加速するマシンのスピード。
速度が増すごとに安定感は増していく。
それはまるでマシンと体が一つになったようだ。
父がいるあの子には、父のもとにいるべきだ。
そして父の姿をその目に焼け付けてほしい。
それが親子の正しい形だと思う。
だから俺は戦う。
仮面ライダーとして…
第六話「変身」
N.Yの街はいつもより騒がしかった。
何しろ二時間前に吸血鬼が現れたという事件があったからだ。
吸血鬼は幼女の血を吸い、警察に包囲されたが
FBI捜査官滝和也の命令無視の行動により、逃亡を許してしまった。
闇を照らす満月に雲がかかり、この街の夜は一層暗くなる。
それはまるで闇の住民が動き出す予兆だったのかもしれない…
23時55分
コウモリロイドは自由の女神像の台座の上でその翼を休めていた。
その隣にはフォスター博士の息子のマイクがいたが、意識を失っているようだった。
「あと五分…そろそろペトレスクが動き出す頃ねえ~
ショッカーの生き残りがどれだけ怪人を作ったのか知らないけど
仮面ライダーをこちらに向かわせることよって
N.Yに怪人を放ち、街を混乱させるこの作戦は成功したも同然…
この坊やもあと数分でお役御免ね」
耳元まで避けた口から鋭い牙を光らせる。
「子供の生き血は美味だからねぇ~
さっさと頂こうかしら」
気絶した子供の首元にコウモリロイドの鋭い牙が迫る。
その時、まばゆい光ともに一台のバイク猛スピードで突っ込んできた。
「ドォリャアアアアアアアアアア」
その叫びともにバイクに乗っていた男が身を投げ出し
台座に着地する。
「そこまでだ!コウモリロイド!!
子供を返してもらおうか!!!」
一瞬本郷猛かと誤認したコウモリロイドは
本郷ではなく浦島がきたと確認すると、すぐに余裕を取り戻した。
「てっきり仮面ライダーが来るものかと思ったら、
ちょっと予想が外れたみたいね...
あなたも改造されているみたいだけど、
ダニエルとの戦闘では変身もできずにやられていたじゃないの
そんな出来損ないを私によこしてきたなんて、私も弱く見られたみたいねぇ...
ちょっと腹が立ったわ...」
「約束通りライトチェイサーを持ってきたぞ
さあ、マイクを返してもらおうか!」
ライトチェイサーはオート操作によって台座の下に着地していた。
「ライトチェイサーを持ってきたようだし、交渉は成立よね
それじゃあこの子供を返そうかしら」
交渉は無事に成立したかのように見えた。
だが...
「気が変ったわ。この子は我々の生贄になってもらいましょう」
コウモリロイドはマイクの首元に噛みついた
見る見るうちにマイクの体から生気がなくなっていく
「その子をはなせぇぇ!!!!!」
浦島がタックルをし、マイクをコウモリロイドから離すことができた。
「おいしっかりしろ!」
浦島はマイクに呼びかけると
マイクは生気を失った唇をかすかに動かし
...た...す...け...て...
声にならない小さな声で浦島に助けを求めた。
「最後まで飲めなかったのは残念ねぇ…
まあ、久しぶりに生血を飲めたし満足したわ。
それじゃライトチェイサーは頂いていくわよ」
コウモリロイドはその翼を広げ、台座の下にあるライトチェイサーへ向かう。
「これで任務は完了ね」
ライトチェイサーに手をかけようとしたとき
後ろからすさまじいエネルギーが放出されているのを感じた。
振り向くと、そこにはマイクを抱えた浦島がこちらを睨んでいた。
「コウモリロイド....罪もない子供にこんなことをしたお前を
俺はけして許さない……]
浦島の腰部に二つの種が見える。
その二つの種は成長していき、二つの花が絡みあって一つの花となり
そしてそれはベルトのようなものに姿を変えていった。
「俺は…….貴様を許さん……」
浦島の体は無意識に空手の型のようなポーズをとり、「スイッチ」入れる。
多くの戦士たちが口にしてきたこの言葉ともに…
「変….身….!!」
すさまじい突風が浦島から放たれ、コウモリロイドが思わずたじろぐ。
そして風がやみ、コウモリロイドが目を開けるとそこには横たわるマイクしかいなかった。
辺りを見渡すがどこにも浦島の影はない。
「あの男からすさまじいエネルギーが放出されていたけど、まさか….」
コウモリロイドは後ろに気配を感じ振り向くと
そこには仮面をかぶった男が腕を組んで立っていた。
厚く鋼のような筋肉を守る装甲
鋭利になった触角
牙を覆うマフラー
そして真っ赤な眼….
そこにはバッタ怪人ではなく、
多くの闇を葬り去ってきた戦士たちに似た姿の男が腕を組んで立っていた。
「俺は…仮面ライダー!!」
浦島は自ら仮面ライダーを名乗った。
誇り高き戦士の名を高らかに
「仮面ライダーねぇ…なら話が早いわ
出来損ないは処分してあげる」
コウモリロイドは翼を広げ、仮面ライダーに襲い掛かる。
「隙だらけよ。仮面ライダー!!」
コウモリロイドが浦島の首元に噛みつこうと牙を光らせた。
血に飢えた牙が浦島の首元に達するまさにその時
「ライダー....パンチッッ!」
その拳は一撃でコウモリロイドの腹部を貫いた。
「ギャアアァァァァァァァァアアアア」
コウモリロイドは絶叫し、その場に倒れこんだ。
「一撃で仕留められなかったか....」
普段の落ち着きのない浦島はそこにはいなかった。
マイクを殺された怒りで本来の浦島とは違う性格が表れたのだ。
「まだ終わってないぞ....」
悶絶するコウモリロイドを掴み起こし、怒りの感情を載せた拳で殴りつけた。
何度も何度も力まかせに殴りつけられた
コウモリロイドは最低限の抵抗をするものの
圧倒的なパワーで殴る浦島の一方的な攻撃によって、次第に動かなくなっていった。
「死んだか....」
コウモリロイドの亡骸に背を向け
浦島はマイクの下に向かう。
マイクの体は冷たくなりかけていたが、かすかに息はあるようだった。
人を守るために戦ったその拳は
怒りにまかせて暴力を振るうだけの拳となっていた。
――本郷さん…俺、この子を助けられませんでした――
――俺は奴らと同じただの生物兵器です――
――もう、仮面ライダーを名乗れません――
――せめて....この子供を助けてください――
浦島は仮面の下で涙を流しながら叫ぶ。
「なら、その子供の命は助けてあげよう」
どこからか少年の声が聞こえた。
声がした方向に振り向くと
そこには白い学生服を着た黒髪の少年が宙に浮かんでいた。
「僕がその子を助けてあげるよ」
少年はポケットから『種』を出し
それをマイクに向かって投げた。
『種』はマイクの体内に入りこみ瞬時にマイクの体に『根』を張り、
体を『草体』の中に取り込んで『蕾』を出現させた。
「これは….まさか!!」
浦島はその『種』が自分の運命を変えた災いの種であったことに気が付いたが
時はすでに遅く、『蕾』は開きはじめ、その中からフェニックスのような怪人が現れた。
「その子供は死への恐怖から、フェニックスを生み出したようだね。
ほんの数秒で『花』咲かせてしまうなんて、生存本能が働いたみたいだ。
ただ、瀕死の子供では完全体なれないか」
白い学生服の少年は
まだ立つことができないフェニックスを隅々まで観察していき、
ポケットから出した手帳に結果をまとめているようだった。
「お前は一体何者だ!!
なぜ、お前がソウルシードを持っている?!
浦島は少年に対する怒りと
なぜ、あの少年がソウルシードを持っているのかという疑問の
板挟みになっていた。
「だってソウルシードは僕が生み出しているからね。
コードネームCの世界から来たようだけど、
あいつの生命反応は消えているようだから
君が倒したみたいだ。所詮あいつの『忠誠心』もそんなもんだったか。
あっ名前を名乗っていなかったね。
僕の名はZ≪ゼータ≫僕は『エデン』のトップ…つまり大首領さ」
白い服の少年は自らをZと名乗り、『エデン』という組織のトップであることを明かした。
突然の発言に浦島は信じられずにいた。
「僕は君らみたいに嘘をつかないよ。
信じるか、信じないかは君次第だけど」
Zは表情を崩さず淡々と話を続けた。
「僕は世界平和を成し遂げたいだけなんだ。
そこには地球の失われた自然が蘇り、人々は争いを止め
人類みんなが幸せに暮らせるんだ。
どうだい?素晴らしいだろ?
君も『エデン』に作る手伝いをしてくれないかい?
争いで人が死んでいく歴史はもうやめにしよう」
Zの話には確かに納得できるものがあった。
世界から争いがなくせるものならなくしたい…
だからといって人間にソウルシードを植え付け
怪物にする行為が許されるのか….
「これは人類の新たな進化だよ。
人類の歴史を0からやり直すために必要なんだ」
浦島の心がZの思想に傾きそうになったとき
た…す…け…て
マイクの声だった。
フェニックスからマイクの声で助けを求める声が聞こえたのだ。
浦島の迷いは断ち切られた。
「Z…お前の理想は確かにすばらしいが
そこに誰かの犠牲があってはいけない…
だから俺はお前の野望を砕く!!!」
浦島が完全に仲間になる気はないと判断したZは
「所詮君たち人間はいつだってそう。大和の時も同じことを言われたよ。
まったく愚かな動物だ。
ん….そろそろフェニックスが戦えそうかな」
Zはフェニックス方向へ視線を送った。
フェニックスは翼こそうまく使えないものの
その眼は完全に野獣の眼になっていた。
Zは何もない場所に手をかざすと、そこから扉を出てきた。
「では、君の相手はフェニックスシードに任せて
僕は次の世界の種まきに行かなければならないな。
またどこかの世界で会おう…LOST Number…」
「待てぇ!Z!!お前は大和と何か関係あるのか?!!」
浦島の言葉はZの耳元まで届かず、
Zは扉の中に消えていった。
やっと大和に関する手がかりを掴めたが、あと一歩のところで逃げられ落胆する浦島に
フェニックスシードが刀のように鋭い爪を立て襲ってきた。
不意を突かれた浦島はその刃のように鋭くとがった爪をもろに受けてしまう。
「クッッ!!油断してしまった」
フェニックスシードの攻撃を受け、思わず膝をつく浦島。
「クケェェェエェェ!!!」
フェニックスシードの雄叫びが夜のN.Yに響く。
「マイク相手でも戦うしかないのか?
万が一こいつを倒してしまったら、マイクの命はどうなるんだ?
俺は...マイクと戦うしかないのか?!!」
守るべき相手と戦うことになった浦島。
戦えばマイクをこの手で殺めてしまうかもしれない…
戦わずにいれば、マイクはその手で人を殺める怪物となるだろう…
決断が迫れる浦島….
一方で、オオコウモリ怪人を倒した本郷が
一陣の風となって自由の女神の下へと急ぐ…
戦闘の描写に迫力を出すのが、こんなに難しいことだったなんて
小説書くまで知りませんでした。
勉強しないといけませんね。