「また知らない部屋だよ、いい加減誰か説明してくれよ」
目を覚ますとベッドの上。
なんかこの状況に慣れてきた自分が嫌だ。
「あ、目が覚めましたか? 」
声に反応して振り返ると、そこには美人のお姉さん。with羽根。しかも真っ黒。
機会を弄って何処かに連絡しているらしい。
白衣の天使ならぬ白衣の堕天使。
なぜかそこはかとなくエロスを感じる。
「む、起きたのか」
アホな事を考えていると、逞しい身体と立派な髭を蓄えた男性が現れた。
なんか大人の男って感じの人だな。
お姉さんはこの人と少し会話した後、頭を下げてそのまま退室してしまった。残念。
「思ったより元気そうだな、少年。私の名前はバラキエル。君の名前を教えて貰えるかな? 」
外人さんか、どうりで体格がいいと思った。
「はぁ、どうも。俺は瀬尾 一輝です」
「よし、ではカズキ君。君は今の状況を何処まで把握している? 」
「状況?さっぱり全く」
「そうか……付いてきてくれるかい?歩きながら話そう」
そう促され、バラキエルさんに連れられて付いて行く。
俺の歩幅に合わせてくれているから歩きにくそうなのに、そんな事顔に出さずにいてくれる。
いい人なんだな、この人。
歩きながら話した内容には、色々と驚かされた。
ここが俺のいた世界じゃなかったり、何やらバラキエルさんのお仲間が起こした事件に俺が巻き込まれたらしく、その事について謝られたり。
後、俺は改造人間になったらしい。
マジか、漫画みたいだな。
これから俺TUEEEな物語が始まるのか。
……ないな、うん。
あ、あとバラキエルさん達ってホントに堕天使らしい。
びっくりだね。
なんて色々考えてたらもう部屋の前。
バラキエルさんに続いて入室する。
そこには高価そうなソファーに座る黒髪だが前髪だけ金髪なダンディな男性と、その隣に腕を組みながら立つなんか見覚えのある銀髪のイケメンが待ち構えていた。
イケメン達は何してても様になってるな。妬ましい。
「来たか。俺はアザゼル、一応ここのトップだ。んでこっちの目付きが悪いのがヴァーリ。お前さんをここに連れてきた奴だ」
「初めまして、瀬尾 一輝です。ヴァーリさん、助けてくれてありがとうございました」
「命令だったからな、気にするな」
なんかトップの人にしては砕けた雰囲気の人だな。
ドラマとかで見る社長とは大分違う。
てかこの銀髪イケメン、俺を助けてくれた人か。
返事もクールだしやっぱかっけぇ。
命の恩人だし、妬むのは止めておこう。
「まず謝っておく、俺の身内が迷惑をかけてしまった。すまない」
アザゼルさんは謝罪した後、バラキエルさんが言葉を続けた。
「カズキ君、実は君をこのまま向こうに帰すわけにはいかなくなってしまったんだ。君には《神器》が宿っている」
神器、どっかで聞いた気がするけど忘れた。
「神器はそれなりに希少なもんでな、強い弱いに関わらず様々な組織に狙われる。だから元の世界、元の生活に戻るのは難しい。だが、ここにはお前の他にも神器を使う連中を保護して神器について研究する機関がある。お前さえ良ければ来ないか? 」
だから神器ってなんなんだよ。
シリアスっぽいので質問出来ない。
解る前提で喋らないでいただきたい。
なんとなく察するに、要はスカウトなんだろう。
選択肢がほぼないのはどうかと思うが。
「孤児院も食い扶持減る分には困んないだろうからまぁいいんだろうけど。
友達やお世話になった先生には挨拶したかったなぁ」
「なら私が君を連れて孤児院までいこう。そうすればみんなにお別れも言えるだろう」
マジでか、バラキエルさんいい人すぎる。
堕天使って天使が悪い事してなるイメージなのに。
なんでこの人堕天したんだろ?
アザゼルさんがバラキエルさんの事を生暖かい目で見ているのが気になる。
「それじゃあお世話になります。よろしくお願いします」
「取り敢えずはこんなもんか。お前さんの身体についても、詳しく調べれば何かしらわかってくるだろ」
「話が終わったなら行くぞカズキ。お前の部屋に案内してやる。構わないか、アザゼル? 」
俺がお礼を言い、アザゼルさんが話をまとめると今まで壁にもたれて話を聞いているだけだったヴァーリさんが、突然話しかけてきた。
アザゼルさんも驚いたような顔をしてる。
よっぽど珍しいんだろうか。
「お、おう、じゃあ頼む。ついでに施設内も軽く案内してやれ」
「わかった」
そう言うとヴァーリさんは先に部屋を出て行こうとする。
慌てて後ろを追いかけ、隣まで来てから顔を見上げる。
「これからよろしくお願いしますね、ヴァーリさん」
「あぁ」
うん、やっぱり挨拶は大切だよね。
堕天使の人達ってみんな優しそうだし頑張ろう。
あ、ヴァーリさんは堕天使じゃなくて悪魔と人間のハーフなんだそうだ。
悪魔もいるのか。
堕天使がいるんだから天使も多分いるよね。
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バラキエル……根が真面目なのもあるんだろうが、あいつカズキを朱乃と重ねて見てやがるな。
年も一つしか変わらないし、無理もないか。
放って置けないんだろうよ。
それよりも先ず実の娘をどうにかしろとも思わないでもないが……まぁ、あいつの後悔が少しでも薄まるならそれもいいさ。
面倒見る分には構わないし、しっかり守ってやればいい。今度こそ、な。
セオ カズキ……簡単にではあるが、調べた。
幼少期に父親の手により施設に預けられる。
父親はそのまま迎えに来ず、その施設で育ち、その後は特筆する事もなく今に至る。
あいつには本当に悪い事をしている。
こっちのバカのせいで今までいた世界にいられなくしてしまった。
平穏な生活を崩してしまった。
普通の人間では、なくなってしまった。
こいつにだけ構うわけにはいかないが、少しは気に掛けてやらないとな。
それにしてもヴァーリの奴には驚いた。
あいつがあんな事言うとは。
カズキに何かを感じたか、それとも資料を見て自分と重ねたか。
あいつも父親に捨てられたようなもんだしな。
まぁ悪い事をしてる訳じゃねぇ、いい傾向だと受け入れよう。
それに今はそれぞれの勢力への弁解と、サーゼクスとの会談の用意が最優先か。
はぁ……休みが取れない、誰か総督代わってくれねぇかな。