「行くわよ」
まず動いたのはレミリア。瞬きの間に一気に距離を詰めていた、狙いはマリオ。先手必勝と言わんばかりの速攻から繰り出された拳はまさに弾丸の如き速さ。反射的に両手をクロスしてガードするが予想以上に重く、骨が軋むのが分かる。痛みに歯を食い縛りながらも腹に蹴りを一発入れる。レミリアは力に逆らわず後ろに飛び跳ねて衝撃を減らし、そのまま上空に飛翔。
「まさかあの速度についてくるとは、やるわねマリオ」
「くっ、あんな一撃決めといてよく言うぜ。見た目は俺より年下なのにこうも強いとは、流石は吸血鬼ってとこか?」
「フフッ年齢なら貴方の倍よ。あ、あと後ろに気をつけることね」
マリオは素早く振り向くとそこにはさとりが既にスペルを発動していた。『「想起」テリブルスーヴニール』これこそさとりのスペルカード。レーザーと大小様々な弾幕のコラボ。だが被弾する音は聞こえない、マリオは確実に被弾しない隙間に動きハンマーで相殺、さとりの弾幕を完全に見切っていた。
隙をついて一気に駆け出したマリオの狙いは勿論さとり、自分の間合いに詰めるとハンマーを一振り。
「ん?」
マリオのハンマーは空を切っていた。当のさとりは視界に映ってない。次の瞬間腹に痛みが走った。それはさとりの拳が腹にめり込んでいたのだ。マリオは右足の蹴りで反撃に移るがそれも空振り。さとりは涼しい表情のままマリオの前に立っている。
「くそ、何でこうも動きを読まれるんだ。ん、読まれる?...まさか」
「ええ、その通り。なんたって私は『覚』心を読む妖怪ですよ。貴方の行動は手に取るように分かるわ」
くっ、と顔を苦ませつつもマリオはハンマーではなく肉弾戦で挑む。右、左のパンチの応酬。蹴りや足払いの足技。一回転して拳をぶつける『スピンアタック』。しかし、さとりは依然として涼しい表情のまま、まるで舞うかのようにかわしつづける。
「何が戦闘は苦手だ。メチャクチャ強いじゃねえか」
「確かに私は戦闘が苦手です。でも弱いと言った覚えはありませんよ」
さとりの拳が打ち出される。マリオのように闇雲ではなく確実な一手での攻め。一々心を読まれる為に上手くかわしきれず何とか打開しようと策を練るが練るだけ無駄。全て読まれてしまい対策されてしまう。
「さて、そろそろ私も楽しませてもらおうかしら」
上空から見つめていたのはレミリア。その手には自身の何倍も大きな深紅の槍。『「神槍」スピア・ザ・グングニル』これこそレミリアのスペルカードであり彼女の武器の一つ。
二人まとめて仕留めるつもりで放つ。妖力の込められたその槍に貫けぬ物はない程の威力、まさに一撃必殺というべきか。
その思考を既に読んでいたさとりはマリオに蹴りを入れてその反動で後退。マリオも蹴りはハンマーで防ぎ、さとりと同じく反動で下がる。深紅の槍は二人が今正にいた場所に突き刺さり、地面がえぐられる。
「よく避けたわね。ま、そうこなきゃ面白くないんだけどね」
笑みを浮かべるレミリア。その笑みは無邪気に笑っている少女と何ら変わらないのだが、普通の少女とは明らかに格が違った。特に違うのはカリスマ。それこそが彼女の魅力であり、未来の大妖怪の姿を思い起こさせる。
「さて覚悟はいいかしら...さとり!」
レミリアが狙いを定めたのは覚妖怪の古明地さとり。マリオの時と同じく一瞬で距離を詰めるとあの弾丸のような一撃を放つ。が、その拳は空を切る。その瞬間やはりレミリアも腹に痛みが走る。さとりのカウンターが決まっていたのだ。だがレミリアの表情にはやはり笑みが見える。
「くっくっくっ流石はさとりね。まさか私の速度についてくるなんて見事な読みだわ。だけど所詮は覚、拳に重みがないわ」
「ええ、私も吸血鬼に力で勝てるとは思ってませんよ。でも力と勝敗は別物でしょ?」
「言ってくれるじゃない。ならばその自慢の読みで避けてみなさい、誇り高き吸血鬼の猛攻をね」
レミリアの左足による蹴り上げ。みぞおちに入れるつもりだったがこれもまたかわされる。だが気にはせず、そのまま息もつかぬ猛攻に展開。雨のように打ち付ける拳の応酬、拳だけでなく鋭さがうりの爪による引き裂き。更には高速飛行でさとりを翻弄するなど、吸血鬼の能力をフルに生かす。
初めは確実に避けていたさとり。だが次第に体に傷ができてくる、レミリアの攻撃が当たり始めていた。確かに相手の動きは分かる、何を考えていて次に何をするのかも。でも致命的な弱点があった。それはいくら読めてもそれに体が追いつかない事。さとりは心理戦などの精神的な戦闘には強いが本来肉弾戦は得意としない。ましてや相手は吸血鬼、力も速さも自分を遥かに上回っている。
「フフッどうしたのさとり。顔色が悪いわよ」
「くっ、やっぱりレミリアさんは強いですね、一撃が重すぎます。これはそろそろ本気を出す必要がありますね」
「それは楽しみね、是非見せてちょうだい。貴女の本気をね」
「それではいきますよ。眠りを覚ます恐怖の
その瞬間レミリアに激痛が走った。何かが刺さったのだろうか、だがこの痛みには覚えがある。
それは以前この幻想郷を乗っ取る為に引き起こした紅霧異変の頃、自分を退治しにやって来た博麗の巫女と一戦交えた時だ。彼女の戦闘手段である霊力の込められた『博麗アミュレット』や『封魔針』などの飛び道具には随分と苦しめられた。
この痛みはあの時と全く同じだ。現に自分の左腕に刺さっている針も霊夢が使っていたものと全く同じ物。でも何故さとりがこの技を、だがレミリアは 親友であるパチュリー・ノーレッジから聞いた事がある。幻想郷、つまり東洋には心を読む妖怪がおり稀に相手の記憶を読み取ってそれを再現する事が出来る者がいる事を、まさかさとりが。
「その通りですよレミリアさん。私は貴女の記憶を読んで、霊夢さんの技を再現しました。一度貴女を倒した事のある彼女の能力を」
「へぇ、考えたわね。でもそれくらいで私に勝てるとでも?」
「おいおい、俺を忘れてないかお前ら」
「「なっ!?」」
二人は驚きを隠せなかった。マリオがこちら向かって来る事ではない、マリオのその姿にだ。
パッと見た感じはそこまで変わってはいない、だがその黒いオーラと紅く光る目はいつものマリオとは明らかに違う。それだけではない、背中からはまるでコウモリのような翼が生えていた、その姿はまるで吸血鬼。
「一体どんなトリックを使ったっていうのよ」
「へへ、とあるアイテムのお陰でな、お前と渡り合うにはこれしかないと思ったんだ。まさか戦闘で使う事になるとは思わなかったけどな」
「成る程、コウモリになれるキャンディ『バサバサキャンディ』ですか。貴方の世界には不思議な道具があるものですね」
「流石さとり、お前には隠し事も通用しないな」
さとりの言う通りマリオが使用したのは様々な能力を手に入れられる特殊なキャンディ。その中の一つ『バサバサキャンディ』をマリオは今回使用したのだ。バサバサと呼ばれるコウモリのような生物の力を得る事ができ、あたかも吸血鬼のようになれる。本来はゲームで使う物であり戦闘に使う物ではないのだが。
「これで機動力は追い付いた筈だ。さぁどうするお前ら」
「くっくっくっ、こうなったらやる事は一つよ。一気に決着をつけてあげるわ」
「私も全力でいかせてもらいます」
そこから始まったのは三つどもえの戦闘。拳と拳のぶつかり合う音はもはや生物の出す音ではない、まるで爆発のようだ。弾幕の衝突もまた至るところに砂ぼこりを起こし、地面にも幾つものひびを入れる程。
一際大きな爆発音が周囲に響き渡り、三人が吹き飛ぶ。それぞれ体には幾つもの傷が目立っておりその戦闘の激しさが伺える。息も切れており足もおぼつかない、限界を迎えていた。だが逆に三人の力が増幅されていくのが分かる、おそらく最後の一撃を放つつもりなのだろう。
この騒動に駆けつけた館のメイド長や門番それに魔女や使い魔、そして全ての引き金となった妹(弟)達はただこの決闘を見守っていた。
「これで終わりよ「神槍」...」
「でしたら私も「想起」...」
「ハァハァ、やるしかねえか「奥義」」
「スピア・ザ・グングニル!!」
「夢想封印!!」
「マリオファイナル!!」
最後に大技を放った三人は仰向けに倒れたまま動かない、夜空に浮かんだ星々を見上げながら。傷は負っているもののその顔には笑みがこぼれていた。全てを出しきって満足したといったところか、その笑顔は無邪気に笑う子どものようだ(とは言っても全員子どもではないが)
傍観していた者達も駆けつける、勿論家族である妹(弟)達も。彼女達は魔法やアイテムを使用して怪我の治療を開始する。みんなに囲まれながら三人は互いに目を合わせる。
「くっくっくっ、やっぱり『遊ぶ』のは楽しいわね」
「私としては談笑の方も貴重な話が聞けてよかったのですが、この『遊び』もまた一興ですね」
「お前ら本当に少女かよ...まあ『遊び』に付き合うのも悪くはないが次は勘弁してくれよ。これじゃ身が持たねぇ」
「いいな~お姉ちゃん、みんなと遊べて。今度は私も誘ってよね」
「そうだよお姉さま。フランもみんなと遊びたいんだから仲間外れは嫌だよ」
(そもそもの原因ってボクたちにあったんじゃ...)
「くっくっくっ、じゃあ次は姉(兄)対妹(弟)の組み合わせでやってみる?」
「あら、それは面白そうですね。でしたら今からでも...」
「「いい加減にしてくれーーっ」」
これが紅魔館でのとある夜の集まりである。でもまだまだ夜は明けそうにない。
元ネタ
『バサバサキャンディ』マリオパーティ8より
ライバルからルーレットで決めただけのコインを奪うのが本来の能力です。
大変お待たせさせてスミマセン。もう三ヶ月も放置してました。さて、やっと外伝が一つ終わりました、いかがだったでしょうか。外伝はこんな風に面白いネタがあったり気が向いたら投稿していくつもりです。