空飛ぶ船、聖輦船一帯に響きわたる爆音。ここでは今激しい戦闘が繰り広げられていた。我が恩人を助けようと躍起になる妖怪達にその意思を組んで共闘する異変解決者達が、侵入者を排除すべく襲撃してきた魔族達と衝突。
戦況としてはほぼ互角。数で圧倒する魔族に対して霊夢達は連携プレーと長年の経験を生かして迎え撃つ。
「く、鬱陶しいわね」
「確かに数が多すぎるぜ」
流石の霊夢と魔理沙もこの数相手には苦戦を強いられていた。それは二人に限った事ではない。早苗やヨッシー、星や村紗達もまたその表情に余裕はなく現状維持が精一杯といった感じだ。
「くっそー、これでもくらえ「魔砲」ファイナルスパーク」
「私も行くわ「嵐符」仏罰の野分雲」
魔理沙は愛用しているマジックアイテム『ミニ八卦炉』から放たれる極太のレーザーを。一輪は相棒の大入道の雲山による拳の連打を。その威力は空中で構えていた魔族達を半数近く打ち落とす程。だが二人は今の一撃で体力を使いきったのかその場に倒れ込む。
「魔理沙!...全く、無茶しすぎよ。ゆっくり休みなさい、後は私が何とかするわ」
「そんな、一輪!」
「ちょっ今は危険だムラサ。...ハァ、しょうがないね」
ぬえがパチンッと指を鳴らす。すると村紗と一輪の姿が消えた。というより認知されなくなった。それはぬえの能力『正体を不明にする程度の能力』によって二人を正体不明にしたのだ。
魔理沙の元へは星の援護(主に宝塔を無くさないように監視)をしていたナズーリンが向かい介抱にかかる。
「すまないご主人。すぐに戻るからそれまで待っててくれ」
「大丈夫ですよナズーリン。私を信じて下さい。それに」
「私も援護します。星さん」
ナズーリンにそう伝えたのは毘沙門天の代理の寅丸星とスーパードラゴンのヨッシー。二人は互いに背中合わせで構える。その風貌はいつものほのぼのした二人ではない。『虎』と『龍』かつて最強と謳われた二匹を思い起こさせる殺気を放ち、構える。
それは一瞬だった。まず動いたのは星。目の前に来た魔族に対して槍を一突き。続いて左足による回し蹴り。とどめに宝塔によるレーザーで焼き尽くす。宝塔の力だけでなくその身体能力の高さはまさに『虎』。毘沙門天の代理の名は伊達じゃないのだ。
星の背後から新たな魔族が仕掛けるがその魔族もまた炎にて焼き尽くされる。だが魔族を焼いたのは星ではない。後ろに構えてたヨッシーだ。ヨッシーは星が動いたのとほぼ同時に飛翔。高速飛行によって他の魔族を撹乱させていた。そして星を狙った魔族にはそのままの速度で近づき、攻撃したのだ。
「なんて息の合いようなんだ。あそこまで接近戦に強いご主人も凄いがあの速度で敵を撹乱させるヨッシーも中々やるな」
「痛っ、へへ。ヨッシーも流石だぜ」
ナズーリンと介抱によって何とか起き上がれるようになった魔理沙は二人の連携に驚かされる。さっき会ったばかりの二人なのにここまで息が合うのは一種の才能か。はたまた只の偶然か。どちらにせよ、魔族達を圧倒していた。
「みなさん流石ですね。これは私も負けてられません。全力で行きます!」
聖輦船の中央へと向かったのは守矢神社の巫女の東風谷早苗だ。早苗は普段から使っているお祓い棒を天に掲げ、呪文を唱える。お祓い棒を中心に風が巻き起こる。その風は次第に聖輦船全体を包むほどまで拡大。
「「大奇跡」八坂の神風!」
風は全て早苗の霊力によって作られた弾幕へと変わり、辺りにいた魔族達を全て飲み込んでいく。その威力はまさに神の風。これこそ『奇跡を操る程度の能力』を持つ現人神、東風谷早苗の真の実力だ。
風が止む頃には魔族は殆どが戦闘不能となっていた。だがそれは早苗も同じでその場に倒れ込む。あれほどの力を一気に発動したのだからそれはしょうがない。
「ハァッハァッこれで終わったの?」
疲労困憊の霊夢が口を開く。霊夢もまた多くの魔族を倒す為にいつも以上に霊力を消費して戦っていた。それは途中で倒れた魔理沙の分まで戦うんだと決めていたからである。
今の所魔族は見当たらない。果たして勝ったのか、霊夢達には分からない。だが今は誰も襲ってこないのでみんな治療に専念出来た。その間にも聖輦船は前進し続ける。目的の人の元へと。
「へへ、それにしてもまさか霊夢が私の心配をしてくれるとはな」
「...別に。ただの気まぐれよ」
「いやいや、それにしては霊夢さんずいぶん必死に「うるさい!」は、はいっ」
「いや~一輪も無事でよかった。私はホッとしたよ」
「あ...ありがとう。その...心配してくれて」
「あの~助けたの私なんだけど」
「ヨッシーさんありがとうございます。援護をして下さって」
「いえいえ、こちらこそ星さんのお陰で助かりました」
「いや、本当ご主人と気が合う人が出来てよかったよ」
「んっふっふっ楽しそうだね」
「「「!?」」」
突如声がした。少なくともこの船にいるメンバーの声ではない。そもそもそんな変わった笑い方をする者などここにはいない。だとすれば魔族の者か、だが現れたのはみんなの予想を裏切るものだった。
「ボンジュ~ル、マドモアゼル達。そしてヨシヨシくん」
「あんた誰よ、一体何者?」
「ボクは『魅惑の道化師』ディメーン。以後お見知りおきを」
ディメーンと名乗った人物は軽く会釈する。その道化師のような容姿からはその他の魔族達とは明らかに異彩を放っていた。本人から感じられる気配もまた只者ではない事が分かる。
「...で、私達に何の用か知らないけど、もしかしてあんたも戦いに来たっていうの?」
「んっふっふっ残念ながら答えはノーさ。確かにボクは訳あって此処に住んでるけど、別に君達と事を交えるつもりはないよ。それに他の魔族達にはこれ以上攻撃しないように言っといたから安心しなよ」
怪しい笑みを浮かべるディメーン。戦いに来たのではないとすれば目的は何なのか。それに魔族が来ないように説得までしたのは何故か。霊夢達の疑問は尽きない。だがディメーンはそんな霊夢達の心を見透かしたかのように話を続ける。
「その顔はボクは何者かって言いたいんだね。教えてあげるよ。じゃあまずどうして君達の味方をするかって事なんだけど簡単だよ。ボクは少女に手を出すのは好きじゃないんだ。つまりレディファーストなのさ。」
「ふ~ん、でもなんか怪しいわね。表面だけ取り繕って裏ではとんでもない事を企んでいたりして」
「そんな事はないさ。それとボクは何者かって事だけど、まぁ一つ言えるとすればボクはキノコワールドからやって来たって事かな」
その一言にはみんな驚かずにはいられない。ディメーンの口振りからして自ら幻想郷に来たと考えられる。それにヨッシーはディメーンの事を知らなかった。本人もその名を聞いてもピンときてないようだ。でももしかしたらマリオは何か知ってるのか、霊夢はそんな事を考える。
「あのさ、話の途中で悪いんだけど。私達はある人を助けに来たんだ。出来るだけ早く行きたいからどいてくれるかい?」
「ん?これはこれはカワイイ船長さん。あ、別にいいよー。君達の目的はここに封印されているマドモアゼル白蓮を助ける事だろ?」
「な!?何であんたが知ってるのよ!?」
「それくらいボクでも分かるさ。雲使いのお嬢さん。まあ、そういう事ならこれにて失礼するよ。じゃあみんな、ボン・ボヤ~ジュ」
ディメーンは消えた。物の例えではなく本当に目の前からパッと。恐らく瞬間移動に似たものだろう。
だがその後はディメーンの言った通り魔族に襲撃される事はなく順調に航海していった。元々この船は自動操縦である為、目的地さえ決めておけば勝手に向かってくれる。そして遂に最終地へとたどり着いた。
ーーーーー
全員の目の前に聖白蓮はいた。
金髪に紫のグラデーションが入ったロングウェーブ、白黒のドレスに黒のブーツ姿。この人ぞまさに星達がずっと探し求めていた恩人、聖白蓮である。だがまぶたを重く閉じて全身には何重にも巻かれた鎖、そして大量のお札。白蓮はまるで死んだように眠っていた。
「ここで間違いありません。では始めましょうか。待ってて下さい。聖」
「待って、封印に関する事なら私の専門よ。だから私も手伝うわ」
「すみません、それは助かります」
霊夢はお祓い棒とお札を、星は宝塔とみんなで集めた飛倉の破片を取り出す。みんなが固唾を飲んで見守る中、霊夢と星はそれぞれ呪文を唱える。
飛倉の破片に宿っていた法力が徐々に力を放ち始める。宝塔もそれに伴って輝きを増していく。霊夢もまた霊力を使い星が封印を解けるようサポートする。
お札が一枚、また一枚と。鎖も同じように一本、また一本と外れていく。そしてピシッピシッと何かが軋む音まで聞こえてくる。確実に封印が解けているんだと実感できた。
まるで一枚の大きなガラスが一気に割れるような音が辺りに響く。その音にみんな思わず身構えてしまう。 だがその音は今回の異変の終わりを告げる音となった。
「ん?...あれ、体が」
「「「ひ、聖(姐さん)!!」」」
「あれ、みなさん。一体どうしたのですか?」
全ての封印が解け、凡そ千年振りに聖白蓮は自由の身となった。突然の事で何が起きたか理解出来ない白蓮。でも彼女の周りにはこの時を待っていた仲間達の姿が。それだけで白蓮は状況を理解した。
「みなさん。私の為に、本当にありがとうございます。えっと、そちらの方々は?」
「え?ああ。一回敵として戦ったんだけど、その後和解して聖の復活に協力してくれたんだ」
「そうだったんですか。それはそれは、うちの妖怪達がお世話になりました」
深々と頭を下げる聖。魔理沙達は照れくさそうに頭をかくが霊夢だけは平常心だ。早苗とヨッシーは半分浮かれ気分となっている。
「じゃあ聖も復活した事だし、とっとと帰ろう!」
「ハァ、やっと帰れる。本当今回は疲れたわ」
「まあいいじゃないか霊夢。同業者が増えたんだし」
「そりゃあんたわね」
船は魔界の外へと脱出するべく突き進む。出るまでの間に白蓮は様々な話をしてくれた。封印されていた頃に作った魔神経巻(エア巻物)の事。そして何よりみんなを驚かせたのはなんと妖怪の為の寺を創設するという物だった。それも今乗ってるこの聖輦船を使って。
「あ~、でも妖怪だらけの寺ってちょっとどうかと思いますよね。特に妖怪退治専門家である私からしたら」
「そういや妖怪って美味しいんでしょうか? もしお寺が建ったなら一匹くらい食べに行ってみるのもいいかもしれませんね」
「お、おい。お前らっ」
慌てているのは魔理沙。それもその筈早苗、ヨッシーの二人の後ろにただならぬ殺気が。
「少し反省が必要みたいですね。いざ、南無三!」
「「うわああああああああああ」」
こうして宝船の異変は幕を下ろしていった。だがこの異変がまた新たな異変を呼ぶことになるとはまだ誰も知らない。
「んっふっふっやっぱり幻想郷は少女が多いね。まあ別にどうでもいいけど。でもこれならまた、サイコーのショーが出来るね。さて、ボクも準備準備っと」
魔界から出ていく船をただ見つめるディメーン。そしてディメーンもまた魔界から姿を消した。
ここはとある海。
見渡す限りの大海原。吹き抜ける風からは潮の香りが感じられる。
だが幻想郷に海はない。つまりここは幻想郷以外のとある世界。
「あ~暇だな。ん?あれは、船長~遂に見えました。あの島です」
「おおっ本当か!?いや~半年振りだな。俺様達のナワバリ『トロピコアイランド』は」
ここにもまた一隻の船が。しかし、この船は何かがおかしい。そしてこの船に乗っていたのは。
今回の元ネタ
ディメーンはスーパーペーパーマリオのキャラクターです。詳しくはネタバレになるので追々説明していきます。