日が徐々に傾き始める申の刻(午後四時)神社の境内に絶叫が響き渡る。
それも無理はない、今それぞれの目の前にいるのは「地上いるはずのない者」「この世界にいない者」「飛行船の異変の元凶」あまりの衝撃に頭が追いついてこない。
目の前には霊夢や魔理沙に早苗。それに久しぶりに再会したヨッシーや初めて見る妖怪達。だがマリオを一番驚かせたのは何処かで見たような黄色と紫のコンビ、そうワリオとワルイージだ。
「な、何でアイツらがここに。まさかアイツらも幻想入りか!?」
「あ、マリオさんじゃないですか。いや~久しぶりですね。ん?何かマリオさんのところ人数が増えてるような」
「「何じゃこりゃーー!!」」
「あ...あの、え~と。...とりあえずみなさん、詳しくは宴会の時に話すって事で」
「一体何事だい早苗。帰って来たかと思えば随分騒がしいじゃないか」
「うわ~凄い人数だね。ってあれ?何であの妖怪がここに?」
神社の中から声がした、姿を現したのは守矢神社の二神。流石にこの騒動に気づかない訳がない。
みんなそれぞれ言いたいことはある、だがこのままでは上手く筈もない。ひとまずは宴会で、という事でそれぞれ準備に取り掛かり始めた。
「それではみなさんっ、異変解決を祝って乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
「乾杯」というその一言で開幕した宴会。今回のコンセプトは先程もあった通り異変解決祝いの宴会。でもそれはあくまで飛行船の異変の事である。
今回集まったメンバーはそうそうたる顔ぶれ。まずは飛行船の異変を解決した博麗霊夢ら主人公組四人。異変の当事者である魔法使いと、彼女を慕う妖怪ら計六人。 今回は早苗の提案により宴会に参加する形となった。
次にもう一つの異変を解決したマリオ達三人。それに共に行動してきたさとり、勇儀ら地底組八人。彼女らの目的は宴会ではなく守矢との対談。
そして純粋に宴会に参加しに来たのはワリオやチルノの仲よし?組に妹紅や慧音の人里組の計九人となっている。
これだけでも既に人数は三十人近くにのぼるのだが、今回の宴会はそれだけではない。新聞を読んで宴会へと参加を決め、現在神社へと向かっているレミリア・スカーレット率いる紅魔館組に八意永琳率いる永遠亭組。既に到着し、波乱を呼んでいる白玉楼のお嬢様と苦労人の庭師。更には宴会の記事を書いた張本人である射命丸文や勇儀と同じ鬼の伊吹萃香、他にも妖怪の山に住んでる妖怪や神様など本当に多くの者達(主に少女)が集まっている。
お酒も入り、ボルテージは既に最高潮。その中心にいるのはやはり異変を解決した博麗霊夢ら主人公組や異変の当事者である白蓮達。白蓮は仏教の戒律により酒は飲んでないが、それでも充分に宴会を楽しんでるように見える。それは星達も同じ。一方で霊夢は既に終えた異変話にに興味はないらしく、盛り上がる様子も見せずにただただ酒を飲み飯を食う。その霊夢とは対称的に魔理沙や早苗は悠々とその武勇伝を語る、酒も入ってる事もあり次から次に言葉が出る。
だがこちらでは霊夢達とはまた違った盛り上がりを見せていた。本来の目的であるマリオ達をキノコワールドに連れて帰る予定のワリオとワルイージ。その二人がルイージに詰め寄って話をしているのだ。
「何で帰らねぇんだよルイージっ。お前らが帰らねぇと俺様は金が貰えないんだぞ」
「本音そっちかよ!?まぁ、そ...そりゃあボクだって帰りたくないって言えば嘘になるけどさ、やっぱ冒険好きの兄さんには敵わないよ。それにここの生活も結構楽しいし」
「そーだぞワルイージ。ルイージはあたいのぶかなんだ、そうかんたんにかえすもんか」
「てかルイージ、お前いつからコイツの部下になったんだよ」
ワリオ達としては何が何でも連れて帰って報酬を貰いたいところだがそうはいかないようだ。それにルイージ達自身幻想郷を気に入っており、すぐに帰ろうという気になれない。そもそも何故ルイージを説得しているかと言うと、まずマリオは空気からして話しかけにくく、ヨッシーは既に『小さな百鬼夜行』こと伊吹萃香や『天衣無縫の亡霊』こと西行寺幽々子らとの飲み比べ勝負へと突入していたからだ。
またしても起こってしまった異変。酒をあたかも水のように飲みほしていくその姿はまさに怪物、いや悪魔のようだ。そしてまた幽々子の従者魂魄妖夢の断末魔が聞こえたのは言うまでもない。
「前回はおあずけだったけど今回は勝たせてもらうわ。うふふ、逃げるなら今のうちよ」
「いやいや幽々子さん、それはこちらの台詞です。私は相手が少女だからって手加減はしませんよ」
「へ~そりゃあ楽しみだね。是非とも全力で頼むよ(まさか勇儀まで来てるとはね、でも何でアイツこっちに来ないんだ?)」
萃香の言う通り勇儀はこの飲み比べには参加してなかった。それどころかマリオや覚妖怪達と何やら難しい顔をしている。だがおかしい、勇儀と言えば萃香に負けず劣らずの酒豪。ましてやこんな飲み比べに参加しない訳がない。気にはなるが今大事なのは宴会、鬼としてこの飲み比べに負ける訳にはいかない。萃香は再び酒を口へと運ぶ。
一方でこちらは宴会とはうって変わって緊迫した空気に包まれていた。ちょうど今到着した紅魔館組や永遠亭組もその状況を固唾を飲んで見守っている。その渦中にいるのは宴会の会場でもあるこの守矢神社の二神、八坂神奈子と洩矢諏訪子。対するはマリオに星熊勇儀、そして古明地さとり。他の地底メンバーは目的よりも宴会に目を奪われそちらに参加。
対談の議題は勿論核融合を手に入れた地獄烏『霊烏路空』について。だが両者とも譲る気配がまるでない。
「いや、だからな。これは全て幻想郷の事を思っての事なんだよ。幻想郷が独自の安定したエネルギーを確保する為のね」
「へぇ~じゃあなんで主のさとりに何も言わなかったんだい?お前さん達。お陰で私の友達は傷を負ったんだ。そこのところ分かってるのか?」
「ん~とね、あの地獄烏が地上で暴れたら止めるつもりだったんだよ。でもまさか暴走するなんてね~」
「『それに覚妖怪相手に交渉なんて出来る訳ない』ですか。まあそれは否定しませんが、勝手にペットに手を出すのはどうかと思いますよ」
「さとりの言う通りだ。お前らそれでも神様か?」
「ほぉ、人間の分際でよく言うじゃないか。とてもルイージと同じ兄弟とは思えないね」
「そりゃ悪かったな」
空気が重くなっているのが分かる、物理的にではなく精神的に。口調こそそのままではあるがその一言一言は並みの者なら立ちすくむ程の威圧。特に二神の威圧感は半端ではない。だが鬼の覇気も、そしてこの空気でも一歩も引かない人間の覚悟もまた全く劣ってはいなかった。
「それでですね、妖怪の為の寺を建てようと考えてまして。でも問題がお寺を建てる土地なのですが」
「成る程な、それにしても凄いじゃないか白蓮殿。な、妹紅もそう思うだろ?」
「うん、勿論だよ慧音」
あの空気から少し離れて。こちらでは気の合う者同士が話に花を咲かせていた、聖白蓮と上白沢慧音だ。人と妖怪が争う事なく過ごせる世界を作りたいという白蓮の思想に慧音が賛同。彼女もまた半人半獣である為、理解出来るところがあり、馬が合うのは当然だ。
その時だった。この空気を一変させる出来事が起きたのは。
それは一瞬の出来事。
何かが響いた、それは明らかに何かと何かがぶつかり合う音。だがそれ以上に響いたのはその衝撃。ビリビリと震える空気がその威力を物語っている。
「流石は鬼といったところか。恐ろしい力だな」
「へっ、心にもないことを」
「確かに人間にしてはやる方だね。これなら『遊ぶ』時は楽しめそうかな」
「よく言うぜ。こんなとんでもない力を出しておきながらよ」
その光景を目撃していた者達は言葉を失う。八坂神奈子と星熊勇儀の拳と拳、そして洩矢諏訪子の鉄の輪とマリオのハンマー、それぞれが交わっていた。これこそが音の正体、両者の意地と意地が衝突したのだ。共に対談していたさとりでさえもどうしようも出来ずにいた。
「え、ちょっ兄さん!?な、何やってるのさ」
「あわわわわ。か...神奈子様!?それに諏訪子様まで!?」
「おっやっぱり訳ありだったか、勇儀のヤツ」
だがこれ以上衝突は見られなかった。今の一撃だけで気がすんだのだろう、喧嘩どろこかむしろ笑っていた。これにはさとりも含めて周りはもう訳が分からない。ちなみに対談の結果、今の衝突でおあいこという事で妥協したのだとか。
その後はまるで何事もなかったのように酒を飲む両者。妥協したというのは嘘ではないようだ。
「でもまあお前には驚かされたよマリオ。まさか地底の妖怪を連れて乗り込んでくるとは大した男だよあんた。そうだ、よかったら守矢神社に住まないか?」
「いや遠慮しておくよ、あと乗り込んだじゃなくて話し合いに来たと言って欲しいな。それに友達が困ってたんだ、力を貸すのは当然だろ」
「うんうん、そういうところはルイージに似ているね。それにしてもあの覚妖怪に抵抗ないなんて相当な変わり者だね、心読まれて何ともないのかい?」
「別にそれくらい何ともないだろ。それに俺だけじゃなくて勇儀達も平気みたいだし、そんな事でああだこうだ言う奴の方がどうかしてるだろ」
「くっくっくっ、それには同感だな」
再び盃を口につけ酒を飲み込んでいく勇儀と神奈子。この二人もまた気が合ったのか会話が弾む。とても先程拳を交えた者同士とは思えない。また神奈子はマリオにも興味を持ったらしく守矢への勧誘を始めていた。本人は断ってるみたいだが。
「もうお開きですね、だいぶ人数も減ってきましたし。あ、すみませんルイージさん。後片付けまで手伝っていただいて」
「いや構わないよ兄さんが一騒動起こしちゃったんだしこれくらいは当然だよ」
散らかった一室を片付けているのは東風谷早苗とルイージ。大半の者達は酒がなくなるとさっさと帰ってしまったのだ、これで本当に少女なのかと疑問に思ってしまうがここは黙っておく。
一騒動と言えばあの三大酒豪が目に浮かぶが、本人達は今現在まるで死んだかのように倒れている、勿論妖夢もだ。前回と同様に保護者的存在の者達が止めに入ったのだが今回は意気投合した白蓮と慧音も参加。頭突きとお説教は相当効いたのだとか。
「マリオさん、今回は色々とありがとうございました。お陰で私も地上に行けましたし、お空の件も解決出来ました。思ったのですがやっぱり貴方は変わり者ですね」
「お前もかよ、まあ否定はしないが。お前らも地底でも元気でな」
「ああ、またいつでも遊びにこいよ、いい酒だしてやるからよ。それにまた一騎討ちやろうな」
神社の外にて握手を交わす勇儀とマリオ、勇儀達地底組もまた帰路に立っていた。見送りにはマリオだけでなく紅魔館組も来ていたのだ。発端は宴会中にレミリアの妹フランドール・スカーレットとさとりの妹古明地こいしが出会った事。そのまま気が合い、その姉達もまた主人同士意気投合。この出会いこそがあの『三組の集まり』に発展していくのはまた別の話。
二組に見送られながら地底組は帰宅。そのまま紅魔館組も屋敷へと戻る事に。レミリアからは人間にしては強そうだから是非一度屋敷に来るよう命令された。また一騎討ちさせられるのかと思いつつも、暇があったらなと軽く返しておく。
主人公組もそれぞれ解散となっていた。霊夢に至っては宴会のご馳走を詰めた袋を担いでいる。これだけあれば三日は持つのだとか、流石の魔理沙もこれには苦笑い。
白蓮は妖怪の為の寺建設に向けて本格的に動き出すことに。設立場所はナズーリンが、整地は洩矢諏訪子が担当する事で話がまとまった。更には慧音や妹紅も手伝いに行くそうだ。一方で神奈子は守矢の信仰が減るのではと警戒していた。
「さて、そろそろ俺達も帰るとするか。おーいルイージ、そっちはもう終わったか?」
「うん、ちょうど今ね。じゃあ早苗さん、今日はありがとう、とても楽しい宴会だったよ」
「そう言っていただけると嬉しいです。ではルイージさん、守矢の精神を忘れずに気をつけて帰って下さい!」
あはは、と苦笑いを浮かべるルイージ。なお倒れているヨッシーはマリオが担いでいる、叩き起こそうとしたが中々起きなかったので諦めて運ぶ事にしたのだ。
アイテムを使用して飛んで帰る事に。だが使おうとしたその瞬間、耳を塞ぎたくなるような大声が。
「「俺達を忘れるなーーっ!!」」
「「あっ...」」
マリオ兄弟の夜はまだ終わりそうにない。
今回は正直言って内容を無理矢理詰めすぎました。皆様すみません。
話によっては私のキリのいいところまで書こうと思って一話が長くなったり短くなったりする事があります。出来るだけ同じにしようと思ってますので皆様ご了承していただけると幸いです。