なものにした。

 

「サンキュー浦島!」

 

横島の拳に四つの文殊が握りしめられ、[幽][体][分][離]の文字が浮かび出てきた。

その効力が発動し、浦島の霊体と横島の霊体が一つのものから二つに分かれていき

横島の幽体は幽体分離に成功した。

 

「その乳は俺のもんだァァァ!!」

 

幽体となって美神の下にに向かう横島。

 

「やっと幽体分離したのね横島クン。これで形勢逆転よ!!」

 

「そんなことより、後ろから霊波が!!」

 

「わかってるわよ!!」

 

美神は神通混に霊力を込め、後ろから迫る来る霊体を薙ぎ払った。

霊体は神通混をよけ、霊体から女性の体が出てきた。

 

「恭一郎さん、どこにいらっしゃるの」

 

その霊体は紫の和服を着た色白の女性だった。

美神は長年の感からいって、この霊体はただ霊体ではないことを感じ取っていた。

 

「澄江!!あのルビーのおかげだ!君ともう一度会えるなんて」

 

「私もよ恭一郎さん。あなたの思いが私に届いたからよ」

 

浦島の挑発に見向きもせずに澄江の下へ走り出すバッファローシード。

その姿は富永の姿に戻っていた。

 

「僕の願いは叶った。次は君が願いをかなえる番だよ」

 

富永が澄江の細い体へ抱きつこうとする。

しかし、澄江はそれを拒絶するかのように後ずさりする。

 

「私の願いはもう死んでいるのよ恭一郎さん。あなたと触れ合うことなんてできない」

 

「生きていようが、死んでいようが関係ない!!体がないのなら僕と一つになればいい」

 

突然始まったとある夫婦の愛情劇にただ呆然とするしかない美神たち。

目の前でこんな体が痒くなるようなセリフを言われるんだから、

聞いている身として見ればたまったもんじゃない。

 

「なんスか?この夫婦...このまま成仏してくれないっスかね」

 

「私もそうあって欲しいけど、あの女何か裏がありそう」

 

今時いないような気品あふれる女性....。

男にとっては理想の女性像を体現した姿である澄江に悪い予感を抱いた美神。

その悪い予感は現実となって当たってしまう。

 

「ありがとう恭一郎さん。これで私はただの石から体を得ることができる」

 

ただの石....富永は耳を疑った。

 

「ただの石....何を言ってるんだ澄江、君はあの石を持つことによって

 霊界から僕に会うために戻ってきたんじゃないのかい。

 それとも君は澄江じゃないのかい!!」

 

「そうよ恭一郎さん。私は以前の澄江じゃなくってっよ。

 あなたが霊界から呼び戻したのは、澄江でも何でもないの。

 あなたが手に入れたルビー中に私はいたの。

 ありがとう恭一郎さん、私のために命をかけてくれて」

 

卑しい人間の笑みを浮かべ、高らかに笑いだす澄江。

そう彼女は富永の妻 澄江ではなく、横島の霊力を吸い取ったルビーに取りついていた

悪霊だったのだ。

 

「死んだ澄江を生き返させるために自分はあのルビーを手に入れ

 あの男から「種」をもらって、僕と君の中に入れた。

 すべては澄江のためだったのに、あのルビーの中にいる悪霊に

 実体を与えるために今まで戦ってきたなんて....」

 

真実を知り落胆する富永。その眼にはすでに光はなく、完全に生きる意味を失くした肉の塊であった。

 

「さようなら恭一郎さん、そしてようこそ私の肉体...」

 

富永の体に入り込む澄江。

肉体を持った悪魔はソウルシードという災いの花に新たな花を咲かせた。

 

「ん....あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

澄江の体にこれ以上にない至高な快感が駆け巡り、喘ぎ声が響き渡る。

 

「これが人妻の艶やかさか!!!敵だとわかっていても、こいつはたまらん!!」

 

これから戦うであろう敵に対しても、

性欲の対象としてしまう横島に呆れてものも言えない美神。

 

「悪霊とソウルシード....一体どんな姿となって俺たちに襲いかかってくるんだ....」

 

瀕死の少年に合体して誕生したフェニックスシードを始め、

超人と合体したタイガーシードや吸血鬼と合体したマウスシード。

それらは人間だけを対象としたものではなく、

願いや意志を持った者たちの心を栄養として、シード怪人として誕生していった。

そして今回は実体の持たない悪霊がソウルシードを植えられた者の体に

取りつくことによって、新たな怪人を生み出そうとしている。

 

「奴は人間の理性をぶっ壊そうとしているのか....」

 

 

澄江の体を花の蕾が覆い隠す。

そして一枚一枚花びらが開いていき、最後の一枚が開いた。

そこにいたのは富永の変身した姿であったバッファローシードと同じ姿でありながら

その手には巨大な斧を持ち、体は女体化している怪物が立っていた。

 

「あの女...元々咲いていた富永のソウルシードが澄江の意志を吸収して

 あの姿になったというのか?」

 

浦島の推測は正しかった。いったん咲いたソウルシードは富永の精神的死により

衰弱したが、澄江の欲望によって新たに栄養が与えられたため、再び花を咲かせることができたのだ。

 

「いい気持ちだわ。この姿はさっきの男と同じだけど

 体中からこみあげてくるエネルギーが違うわ。

 あいつはバッファローシードとか言っていたけど、

 今の私はそんな名前は弱そうな名前は必要ないわ。

 ミノタウロスシード....これが私の新たな名前よ」

 

浦島たちに立ちふさがったミノタウロスシード。

この悪霊とシード怪人が合体した怪物に、浦島と美神たちは勝てることができるのか?

戦いのゴングは鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 




長いスランプからやっと解放されました。
GS美神の新エピソードが出るまでには書いておきたいと思っていたのが、
いつの間にか発売日当日まで書けなくなってしまい、
まさか一か月の間をおいてしまうなんて思いもしませんでした。
せっかく読んでくださる読者の方々に申し訳ないです。
誰か文殊で私の執筆スピードを上げはくれないだろうか(笑)

それからGS美神編のサブタイトルですが、
「男はつらいよ」で統一しました。
理由は簡単、いいタイトルのネタを考えれませんでした。
椎名先生みたいに、色んな方面からネタを持ってきたいです。
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