スイートプリキュア 大怪獣総攻撃   作:サイレント・レイ

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第1話 追う者、解き放つ者

――― ????? ―――

 

 

 此の時、既に真夜中と言える時間帯にも関わらず、地元の人々すら基本的に寄付かない“魔境”の単語が完全に当てはまる場所の入口に大型バイクに跨がった女性がいた。

 此の女性、ヘルメットのフェイスカバーを上げて闇夜で全く見えない筈の山中を見ていた。

 

「…此の先ね。

見た処、このまま行けそうね」

 

 女性は地図を取り出してバイクのライトに当てて山道を確認した。

 そして地図をしまってカバーを下ろしたら、街灯何処か舗装の“ほ”も無い山道にバイクごと進入して行った。

 

「…チョット、待って!!」

 

…それと同時に女性を追い掛けて来たワゴン車がほぼ入れ違う形で到着したが、ワゴン車の面々は不気味な環境に加えて車が入れない事から全員が怖じ気付いて立ち止まっていた……

 数刻後、女性が入り込んだ山中の最深部に聳える愛乃山の山中に古い社が存在していた。

 否、此の社は苔と蔦に全体が覆われ、屋根が半ば腐れ落ちてしかも周囲が草や木が生え放題の状態を見たら、最早存在“していた(過去形)”と言うべきであった。

 此の為、此の社は本来は神聖なる場所にも関わらず、愛乃山ごと地元の人々からホラースポットとして恐れられていた……まぁ此の現状を見たらそう思われても仕方なかったが…

 だが此の場所に不思議な服装の少女が立っていた。

 此の少女、暫く社を見ていたが、不意にその社に入った。

 少女は社の壁に掛けられていた天女と思える女性の絵を手に触れて何回か撫でた。

 そして少女は絵から離れて社の奥に存在している“米”の様な紋章が刻まれている石柱に近付き腰に携えていた短剣を手に取って何にもためらう事無く突き刺した。

 石柱が短剣の刺さった場所から放射状に罅が入り……砕け散ったその時、先程の女性がバイクごと社に乗り込んで来た。

 

「…此所で何をしているの!?

こっちに向きなさい!」

 

 女性の問い掛けに何も答えなかったがバイクのヘッドライトに照らされた少女は指示に従って振り向いた。

 そして女性は少女の顔を確認して…

 

「…っ!! やっぱり貴女だったの!」

 

…女性の予想通りの人物であった。

 

「…貴女、桃園山に続いて此の愛乃山で何を……?…っ!?」

 

…少女に問い掛けていた途中で突然何かの鳴き声が聞こえたと思ったら愛乃山が大きく揺れた。

 

「~~…あ!!」

 

 此の揺れに女性が戸惑っている隙に少女は脇に走り出し……そのまま崖から飛び降りた。

 

「ま、待って!!」

 

 揺れが収まった事もあって女性もバイクから飛び降りて少女の後を追い、少女が飛び降りた崖の下を懐中電灯で照らした。

 

「……っ!?」

 

 すると照らした遥か先に少女が何事も無かったかの様に女性を見上げていたのだが……問題は少女が巨大な何かに乗っていたのだ!

 

「……ふっ」

 

 不意に女性へ微笑んだ少女は身体をバク転をしたら、巨大な何かが少女が身体を丸めるのとほぼ同時に身を起こして口の中に含むと直ぐに巨体を揺らしながら地中の中に潜って行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 数日後・加音町 ―――

 

 

 海上遊園地フェアリーパークの海没事故のニュースが流れてから数日後、海没事故の続報が流されない事もあって此所…西暦1779年の江戸時代に楽器職人・調辺音右衛門が開いたとされる日本最大の音楽の町・加音町は少なくとも平穏を取り戻していた。

 そして加音町は此の町最古のイベントの加音神楽祭の準備が執り行われていた。

 

「…よ―し、休憩!」

 

「……あ~~…」

 

「お疲れ、響」

 

 そして此の祭のメインイベントである神楽舞の練習を時計塔広場に設置された舞台でしていた響に奏が飲み物を差し出しながら労っていた。

 

「…随分しんどそうね」

 

 多くの運動部を助っ人として引っ張り凧になる位の運動神経と体力を持っている響が舞台から降りてグッタリと椅子に座っている姿に奏は少し驚いていた。

 因みに本来は西洋楽器が絶え間なく流れている加音町だが此の神楽祭の本場だけでなく練習と準備の期間だけは横笛や和太鼓等の日本楽器が響き渡っていた。

 

「…だって神楽舞って見た目に反して物凄くしんどいんだよ…」

 

 奏に愚痴を零す通り、神楽舞は凄まじく体力を消耗するだけでなく、響は本番と同じ条件…暑く動き辛い衣装を纏い、更に重い冠を載せていたのだから尚更であった。

 オマケに現在の真夏の晴天日で無風の状態がより響を苦しめていたのだ。

 まぁ、それ等の事を奏も察して、黙って響の愚痴を聞きながらタオルを煽ってあげていた。

 響が気持ち良さそうな表情であった事もあって何処か微笑ましい光景であった。

 

「お~い、響!

練習再開だよ!」

 

 だが直ぐに休憩時間が終わり、親友の西島和音が先に舞台に上がって響を呼んでいた。

 

「響、頑張ってね」

 

「おお!! 此所で決めなきゃ女が廃る!」

 

 休憩で息を吹き返した響は先に舞台の和音のいる所に意気揚々と向った。

 又、運動神経抜群である和音も響と同じ衣装を纏っており、和音は響と共に踊る予定だ。

 

「それじゃ、行って来るね」

 

「ええ、頑張ってね」

 

 完全回復して元気よく舞台に向って行った響を奏は手を振って見送った。

 響が舞台に上がって和音と配置に着いて身構えたら曲が流れると同時に踊り出した。

 暫く響と和音の指導を受けながらの神楽舞を奏は見ていたら…

 

「…あら、今年は北条さんと西島さんがやるのね」

 

「っ! 聖歌先輩!!」

 

…奏が所属するスイーツ部の部長である東山聖歌が彼女に近寄って声を掛けて来た。

 

「中々良い人選ね。

特に北条さんがやるとなら尚更ね」

 

「はい、ですが響は嫌がっていたんですが」

 

 加音町神楽舞はその踊り手は奏達が通う聖アリア学園の女子生徒から選ばれており、今回響が選ばれた理由は勿論運動神経が優れているだけでなく、彼女が母親のまりあはフランスを拠点に活動するヴァイオリニストで聖アリア学園の音楽教師を務め北条団は世界的有名な指揮者兼作曲家と音楽のサラブレッドである事もあった。

 実際に響はまだ荒削りだがピアニストとしての才能があり、正に踊り手に打って付けであった。

 だが此の事に当の響は幼少期のトラウマから音楽を嫌っていて(現在はかなり改善していたが)踊り手になる事を嫌がっていたが奏を初めとした人達の説得を受けて渋々承認したのだった。

 只、響が踊り手を引き受けた代わりに彼女の好物であるカップケーキをご馳走する為に奏は後日カップケーキを大量生産しなくてはいけなくなったが……その事に奏は殆ど日常的な事なので何も問題を感じていなかったが…

 話を戻して、少し不純な動機で神楽舞の踊り手になった響だが少なくとも奏が見ている限りではかなり上手く、それも和音をリードしながら踊っていた。

 

「…聖歌先輩、どう思います?」

 

 去年、此の神楽舞の踊り手の一人であった聖歌に奏は響達の出来具合を尋ねた。

 

「…中々良いわよ」

 

 聖歌の言葉に奏は安堵の息を吐いたが…

 

「だけど北条さんは兎も角、西島さんは少し動作が遅いわね。

それに時々ミスをしていますし」

 

…その次に手厳しいかったので表情が曇った。

 しかし実際に和音は聖歌の言葉通り僅かであったが響とのズレがあり、しまいには足が縺れてふらついた為に止められて響と一緒に注意を受けていた。

 

「……少し厳しいのでは?」

 

「そう思われても仕方ないけど、加音神楽は全国レベルで有名だから下手な事は許されないからね」

 

 聖歌が厳し目の評価なのも加音神楽は元々大和朝廷が執り行っていた古い歴史……と言うか古過ぎて何時出来たか分からない程のものが戦国時代の混乱から途絶えたのを音右衛門が時の天皇陛下と徳川将軍の許可の本に蘇らせた事もあって当日には日本全国から人が集まるのだ。

 しかも情勢によっては総理大臣何処か皇室や天皇陛下まで…勿論目の肥えた人達も多数訪れる為、文字通り下手にしたら日本中に大恥をかいてしまう事となる。

 だからこそ前年にその重圧を耐えきって神楽舞をやり切った聖歌はその事を知るから厳しく言うのだ。

 因みに音右衛門は加音神楽を復活させた後、此の神楽舞を参考にある事で有名(加音神楽とは別の意味で)な神楽舞を作り出していた。

…で話を戻して、聖歌の言葉に奏の表情が沈んでしまった。

 

「…でも心配しないで、北条さんは上手に出来ているわよ。

北条さんがしっかり西島さんを導いてくれれば上手くいく筈よ。

当日までに仕上げられる可能性は大いにあるわ」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ」

 

 実際に聖歌の言葉通り、今回の響と和音のは聖歌から見ても問題無く踊っていた。

 

「南野さん、西島さんには悪いけど貴女がやったらもっと良くなるんじゃない?」

 

「そうだと良かったのですが、私は全く出来ませんでしたから…」

 

 聖歌に言われる迄もなく、響に息が合う奏にも推薦があったのだが、残念ながら試しに神楽舞を奏にやらせてみたら奏が途中でバテてしまい、時間的にも奏の体力が改善不可能と判断した関係者達から失格を言い渡されてしまった。

 此に響は何とか覆そうとしたが、当の奏本人が辞退した上に此の事で響と奏が大喧嘩をした為に結果、代わりに和音が選ばれたのだ。

 

「…全く響も私の事も分かってよね。

それに奏太も奏太もよ…」

 

 喧嘩した事を思い出した奏が更に神楽舞が踊れなかった事(実は此の事を奏はかなり悔やんでいた)を先程神楽舞を覗きに来た彼女の弟の奏太に弄られた事もあってブツブツ文句を小声で言っていた。

 しかも笑顔で胸元で右拳を握って小刻みに震わせていたから怖さが出ていた為に周囲の人達が奏に思わず振り向いた後、彼女から距離を置いていた。

 因みに奏太はその後彼の同級生の少女・調辺アコと共に他の神楽祭の準備箇所を見に行っていたが、当のアコは余り乗り気では無さそうだったが…

 だがそんな奏を聖歌は微笑みながら見ていた。

 

「……っは! すみません、聖歌先輩!!」

 

「良いのよ…」

 

 我に帰った奏は直ぐに聖歌に謝り、当の聖歌は笑って許していた。

 

「……処で先輩は何をしに来たのですか?

その木箱も一体?」

 

 こう言う時、普段なら自作のお菓子を持って来る聖歌が古い……た処メロン位が丁度入りそうな木箱を持っていた為に奏が質問した。

 

「ああ、此。 北条さんが当日着ける予定の冠を持って来たのよ」

 

 奏が納得して頷き、二人共響と和音の神楽を見付けていた。

 だが木箱の中の物が不気味に点滅し出している事など知る訳がなかった。

 




 感想・御意見お待ちしています。

 モスラの布石を置いている通り、本作で対戦相手を一掃したのは此の後のスマイル編の後で前作で全滅したとした5gogoを復活させて“vsモスラ”を母体にした物をやる(かもしれない…)為にモスラを外したから連鎖的に起こったからです。

 只、リリカルなのは(ゴジラvsキングギドラ F・battle)を巻き込んでやる予定の“vsモスラ”は殆ど原作の原型を余りとどめていません。

 ですので“vsモスラ”の設定を分割して先行公開します。
 で第一弾は以下の通り










・時間軸はドキドキ!プリキュアが開始直後……覚醒した直後のキュアハートがキュアソード共々敵対する六人の闇のオリジナルプリキュア(バトルプリキュア)に殺される。
・開始直後にプリキュアオールスターズがそのオリプリ達によって壊滅し、スイプリがキングギドラ敗北後のリリカルなのはの世界(リリカル勢がどう関わるかはまだ未定)に落ち延びて来る事から作品が始まる予定。
 
・バトラとバトルプリキュアが所属する闇の勢力の名は神邪帝国・元首(ラスボス)はバガン(設定を変えたゴジラとモスラの幻の対戦相手)
・バトルプリキュア以外に敵幹部・干支を元にした十二将も登場
 
・モスラはプリキュア世界とリリカル世界に一頭づつ登場予定
・小美人はリリカル世界はコスモス族(ヒオ&マナ)、プリキュア世界はエリアス族(モル&ロラ)にする。
・エリアスの二人はココ達パートナー妖精達(もしかしたらくるみも…)の復活の手立てが無い場合5gogoの後任も兼任、姉ベルベラはバトラとバトルプリキュアのパートナー


 今回は此所まで、次回はバトラと行動を共にするバトルプリキュア達の情報です。
彼女達六人の発想元は“風林火山”です。
 出来ればコチラの意見や提案もお願いします。

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