仮面ライダーLOST   作:九番ライト

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第五話「疾走」

燃え盛る炎の中から現れた仮面の戦士は

自らの仮面を取り、本郷猛と名乗った。

 

本郷猛と浦島空也…

 

二人の改造人間が運命に導かれて、出会うことになる。

 

 

 

 

 

 

第五話「疾走」

 

 

 

 

 

燃え盛る倉庫から気絶していたフォスター博士を救助した本郷と浦島は

互いにただの人間ではないことに気づいていた。

 

傷だらけの体だった浦島の体は、もう傷が塞がりかけている。

普通の人間なら大量出血で死んでいたが、浦島はソウルシードを植え付けられ、

体を戦闘用に改造された改造人間である。

もっとも本郷が現れなかったら確実にコウモリロイドに殺されていたのは間違いないだろう。

 

浦島も本郷が自ら名乗るように改造人間であることに疑問は持っていなかった。

目の前で自分を殺そうとしていた怪人を倒したのだから、自分と同じ「ヒトならざる者」であることに

間違いない上、この男の眼はけして嘘を言っている眼ではなかった。

 

強い決意を内に秘めた本郷の眼に

浦島は写真の中の父の眼に似ていることに気付いた。

 

何かを守るために戦う者の眼…..

 

しばらく続いたひと時の静寂は

N,Yの街に朝日が昇ると同時に終わりを告げる。

 

気絶していたフォスター博士は何とか意識を取り戻した。

傍にいた本郷の顔を見るやいなや

 

「君が緑川教授の弟子の本郷君だね

 緑川教授が亡くなってから、君も行方不明なっていたらしいが

 大丈夫だったかい?」

 

先ほどまで気絶していたとは思えないほどの饒舌で

本郷に話しかけた。

 

「博士…あなたも聞いたことはあると思いますが

 私はショッカーという世界征服をたくらむ組織に連れ去られて、改造人間にされました

 緑川教授は私を脳改造手術の前で逃がしてくれましたが、

 教授はショッカーの追っ手によって殺されました」

 

本郷は少し歯を食いしばり、悔やんでいるようにも見えた。

 

本郷の話を聞いて、フォスター博士も申し訳ない顔をしていたが、

浦島の何気ない一言が会話を動かすきっかけとなる。

 

「フォスター博士、あんたがコウモリロイドに奪われそうになっていた

 ライトチェイサーというのはどういうマシンなんだ?

 話を聞かせてもらっていたが、ライトチェイサーは今どこにあるんだ?」

 

コウモリロイドに命を狙われる原因となった「ライトチェイサー」と呼ばれるマシン…

そのマシンを狙ってコウモリロイドがフォスター博士を襲ったのは間違いなかった。

だが、博士はコウモリロイドの脅迫に屈せずライトチェイサーの在り処を隠したままであった。

 

「あのマシンはコストを度外視で、バイクとしての機動性と耐久性を極限まで高めた

 私の科学者人生最高傑作だからな。もし、やつらの手に渡ってしまったら

 奴らの組織が開発している『ヘルダイバー』とかいう戦闘バイクの基礎設計に使われてしまう。

 『ヘルダイバー』が量産されてしまったら、

 奴らは最強の機動兵器を量産して、我々人類に牙を向けてくるだろう。

 幸いライトチェイサーはボディを普通のバイクに偽装して、

 ある場所に隠してあるから、奴らに盗まれる心配はない」

 

フォスター博士は自分の開発したバイクを他人に渡したくないためか、

なかなかライトチェイサーの隠し場所を言わない。

そんな頑固さがあったからこそ、10年も研究ができたのだろうと浦島は内心思った。

 

本郷も浦島と同じことを感じたようで、フォスター博士の説得に入った。

 

「フォスター博士、あなたが開発したライトチェイサーは奴らの手に渡る前に破壊するべきです。

 そうしないと奴らはどんな手を使ってでも、ライトチェイサーを奪いに来るでしょう。

 奴らが俺の知っている組織と似ています。

 フォスター博士、どうかライトチェイサーの隠し場所を教えてください」

 

フォスター博士の心は揺らぐ。

ライトチェイサーをこのまま奴らに渡してしまったら、

人類に牙をむく連中に武器を送ってしまったことになる。それは何としても避けたい。

だが、科学者として自分の開発したマシンを世に送りだせないのは、とてもつらいものがある。

どちらを選んでもフォスター博士には利のない話だ。

ライトチェイサーは自分の手元からなくなるのだから。

 

「フォスター博士、あなたの一人息子と交換にライトチェイサーを渡すというのはどうですかぁ?」

 

声がしたその先には、妖艶な雰囲気の白人女性が立っていた。

 

その隣には、野球帽をかぶった男の子が気を失っている。

 

「マイク!なぜマイクがここにいる?マイクは兄貴のところに預けていたはずだぞ」

 

「この坊やがあなたに会いたがって、一人でN,Yに来たところをあなたのとこまで道案内したまでよ。

 素直をいい子だったわよ。パパに会いたい?って聞いたらついてきたのだもの」

 

その女は冷たい笑みをフォスター博士向ける。

 

「お前は一体何者だ!」

本郷がそう問うと女は答えた。

 

「私はコウモリロイドのメスよ。

 あなたに殺されたのは私のフィアンセ….

 でも、私のフィアンセに弱い男はいらないの…

 だから私は任務を続行するだけよ」

 

女はそう答えると人間から一瞬にして蝙蝠の姿に変えた。

女吸血鬼カミーラというのが吸血鬼伝説最初の小説だったと思うが

まさにコウモリロイドメスの姿はカミーラを現代風にアレンジした姿であった。

 

「太陽が出ているこの時間にあなたと戦っても私に勝ち目はないし、

 ここでマイク君を殺してしまっても意味がないわ…

 だからこういう取引はどうかしら?

 明日の深夜0時までにあなたたちはライトチェイサーを持って、自由の女神像まで来ること

 そしたら、あなたたちにマイクは返してやるわ。

 あなたたちが来ないのなら、マイクは最近N,Y流行の干からびた死体にしてしまうわよ」

 

「子供は関係ないだろう!!!」

 

そう怒りをあらわにしたのは浦島だった。

 

「この子には直接関係ないことだけど、

 お父さんが素直にライトチェイサーを渡してくれないからいけないのよ。

 お父さんが素直じゃないばかりに子供が犠牲になるなんてかわいそうな話ね」

 

子供が人質にとられている以上、迂闊な行動はできなかった。

浦島はその怒りをじっと堪えている。

 

「わかった。明日の深夜0時に自由の女神像までライトチェイサーを持っていけば

 マイクは助かるのだな。そうなのだな」

 

フォスター博士も子供を人質にとられてしまっていてはどうしようもなかった。

 

「では、明日の深夜0時までにライトチェイサーを持ってきてね。

 1秒でも過ぎたら、この子供の命はないわよ」

 

そういうとコウモリロイドは霧になって消えていった。

 

「博士、こうなった以上、俺がコウモリロイドにライトチェイサーを持って行きます。

 博士の身に何かあったらマイク君は悲しむでしょう。

 それにその怪我では移動もままならいはずです。

博士、ライトチェイサーの隠し場所を教えてください」

 

こうなってしまった以上、本郷に託すしかないので

フォスター博士は重い口を開けた。

「ライトチェイサーは私の実家の地下にある。場所はマンハッタンの125番地…

 アポロンシアターの近くだ。」

 

本郷は博士から簡単な地図を受けとり

サイクロン号にまたがった。

 

「本郷さん、俺も連れてってくれ。探し物なら人が多いほうがいいだろう?」 

 

浦島はそういってサイクロン号の前に立ちふさがった。

 

何が何でもついていく。

 

その心がサイクロン号の前に立つという行為に至らせたのだろう。

 

「わかった。後ろに乗れ」

 

本郷の了承を得て、浦島はサイクロン号の後ろに乗った。

 

「ここからだと遠いからな…飛ばすぞ」

 

そういって本郷はアクセルを吹かし、フォスター博士の下を離れた。

 

 

サイクロン号のスピードは浦島の予想以上に早かった。

何度も振り落とされそうになったが、浦島もライダーであったため

なんとかライダーとしての経験を駆使し、無事に目的地まで着くことができた。

 

この時すでに夜の七時を回り、あたりは暗くなっていた。

 

フォスター博士の家を見つけ

地下のライトチェイサーがある研究部屋に向かうと

そこには古めかしいネイキッドタイプのバイクがあった。

 

「これがライトチェイサーか…ライダーとしてじっくり乗ってみたいところだが

 今はそんな時間がないからな」

 

本郷はそういうと地下から地上に出るエレベーターのスイッチを押した

 

「本郷さん、あんたはなんで仮面ライダーとしてあんな奴らと戦っているんだ?

 あんたは奴らと戦うのが怖くはないのか?」

 

浦島が本郷に助けられてからずっと疑問に思っていたことを聞く。

 

なぜ、戦えるのか?

戦うことに恐怖はないのか?

 

この二つのことが浦島は気になってしょうがなかったからだ。

 

「俺が仮面ライダーとして戦う理由?

それは悪の組織に立ち向かう牙がない人たちの代わりに戦っているんだ。

 誰かが悪の組織にせいで涙が流すのなんて、これ以上見たくないからな。

 だから俺は怖くとも戦っていられるんだ」

 

本郷は浦島に語りかける。

 

浦島はその言葉を聞いて、こんな体になった自分でも

誰かの役に立つことができるんじゃないかと考えたが、

今の自分はあの姿になれない以上、本郷のように戦えず

コウモリロイドに成す術もなかった自分に苛立ちを感じていた。

 

「本郷さん、俺はあんたと同じように改造人となっちまったけど

 前の戦闘から体が言うこと聞いてくれないんだ。

 コウモリロイドに殺されそうになって、俺は怖くなってしまったんだ。

 こんな体から逃れられるなら、死んでもいいとまで考えていたのに

 死ぬ直前になって『死にたくない』なんて考えちまったんだ。

 俺はいま、怖くて逃げだしたくってしょうがないんだ」

 

浦島は普段のひょうひょうとした態度から一変して

今の自分の弱さを本郷に語った。

 

「浦島、人間だれもが死を恐れるのなんて当たり前じゃないか。

 俺たちはこの地球に生きる生物なのだから。

 ただ、人間という生き物は何かを守りたいという覚悟を決めたとき

 己の中のある恐怖心に打ち勝つことができるんだ。

 今のお前に守るものはあるのか?失いたくないものはあるのか?

 それらを守る覚悟をお前がしたとき、

 お前は俺と同じ仮面ライダーを名乗って戦うことができるはずだ」

 

本郷の言葉に浦島は希望を見出す。

 

――何かを守ると決めたとき、俺の中にある恐怖心に打ち勝ち

 俺も仮面ライダーとして戦うことができる――

 

 

浦島の中で今までのわがたまりがすべてなくなった。

 

自分の存在理由を得たのだから、その心は雨上がりの空のように清々しい。

 

地上に出ると、本郷が何かに気付いたようだ。

 

 

「この近くで何か嫌な予感がする….まさかこの辺りにコウモリロイドとは違う怪人が潜んでいるのか?」

 

本郷の予想は的中していた。

 

なぜならばこの近くではホームレスの失踪が相次いで起きており

間違いなく何者かの仕業だったからだ。

 

「本郷さん、あんたはそっちに行ってくれ

 俺はコウモリロイドからマイクを取り戻す」

 

浦島の言葉を聞き本郷はただ一言。

 

「任せたぞ」

 

とだけ言うと、怪しい気配がする方角に向かった。

この街の地図だとあっちは人がいない教会があったはずだ。

 

「さて、行きますか」

 

浦島はライトチェイサーにまたがり、そのエンジンをかける。

マシンの息吹が雄々しく響き渡る。

 

「行くぜ、ライトチェイサー!」

 

光の追撃者の名をかざしたそのマシンは

その姿を人類の叡智の結晶に姿を変えた。

 

銀色に輝くボディに赤いラインが入り

単眼のヘッドライトに光を灯し、自由の女神に向け走り出す。

 

二台のスーパーマシンはN,Yの闇を切り裂く牙となって、悪しき者たちのもとへ疾走する。

 

 

 




仮面ライダーになる決意をした浦島。
彼ははたして再び変身できるのか?

次回にご期待ください。
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