モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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ひっそりと連続投稿


14話

面倒な事になった。

球技大会に出るのはいい。

頼まれた以上はしっかりやる。

 

久々に、アザゼルさんから連絡が来た。

バラキエルさんや他の堕天使の皆さんも喋り始めちゃって、よく聞き取れなかったが

『コカビエルが動き出して、なんかやらかしそう』

だそうだ。

 

コカビエル。

俺を改造した連中の親玉。

でも正直、だから何? としか思えないのだが。

 

なんかコカビエルの中では俺って死んだ扱いになってるらしいし、関係ないでしょ。

わざわざ襲ってくるとも思えないし、こっちはこっちで復讐とかする気もない。

 

そう、つまりこれも面倒な事ではないのだ。

本当に面倒な事とは……。

 

 

 

朱乃先輩が、めっちゃ機嫌が悪い。

またか、また俺のせいなのか!?

イッセーになんとかしろと言われたが、無理を言わないでほしい。

 

あれか、覗いてしまったのが不味いのか。

あれは不可抗力だったんだから、仕方ないじゃないですか。

お詫びのジュース飲んだってイッセーから聞いたから、許してくれたと思ってたのに。

 

 

 

 

「良くここまで来たわね、ソーナ。出来れば決勝で貴女と戦いたかったわ」

 

「リアスこそ、やられる覚悟は済ませてきた?」

 

球技大会当日、部活対抗戦準決勝。

ついにオカルト研究部との対決である。

リーダー同士の語り合いも、なかなか耳に入ってこない。

殺気に似た何かが、ずっと俺を攻撃してくるから。

 

「……ところでリアス、あなたの《女王》どうしたの?」

 

「貴女のせいでもあるのよ。カズキくんを盗っちゃうから……」

 

「え? そういう仲なの、この二人?」

 

「いえ、違うんだけどね……」

 

何やら俺と朱乃先輩を除くメンバーが固まって密談中。

お前ら敵同士だろうが、早く配置につけ。

なるべく早く終わらせるんだ。

俺の精神が持たない。

なるほど、精神を潰すってのはこうやるのか。

 

 

 

結果、負けてしまった。

改造人間プァワ〜で頑張ったんだが、怒り状態の朱乃先輩には勝てなかったよ……。

 

試合後に朱乃先輩に覗きの事を謝りにいったら、今度から『朱乃さん』と呼ぶなら許してくれるそうだ。

何でもアーシアちゃんや小猫ちゃんとの扱いの差に思う所があったようだ。

向こうも謝ってきてくれて、それで許してくれるのだから、大変助かる。

 

朱乃さんと少し仲良くなれた気がした。

今度、バラキエルさんに教えてあげよう。

 

あと、試合が終わってから匙がやたら機嫌よく話しかけてきて、

『誤解してた。今まで態度よくなくて悪かった』

と謝ってきた。

彼に一体何があった?

まぁ、仲良くやるのはいい事だけど。

 

ちなみに大会は、オカルト研究部が優勝しました。

よかったね。

でも、どうやら木場は本当に調子悪いみたいだな。

試合中にまでボケっとしていた。

今度話しでも聞いてあげようと思う。

 

 

 

球技大会も無事に終わり、帰宅中に木場に出会った。

雨が降っているにも関わらず傘も差さないで歩いていたので、追いかけてみたら見知らぬ銀髪の男に絡まれていた。

 

「カズキくん!?」

 

「おんやぁ〜? そこにおわすのは、ぼくチンの元上司をフルボッコにしてた奴じゃないの。似た者同士で庇い合いですかい? 男同士でイヤ〜ンな展開ですなぁ! 」

 

誰だか知らんが決定、フルボッコ。

一気に踏み込んで殴ろうとしたが、寸前で踏み留まる。

その瞬間、目の前を銀閃が走り、腕が斬りつけられた。

 

「オッスィ〜! もうちょい踏み込んでくれたら、お手手とサヨナラバイバイだったのに! ちょっとは空気読んでよねっ!!」

 

なんだこいつ、イカれてるのか?

関わっちゃいけない人の典型例みたいな奴だな。

 

「っておやおや? もう傷が塞がってやがります? ジョーブなお身体大変羨ましゅうございますなぁ! 俺様もそんな風になりたいなはぁん!」

 

「それ以上口を開くな、フリード。それは彼に対する最大の侮辱だ」

 

木場が俺の前に立ち、フリードと呼ばれた男を剣を構えながら睨み付ける。

 

「そんなん俺様知らんもん! あ、今のなんか語呂が良くね? てか、流石に不利だから俺様帰ります、バイチャ!!」

 

フリードは訳のわからない言葉を吐くと、もの凄い速さで走り去ってしまった。

追いかけられないと判断したのか、木場は持っていた剣を手元から消す。

 

え? 手品?

あ、いや神器か。

木場も持ってたのね。

 

「って、何にも言わずに帰ろうとすんなよ」

 

「まだ、何か?」

 

「怪我してるじゃないか、家が直ぐそこだから消毒ぐらいしてけ」

 

浅くではあるが、腕には斬られたと思われる傷が。

悪魔が化膿とかするのか知らないが、治療しないよりしたほうがいいだろう。

渋る木場を無理矢理引っ張り、家に連れて行った。

 

 

 

「……何も聞かないんだね?」

 

「聞いて欲しかったら聞いてやらんことも無い」

 

消毒を済ませ、包帯を巻き終わる。

急に木場がそんな事を言い出したが、そもそも何を聞けばいいのかが分からんわ。

聞くだけなら出来る。

 

木場は苦笑した後、自分の過去を語り始めた。

 

木場は幼い頃は教会の施設で暮らしていた。

聖剣を扱う物を養成する為の施設。

木場以外にも同じ年位の子供たちがたくさんいて、来る日も来る日も実験の毎日。

辛くても、彼らには恐怖などなかった。

いつかは特別な存在になれると信じていたから。

 

しかし、木場たちは処分される事になる。

聖剣に適正を示せなかったから。

ガスを撒かれ、次々に死んでいく仲間たち。

木場は仲間のお陰で何とか逃げ出したが、他の子は全員死んでしまった。

 

木場も死にかけたけど、リアス先輩に助けられたそうだ。

その時に悪魔になった、と。

 

「君なら、僕の気持ちがわかるんじゃないかな? 勝手に身体を弄られて、一人だけ生き残ってしまった、君になら」

 

「……俺は、お前と違って他の連中と顔見知りだった訳じゃないし。比較にならないよ」

 

というか、泣きそうだ。

こういうのダメなんだってば。

 

「僕は、聖剣を憎む。嫌悪する。悲劇の元になった聖剣を僕の剣で叩き折ることが、僕の生きている理由だ。その為なら、何を犠牲にしても構わない」

 

う〜ん。

 

「それはちょっと違うんじゃないか?」

 

「っ、なにを!」

 

木場が睨みつけてくる。

 

「聖剣を憎むのはわかるし、お前のやりたい事もわかった。でも、なんで今の生活を犠牲にしなきゃならないんだ?」

 

「……」

 

「過去は大切なもんだ、忘れちゃいけない。でもさ、お前にとって今の時間って要らないものなのか? 簡単に捨てられる様なもんだったのか?」

 

「でも、僕だけが幸せになるなんて……」

 

「友達の幸せを願わない奴なんて、いるわけないだろ」

 

イッセーに嫉妬してやっかむ松田とか、元浜とか一部を除いて。

 

「……治療、ありがとう」

 

木場は礼を言うと、家から出て行った。

まぁ、すぐには無理だよね。

ゆっくり考えるといいさ。

とにかく明日、オカ研に行ってもう少し話してみよう。

 

次の日、俺の家に木場が入るのを見た生徒がいたらしく、『瀬尾×木場』なる言葉が一部の女子の間で飛び交っていた。

勘弁して下さい。

 

 

 

 

 

「また知らない人がいる」

 

放課後にオカ研部室を訪ねた。

部室の扉を開けると、髪に緑のメッシュが入った子目付きの鋭い子と、栗色の長いツインテールの子がリアス先輩と向かい合って座っている。

 

「……彼は?ただの人間の様に見えるが」

 

「もしかして悪魔と契約してる人?」

 

え? 契約って何?

はぁ、依頼をこなしたりとかそんなんしてたんですか。

 

「よしイッセー、焼きそばパン買ってこいよ。3分な」

 

「悪魔はパシリじゃないからっ!」

 

「いいからイッセー、行って来なさい」

 

「部長!?」

 

リアス先輩に言われてイッセーが走って出て行く。

便利だな、今度から時々頼もう。

 

「……凄い人間だな、悪魔を飼いならしているぞ」

 

「えぇ、意味があるとは思えないけど」

 

「それほどでもない。」

 

受け答えしてたら後ろから小猫ちゃんに軽く小突かれた。

え? 何この人たち敵なの?

教会の人間。

あぁ通りで。

 

何やらリアス先輩と難しい話をしている最中も、木場が凄い殺気をあの二人に向けている訳だ。

 

「ただいま、ホラ焼きそばパン」

 

「遅い、もう一回。今度は牛乳な」

 

「悪魔かお前は!?」

 

「悪魔はお前だ」

 

まぁ冗談だが。

お金を払おうとしたらリアス先輩に要らないと言われた。

奢りか、やったぜ。

 

「さて、そろそろおいとまするかな」

 

お、帰るのか。

オタッシャデー。

 

「–––もしやと思ったが、君は【魔女】アーシア・アルジェントか?」

 

……は?

 

「あなたが噂の【魔女】になった元【聖女】さん?」

 

……あぁ、やっぱりアーシアちゃんの事を言ってんのか。

その後も好き放題言ってくれる。

『堕ちるところまで堕ちた』

だのなんだのと……。

 

イッセーが怒ってくれている。

『アーシアの優しさを理解できない奴なんて、ただのバカ』

いいね、その通りだ。

 

『家族で、友達で、仲間だから助けるし、守る』

イッセーは決める時は本当に決めてくれる。

 

木場も連中に喧嘩を売って、非公式の手合わせが決定した。

 

さて、俺もやらせてもらおうかな。

アーシアちゃんの、友達として。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「あーくそ! 通信切れちまったじゃねぇかっ!」

 

あいつ滅多に連絡つながらねぇのに。

取り敢えず用件は伝えられたし、大丈夫か。

とはいえ……。

 

「何なんだお前らは、人が話してたら横からウジャウジャ湧いてきやがって!」

 

「人を虫みたいに言わないで下さい」

 

「わ、私はただ朱乃の事が聞きたくて……」

 

「カズ坊にモグラさんの経過を聞きたいのだ」

 

「久し振りの連絡なんだ、挨拶くらいいいじゃないか」

 

「カズキに特撮ヒーローのDVDを催促したくて」

 

「私達だってカズキちゃんとお話ししたいわよ〜」

 

『ブーブー!!』

 

上からシェムハザ、バラキエル、サハリエル、タミエル、アルマロス、ベネムエ、そして施設の職員ども。

お前らどんだけカズキの事好きなんだよ。

 

「てかなんで幹部が勢揃いしてやがる。働けよお前ら」

 

俺はこんなに仕事が溜まってるのに。

最近は神器弄りも出来ていない。

 

「そりゃあんたが、コカビエルのバカをカズキちゃんの為に探し回るからじゃないさ」

 

うっせぇよベネムエ、そんなんじゃないっての。

 

「仕方ないですよ、素直じゃないですから」

 

何が言いたいシェムハザ。

 

「素直にカズキの事が心配だと言えばいいのに」

 

バラキエル、てめぇにだけは言われたくねぇ。

 

「そうなのだ、とんだ親バカなのだ。しっしっし!」

 

よし、サハリエル。

てめぇ喧嘩売ってんな?

 

「いいから仕事しろお前ら! さっさと持ち場に戻りやがれ!」

 

『わぁ〜【閃光と暗黒の龍絶剣】(ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード)提督が怒ったぁ〜』

 

「上等だてめぇら! 纏めてぶっ飛ばしてやるっ!!」

 

何時までもそのネタ引っ張りやがって!

誰でもやらかす、若かりし頃のちょっとした過ちだろ!

 

 

 

まぁ、なんだ。

こっちは変わらずやってんだから、お前もたまにはこいつらに連絡くらい寄越してやれ。

俺が被害を被らない為に、な。




最初の頃のゼノヴィアとイリナってどうも苦手。

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