山籠り合宿が始まって一週間。
リアス先輩と話し合った結果、俺はイッセーとの筋トレ担当になった。
最初は途中で潰れていたが、今では何とかこなしきっている。
俺はイッセーと一緒に筋トレしかしてないのでよくわからないが、みんなも順調に強くなっているそうだ。
しかし、日が経つにつれイッセーの元気が無くなってきている気がする。
他の訓練も必死にこなして頑張っているらしいし、明るく振る舞ってはいるのだが、何かを悩んでいるみたいだ。
夜中に、イッセーが部屋を出て行った。
少し話でも聞いてあげようかと探してみると、リビングでリアス先輩と一緒に、ゲームについて話し合っている。
どうやらあのヤンキー、かなりの強敵らしい。
火を使うって聞いたから、朱乃先輩に頼んで水ぶっかければ問題ないくらいに考えてた。
不死身ってマジか。
精神を潰すって……どうすんの?
あいつ女好きみたいだし、ゴリマッチョがみっちりいる空間に放り込めばいいかな?
……そんなん俺でも無理だわ。
しかし、イッセーは格好いいな。
自分を『グレモリー』ではなく、『リアス』として見てくれる人と一緒になりたい。
リアス先輩がそう言うと、しっかりと目を見ながら笑顔で答える。
「俺は部長の事、部長として好きですよ」
「難しい事はわからないですけど、俺はいつもの部長が一番ですっ!」
なかなか言えるもんじゃないよな、こんな台詞。
おぉ、リアス先輩の顔が真っ赤だ。
誤魔化してるけど、今更無理だろ。
というか、これは見ちゃいけないもんだよね。
帰って寝よう。
「あら、もう行ってしまいますの?」
うぉぅ!?
さっきまで誰も居なかったはずなのに、いつの間にか朱乃先輩が後ろでニコニコしている。
「朱乃先輩も覗いてたんですか?」
「ついさっきですけどね。カズキくんが廊下にいたので、何をしてるのかと思ったのですが……」
いい趣味してますね?
とでも言いたげな視線を感じる。
貴女も同類でしょうに。
「もう退散しますよ、邪魔しちゃ悪いですし」
まだ寝たりないから、少しボーッとしてるし。
「それにしても部長が羨ましいですわ。殿方に守ると宣言されるのって素敵だと思いません?」
「大丈夫ですよ、朱乃先輩は俺が守りますから」
バラキエルさんとの約束だしねぇ。
お休みなさいと言ってから部屋に戻った。
さっさと寝直そう。
なんか朱乃先輩の機嫌がいい。
ご飯を俺だけ大盛りにしてくれたり、肩を揉んでくれたり。
あれ?俺ってばまたなんか変なことした?
朝の訓練の前に、イッセーと木場が模擬戦闘を行なった。
イッセーは戦闘前に、2分の強化時間を貰って、神器《赤龍帝の籠手》(ブーステッド・ギア)の倍加能力を発動させてからのスタートだ。
結果は、イッセーが魔力弾? で、山を吹っ飛ばして終了。
イッセーの攻撃が当たりこそしなかったが、木場の攻撃も全て籠手で受け切っていた。
2分の強化でこれだけの事が出来るのだから、イッセーの神器はチートすぎる。
リアス先輩がイッセーを鼓舞している。
どうやら悩みの原因は、自分の力が信じられない事だったみたいだ。
正直、贅沢な悩みだと思う。
お前が悩むなら俺はどうなるのかと。
とにかく、これでイッセーも更にやる気を出してくれるだろう。
そんなこんなで合宿も終わり、今日はレーティングゲーム当日。
ゲームは異空間に作られた空間で行うそうだ。
よくわからないが、いくら壊しても問題ないって事だよね?
俺は人間だから、グレイフィアさんがみんなとは別でその空間に連れて行ってくれるそうだ。
その時に、リアス先輩のお兄さんに会ったので挨拶してきた。
サーゼクスさんと言うらしい。
リアス先輩と同じ紅い髪の青年。
腹立つくらいのイケメン。
しかも美人の奥さん持ち。
なるほど、敵だな。
喧嘩なんて売れないけど。
「イケメンな上に美人な奥さんがいるとか勝ち組ですね、羨ましいです」
握手の後に言うと、お兄さんはポカンとした後、何故か豪快に笑われてしまった。
また変な事言ったかな?
最近多いみたいだし、気を付けよう。
その後は無事にみんなと合流して、試合開始を待っている。
イヤホンみたいな通信機は貰ったし、それぞれの『本陣』の説明も受けて確認した。
これで準備は万全だ。
キンコンカンコーン。
チャイムが鳴り響く。
ゲーム開始の合図だ。
さて、始めさせて貰おう。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
俺、ライザー・フェニックスは自他共に認める程に女が好きだ。
今まで沢山の女を愛してきたし、今だってそうだ。
これからもそれは、ずっと変わらないだろう。
これから始めるレーティングゲームに勝利すれば、魔王を輩出した名門グレモリー家の娘である、リアス・グレモリーを嫁に迎える事が出来る。
名門の血統だけでなく、あの身体を好きにする事が出来るのだ。
男なら、今から堪らなくなると言うものだ。
対戦相手は、まだゲームもした事のない新米悪魔たち。
しかも助っ人は体術を少しばかり齧っているだけのただの人間。
負ける要素がない。
このゲームで警戒するのはリアスの《女王》ただ一人。
赤龍帝の小僧がどの位使い物になっているかは分からんが、大した脅威にはならんだろう。
既に試合開始の合図は終わった。
些か面倒ではあるが、少し遊んでやるとーーー。
「っ!? ライザー様っ! 敵が一名、本陣内に侵入!」
《僧侶》である美南風(みはえ)が状況をしらせてくる。
ほう、早いな。
《騎士》の小僧が単騎駆けでもしてきたか?
無謀な事だ。
「場所は、ここの真下です!」
何? 何故わざわざ……おい、まさか。
嫌な予感が走った後、それは現実のものになる。
俺たちの本陣の真下から、石柱が何本も突き出てきた。
それぞれが飛んで逃げたが、その攻撃で《兵士》であるニィとリィ、シュリヤーに《僧侶》の美南風が石柱に打ち付けられ、天井に衝突すると、そのまま光に包まれて消えていく。
『ライザー・フェニックスさまの《兵士》三名、《僧侶》一名、リタイア』
くそ、一瞬で四人も削られた!?
石柱が砕けて消えると、最下層には飛び入り参加したあの人間の姿が。
試合開始後すぐに襲撃!?
たかが人間の分際で、この俺様をコケにする気かっ!!
「あいつを殺せぇぇぇ!!」
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「さて、まずはライザーの《兵士》をどうにかしないと。全員が『プロモーション』したら厄介だわ」
ゲーム開始の合図はあったが、すぐには動き出したりはしない。
まずは作戦を考えないと。
イッセーの質問に答えながら祐斗に地図を用意してもらい、それぞれの本陣に印を付ける。
うん……やっぱり重要なのはこの体育館よね。
それぞれの陣地に隣接してるから、獲れれば牽制になる。
小猫と祐斗には森にトラップを仕掛けてきて貰って、森の周辺に霧と幻術をかけてもらいましょうか。
イッセーやアーシアには待機して貰って、カズキくんには……ってあら?
「ねぇ、カズキくんはどこに行ったの?」
朱乃が出て行く前に聞いてみたけど、三人とも知らないみたい。
トイレかしら?
もう、単独行動は危険なのに……
『ライザー・フェニックスさまの《兵士》三名、《僧侶》一名、リタイア』
え!?
もうリタイア!?
誰か、敵と鉢合わせてしまったの?
しかも倒した数が凄い、一気に四人も減ってくれた!
驚いていると、祐斗と小猫が走って帰ってきた。
「部長、新校舎の方から凄い破壊音がっ!」
「旧校舎の裏手には、人が通れそうな穴が空いてました。もしかしたら……」
……カズキくんなの?
一人で奇襲をかけに行って、一気に四人もの敵を倒してしまったというの?
……本当にトンデモないわね、彼。
「みんな! カズキくんが先陣を切ってくれた。きっと逃げる算段もあっての事でしょうから、この期に一気に攻めるわよ!」
きっと相手も動揺してるはず。
このチャンス、絶対にモノにしてみせる!
……まぁ、勝手に動いたオシオキは、ちゃんとするけどね?
カズキ「卑怯、汚いは弱者の戯言」
モグラさん「キュイ……」
カズキ「悪者みたいとか言わないで、俺だって弱いんだから」
主人公の能力とかプロフィールって乗っけた方がいいんですかね?