モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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16話

モグラさんの調子がいまだに戻らない。

流石に不安になってきた。

木場たちには悪いが、ちょっとバルパー達の捕縛を手伝えそうにない。

ゼノヴィアたちは組み手みたいなものだったからよかったが、モグラさんなしで聖剣なんてトンデモアイテム持った連中の相手は厳しい。

 

木場とゼノヴィアの事はイッセーと小猫ちゃんに任せて、モグラさんを診てもらえる所に行ってくる。

小猫ちゃんも心配してくれているし、早く元気になって貰わないと。

 

堕天使の集まる場所、俺が5年間過ごしたグリゴリの研究施設。

バラキエルさんに渡されていた簡易式の転送装置を使い、ここにやって来た。

 

アザゼルさんがいるかはわからないが、あの人は確実にここにいる。

 

「おや、カズ坊なのだ。どうかしたのだ?」

 

専門は違うけど、アザゼルさん並みに神器に詳しいサハリエルさんが。

 

 

 

「ほうほう、成る程なのだ……」

 

事情を説明して、モグラさんをグリゴリが用意した専用のケースの中に移す。

やはり何処か苦しそうだ。

サハリエルさんはそれを興味深そうに観察している。

 

「どうです? やっぱり何か風邪みたいなものですか?」

 

「しっしっし! モグラさんは少々特殊だけど、神器は風邪など引かないのだ。私に任せておくのだ」

 

普段は色々とやらかす少々アレな人だが、頼りになるのは間違いない。

 

「折角久しぶりにきたのだ。診察が終わるまで、施設を見て回るといいのだ。ついでにアザゼルにも連絡しておくのだ」

 

モグラさんを見守っていたいが、ここにいても邪魔にしかならない。

仕方ないので、施設を見回ることにした。

 

しかしまぁ、相変わらず胡散臭い施設だ。

謎の鉄球、謎の診察台。

考えたのはアルマロスさんで、何でも神器を覚醒させる為の物だそうだ。

恐ろしくて死ぬ気で逃げてたなぁ。

懐かしい。

 

懐かしい施設をみてはトラウマを思い出し。

新しい装置を見つけては試されたくなくて震えだし。

顔見知りの研究員の人たちと会ったら立ち話。

そんな風に時間を潰していると、背後から声を掛けられた。

 

「おや? カズキ君?」

 

振り返るとそこにはバラキエルさんが。

 

「あ、バラキエルさん。お邪魔してます。」

 

「いや、私もサハリエルに資料を渡しにやって来た所なのだが……何かあったのかね?」

 

それなりに時間も経ったので、バラキエルさんと一緒にサハリエルさんの所に向かった。

 

バラキエルさんに朱乃さんの事をたくさん聞かれて、俺が答える。

道中ずっとそんな感じだったが、バラキエルさんが時折微妙な顔をしていた。

なんかマズかったかな?

 

サハリエルさんな所に到着して、自動ドアが空気の抜ける音と共に開くと、サハリエルさんの必死な声が部屋に響いている。

 

「頑張るのだモグラさん! 気張れ! 気張るのだ!」

 

なんだ!? モグラさんに一体何が!?

 

「よし! そのまま、そのまま……出たのだ! モグラさん、よく頑張ったのだ!!」

 

慌ててモグラさんに駆け寄ると、疲れたのか身体全体で息をしている。

サハリエルさんは何かを大事そうに小さな布に包んで、俺にそれを手渡してきた。

 

俺はまさかと思いながらその布をゆっくりと捲っていく。

その中には……よくわからないオレンジ色の綺麗な球が。

何これ。

 

「これは……物凄い密度の、魔力? いや、何か違うな。よくわからないが、高密度のエネルギーの塊だ」

 

「モグラさんの体内で生成された物なのだ。本当は大人に成長しないと出来ないものだから、異物を感じて調子を崩してしまっていたのだ」

 

びっくりした。

てっきり子供でも産まれたのかと。

つまり、こいつのせいでモグラさんは苦しんでたのか。

というかお尻から出したのか、なんかばっちぃ。

 

「モグラさん、いや【神秘の豊穣土竜】(フェティリティ・グラン・ドラゴン)は、幼体の時から蓄えた魔力を体内で結晶化させるのだ。その力を使って自分の住処の土壌を豊かにして、餌を確保するのだ。」

 

へぇ、普通モグラって害獣扱いなのに。

こっちでは益獣扱いなのか。

まぁ獣ってかドラゴンだけど。

 

「本来なら幼体のまま神器になったモグにはこの結晶体は出来ないはずだ、しかも純度が桁違いに高ぇ。う〜ん、じっくり研究してぇなぁ……」

 

ここにいないはずの声。

振り向くと、そこには興味深そうにモグラさんを見つめるアザゼルさん。

 

「ようカズキ。サハリエルから連絡貰ったからな、来てやったぜ。モグの奴もきっちり成長してんじゃねぇか」

 

頭をガシガシと乱暴に撫でてくる。

痛ぇよ。

なんか楽しそうですね、アザゼルさん。

 

「さて、訓練室に行くぞ。バラキエル、お前も来い」

 

え?

 

「モグはちゃんと成長した。次はお前さんが成長しろ」

 

え〜と……つまり?

 

「楽しい愉しい特訓のお時間だ。後から俺が呼んだ幹部連中も来るからな、数日でしっかりきっちり強くなれるぜ」

 

おい。

おい。

 

「コカビエルの奴が絡んできたからな。どうせお前もやるんだろ?死なない程度には鍛え直してやる」

 

そんな気ないよ?

だってコカビエルって人アザゼルさんたちクラスなんでしょ?

死ぬじゃん。

カッチリキッカリ殺されるじゃん。

 

俺の訴えがアザゼルさんに届く事はなく、アザゼルさんとバラキエルさんに両脇を持ち上げられながら連行される。

 

ウソダドンドコドーン……。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

俺たちは今、駒王学園にきている。

堕天使の幹部、コカビエル。

奴が俺たちに宣戦布告してきやがった。

 

被害を最小限に抑える為に、ソーナ会長たちは学園に結界を張ってくれているので動けない。

木場は合流出来てないし、カズキもモグさんの治療の為に今はいない。

それまでは俺たち部長の眷属だけでやるしかない。

 

俺たちはコカビエルの差し向けたケルベロス二体を撃破し、遅れてやって来た木場とゼノヴィアは4本のエクスカリバーを統合した剣を持つフリードと対峙した。

 

バルパーが語る幼い木場達への実験の真実。

残された木場と、木場を想い続けた仲間たち。

その想いを糧に、木場は《禁手》へと至った。

 

禁手、《双覇の聖魔剣》(ソード・オブ・ビトレイヤー)。

木場の持っている魔の属性と、仲間たちが託してくれた聖の因子を掛け合わせた、木場だけの剣。

木場はその力を使い、フリードの持つエクスカリバーを叩き折った。

木場の念願が、叶った瞬間だった。

 

聖魔剣を見て何かに気付いたバルパーも殺され、残るはコカビエルのみ。

でも、コカビエルの強さは想像以上だった。

俺たちがどれだけ攻撃しても効果はなく、通ったのは木場の攻撃で頰の薄皮が一枚切れただけ。

 

戦闘の合間の言葉の応酬の中で、朱乃さんが堕天使の子供だと判明したり、神の死について知ってしまった。

以前の戦争で四大魔王と共に、神もまた死んでしまっていた。

その事実に、アーシアとゼノヴィアは身体を支えられずに崩れ落ちてしまう。

 

でも、負けるわけにはいかない。

俺には、ハーレム王になる夢があるのだから!

 

俺が気合を入れて立ち上がると、何かが空から落ちてきた。

そいつはコカビエル目掛けて一直線に降下してくる。

 

「おっと」

 

軽々と躱されてしまうが、コカビエルの元いた場所には凄まじい衝撃と共に大きなクレーターが出来上がった。

 

そんなめちゃくちゃをする奴、俺たちは一人しか知らない。

全く、来るのが遅いぜ!

 

「カズキ!!」

 

カズキはクレーターの中心から這い出てコカビエルを見つけると、凄まじい視線を叩きつける。

 

「おぉ、お前がカズキか! お前の事はよく知っているぞ、こんな所にいたとはな」

 

一方コカビエルは楽しそうにカズキに話しかけている。

え? コカビエルの奴、カズキを知ってるのか?

一体どんな関係が……?

 

「お前がコカビエル……恨み、晴らさせて貰うぞ」

 

恨み? 恨みって……まさか!?

 

「恨みねぇ? お前の身体を弄り回した事か? 強くしてやって感謝されこそすれ、恨まれる謂れはないな」

 

やっぱりか!

あいつがカズキの身体を、人生をめちゃくちゃにした親玉か!

 

「なかなかやるそうじゃないか。たかが人間に期待などしていなかったが、お前のような奴が出来るのなら本格的に実験してみるのもいいかもな」

 

戦争の兵隊として役立つかもしれん。

コカビエルはあざ笑いながら言い放った。

兵隊って……カズキみたいな存在をまだ増やそうってのか!?

一体どれだけの人が犠牲になると……!

 

しかし、カズキは何も言わない。

答えない。

ただひたすらにコカビエルを睨み付ける。

 

あれ……カズキ、だよな?

なんだか、俺たちの知ってるカズキと違う。

何時もは敵を挑発するのに、それもしない。

 

「彼は一体なんなんだ……?人間が、あんな眼をしていい筈がない」

 

ゼノヴィアが、カズキの戦いを見ながら呟いている。

何時もとは明らかに違う言動。

みんなも動揺から動けずにいる。

カズキ……お前、どうしちゃったんだよ……。

 

「お前の所為で俺は……地獄を見てきたっ!」

 

急に発せられるカズキの怒号で、大地が揺れる。

あんなに怒っているカズキは、アーシアの件以来だ。

いや、あの時とはまた別種の怒りを感じさせた。

 

「ふん、人間が大層な言葉を吐く。だからなんだ、勝てるとでも思っているのか?」

 

「勝つさ。俺は今から、お前をぶん殴る。それが、それだけが俺の今の願いだっ!!」

 

『おい、相棒』

 

俺たちがカズキの見守っていると、ドライグが語りかけてくる。

なんだよ、この大変な時に!

 

『あの男、【至る】ぞ』

 

え? もしかしてカズキも!?

 

『さっきも言ったが、神器は所有者の強い想いや感情で進化する。あの男の感情が今、世界の【流れ】に逆らうほどの昂りを見せている』

 

カズキの身体から魔力とは違う、別のなにか凄いエネルギーの様なものを感じる。

 

カズキ静かに右手を前に突き出し、掌を天に向ける。

その掌には、いつの間にかモグさんがいた。

額には何か、オレンジ色の石みたいなものがついている様に見える。

 

そして、カズキは大きな声で叫んだ。

あの言葉を。

 

「いくぞ……《禁手》(バランス・ブレイク)ッッ!!」

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

なんかセーフティ機能を解除してくれたそうです。

いつの間にそんなもん付けたんだ。

文句言ってもスルーしやがる。

もうやだこの人たち。

 

本当に幹部の人たちみんなくるし。

久々に会えたのは嬉しいけど、あんたら一ヶ所に固まってちゃいけない人たちじゃないの?

働けよ。

 

えぇ、皆さん俺の事をひたすらにイジメてくれました。

かわいがりってやつだね。

おかげで疲労とストレスがマッハ。

 

しかも転送してくれたら空の上って何?

『ヒーローは空から現れる』って聞いたことないです。

アルマロスさん、今度は一体何の特撮見たんですか。

てか、お〜ち〜る〜!!

 

 

 

着地っ!!

いや墜落だよね、これ。

クレーター出来てるじゃん。

にしても怪我一つない。

凄いな、セーフティを解除した身体。

 

さて、アザゼルさん達が言うにはもういるはずだ。

俺の不幸の大本、コカビエル。

あいつを倒さないと、俺に未来はない。

 

お、あいつかな。

翼が10枚。

間違いない、こいつがコカビエルだ。

 

「おぉ、お前がカズキか! お前の事はよく知っているぞ、こんな所にいたとはな」

 

笑いながら話しかけてきてんじゃねぇ。

 

「お前がコカビエル……恨み、晴らさせて貰うぞ」

 

お前の所為で、お前の所為で……!

俺は別にお前と戦いたくなんてないのに、無理矢理お前の対策とか言いながら、みんなにフルボッコにされ続けたんだぞ!

逆恨みも甚だしいけど、お前でストレス発散してやる!

お、なんかテンション上がって来たぜぇ!!

 

「恨みねぇ? お前の身体を弄り回した事か? 強くしてやって感謝されこそすれ、恨まれる謂れはないな」

 

んなもんどうでもいいんだよ!

早く、早くお前を殴らせろっ……!

 

「なかなかやるそうじゃないか。たかが人間に期待などしていなかったが、お前のような奴が出来るのなら本格的に実験してみるのもいいかもな」

 

勝手にしろ。

どうせ勝とうが負けようが、お前は最後にはアザゼルさんにしばかれるのだから。

負けたら俺もしばかれるけどなっ!

 

俺はお前を倒さないと、グリゴリの施設でわけのわからんペナルティを負うことになるんだよ!

 

「お前の所為で俺は……地獄を見てきたっ!」

 

なんなんだあの光の槍の雨あられ。

時折ピンポイントで打ち抜いてくる雷光。

よくわからない戦闘員の群れ。

襲い来る無数の鉄球。

あれもこれも全部まとめて。

全て、全てお前のせいだぁぁ!!

 

「ふん、人間が大層な言葉を吐く。だからなんだ、勝てるとでも思っているのか?」

 

「勝つさ。俺は今から、お前をぶん殴る。それが、それだけが俺の今の願いだっ!!」

 

理由なんざどうでもいいんだよ!

お前がそこにいて、俺がお前を殴りたいと感じている!

お前を倒す理由なんざ、それで充分だろうがッ!

 

モグラさんも無事に復活した!

なんかおデコに張り付いてるけど気にしない!

モグラさんも殺る気マンマン、今なら出来る!

 

「いくぞ……《禁手》(バランス・ブレイク)ッッ!!」

 

最っ高に最低な八つ当たりをしてやんよ!




モグラさん堂々復活です!

ただしパワーアップアイテムは尻から出る。
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