配管工+αの幻想冒険録   作:宮古ヨッシー

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 今回はワリオ編となっております。マリオ達は登場しません。


湖でのとある出来事

 紅の館より正面に佇む巨大な湖、通称霧の湖。

 そこは年中といっていいほど霧が立ち込めており、夏のような暑い日でさえも肌寒さを感じる事がある。

 館に住まう妖怪達は特別介入してくる事ないため、この湖は今もなお妖精達のすみかとなっている。

 

 それはいつもと変わりないとある日の午後の事。今ここでは妖精達が湖を賭けて対立が生じていた。一組は氷の妖精チルノ率いる通称『チルノチーム』。チルノは同じ妖精である大妖精を始め、友達である妖怪のルーミア、リグル、ミスティアが主なメンバーとなっている。更には先の幻想入りで知り合った人間のワリオとワルイージも今回はチルノ側で参戦している。

 対するはサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの三人で構成された通称『光の三月精』。彼女達もまたチルノや大妖精と同じ妖精である。普段は博麗神社の裏にある大木に住んでいるのだがどういう訳かこの湖に姿を現した。

 

「ふっふっふっ、さあどうだサニー。あたいの率いるさいきょーの軍団は。これではいくらお前達でも手も足も出ないだろう、今の内に謝れば許してやらなくもないぞ」

「あはは、私がそう簡単に謝るとでも思ったの? やっぱりお前は所詮⑨だねチルノ。まさかと思うけど数さえ上回っていれば私達に勝てるとでも思ってたの?」

「何おーっ、そう言うお前達だってたった三人で何が出来るってんだ」

 

 チルノに対して真っ向から言い返していくサニー。後ろに構えているスターとルナもまたチルノに睨みを利かせている。それはチルノ側の者達も同じ、突如湖を明け渡せと決闘を申し込んできた何処ぞの妖精相手に怯むわけにはいかないのだ。

 端から見れば妖精同士の小競り合い、変わり者(ロリコン)から見ても少女達がただ遊んでいるようにしか見えないだろう。ワリオとワルイージの目にも急に妖精達が言い合いを始めたとしか映ってない。それにまず何が起きているのか理解出来てない、その証拠に頭にはクエスチョンマークを浮かべている。

 

「おいチルノ。まずこの状況を詳しく説明してくれ、俺様達が久々にお前らに会えたかと思えば、急に変なガキ共がやって来て勝負だの決闘だのって」

「ちょっと待ておっさん、誰が変なガキだって? 見るからに悪そうな顔をしているお前らに変人扱いされたくないんだけど。それに何でチルノ達と一緒なのさ、もしかしてロリコン?」

「確かにまともな人間には見えないね、さっきから私達三人を変質者の目で見ているし」

「だったらサニーの力で見えなくすればいいよ、そうすればいくらあの変態でも」

「「ちょっと待てやーー!」」

 

 三月精にあることないことをズバズバと言われてしまい流石に頭にきた二人。ワリオは金、ワルイージは悪戯と二人にもそれぞれ好きな事がある。だが幼い少女には興味はないし、ましてやロリコンなどという枠には当てはまらない人物だ。まあ他にも問題は抱えているが。

 

「え、ワリオさん達ってそういう趣味があったの? もしかして私達と一緒にいるのにはそんな理由が...」

「誤解だ大妖精、俺様とワリオにはそんな趣味はねぇ。あの金好きワリオが子どもに興味があると思えるか?」

「何か引っ掛かるがまあそうだ。俺様が好きなのは金とニンニクだけだ。そんな事よりお前ら、さっきから聞いているんだが何なんだあいつらは、それに決闘がどうのって」

「そのまんまの意味だよ、この湖を賭けて勝負するんだよ」

 

 リグルの口からこれまでの経緯が話された。それは昨日の事。いつものように五人は集まって遊ぶ事になっていた。場所はこの湖、ところが五人集まった時にちょうどやって来たのが今の三人。どうやらこの三人も湖で遊ぶ約束をしていたらしくちょうど二組が鉢合わせになったのだ。するとチルノは自分達の湖が他の勢力に奪われてしまうと勘違い、サニーもチルノがこの湖を独り占めする気だと思い込んでしまった。結局そのまま言い合いとなってしまい、後日どちらが正しいか決闘する事になり今に至る。

 

「どう見てもただのガキの喧嘩じゃねーか!」

「違うわい、これはあたい達とあいつらの妖精としてのプライドを賭けた運命の決闘なのだ。だからワリオ、是非ともあたい達に力を貸してほしいんだ」

「んなこと言われてもな。てか俺様達は妖精じゃねえ。それに決闘つったって具体的に何をするつもりなんだよ? また弾幕ごっことやらでもやるのか」

「まあそんなところね、今回は少しルールが違うんだけど。さぁ、そろそろ始めようかサニー。こっちはあたいと大ちゃん、そしてワリオの三人が相手だ」

 

 自分の名前も含まれている事に開いた口が塞がらないワリオ。チルノがあくまで三対三で決闘したい事は分かった、だが何故自分が戦わなければならないのかは理解出来ない。ミスティアに助けを求めようとするものの、彼女達はワルイージも含めて横に避けていた。

 

「ワリオー、しっかりやれよー。俺様達はこっちで観戦でもしとくからよ」

「薄情者ーっ、何とかしてくれ!」

「チルノちゃん、大ちゃん、ついでにワリオさんも頑張ってー!」

「って俺様はついでかよ!?」

 

 選ばれなかったみんなはまるでスポーツ観戦にでも来た観客のごとく応援の体制に移っていた。観客?のボルテージも上昇してきたところで両軍がついに向かい合う。最初は抵抗していたワリオも勝てば賞金が手に入るというワルイージの嘘に騙されて、無駄にやる気を出している。

 

「負けても恨みっこなしだからね」

「分かってるさ、でも最後に勝つのはあたい達だ」

「それじゃあ...行くよ!」

 

 同時に動き出した二組。この戦いはただの湖の奪い合いではない。お互いの意地と意地、そしてなにより己のプライドを賭けた決闘がついに幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 今、目の前で繰り広げられている決闘にワリオは驚きを隠せなかった。てっきりいつものように互いに弾幕を張ったりかわしていく弾幕ごっこだと思っていた、でもそれは大きな間違い。飛び交うは弾幕ではなくカラフルな弾、いやインク、それに彼女達の手にはスペルカードではなく銃が握られていた。それは西部劇に登場しそうな機関銃ではなく、どちらかといえば水鉄砲のようなもの。ワリオもまたミスティアから決闘前に何かを手渡されていた。それは外の世界の主婦が掃除などに使うコロコロのような道具。

 

「おいワリオっ、何ボーッと突っ立っているんだ! 早く塗って面積をどんどん増やすんだよ。ちなみに今回のあたい達の作戦は『ガンガン行こうぜ』だよ」

「ワリオさん急いで下さい、この戦いは中央を取ることが重要なんです。スペシャルを貯めるのも大事かもしれませんが今は前線に行くべきです」

 

 そう彼女達の決闘とは、制限時間内に決められたフィールド内でエリアと呼ばれる縄張りの地面にインクを塗りたくって総面積を競うもの。それは俗に言う『ナワバリバトル』、お互いにインクの入った多種多様な武器を手に持ってナワバリを拡大していく。

 ワリオとワルイージが唖然としたまま中央では銃撃戦が繰り広げられていた。水風船のような物を投げまくるチルノに三角錐の爆発物で牽制する大妖精。だが三月精も負けてはいない。流石に「三月精」と呼ばれているだけあってコンビネーションは抜群。二人で弾幕を張って相手の進軍を阻止している間に一人はインクの回復、そして前線のどちらかと交替。相手に近づかせない見事な作戦だった。

 

 

 

 一方で観戦していたワルイージも意味が全く分からなかったが、この決闘に関しては一度だけ見たことがある。それはキノコワールドとは全く別の、軟体生物が主導権を握る世界での決闘のようなもの。キノコ王国との異世界間交流の一環としてそのバトルの様子が放送されていたのだ。

 

「おいっ、これってどう見てもアレじゃねーか! 何でお前らが知ってるんだよ!?」

「私にもよくは分からないんだけど、八雲紫さんが教えてくれたの。とても楽しいから是非みんなで遊んでねって。ご丁寧に武器まで渡してくれたんだよ」

 

 紫から貰ったと思われる武器を見せながらリグルは話す。リグルと同様にミスティアやルーミアも似たような武器を持っていた。話によると紫は主に妖精達に対してこの決闘を教えたのだとか。その目的はさっぱり分からないが。

 

「それにしても、本当に何なんだ八雲紫ってのは。会ったことないから何とも言えないがやっぱりとんでもない化け物なのか」

「う~ん、見た目は全然そんなことないけどね。でも何を考えてるのかよく分からないし、何処にいるのかもほとんどの人は知らないと思うよ。でも一つ言えるとすればとんでもなく強いって事かな。戦ってるのを見たことないから言いきれないけど」

「だったら尚更会いたくはないな。そもそも妖怪と関わる事自体俺様はゴメンだぜ」

「一応私達も妖怪なんだけどね、チルノちゃんや大ちゃんは違うけど...おっ、何かあっちは面白くなってきたみたいだね」

 

 みんなが再びエリアへと視線を戻す。先程よりもナワバリバトルが激しくなっていた、橙や青のインクが飛び交い地面を何度も染めていく。状況を今一つ飲み込めていなかったワリオも適応力を生かして既に決闘に慣れていた。加えて持ち前の怪力を使ったローラーさばきも中々のもの。始めは亀甲していたが次第にチルノチームが押し始めていた。

 

「流石あたいの認めた男だ。ローラーをここまで上手く使いこなすとはな」

「ふん、これくらい俺様にとっては朝飯前だ。それにしても驚いたぞ、まさかこれが幻想郷にまで流行っているとは」

「あたいも紫から聞いただけなんだけどね」

 

 

「ま、まずいよサニー。このままじゃ負けちゃうよ」

「分かってるよ、でもあのワリオとかいう男が思ったより厄介でさ。だってあのローラーを片手で振り回すんだよ」

「こうなったらボムで後退させるしか...!?」

 

 その瞬間、異様な気配を感じた。

 直感したのは『動く物の気配を探る程度の能力』を所有しているスターサファイア。この能力はその名の通り生けるものの気配を感じとる事が出来る。彼女が感じた気配は少なくともここにいる誰よりも強力な気配、いや殺気とも言うべきか。察知したスターはその気配の危険度に顔を青ざめ、武器を持つ手は震えている。

 

「どっ、どうしたの!? 何があったの!?」

「ヤバイよ、何かがこっちに来てる」

「え、ちょっ、一体何がそんなにヤバイのさ」

 

 スターのあまりの狼狽えぶりにサニーとルナも平静を保っていられずにいた。それどころかチルノやワリオ達でさえも流石におかしいと一時休戦して三月精の元に駆け寄る。確かにこの様子は普通じゃない、かなりヤバイ奴が来ているのだろうか。

 だがそれは一瞬の出来事だった、肌に直線感じる程の強大な殺気がその場にいた全員に伝わる。これには流石のワリオ達も身構えて戦闘体制に入る。チルノ達に至っては思わずワリオとワルイージの後ろに隠れてしまった。殺気は一直線にこちらに向かってきているのが嫌でも分かる、一歩、また一歩と。

 

「あらあら、随分と楽しそうね」

 

 殺気の主がついに目の前に現れた、それは一人の女性。お気に入りの白い日傘をさして、優雅に歩むその姿は妖艶の言葉がよく似合う。男二人には全く面識のない人物だったがチルノ達はその者を知っていた。太陽の畑と呼ばれる向日葵畑に住み、植物をこよなく愛する彼女についた名は『四季のフラワーマスター』。ここまではただの植物好きの大人のお姉さんくらいにしか思わないだろう、だがチルノ達が恐怖しているのはそこではない。彼女は幻想郷でも屈指の実力者であり、その強さを知らぬ者はいないほど。おまけにサディスティックな一面も持っている為になおたちが悪い。

 

「さ...さいきょーのあたいの勘が逃げるように言ってるよ」

「な、何なんだあの女は。どうみてもヤバイだろ」

「うふふふ、怖がらなくていいわよ。私が用があるのは貴女達女の子じゃないからね。私が用があるのは...」

 

 女性は歩む速度を徐々に速めてくる。これは何かがまずい、そう感じた全員だがまともに体が動かない。そのあまりの恐怖に腰を抜かしていたのだ。それはワリオとワルイージとて例外ではない、彼らもまた思うように体が動かなずにいた。

 

「少女達に近づいた貴方達二人よ! くたばりなさい、この変態!」

 

 畳まれた日傘をあたかも剣のように薙ぎ払った。その一撃は男二人を吹き飛ばすには充分すぎる程の威力。ワリオとワルイージは一切反応出来ずにそのまま直撃をくらい、メキメキという嫌な音を立てながら二人は吹き飛んでしまった。チルノ達が駆け寄るが既にピクピクと痙攣しながら二人共完全に意識を手放していた。

 

「さて、この男共をどうしてくれようかしら」

「ち、違うよ幽香! ワリオ達はあたいの友達だよ。悪い奴じゃないよ」

「そうだよ幽香さん! 確かに顔は悪いかもしれないけど結構いい人達だよ」

「へー、友達ねぇ...え!?」

 

 風見幽香、以前にマリオとの一騎討ちを行って互角以上の戦いを繰り広げた妖怪。彼女は今、何かを誤解してた事に気づいたが時既に遅かった。




 本編の投稿が遅くなってしまってすみませんでした。次回もいつになるかは未定ですが出来るだけ早く投稿したいと思ってます。
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