許してください、何でもしますから!
「使い魔を探しに行く?」
コカビエルの一件から数日経った放課後。
お呼ばれして朱乃さんの淹れてくれた紅茶を啜ってた俺に、リアス先輩が突然話を振ってきた。
ゼノヴィアが新しく仲間に加わったので、使い魔を探しに行くそうだ。
「そう、行ってらっしゃい」
俺には関係の無い話だ。
「貴方も行くのよ」
何でだよ。
「俺、人間ですよ? 必要ないじゃん」
「以前にもイッセーとアーシアの使い魔を探しに行った事があるのだけれど、イッセーの使い魔がまだ見つかってないのよ」
それで手伝えと?
アーシアちゃんの為ならまだしも、イッセーのだろ?
知らんよンなもん。
ちなみにアーシアちゃんの使い魔は『蒼雷龍』(スプライト・ドラゴン)というカッコよいものらしい。
「どうせ冥界の危ない所とかに行くんでしょ? 嫌ですよ俺」
痛いのキライです。
「あなた、以前イッセーに願いを叶えて貰った対価、まだ払ってないでしょ?」
は? なんかして貰ったっけ?
……あ!
ゼノヴィア達が来た時の焼きそばパンか!?
さ、詐欺くせぇ!
そんなん誰も覚えてないぞ!!
「悪魔は対価で動くものなのよ。じゃあよろしくね?」
こうして、ゼノヴィアとイッセーの使い魔探しに着いて行く事になった。
「で、ここがその使い魔の森か」
何やら不気味な鳴き声が響いてくる。
いかにもって感じの森だな。
ここで案内役を待つらしい。
「よし、探したけど見つかりませんでしたって事にしてもう帰ろう」
「どんだけやる気ないんだよ、カズキは」
「私の使い魔も探すんだ、もう少し真面目にやってくれ」
イッセーとゼノヴィアが文句を言ってくる。
リアス先輩と朱乃さんは用事で来れないので、ここに居るのは残りの眷属。
モグラさんは小猫ちゃんに抱かれて腕の中。
最近ようやく呼んだら来てくれるようになったと喜んでた。
次は俺みたいに一緒に芸をしたいそうだ。
「だって俺にメリットないじゃん」
やる気なんぞ出るわけがない。
「メリット……私の胸でも揉むか?」
「俺が殺される未来しか見えないから却下」
ゼノヴィアのアホな意見を速攻で却下する。
デメリットなんてレベルじゃないだろ。
イッセー、お前はいちいち反応するな。
「ゲットだぜぃ!」
ふぁ!?
突然の声に驚き振り向くと、そこには帽子を前後逆に被り、田舎の虫取り少年みたいな格好をしたおっさんの姿が。
なんだ、変質者か。
なんか最近変質者によく会うな。
俺もイッセーと同じで変人を呼び寄せる様になったのか。
凹む。
「君は以前も来た冴えない少年だね、話は聞いているぜぃ! そこの青髪美少女と二人分の使い魔を探すんだろう? さぁさっそく行くぞ、ゲットだぜぃ!」
小猫ちゃんと木場が言うには、これでも使い魔ゲットのスペシャリストなんだとか。
色んな意味で危ない人にしか見えん。
取り敢えず着いて行くと、コウモリやらトカゲやら。
それっぽいのに沢山遭遇したが、ゼノヴィアの眼鏡には叶わなかった様だ。
何故か、俺には沢山寄ってきたけど。
尻尾に火がついたトカゲは目が可愛かった。
首が沢山あるヘビが出てきた時はビビったが、モグラさんの一声ですぐに帰ってしまった。
なんでも毒が凄い奴だったそうだ、おっかない。
そんなの追い払えるとか、モグラさんって実はかなり凄いのか?
服だけを食べるスライムにも遭遇して、イッセーが使い魔にしようとしたが、小猫ちゃんに事前にお願いされていたモグラさんの土プレスで潰され、穴に埋められた。
イッセーが
「また……守れなかった……!」
とか、かっこいいセリフをカッコ悪く言っていたがどうでもいいよね。
他にも色々と探したが、結局使い魔を手に入れる事は出来なかった。
「–––で、そのままみんなで帰ってきたの?」
森から帰ってきた次の日。
報告がてら再びオカ研を訪ねると、リアス先輩が紅茶を飲みながら嘆息した。
朱乃さんは横でニコニコしてる。
「しかしカズキくんは凄いね。高位の魔物にあんなに好かれる人間、聞いた事ないよ」
「火蜥蜴、ウンディーネ、ヒュドラまで。普通ならありえません」
木場と小猫ちゃんが呆れる様に言ってくる。
しかしあれをウンディーネと呼んではいけない。
世の男達の夢が音を立てて崩れてしまう。
まぁ、全部モグラさんが追っ払っちゃったけどね。
嫉妬か、可愛いなぁ。
「しかし、あの機械のお馬さんやライオンさんは何だったんでしょう?」
「さてね。私はあの獅子を使い魔にしたかったのに、奴はカズキにしか興味を示さなかったからな」
振られてしまった。
ってそんな悲しそうに言われてもなぁ。
みんなで森を歩いてたら、妙に機械っぽい魔物と何回か遭遇したのだ。
ゼノヴィアはその中のライオンっぽいのが気に入ったんだが、完全無視。
俺の方を見て一鳴きした後、森の奥に消えてしまった。
それと似たのに何回か遭遇した。
「えーと、馬にライオン、ヘビ、牛、イノシシ、あと赤いドラゴンか。ドライグがあんなドラゴン知らないって言ってたけど」
龍の帝王さまが知らない龍ってなんだよ。
しかもやたらと魔物に好かれるからって、あの変質者にここで働かないかとか言われるし。
結局二人の使い魔も見つからないわ、変態に絡まれるわ散々だった。
「しかし凄いですわねカズキくん。未知の魔物まで手懐けてしまうだなんて」
「何ていうか、本当にカズキくんは規格外ね。実はまだ何か隠してたりしない?」
リアス先輩が苦笑しながら尋ねてきた。
実はアザゼルさんとかヴァーリさんと知り合いで、バラキエルさんのお願いで朱乃さんを守りに来たんだよ〜。
……うん、殺されるな。
悪魔と堕天使って仲悪いらしいし。
何とかしてよ、アザゼルさん。
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「アザゼル、赤龍帝を見てきたそうだな」
「おう、年相応のスケベなガキだったな」
あれも見てて飽きないタイプだ。
アザゼルは笑いながらそう言った。
俺は強くなるか聞きたかったんだがな。
「今の奴は、俺の敵に成り得ない。あれならカズキの方が余程強いよ」
「カズキねぇ、あいつは強くなりたいとか思わねぇからな。必要なかったら、戦わずに逃げ回る奴だ」
アザゼルはまた楽しそうに笑う。
この男は本当にカズキを気に入っているな。
まぁ、俺もだが。
「さて、ようやく対談の目処がついた。コカビエルの馬鹿が暴走したお陰でもあるのかね」
コカビエルは地獄の奥底、コキュートスで永久冷凍の刑に処された。
戦争を起こそうとした男が原因で和平が結べそうとは、なかなか皮肉な話だ。
「俺は人間界にいくがヴァーリ、お前はどうする?」
おそらく赤龍帝にちょっかいをだしに行くのだろう。
今までも度々接触していたそうだ。
この男の神器好きにも困ったものだ。
「俺も行くよ、この間は赤龍帝に挨拶も碌に出来なかったからな。しっかりと見合ってくるさ」
「そうかい。お前さんには会談にも出てもらうんだから、あんま無茶すんなよ」
アザゼルはそう言うと、人間界へと転移していった。
赤龍帝はまだ弱い。
しかし、宿主が貧弱だろうとその能力が強大なのは変わらない。
よく鍛え上げるように発破でもかけるさ。
ついでにカズキにも、赤龍帝を鍛える様に頼んでおくかな。
カズキ……。
俺と同じ様に父親という存在に否定された者。
俺は一時期腐っていたが、あいつは違う。
環境に適応しようと努力して、居場所を掴み取った男だ。
心は俺などより余程強い。
そういう強さもあると、俺に教えてくれた。
俺はもうすぐ、アザゼル達の元から離れる。
アザゼルは既に察しているだろうが。
下手に俺と関わりがあると周りに知られれば、余計に面倒事が増えると思ってあの場は他人のふりをしておいたが……意味はなかったかもな。
俺の勝手にお前を巻き込みたくはないが、これも二天龍に関わった者の定めなのかもしれない。
まぁ自分の身を守れる程度には鍛え抜いたし、禁手にも目覚めたのだ。
もう心配してやる必要もないか。
お前は俺をどうしようとするかな。
敵対するか、それともついてこようとするか。
連れて行くのも楽しそうだが、カズキはあくまで人間なのだ。
人間としての幸せを掴み、人間としての人生を歩んで行って欲しいとも思う。
決断の時は、着々と迫ってきている。
ヒュドラ「お、いい男」
モグラさん「キュ!(こっちくんな)」
ヒュドラ「(・ω・)」
が連続してありました。
機械の子達は再登場するかはわかりませんな。