配管工+αの幻想冒険録   作:宮古ヨッシー

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神霊が静まる時

 神霊渦巻く空間。

 ここでは長き眠りより目覚めた豪族と異世界の英雄(ヒーロー)が今まさに激しい空中戦を繰り広げていた。飛び交う弾幕と弾幕、辺り一帯に響き渡る金属音、神子とマリオはそれぞれの武器である宝剣「七聖剣」と「ウルトラハンマー」を振るいながら互いに弾幕を展開し合っていた。宝剣とハンマー、二つが交わる度に伝わる衝撃がこの戦いの凄まじさを表している。

 

 一騎討ちはほぼ互角に見えた。だが近接戦では僅かにマリオが勝っていた、神子の顔には苦悶の表情が見てとれる。連続でハンマーを振るって攻めるマリオに対して神子はどちらかと言えば防戦に入っている。宝剣に伝わる衝撃も神子にとってはかなりの負担だった。

 

「中々やりますね。腕が痺れてきましたよ」

「そりゃ幻想郷でアホみたいに鍛えられてるからな。そらっ」

「っ、このままでは...」

 

 ゴールド状態となった今のマリオの猛攻は神子の想像を上回っていた、少なくとも近接戦では勝てないと思われる程に。そしてマリオの力を込めた一撃「ガツーンナグーリ」によって宝剣が弾かれた、勢い任せて飛ばされた宝剣はそのまま壁に突き刺さる。弾かれた時に一瞬のけ反った神子をマリオは見逃さず拳を一発打ち込む。

 

「ぐっ、カハッ」

「よし決まっ...てないか。よく今のを防いだな」

 

 殴られる寸前に杓を盾変わりにする事で何とか直撃を避ける事が出来た。それでも一撃は重くそのまま後方へと吹き飛ぶ。殴られた箇所を押さえつつも何とか立て直した神子に警戒を怠る事なくマリオは一度地面に着地。ハンマーに炎を灯して再び構える。

 

「さあ、どうするか? 出来ればこのまま降参してくれるとありがたいんだが」

「残念ながらそうはいきませんよ。まさかこれくらいで大人しく諦めるとでも?」

「まあそうだよな。どう考えても本気じゃなさそうだし」

「ここまで攻めといてよく言いますね。それにしても貴方も、当然のように飛ぶんですね」

 

 神子の言う通りマリオはゴールド状態以外にもアイテムを使用していた。それは赤いブロックに入っている翼の生えた帽子。それをかぶる事によって「はねマリオ」となって空を自由自在に飛び回る事が出来る。実はゴールドマリオに変身した時とほぼ同時に使用していたのだ。持ち前の身体能力だけでは不利と判断したマリオが一枚上手だった。

 

「ここでやってくには空中戦くらい覚えとかないとヤバイからな」

「成る程...では今度は私の番です!」

 

 神子が杓を掲げるとマリオの上空に光球の弾幕が展開されていく。その数えきれない程の弾幕はまるで星空とでも言うべきか。だがマリオには見とれている余裕などない、滞空していた弾幕がまるで流れ星のように降り注いできたからだ。「はねマリオ」で飛翔すると弾幕の間を縫うように潜り抜けていく。でもマリオが想像していたよりも弾幕は速度も密度もなく避けるのは難しくなかった。みるみる内に神子との距離を詰めていく、だが神子は余裕の笑みを崩してはいない。妙だと感じたがマリオは気にはせずにとどめと言わんばかりにゴールドファイアボールを右手に込める。

 

「ぐあっ!?」

 

 その瞬間、マリオの背中に痛みが走った。

 被弾したつもりはない、確かに全て避けていた筈だった。一体何が起きたのか理解出来なかったが、このままではマズイと判断してその場を離脱する。そのお陰でこれ以上被弾せずに済んだ。そして今いた場所に目を向けるとその原因が分かった。それはかわした筈の弾の一部が完全に落下せずに宙に留まっているから。それだけではない、留まった弾幕はマリオを追尾するのだ、恐らくそれに被弾したのだろう。今現在追尾してくる弾幕もハンマーで弾く事で何とか防いだ。

 

「くそっ、やられた。油断したつもりはなかったんだが」

「『星降る神霊廟』これが私の今一番の技。それでも被害を最小限に抑えて素早く離脱とは...流石ですね」 

「ふぅ、あれを何とか攻略しなきゃ勝てそうにはないな」

「ふふ、やれるものならやってみて下さい」 

 

 展開されていた弾幕の全ての動きが停止した。

 何をする気だと思っていたのもつかの間、停止した全ての弾幕が四方から一斉にマリオに向かってきた。これは避けきるのは不可能だ、そう感じたマリオはゴールドファイアボールで一気に打ち消していく。だが弾幕は次々と放たれてくる、神子の方も全力だと理解出来た。

 

「これじゃキリがないな」

 

 弾幕こそは防いでいるものの中々反撃に移れずにいた。一方で神子の方もまた今が精一杯であるが故に決定的な一打を打ち出せずにいる。これではお互いどちらかの体力が底を尽きるまで終わることはないだろう、だがマリオは持久戦で決着をつけるつもりはなかった。不本意とはいえ戦う事になった以上しっかりと決着をつけたかったからだ。

 マリオは弾幕を放つのを止めて両手を前に構える。当然弾幕が襲いかかってくるがマリオは被弾を覚悟した上で強力な一撃を放つ。

 

「これが最後だ」

 

『ゴールドファイナル 』

 これこそがマリオの放った最後の技。これは普段の巨大な火球を両手から放つ技『マリオファイナル』の強化版。いつもの紅蓮色の炎と違いこれは黄金色の炎。その出力はいつものマリオファイナルの威力を遥かに上回っていた。

だが神子も展開していた弾幕を全てマリオと炎に放って迎え撃つ。互いの技と技とが激しくぶつかり合ったその瞬間二人は爆発に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「惜しいところまで行ったんですけどね、ちょっと残念です」 

 

 仰向けに倒れながら神子は呟く。言葉には悔しさが滲み出ているものの表情は何処か満足げだった。向かいにはマリオが床に座りながらキノコを食べて体力回復を行っている。

 

「今回は運がよかっただけだ」

 

 この決闘の勝者はマリオ。

 最後の大技同士の衝突を制して勝利、この結果には神子も称賛を送った。だがもしあの時の判断が遅れていたら、もしあそこで勝負に出ていなければ、恐らく倒れていたのは俺だろうとマリオは感じていた。だがそれは神子も同じ、それだけ両者の実力は拮抗していたのだ。

 

 神子は約束通り布都と屠自古の誤解を解く事に協力すると言ってくれた。更には今回の目的であった神霊の調査も神子の復活に伴って集まっただけであって無害だと判明した。マリオとしてはそれだけで充分だった。

 

「これなら藍への報告も問題ないだろう。これで俺の任務も完了、つまり異変解決だ」

「そういえば元は神霊の調査が目的でしたね」

「まあ思ったよりも大仕事になっちまったがな。それよりお前もスーパーキノコ食うか? 体力を回復出来るぞ」

「...折角ですがお気持ちだけ貰っておきます。それに私は尸解仙ですので回復は早いですよ」

 

 苦笑いを浮かべながら仰向けに倒れていた神子はゆっくりと体を起こす、本人の言った通り目立った傷はもうなくなっていた。ちなみに尸解仙という言葉はマリオには全く分からなかったが神子が言うには仙人の一種だとの事、それもよく分からないがとりあえずはそれで理解しておく。

 

「ではそろそろ行きましょうか、みんなが心配ですし」

「ああ、そうだな」

「でも布都と屠自古なら負けてないと思うんですけどね」

「いやいや、ルイージとヨッシーだって簡単にやられたりしないぜ」

「...」

「...」

 

 このままではまた決闘が起こりかねない、そう感じた二人はこの話題を止めた。そして自分らの仲間の待つ外へと駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 目の前の現状に思わず目を疑った。

 まさかこんなことになっているなんて思いもよらなかったからだ。二人の予想としてはまだ戦闘中か相討ちになって両チーム動けない状態だとばかり考えていた。それがどうだ、まるで同級生と何気ない会話で盛り上がっている高校生の如く仲良くなってるではないか。これには二人も驚きを隠せない。

 すると屠自古とルイージがこちらに気づいたかと思えば二人一緒に駆け寄ってきた。

 

「兄さん、無事だったんだね。あ、もしかしてこの人が話していた太子様?」

「ああそうだ、この方が太子様こと豊聡耳神子様だ。...あ、すみません太子様、まさかこちらに来られるとは」

「おいルイージ、どういう事だこれは」

「屠自古、その様子ですと彼らと上手く和解したみたいですね」

 

 はい、と屠自古は答える。その表情からしても争う意識はないということがよく分かる。更に向こうでは布都とヨッシーが何やら談笑して盛り上がっているのが見てとれた。だが辺りの風景は穏やかではなかった、あちこちで焼け跡が残っていたりタマゴや皿の破片が散乱していたからだ。恐らくそれだけ激しい戦闘が行われていたのだろう、よく和解出来たものだ。

 

「しかし一体何がどうなってこうなったんだよ。俺がいた時はあんなに険悪ムードだったのによ」

「それがね、実は兄さんが先に行ってからは暫く四人で交戦していたんだ。でもその内にボクは屠自古さんと、ヨッシーは布都って子とそれぞれで一騎討ちになったんだ」

「私達は互いに雷を使用した文字通り激戦になってました。だが布都ときたらあのヨッシーって奴といつの間にか遊んでまして、最終的には互いに皿とタマゴを投げ合ってるだけでした」

 

 こっちが死闘を繰り広げているってのに、と屠自古はまたしてもため息をついてしまう。

 それでその二人を見ている内にルイージと屠自古もやる気が失せてしまい、とりあえず話し合ってみる事で何とか停戦した。ところが話している内にこちらも意気投合してしまい、今に至ったというのだ。お互い苦労が絶えない者同士何かと気が合うらしい。

 

「でも兄さん達は特に問題なく仲良くなれたみたいだね」

「いや、正直言って死ぬかと思ったぞ」

「大げさですよ、ちょっと力比べを行っただけです」

「起きたばかりなのにもう戦ったんですか!?」

「は、起きたばかり?」

「ええ、千四百年の眠りから覚めてまだ二、三日ですね」

「起きたばかりであの強さかよ」

 

 神子の底知れない強さに思わず身震いしてしまうマリオ。よくぞあの戦いから勝利を掴めたものだ、改めて自分の運の良さを感じた。

 今になってやっと残りの二人がこちらに気づいて駆け寄ってきた、二人とも仲よしになってるのは言うまでもない。これで今回の異変に関わった者達六人が集結、マリオ達の神霊異変は幕を下ろす事となった。何かを忘れている気もするがとりあえず気にしないでおく。

 

「さてと、俺達はこれから帰るつもりだがお前らはどうするんだ。ここに住むのか?」

「ここには住みませんよ、上には私達の復活を妨げたあの僧侶がいますからね。まあその事については考えがあるので大丈夫です」

 

 真っ暗な天を見上げながら呟く。実は聖達があの土地に命蓮寺を建立したことによって神子達の復活が阻害されて遅れたそうだ、マリオもそれなら仕方がないなとつい納得してしまう。だが神子には住みかよりも一つ気になっている事があった。それを自分らよりは幻想郷に詳しいマリオに聞いてみる。

 

「それよりもマリオ、私達は一応幻想郷の新参者なのでこの世界の人達に挨拶をしたいのですが...」

「う~ん、それなら博麗神社がいいな。そこには霊夢って巫女がいてな、色々教えてくれるぜ。実は俺達も最初はそこで幻想郷について教えてもらったんだ。よかったらこれから案内するぜ」

「いいんですか? ありがとうございます」

 

 こうして六人は博麗神社へ向かいながらまた会話に花を咲かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 博麗神社にて。

 いつもとは打って変わって張り詰めた空気に包まれていた。そこにいたのはこの神社の巫女にして異変解決の専門家博麗霊夢、魔法使いであり霊夢のよき理解者の霧雨魔理沙。更には紅魔館のメイド長十六夜咲夜、守谷神社の巫女である東風谷早苗までもがそこにいた。

 この四名を集めた人物は他でもない、妖怪の賢者と呼ばれているスキマ妖怪八雲紫である。彼女が今回集めたのにはとある訳があった、それはとある異変についてだ。

 

「...で、今まさに妖夢が戦ってるって訳ね」

「ええ、得体の知れない敵だから貴女達にも協力して欲しいのよ。それにこれは充分異変と呼べるわ」

 

 今話しているのは現在の白玉楼での事、妖夢が例の大海賊の亡霊コルテスとの戦闘についてだった。紫は妖夢一人では危険と判断した為に霊夢達に応援を頼んだのだ。

 

「事情はよく分かりました。でも一つ気になる事が、西行寺幽々子はどうしたのですか? あの人がいればわざわざ私達が行かなくても問題ないと思うのですが」

「それがちょうど別件で白玉楼にいないのよ。だから私が幽々子を呼びに言ってる間に貴女達は足止めを頼むわ」

「私は足止めだなんて生温いことはしないわ、異変だってんなら解決するまでよ」

「その通りです、それに妖夢さんがピンチとあらば助けない訳にはいきません」

 

 早苗の言葉に咲夜と魔理沙も頷く。これで四人全員が異変へと向かうことを決めた。もちろん目的は異変解決だが、一番は今まで共に戦ってきた仲間の為である。こうして幻想郷でも屈指の異変解決者達がついに動き出したのだ。一方で依頼をした紫はというとお気に入りの扇子を口元に当てて笑みを隠していた。




 今回の元ネタ
『ゴールドファイナル』この作品でのオリジナル。「マリオファイナル」の炎がゴールドマリオの炎となり威力がアップした技です。
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