モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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さっき見たら日間ランキングで4位にいる。
なにこれ……怖い……。


11話

フハハハハ、奇襲成功!!

 

なるべく痛い思いをせず、相手の戦力をガッツリ削るにはこれが一番だ。

前回はムカついてたから真正面から戦ったけど、今回はそんな事はしない。

嫌らしく行かせてもらおう。

 

さっきのアナウンスによると、四人倒せた様だ。

ライザーが炎を纏いながらなにか叫ぶと、剣を担いだ奴が突っ込んできた。

この間の頭に布を巻いた人とは違うけど、装備的に《騎士》って奴かな。

結構なスピードが出ている。

 

相手にせずに、侵入した時の掘った穴に飛び込んでそのまま逃げる。

追ってきたらラッキーだけど……。

 

「バカめ、いくら逃げても無駄だ!!」

 

どう考えても、追ってきてる時点でお前が馬鹿なんだよなぁ。

走りながら、拳を何ヶ所か壁に叩きつける。

辺りが振動を始め、敵の前後の通路が崩して閉じ込める。

もう一度力を使って、トドメに相手の上部を崩壊させてあげよう。

 

「な、くそ! 貴様、ちゃんと向き合って戦わないか!!」

 

「やだよ、怪我したら痛いじゃん」

 

「貴様っ……きさまぁぁぁぁ!!」

 

俺の返事が気に入らなかったらしく、凄い形相で睨んだ後にそのまま土砂に埋もれてしまった。

君らと違って脆いんだから仕方ないじゃん。

傷はすぐに塞がっても、痛いものは痛いのだ。

 

『ライザー・フェニックスさまの《騎士》一名、リタイア』

 

よし、これで5人目だ。

えっと、全部で16人だから……うへ、まだ11人もいるのか。

 

さて、この穴を完璧に塞いだら、そろそろリアス先輩の所に戻るかね。

 

 

 

 

 

正座させられてます。

怖いです、美人の笑顔がとても怖いです。

 

「ありがとう、カズキくん。君が一気に5人も倒してくれたおかげで、だいぶ楽になったわ」

 

お礼を言いながら正座を強要って何?

言葉と行動が合ってないと思うの。

モグラさんは、先輩の後ろで困ってるアーシアちゃんの所に逃げた。

裏切り者ぉ……。

 

「でもね? 私、 敵陣特攻してなんて言ったかしら?」

 

「言ってないです……」

 

「今回は良かったけど、貴方はあくまで人間なのだから無理は絶対にしないで? 無線まで忘れていくし……もうやっちゃダメ、解った?」

 

「はい、反省してます……」

 

どうやら許してもらえたらしい。

受け取った無線を耳に嵌めて立ち上がる。

リアス先輩も俺の事を心配して言ってくれているのだし、素直に反省———わぷ。

 

「私のせいで巻き込まれてるのに、うるさく言ってごめんなさいね? 貴方の頑張り、絶対に無駄にしないわ」

 

うん……あれ?

何この柔らかいの。

頭も撫でられて……気持ちいい、じゃなくてっ!!

 

「うぉぁっ!?」

 

「あら、もういいの? 気持ち良さそうだったのに」

 

クスクス笑われている。

くそ、なんだこれ。

抱きしめられて、頭撫でられて。

こういうのはイッセーのキャラでしょう。

 

「違っ……うぅ、もう大丈夫ですからイジメないでください……」

 

「そう? なら体育館に行って、朱乃の助けになってあげて。どうにも相手の《女王》に苦戦してるみたい」

 

「全力で頑張らせて頂きます、はい」

 

素早く返事をして、アーシアちゃんに預けてたモグラさんを回収してから急いで部屋を出る。

モグラさんを手に装着して、体育館に走って向かった。

 

「ちくしょう! ホントに気持ちよかったのがまた悔しいぞ、ちくしょう!」

 

『無線、電源入ってるわよ?』

 

もういっそ殺して下さい。

 

 

 

 

 

 

俺が体育館に向けて走っている間に、相手の《兵士》を五名、《戦車》を一名。

誰かが仕留めたようだ。

これで相手は後5人だが、こちらも小猫ちゃんがやられてしまった。

あんまり深い傷じゃなければいいんだけど。

 

とにかくこれで6対5だ。

このまま朱乃先輩が戦っている《女王》を倒せば、此方がかなり有利になる筈だ。

 

 

 

走り続けていると、テニスコートの方から雷みたいな放電音が聞こえてくる。

そっちに移動したのか。

駆けつけて見ると、朱乃先輩が敵さんを地面に叩きつけていた。

どちらもボロボロ(服的な意味で)だが、朱乃先輩の方が押してるように見える。

 

これなら……あれ、なんか変だ。

あっちの紫の人がなんか飲んだら、急に元気になった?

 

うわっ、朱乃先輩が急に押され始めてる!

マズイ、助けなきゃっ!!

 

地面を叩いて、足場が盛り上がるのを反動にして2人の間に躍り出る。

朱乃先輩に迫っていた爆発は、身体をねじ込んで掌で防御!

モグラさんにはキツイが、頑張って貰うしかない!

 

「カズキくん!?」

 

「うぐぁ、超痛い……」

 

朱乃先輩が地面に降りて駆け寄ってくれる。

なんとか耐えたけど、モグラさんがマズイ。

かなり消耗してあまり持ちそうにないな。

 

「ちっ、邪魔が……あら? あなた、いきなり特攻してきた人間のボウヤじゃないの。今度は女王を助ける為にやって来たの? たいした忠犬ねぇ」

 

どちらかというと、犬じゃなくてモグラです。

 

「約束しましたから、この人を守るって」

 

バラキエルさんと。

 

さて、どうしよう。

ぶっちゃけ手の打ちようがない。

基本俺は近づいてきてくれない敵とは相性が悪い。

 

おまけにモグラさんはグロッキーで、あと何回か能力を発動したら消えそうだ。

 

「朱乃先輩、何か打開策とかあったりします?」

 

「……え? あぁはい、ちょっと難しいですわね。殆ど魔力を使ってしまいましたし、体力もそれほど残っていません」

 

少し顔が赤くなっているところを見ると、どうにも調子が悪そうだ。

……仕方ない。

 

「朱乃先輩は行って下さい。この人は、俺が相手しますから」

 

「でも一人では……」

 

「モグラさんがそろそろ限界なんです。俺単体だと役立たずですからね、あの人だけでも無力化しないと」

 

俺が立ち上がると、紫の人が、手に魔力を溜めて待ち構えている。

モグラさん、少し我慢してね?

 

「行くぞ、紫おばさん!」

 

「おばっ!? ……うふふ、ライザー様に処理して貰おうかと思ったけど、やっぱり私がやってあげるわっ!!」

 

地面を何度か叩いて、石柱を紫の人に伸ばしていく。

それは魔力の爆発で破壊されるけど、別に問題ない。

 

わざわざ挑発した甲斐があった。

随分派手にやってくれたので、土煙のお陰で簡単に接近できる。

 

「あら、ついやり過ぎちゃったわ。土煙であのガキが……!? 」

 

「セクハラしてゴメンなさい」

 

一応謝りながら、紫の人の正面から抱きつく。

 

「貴様、何を!?」

 

あんまやりたくないけど、行くぞオラァ!

 

両拳の宝玉に《凹》と浮かび、それを自分と相手に同時に打ち込む。

すると、地面がヒビ割れ、付近の土や石が俺達に向かって吸い付いてくる。

 

「く、ライザー様以外の男が私に触れるな!」

 

「俺も香水臭いの我慢してるんで、許して下さい」

 

すごい顔で睨まれた。

説得失敗。

 

なんて言ってる内に、既に紫の人ごとボール状になって身動きが取れなくなる。

準備は整った。

 

「こんな事をしても意味なんて!」

 

「ありますよ、こんだけ近けりゃさすがに魔法で無力化なんて出来ないでしょう?」

 

朱乃先輩は既に退避済み。

行くぞ!

小さい頃、イジメてくるアザゼルさんを泣かせたくて開発した、禁じられし技!!

 

 

 

 

『自爆』

 

 

 

 

 

はい、医務室行きでした。

同じ部屋には小猫ちゃんと木場。

そして朱乃先輩。

……守りきれなかったか。

目を覚ました俺を見て、三人は安堵してくれた。

モグラさんもスピスピ寝息を立てている。

よかった、モグラさんも平気そうだ。

 

あれ、アザゼルさんにもダメージ与えた事がある数少ない技なんだけど、危険だからってバラキエルさんとシェムハザさんに二度と使うなって禁止されたものなんです。

アザゼルさんも一緒に怒られてたけど。

 

俺のちんまい魔力を、引き寄せた石とかに纏わせて、モグラさんが爆発の力に変えて連鎖爆撃する代物だ。

身体が文字通りグシャグシャになるけど、今回は安全装置があるっていうから、何とかなると思って使ってしまった。

 

いや、そんな事はどうでもいい。

試合は?

 

……そっか。

こっちの、負けかぁ。

 

 

 

 

向こうの駒をイッセーと木場、朱乃先輩で削り取って、残りは《王》と《僧侶》だけ。

でも、油断した瞬間に朱乃先輩と木場がライザーの炎に焼かれて退場。

その後はイッセーが頑張ったけどジリ貧に。

リアス先輩が降参して終了、と。

 

イッセーは、治療したけど目を覚まさないので、アーシアちゃんが付き添って自宅で療養させる予定だそうだ。

 

「これから、どうなるんですかね? 」

 

「そうですわね……多分、数日後には婚約パーティーが催されるかと。私達は下僕として参加しないといけません」

 

人間であるカズキくんは、多分……。

朱乃先輩が途中で言葉を切るが、まぁわかってた。

悪魔のお偉いさんの祝いの場に、人間は呼べんよね。

 

しかし……リアス先輩に合わせる顔がないなぁ。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

瀬尾カズキくん。

 

私が彼をどう思っているのか、正直よくわかりません。

 

堕天使を打ちのめしているのを見て、ちょっと心が惹かれるものはありました。

S的な意味で。

 

彼はイッセーくんや他の男性に比べて、私をそういう視線で余り見てこないので新鮮だ。

ついからかって愉しんでしまう。

S的な意味で。

 

この間の合宿では『俺が守ります』なんて言われてしまって、不覚にも少しばかりときめいてしまったり。

 

今日のゲームでも、追い詰められた私を身体を張って助けてくれた。

 

『約束したから』

 

そう、彼は合宿の時の言葉を律儀に守ってくれたのです。

改造された影響なのか、傷はあり得ない速度で修復されていましたが、痛みは残るはずなのに……。

彼は不利を悟ると、私に引くように言って相手の《女王》を道連れに退場。

彼に対して申し訳ない気持ちもありましたが、心が暖かくなりました。

 

そしてイッセーくん達と協力して、回復した魔力で敵を一掃。

しかし、魔力を解放した隙を突かれてライザーにやられてしまった。

 

医務室で目を覚ますと、先にやられてしまった小猫ちゃんとカズキくん、そして祐斗くんがいました。

祐斗くんも一緒にやられてしまった様ですね。

カズキくんは傷が深い様で、まだ眠ったまま。

 

イッセーくんが頑張ってくれていますが、多分このゲームは私達の負けで終わってしまう。

私達下僕悪魔が不甲斐ないせいで、私たちの主人は……リアスは、望まない結婚を強いられてしまう。

自分の力の無さが嫌になる。

 

私は不意に、寝ているカズキくんに目を向けた。

私を庇って、傷付き倒れてしまった彼に、これ以上何かを背負わせるのは間違っているとは思う。

 

しかし、期待してしまう。

彼なら何とかしてくれるのでは、と。

 

早く起きて。

貴方と、話がしたい。




はい、サイ◯イマンアタックで主人公は散りました。
人間は脆いからね、仕方ないね。

主人公はどうするのか、待て次回。

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