配管工+αの幻想冒険録   作:宮古ヨッシー

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それぞれの思惑

 月明かりが夜を照らす、時刻で例えるなら子の刻(午前零時)といったところか。人里の外れに建てられた一軒の民家からは何やら騒がしい声が聞こえてくる、男の声だ。それも四~五人程いると思われる。

 中では予想通り男達が言い争っていた。そのメンバーは守矢神社で先程まで行われていた宴会に参加していた者達、話の争点はやはりこの世界での事。

 

「...で、何でお前らは早く帰ろうとしないんだ。こっちじゃ行方不明って大騒ぎだぞ」

「確かに帰らないとまずいって事は分かってる。でもここの世界は面白いんだ。毎日新しい発見があるし、友達もたくさん増えた。悪いが今すぐに帰るってわけにはいかないんだ」

「何だとマリオ、それじゃ俺らは金が貰えないじゃないかっ。それにお前ピーチ姫はいいのかよ」

「ああピーチ姫にはすまないと思ってる。でもな、俺がここに残っている理由は何も己の好奇心だけじゃないんだ」

 

 マリオは全員に見えるように右手をかざす。一体何をするつもりなのか、四人は全く見当もつかない。

 その瞬間全身に伝わる熱気。一瞬にしてマリオの右手は紅蓮の炎に包まれる、それは弟のルイージでさえも感じた事のない程の力。それにいつもより澄んだ色をしており炎の質の高さが伺える。

 

「す...凄い」

「お前、一体いつのまにそんな力を...」

「俺はこの幻想郷で何人もの少女と闘ってきた、その経験が知らず知らずのうちに俺を強くしていたんだ」

 

 一歩間違えれば命を落としかねない戦闘を何度も繰り広げた、博麗霊夢や霧雨魔理沙のような特殊な人間から風見幽香や星熊勇儀のような大妖怪まで幅広く。それが結果としてマリオをここまで鍛え上げ、更には強力な炎まで扱えるようになったのだ。

 そんな日々を過ごしている中マリオはふと思った。この世界にはまだまだ敵わない相手が数多くいる、ならば幻想郷で自分を鍛えるのも悪くはないと。それは守るべき存在であるピーチ姫の為にもなる。

 

「確かにお前らしいと言えばお前らしいな。ん~、これ以上何を言っても帰る気はなさそうだな」

「そういう事ですよワルイージさん。マリオさんは一度決めたら中々曲げない人ですからね、まあ私も和食という新たな食文化に巡り会ったので満足するまで帰りませんけどね」

「お前も人の事言えないだろ」

 

 マリオの事を意外にもワリオはよく知っている。ワリオ自身が言える事ではないのだがマリオは頑固なところがあり一度決めた事は最後まで貫く、それこそがマリオの良いところでもあるのだが。その男気を認めてワリオは力を貸すともある。

 自分の意思を伝えたところで今度はワリオに問う、二人はこれからどうするつもりなのか。マリオは万一帰るという選択肢に備えて自分達が来るきっかけとなった張本人、八雲紫の名を出す。

 

「まあそういう訳でもうしばらくここにいるつもりだがお前らはどうするか?もし帰りたいのなら俺から八雲紫に相談してみるが」

「ガッハッハ、何言ってんだっ。俺様は腐っても冒険家、こんな面白そうな世界からそう簡単に帰るかってんだ。なぁワルイージ」

「勿論だワリオ。俺様もこの世界には興味があるからな」

「いや~流石ですねお二人さん、てっきり幻想郷で宝探しが目的かと」

「「ギクッ」」

「(図星かよ...)」

 

 理由はともあれこうしてワリオとワルイージも幻想郷に残ることを決意、これでキノコワールドからの訪問者は五人となった。

 ならば共にここに住まない?と提案したのはルイージ、二人は来てまだ間もないが故に住む家を持ってない。マリオ達の時は紫から空き屋を譲ってもらえたから何とかなったのだが。

 しかし二人の答えはノー。いくら何でもこいつらと同じ屋根の下に寝るなど彼らのプライドが許さない、というより何かしようとする時にマリオに止められるのではないかと警戒していた。正直言って今のマリオは強い、少なくとも二人がかりでも勝てるか分からない。だったらマリオ達とは別の家に住むのは当然だ。

 

「とにかく俺様達の事は気にするな。家くらい自分達で何とかできる」

「まあワリオがそう言うならいいけど、でも今夜は流石に泊まっていった方がいいよ。特に幻想郷の夜は危ないし」

「ああ、そうさせてもらうぜ」

 

 全員の今後がこうして決まった。ピーチ姫への報告についてだが、マリオが一度紫に会ってキノコ王国へ連絡できないか相談することを決めていた。ワリオ達まで行方不明と噂されれば流石にキノコ王国に不安が広がるからだ。

 夜も遅く本格的に眠気も襲ってきた。じゃあそろそろ寝るかと決めた矢先、あーっという大声が部屋に響き渡る。思わず耳をふさぐ男達、声の主は唯一人間でないヨッシー。ヨッシーは今思い出したのだ、魔界で会ったあの道化師の事を。

 

「スミマセン、急に大声を出してしまって。実は思い出した事がありまして」

「思い出した事?」

「はい。みなさん、ディメーンという方をご存じですか?」

 

 その瞬間マリオとルイージに戦慄が走る。『ディメーン』それはマリオ兄弟にとって忘れたくても忘れられない名前。

 

「おいっ、その名を何処で聞いた!」

「え!?えっとですね。霊夢さん達と魔界と呼ばれる場所に異変解決に向かった時に会いました。確か「ボンジュ~ル」とか言ってましたよ」

「間違いないな、アイツだ」

「で、でも兄さん。アイツはあの時ボク達が倒した筈じゃ...」

「おいおい、お前らどうしたんだ急に。そのカメーンとかいう奴は知り合いか?」

「ディメーンな(つーかカメーンってUSAの敵じゃねーか)。そういやみんなには話してなかったな、ハザマ世界での異変の事」

 

 

 

 

 マリオは静かに語り始めた。

 かつて世界が滅亡しかねない異変が起こった。それは『コントンのラブパワー』と呼ばれる暗黒の物質が世界を飲み込み消滅させるというもの。主犯はノワール伯爵、『黒のヨゲン書』という魔道書を使用した事が原因。ディメーンは当時ノワール伯爵の部下を務めている「魔法使い」だった。

 ノワール伯爵とは激戦の末、新たな仲間であった妖精(フェアリン)のアンナと恋人同士である事が判明。だがその時弱ったノワール伯爵からディメーンが『コントンのラブパワー』を強奪し、彼が世界を滅亡させようとしたのだ。

 

「つまりディメーンは自分が世界を滅亡させる為にわざとノワール伯爵に近づいたんだ。...話はこれで終わりだ」

「それにしてもまさか生きていたなんて、それも幻想郷に。もしかしてまた何か企んでいるのかな」

「そうだとしたらヤバイな...よし、その事も紫に伝えるとするか」

 

 全く今日は本当に忙しすぎる一日だった。異変をやっとの事で終えたかと思えば宴会でいろんなメンバーに会ったり一騒動起こしたり、挙げ句の果てにアイツまで幻想郷に存在していた。

 マリオとルイージはそんな現実から目をそらすかのように眠りについた。とは言っても騒がしい男達やドラゴンがそうはさせてくれず本当に眠りにつけたのはもう少し先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは命ある者が踏み入れる事のない地、冥界。

 奥地には一際目立つ大きな和風の屋敷、『白玉楼』が建っている。その屋敷の一室で行われていたのはこれまた対談。

 

「まさかマリオが地底の妖怪を率いてくるなんて考えもしなかったわ、それに守矢の神と一触即発だなんて、どこまで無謀なのよ彼」

「あらあら、でも彼を地底に派遣したのは貴女でしょう紫。貴女の事だからそれくらい予想していたかと思ったわ」

「まぁ地底の妖怪にも偏見は持たないだろうとは思ってたけど、これは流石に私の予想を超えてたわ」

 

 屋敷の一室で複雑な表情を浮かべているのは妖怪の賢者、八雲紫。彼女とお酒をたしなみながら話を聞いているのは古くからの親友でありこの冥界の主、西行寺幽々子。紫にとって幽々子は最も信頼できる人物の一人、自分の考えている事も計画も彼女になら打ち明けられる、二人はそれほどの仲だ。

 

「失礼します紫様、例の調査が終わりましたのでご報告に参りました。やはり紫様の仰った通り地底の異変の背景には守矢の二神が関わってました」

「そう、ごくろうさま藍」

 

 『九尾』にして八雲紫の式神の八雲藍は頭を下げる。彼女はこの異変の間、紫の命令により守矢を監視していた、そして紫の予想通り守矢が糸を引いていた事を突き止めたのだ。

 

「これからも守矢については監視していくつもりです。しかし紫様、マリオ達についてはこのまま放置していてよろしいのですか?本来地上と地底とでは不可侵条約を結んでいるにも関わらず彼は妖怪を地上に...」

「いいのよ藍、今すぐ何か異変を起こす訳ではないし。それに不可侵条約の事を伝えたり今地底の妖怪に罰を与えようものなら彼は絶対に黙ってはいないわ。私達は彼に不信感を持たれる事だけは避けたい、そう言ったわよね?」

「分かりました。では紫様、私はまた調査へと戻りますのでこれで失礼します」

 

 その場から藍が立ち去りここには再び紫と幽々子の二人だけとなった。幽々子は自室に待機させていた妖夢を呼ぶとお酒を追加するよう頼んだ。ハァ、とため息をつきつつも妖夢は台所へと足を運ぶ。

 

「確かに不可侵条約は伝えない方がいいわね、彼は特にそういうの嫌いそうだし」

「まあ現にマリオは私の事を信用しているみたいだし、すぐに嫌われる事もないでしょう」

 

 全てはあの計画の為に、紫はそう決めていた。それを実現するにはマリオ達の力が必要不可欠、今のうちから関係は出来るだけ良好にしておきたい。そうでなければいざという時に信頼されないからだ。

 それに今回の異変は何もマイナスな事だけはない。藍の話によると聖白蓮という僧侶が妖怪の為の寺を創設するのだとか、紫としては新勢力が良い刺激になるのではと予感している。

 

「そしてもう一つ、私の読み通り彼らは着実に力を付けてきている。特にマリオの成長には目を見張るものがあるわ。さて、これからも楽しみね幽々子」

「確かにそうね。初めて宴会で会ったときよりも遥かに強くなってたしまだまだ楽しませてくれそうね、紫」

 

 二人の大妖怪は運ばれてきた酒に再び舌鼓を打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こちらは幻想郷とは違う世界。

 大海原にポツンと浮かんだ一つの島、トロピコアイランド。大昔の大海賊の亡霊が財宝を守っているという伝説がある、この島は辿り着くまでに多くの船が沈没しており亡霊の仕業とされてきた。

 そんな無人島の奥深くには一つの巨大な洞窟が存在している。島の広範囲を占めているその洞窟は一度足を踏み入れれば抜け出すのは容易ではない。洞窟の最深部には今正に噂の亡霊が確かに存在していた。

 

「さて、どこへやったものか。以前航海する前に作っておいといた酒は...お、あれか?」

 

 例の亡霊の船長は海水の入り込んだ洞窟の奥地にて波にもまれた大きな樽を拾い上げる。樽の中には生前の知識を元に作られた酒が蓄えてある、部下達と宴の際に飲もうとこっそり準備していたのだ。

 

「しかし、これ程の旨い酒はぜひともアイツと飲みたいな。この俺にも臆する事なく立ち向かってきた俺の唯一認めた男、マリオよ」

 

 船長はまるで昨日の事のように思い出す。自分と対等に渡り合ったあの人間を、部下を除いて最も信用できるあの男との出会いを。

 

「そういえばアイツはキノコ王国とかいう国に住んでいるってバレルから聞いたな。今度一度行ってみるか、場所は分からねえけどな。ん、何だあれは...」

 

 彼の目の前にあったのは一つの渦、でもどこかがおかしい。渦は本来海面にできる筈なのだがソレは空中にあった。竜巻かとも思ったが洞窟内で発生するとは思えないし第一風の流れを感じられない。

 だがそれが何なのか確認する前に異変が起きた。体が渦に引き込まれていた。

 

「うおぉ~ん...いや違うな、これはどうなってんだーー!??」

 

 自分で自分にツッコミを入れながらその五メートルの巨体は呆気なく渦に吸い込まれてしまった。豪快でハイテンションでどこかおちゃらけたその姿はとても亡霊とは思えない。

 そんな『大海賊の亡霊』、コルテスはキノコワールドから姿を消した。




 今回の元ネタ
『カメーン』スーパーマリオUSAより今回は名前だけ出ました。トラウマの人もいる筈

『コルテス』ペーパーマリオRPGより、東方project風に言うなら5面ボス。

『バレル』同じくペーパーマリオRPGより、ボム兵族でありマリオの仲間の一人。
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