「...で、どういう訳が説明してもらえるかしら?この船は何なの。そしてあんた達の目的は一体何?」
いつの間にか和解していたみんなの元に集まった霊夢が口を開く。その言葉を口にした瞬間に星達の目付きが変わるのを霊夢達は感じた。その雰囲気からただ事ではないのだと理解するのは難しくなかった。
「それじゃあ私から説明します。今回の目的はそう、私達の恩人である聖白蓮を救出する事です」
星は口を開き一つ一つ話し始めた。
聖白蓮
その人物こそ星達の今回の最大の目的の人物であり、彼女達にとってまさに恩人とも言うべき人である。
聖白蓮とは元々僧侶をしており人間達から慕われていた。だが弟である命蓮の死を期に死に対して恐怖を覚え、寿命を延ばすために魔法に手を染めた。でもその魔力を維持する為には妖力が必要であった。その為聖は人間を助ける裏で妖怪を助けていた。だが次第に不当な迫害を受ける妖怪に本心から守らねば思うようになったのだ。星達もその時期に白蓮に救われて慕うようになったのだとか。
だがその事が人間にばれた途端に人間からは悪魔扱いされ魔界へと封印され、星達も船もろとも地底世界に封印されたのだ。
「...という感じですかね」
「成るほどね。大体理解出来たわ。道理で間欠泉の異変とほぼ同時期に空飛ぶ船が出てきたって訳か」
話を聞き終わった霊夢は納得したのと同時に再び考え込む。もしこの話が本当ならば今回の異変は白。つまり異変の首謀者を退治するという霊夢自身の仕事はないのだ。だから今回は何もせずに引き返すという考えが浮かんでいた。
「じゃあよ。私達も一緒に魔界に行ってその聖とかいう奴を復活させるってのはどうだ?」
「あ、それは名案ですね。流石魔理沙さんです」
霊夢とは真逆の考えを打ち出したのは魔理沙。更には早苗までもがその意見に賛成の声を挙げる。それには霊夢だけでなく星達もが驚きを隠せずにいた。
霊夢は一瞬訳を聞こうと考えたが止めた。どうせ魔理沙の事だ、同業者として是非会ってみたいんだぜとか言うに違いない。そう思い、黙ってる事にした。それに恐らく早苗も信仰を集めるのが目的だろう。霊夢はついため息を漏らしてしまう。
「なぁ。本当にいいのか?そりゃあんた達みたいに強い奴らが来てくれるとありがたいが。」
「ええ。構いませんよ。なんたって私達は幻想郷の異変解決者ですから」
「お前は違うだろ。ヨッシー」
結局いつものやりとりに展開していってしまった。そして霊夢も乗り気ではないが協力する事となった。
「でも折角手伝ってくれるって言ってくれる所悪いんだけど一つ問題があるのよね」
「問題?何なんですかそれは?」
「それはね、足りないのよ。飛倉の破片が」
飛倉の破片とは法力が込められた破片の事で聖を封印する時にも使われたのだ。その為復活させるにもその飛倉の破片が必要なのだが幻想郷中に散り散りになってしまったのだとか。
「それってこれですか?」
「そう。それそれ...え?」
一輪は呆気にとられる。ヨッシーがタマゴから取り出した物は間違いなく飛倉の破片だった。ヨッシーによるとここへ来る途中に見つけたそうだ。更に霊夢達も集めていたと言うのだからなおさら驚かされた。
だがこれだけあれば充分です、そう星が口にする。それならばすぐに向かおうという事になったのだが。
「ちょっと待ってもらっていいかしら?やることがあるわ」
そう一言言うと霊夢は聖蓮船の船頭を睨みつける。まるで何かの気配を感じたかのように。みんなは何も感じてはいないようだが霊夢にだけは分かっていた。さっきから誰かがこちらを見ている事に。だが睨み続けても何も起こらない事にしびれを切らした霊夢はそのナニかに陰陽玉をうち放った。だが何者かによって弾かれてしまう。
「やっぱり...あんたでしょ、あの変な物飛ばしているのは。」
「へぇ流石は博麗の巫女。よく私がいることが分かったね」
すると陰陽玉を防いだナニかの辺りが揺らぎ始めたかと思えばたちまち人の形に変化していった。その姿は黒のショートボブに黒地のワンピース、黒のニーソに背中からは鎌のような赤い右翼と矢印のような青い左翼がそれぞれ三枚生えた少女だった。
「私は封獣ぬえ。ムラサ達の脱出に便乗して地底から出てきた妖怪だよ。そこの巫女の言う通りあんた達のその破片に細工をしたのは私さ。...え、理由?そんなの簡単だよ。その方が面白いからにk「夢想封印!」ちょ、まっ」
ぬえが話しきる前に霊夢の夢想封印が発動。不意を突かれたが故に避けきれず直撃してしまう。その衝撃で辺りには煙が立ち込めている。煙が晴れるとピクピクと痙攣しながら倒れているぬえの姿が見えた。霊夢は相変わらず涼しい顔をしているが周りのみんなはあまりの出来事に空いた口が塞がらなかった。
負けた。というか一方的に退治されたぬえは霊夢のお札により動けなくされ、ヨッシーによって船内へと運ばれた。気がついたぬえはなんとか逃げようともがく。だが霊夢のお札の前では無意味だと悟ると大人しくなり、素直に訳を話した。自分はただ村紗達の邪魔がしたいだけだったと。
「だってさ、ムラサ達だけなんかしてて面白そうだったんだよ。だからつい出来心で。」
「はぁ、全くぬえは。いい?私達は聖を助ける為に行動しているんだ。しかもそれはぬえにとっても良いことなんだよ」
「ふ~ん、何で?」
村紗はまた一つため息をつくとぬえに説明を始める。ちなみに村紗とぬえは地底に封印されていた時から交流があったと一輪から聞いた霊夢達。四人はだからあの二人はあんなに仲がいいのかと理解する事が出来た。
「へえ~なるほどね。よく分かったよ。じゃあさ、私も行っていいかい?まあ何というか色々迷惑掛けたし、ムラサが行くっていうなら尚更だよ」
「本当かい!?いや~助かるよ。ありがとう」
ぬえの両手を村紗はガシッと握る。こうして未確認幻想飛行少女こと封獣ぬえも参戦する事となる。霊夢達や星達もぬえが参戦する事に反対はしない。
でも村紗に手を握られたぬえを少し妬ましそうに一輪が見ていたというのはまた別のお話。
「よーし。仲間も増えて飛倉の破片も見つかった事だし、それじゃあみんな行くぞー!」
「「オォーッ」」
キャプテン村紗のその名に相応しい号令が船に響きわたる。その声に反応し続いて声を上げたのは早苗にヨッシーだった。ハッハッハと腹を抱えて笑う魔理沙にぬえ。特に魔理沙はあの二人なら絶対反応するだろうと思っていたからより面白かったのだろう。
そんな事をやってる内に一行を乗せた船は目的の魔界へと差し掛かっていた。
「ここが魔界か。なんか初めて見たような凄い久しぶりのような」
「え!?霊夢さん達魔界に来たことあるんですか!?」
「何となく記憶にあるだけよ。そうよね魔理沙」
「へ!?い、いやそんな記憶は、わ、私にはないぜ」
魔界の話を振ると何故か突如動揺する魔理沙。霊夢はともかく他のみんなには理解出来なかったが深く突っ込まない事にする。
魔界
その名の通り悪魔や魔族、魔物が住んでいる。目に見える景色は混沌としており空気は最悪。来る者全てを不快にさせる。まさに魔の住まうに相応しい世界だ。とは言っても人間や妖怪が簡単に来れる場所ではないが。
船は真っ直ぐ進む。目的地は当然聖白蓮の封印されている場所だ。ちなみに船長である村紗は特に何もしてない。本人曰くこの船は自動操縦である為何もしなくてよいのだと。何とも便利な船だと関心する早苗。だがそんな和やかなムードは長くは続かなかった。
「ちょっとみんな、気を引き締めなさいよ。お客がやって来たわ」
霊夢の一言でみんなに緊張が走る。言われて気づいたが聖輦船の周りにはまさに悪魔とも呼ぶべき魔界の住民達が取り囲んでおり霊夢達を睨み付けている。その狙いは侵入者に対する報復。自分達の縄張りに土足で入り込まれた事に腹を立てたのだろう。状況としては最悪だ。
「私は聖の為になら命だって賭けられるんだ。だからこんな所で諦めないよ」
「それは私も同じよムラサ。姐さんを救う為ですもの、ここで引くわけにはいかないわ」
「私も聖を復活させたい気持ちは同じです。よって、ここは突破させてもらいましょう」
「まぁ私はご主人についていくだけだよ。それに戦闘中にまた宝塔を無くされると困るからね」
「あの~、確かに協力するとは言ったけど命賭けるとまでは...」
でもだからといってここで引くわけにはいかない。全ては大恩人である聖白蓮の為に。その覚悟があるからこそみんな命を賭ける事が出来るのだ。約一名を除いては。
「ハァ、なんか凄く面倒な事になってきたんだけど。まあいいや、さっさと終わらせようっと」
「へへへ、なんだか燃えてきたぜ。こうなりゃ久々に思いきり暴れてやるぜ」
「おっとこれは、守矢の力を知らしめるまたとないチャンス!ここは派手に行きますよ。見ていて下さい神奈子様、諏訪子様」
「悪魔って美味しいんでしょうか?是非食べてみたいですね」
考えてる事は違えど最終的にやることは同じ。こうして霊夢達と星達の共同チームによる魔界での決戦がついに幕を開ける。
最後まで読んでいただきありがとうございます。次回はどの編が投稿出来るか分かりませんが出来る限り早く投稿していきたいと思います。