13話
イッセーすげぇ。
『禁手』(バランス・ブレイク)だっけ?
イッセーが龍を模した全身鎧に身を包んで、ライザーをフルボッコ。
途中でピンチもあったけど、キッチリあのライザーを倒して問題解決。
リアス先輩の婚約も白紙に戻り、また日常が戻ってきた。
「だから、そろそろ許してもらえませんか?」
ここはリアス先輩の実家。
本来ならすぐに人間界に戻るはずだったが、とある事情により、1日こちらに厄介になる事になった。
そこでソファーに脚を組みながら座るリアス先輩と、その前で正座している俺。
そしてサーゼクスさん。
「リーア、私はまだ仕事が……」
「グレイフィアから、お兄様のお説教も頼まれているの」
その一言で黙って姿勢を正すサーゼクスさん。
どうやら魔王様の家は恐妻家の様だ。
「カズキくんには凄い感謝してるわ。わたしの無茶なお願いを聞いてゲームにも参加してくれて、倒れるまで戦ってくれた。貴方のアシストのお陰もあって、イッセーはライザーに見事勝利した」
じゃあ……!
「でもね? あの後私が何て言われたと思う?『リアス・グレモリーは変態を飼っている』、『リアス・グレモリーにはああいう趣味が?』……酷すぎるでしょう!?」
なんで私の趣味がBLになるのよ!?
リアス先輩は荒れている。
確かにそれは酷い。
原因の俺が言えたことじゃないが。
「リーア、少し落ち着くんだ。それについてはちゃんと皆様に説明して、解ってもらえたじゃないか」
「その原因を作った貴方がいうんですか!?
折角イッセーが私の為に来てくれて、颯爽と救い出してくれたのに!すっごい夢見心地だったのにっ!!」
それっきりサーゼクスさんは口を開かなかった。
喋らない方がいいと悟ったのだろう。
遅いな、俺は最初からそれに徹している。
怒られ慣れているからな。
その後もひたすらに怒られ、二人してひたすらに謝り倒して何とかお許しを貰う。
「じゃ、次は朱乃の番ね」
「え?」
「うふふ、大丈夫。痛いのは最初だけですから♪」
明らかに武器に分類されるような、立派な鞭を持ちながら現れた朱乃先輩。
その言葉がもう大丈夫じゃありません。
助けて魔王様……っていねぇ!?
一人で逃げやがった!
魔王は逃げられないんじゃなかったの!?
「お兄様はいいのよ。どうせグレイフィアから更にしこたま絞られるでしょうし」
ざまぁ。
「ほら、こっちに行きましょうねぇ〜。まだ小猫ちゃんの分もあるんですから、テキパキとイキましょう♪」
やべぇ。
小猫ちゃんからは一言『最低です』と言うお言葉を頂いた。
何故か一番辛かった。
リアス先輩がイッセーと一緒に住む様になり、機嫌が戻ってくれた。
ありがとうイッセー、今度なんか奢る。
イッセーと言えば、この間相談を受けた。
なんでも木場の様子がおかしいらしい。
心ここに在らずな感じで、ボーッとする事が増えているんだとか。
遅れて来た反抗期じゃね?
木場って真面目だし、ストレス溜まってるんだよ。
少しほっといてやればいいって。
モグラさんも最近様子がおかしい。
元気がないみたいで、あまり外に出てこなくなった。
以前は外に出たがって引っ込まない位だったのに、今はずっと俺の中で休んでいる。
アーシアちゃんと小猫ちゃんも心配してくれているし、どうしたものか。
「おい、瀬尾ってのはお前か?」
教室にいると、見慣れない男子生徒から声を掛けられる。
「ん? そうだけど……なんかよう?」
「生徒会からの呼び出しだ、放課後になったら生徒会室までこい」
言うだけ言って、返事も聞かずに立ち去る。
「カズキ、お前何かしたのか?」
「いや、まぁやったと言えばやったかも」
イッセーに言われて、思い当たりを探る。
あの時の説教位しか心当たりがない。
あれの続きか?
よし、逃げよう。
返事はしてないし。
「そっか、あんま無茶すんなよ。俺は球技大会の練習に行ってくるぜ!」
「昼休みにまで熱心だね」
今度学校で行われる球技大会。
オカルト研究部は、その中の部活対抗戦に意欲を燃やしている。
リアス先輩曰く、『やるからには勝つ』だそうだ。
俺もリザーバーとして誘われたが、友達と約束したと言って断った。
嘘だけどな!
本番だけならまだしも、練習なんぞしたくない。
この間のお礼に、イッセーにジュースでもやろうかと思い、オカ研を訪ねた。
ドアを開くと、なんか朱乃先輩といかがわしいプレイの真っ最中でした。
ジュースを部屋の床に置き、勢い良く開いたドアをゆっくりと締めて帰ってくる。
そういうのする時は、もう少し分からないようにしてほしい。
放課後になった。
俺は現在、生徒会室に拉致監禁されている。
すっぽかして逃げようと思ったら、副会長の真羅さん(自己紹介してくれた)に発見、連行されてしまった。
どうにも逃げるのがバレていたようだ。
「なんで呼び出しを無視して帰ろうとしたんですか?」
「行くとは言ってない」
「なんで呼び出しを無視して帰ろうとしたんですか?」
「返事を聞かないで帰った奴が悪い」
「なんで呼び出しを無視して帰ろうとしたんですか?」
「……この間の、お説教の続きをされるのが嫌だったからです」
怒り方が新しい。
何かこう、崖にジリジリ追い詰められる感じ。
つまり、チョー怖い。
あれ、よく考えたらいつも通りだ。
「そんな事しませんよ……今回はこの子の態度が悪かったみたいですし、此方の落ち度ですね。すみません。だから、そんなに怯えないでください」
奥でバツが悪そうに顔を背ける男子生徒。
お前も後で怒られるのか。
ざまぁ。
「先輩みたいな綺麗な人って、目力強くて迫力あるんですもん」
ホントに美人の怒りってタチが悪い。
ていうか、奥の男子が凄い眼でこっちを見てくる。
お前も反省しろよ。
「そういうの、誰にでも言ってるんですか?」
「え? 何がですか?」
お説教の話?
「はぁ……とにかく、今回はお願いがあって呼んだんですよ」
お願い?
悪魔である先輩のお願いって何さ。
むしろ貴方叶える側でしょう。
「つまり、忙しくて出れない生徒会メンバーの代わりにリザーバーとして参加しろ、と」
イッセーやそこの男子の様な、新米悪魔同士の交流を持たせたいそうだ。
「えぇ。貴方の身体能力の高さはリアスに聞いているし、お願いできないかしら?」
「嫌です」
ただでさえオカ研のみんなに嘘ついてサボってたのに、そんなことしたら年上組にコロコロされるっ!
「てめぇ! 会長がお願いしてるのに、その態度はなんだっ!」
そういうお前こそ頼む側のくせにその態度はなんだ。
何故そんなに突っかかってくるのか。
暇? 暇なの?
「出来る限り要望は叶えますから……ダメですか?」
「……笑わないでくださいよ? じゃあ」
(もしリアス先輩達に絡まれた時に、助けて下さい。割と命に関わってくるんです)
周りに聞かれるのもあれなので、会長さんの耳元で小声で囁く。
怖がってるのバレたら恥ずかしいし。
「くふっ……ふふふ、いいですよ、わかりました。では、お願いしますね?」
ひどい、笑われた。
「当日までは好きにしていて下さい。特に練習なんかもありませんから」
それから生徒会メンバーを紹介してくれた。
あの男子は匙元士郎というらしい。
名前は男らしいな、名前は。
やっぱり生徒会メンバーも全員悪魔だった。
やばいな、駒王学園。
完璧に悪魔に支配されてるじゃん。
「さて、では行きましょうか?」
「へ? 何処にですか?」
「決まってます、オカルト研究部にです」
帰ります。
「椿姫、彼を連れてきて。女性には手荒な真似しないみたいですし」
バレテーラ。
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ふぅ、今日の練習も疲れた。
最近は球技大会に向けての練習漬けだ。
部長はやる気満々で、絶対勝つといっている。
期待に応えるために、俺たちも昼休みだってがんばっている。
俺の左腕は、ライザーとの戦いでドラゴンの腕になってしまった。
俺の中のドラゴン、『赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)・ドライグ』の力を貸してもらうために払った代償。
そのおかげで部長が帰って来たんだから全く後悔はしていないが、流石にこのままでは日常生活に支障を来たす。
なので部長と朱乃さんに、俺の左腕のドラゴンの気を定期的に祓ってもらっている。
なんとその方法が、直接指からドラゴンの気を口で吸い出して貰うというモノなのだ!
俺の役得すぎる!!
昼休みの終わりに朱乃さんが気を吸いだしてくれていると、そこに突然カズキがやってきた。
カズキはこの光景を見ると、ゆっくりとドアを締めて帰っていった。
床にジュースが置いてあるので、差し入れのつもりだったようだ。
なんか勘違いされてないかな、あれ。
教室で説明しようとしても、カズキが話を聞いてくれない。
『お前らのプレイとか聞きたくないぞ』って、だからそんなんじゃないってば!
……楽しんでたのは事実だけど。
放課後になると、足早に帰ろうとして門の前で女の人に捕まってた。
たしか、生徒会の副会長の真羅椿姫先輩だ。
顔を知らなかったからか、カズキの奴あっさり連行されていったな。
でも、生徒会は悪い話なんて聞かないし、ほっといても大丈夫だよな。
今日も部室で集まっていると、突然来訪者が。
先頭のあの人は、支取 蒼那生徒会長!
生徒会のメンバーに……あれ?
なんで、カズキが一緒にいるんだ?
「あら、ソーナじゃない。どうしたの? カズキくんまで連れて」
彼、また何かやったの?
部長が怪訝な眼を向ける。
部長は最近、カズキの扱いが少しぞんざいだ。
まぁ理由を知ってるだけに、やんわりとしか庇ってやれない。
カズキがライザーを弱らせてくれたのは知ってるんだけどな。
部長も感謝はしてるから、そこまでひどい事をする訳でもないし。
精々お小言を言うくらいだ。
なんでも会長、と言うか生徒会メンバーはみんな悪魔だと言う。
会長の家系が、シトリー家という部長の実家と同じ位の名家なんだとか。
生徒会メンバーは、みんな会長の下僕悪魔だそうだ。
今回はお互い下僕悪魔が増えたから挨拶に来てくれたらしい。
匙っていういけ好かない奴だが、部長の命令だから少しは仲良くしてやるか。
しばらく世間話をした後に、会長から切り出してきた。
「今度の球技大会。私たち生徒会も、部活対抗戦に生徒会枠として出場することになったから。カズキくんも手伝ってくれるそうだし」
会長がカズキを見ながら言ってきた。
カズキは黙って立っているだけだ。
「あら? 私たちが誘ったら、友達に頼まれてるとか言ってなかったかしら?」
「えぇ、うちの匙がその友達なのよ」
本当か?
俺、あいつらが話してるの見たことないし、昼休みの時も誰とか言ってなかったっけ?
「覚悟しておくことね、リアス。優勝は私たちが頂くわ」
「私たちは負けないわ、それだけの練習はしてきたもの」
お互いに宣誓しあい、会長達は去っていった。
結局カズキは何も話さなかったな。
ってうぉ!?
「ふふふ……どうやって説明しようか必死に考えていたのに、そういう事するのね? いいわ、それなら徹底的にやって差し上げますから……」
こ、怖い!
朱乃さんからよくわからない波動が出ている!?
「ぶ、部長。朱乃さんが……」
「しっ!触れちゃダメ、今の朱乃はスイッチ入ってるから。とばっちりがこっちに来るわよ」
お互いを抱きしめながら震える俺と部長。
い、いったいどうなるんだ球技大会!?
お腹が痛くて病院に行ったら、『尿膜管遺残』なる北斗神拳の奥義みたいな病気かもと言われました。
そのまま紹介された大きな病院でCTを撮ったら、おへそに菌が入って化膿しただけで心配はないようです。
みなさんも、身体にお気を付け下さい。