モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

1 / 86
1話

僕、瀬尾 一輝(せお かずき)。10歳です。

 

突然ですが、事件です。

 

何時ものように孤児院で寝たはずなのに、気が付いたら診察台みたいなものに手脚を固定されていた。

 

首だけ動かして周りを見ると隣にも何人か同い年ぐらいの子が同じ状態でスタンバイしている。

 

なにこれ、集団誘拐?

ウチ貧乏だから身代金とか払えないよ?

 

他の子たちも状況が分からないみたいで、泣き出したりしているし。俺だって泣きたいんですが。

 

そんな事を考えていると、如何にも博士っぽいおじさんが白衣を着た大人を数人引き連れてやって来た。

他の子がどういう事なのか尋ねても無視され、全員になにかシールみたいな物を黙々と身体中にペタペタ貼っていく。

 

なにこれ、俺達改造されちゃうの!?

や、やめろショッ◯ー!

 

なんて叫ぼうとしてたら、隣の子が先に泣き叫び始めた。

大人達はそんな事を気にもとめず、手元の機械を弄った後にスイッチみたいな物を押す。

その子の身体が魚みたいにビクンビクンと跳ね出して、光ったかと思ったらすぐに光が消えてそのまま動かなくなってしまった。

 

ちょ、なんだあれ。

うぉ、おっさん達こっち来んな。

 

「さぁ、次は君の番だ。これに成功すれば、君は素晴らしい力を手に入れられるだろう」

 

いやんなもんいらないし。

なに言ってんだこの人。

 

「なに心配するな、痛みなどはない」

 

え、マジで?

 

「成功しようが失敗して死のうが、一瞬だからわからんよ」

 

ふぁっきん。

 

「多分だがね。さぁゆくぞ、死にたくなければ自分の中の力を目覚めさせろ、貴様の持つ《神器》(セイクリッド・ギア)をっ!! 」

 

せいく……なんだって?

てか多分なのかよ、ならせめて麻酔を……アンギャ〜!!

 

 

 

 

 

 

で、此処どこ?なんで周りがガレキだらけ?

ショッ◯ーの研究所はどこにいったの?

 

辺りを見渡しても先程までのいかにもな実験室は見当たらず、ガレキの山に自分一人がポツン。

だれかいい加減説明してよ。

しまいにゃ泣くぞ。

 

取り敢えず歩き出そうかと思って立ち上る。

その瞬間、視界が歪み頭に不快感が走る。

うぁ、なんか気持ち悪い。

あの機械のせいかな、痛かったし。

おのれおっさん、今度会ったら残りの髪を引き抜いてやる。

 

フラフラとした足取りで移動をする。

ヤバい、意識がはっきりしない。

脚は重いし、靴も履いてないから歩きにくい。

それなりに歩き続けていると、目の前に人が降ってきた。

 

なんだこの銀髪イケメン。

びっくりしたから脚がもつれてこけてしまった。おでこ超痛い。

 

痛みで悶えてたらイケメンが助け起こしてくれた。

多分いい人だよね、この人。助かった。

男に抱えられても嬉しくないけども。

でもいいや、ちょっともう限界だから後よろしく〜。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

……くそ、面倒な事してくれるぜコカビエルの奴め。

ようやっとサーゼクスと話し合い、和平についての段取りが出来始めてたってのに、こんなタイミングで問題起こすなよ。

 

【《神器》を持つ人間の子供に何処まで肉体的強化が行えるか。それに対しての《神器》への影響を調査。また、悪魔に対しても同様の肉体強化が可能かの実験】

 

最近あいつが連れてる変な連中とコソコソしてたのは聞いてたが、こんな事しやがるとは。

最近はヴァーリも怪しい行動が増えてきてやがるし……俺の周りはアホばっかりか。

 

取り敢えずバラキエルやヴァーリ達に命じて施設の制圧、んでもってコカビエルのバカと被験者の確保だ。

……ガキ共が生きてる可能性は低いだろうな。

くそ、胸糞悪ぃ。

 

 

 

 

 

 

アザゼルに命じられて現場までやってきたが、凄惨なものだな。

あちらこちらで瓦礫が崩れたり火の手が上がっている。

奴ら、足取り隠す為にこちらが施設内の奥深くまで侵入してから施設を爆破してきた。

そこらじゅう人間と悪魔の死体だらけだ。

 

ギリギリで回収できた被験者リストはあるが、照合に時間が掛かるだろうな。

取り敢えずひと通り目を通してみたが、実験は失敗だったようだ。

成功例ゼロと表記されていた。

 

コカビエルと戦闘(遊べる)かと思って来たのだが、空振りだったか。

まぁいい、とにかく行動だ。

この場は他の奴に任せ、望み薄ではあるが周辺の探索を開始する。

 

暫く探索すると、人影を見つける。

フラフラと今にも倒れそうな足取りで進んでいる、黒髪の子供。

あれはおそらく人間だろう。

保護するために目の前に降りると、俺を確認した後にそのまま前のめりに倒れる。

抱え起こしたが、既に気を失っている様だった。

 

額をぶつけたのか、皮膚が切れて血が流れているが目立った外傷はその程度だった。

……あの規模の爆発で吹き飛ばされたのに、この程度の怪我で済むのか?

そう考えている間にも、先程出来たばかりの筈の額の傷まで見て分かる程のスピードで塞がっていく。

 

なるほど、間違いない。

この少年は被験者で、居ないはずの成功例だ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。