19話
今日も今日とてオカ研部室に入り浸る俺。
もう入部してるのと変わらなくないかな?
まぁお茶は美味いしお菓子は出るし、モグラさんもアーシアちゃんや小猫ちゃんと遊びたいみたいだからいいんだけど。
そういえば最近、その輪に朱乃さんとゼノヴィアが加わっているのをよく見る。
朱乃さんは前からモグラさんと遊んでくれていたけど、最近は特に熱心に構ってる気がする。
後から聞いたが、ゼノヴィアもアーシアちゃんにちゃんと謝って許して貰えたと嬉しそうに話していた。
今度一緒に買い物に行くらしい。
モグラさんもゼノヴィアにやけに懐いているし、最近は特に事件もない。
良い事尽くめだ。
リアス先輩は大変お怒りの様だけど。
なんか、イッセーのお得意様が実はアザゼルさんだったそうだ。
何やってんだあのオッサン。
イッセーの神器を奪うつもりだと疑って、凄いヒートアップしている。
すぐにイッセーとイチャつき始めたけど。
見てて暑苦しいんだよ、他所でやれ。
終いにはイッセーが木場とまでイチャつき始めた。
見てて寒気がするんだよ、他所でやれ。
最近はクラスの女子が俺まで木場とのBLネタにし始めてるし。
そんな風にのんべんだらりと過ごしていると、なんとサーゼクスさんがグレイフィアさんを連れてやって来た。
「やあ、我が妹とその眷属たち。カズキくんも久しぶりだね」
「どうも、サーゼクスさん。グレイフィアさんもお久しぶりです」
な、なんで皆してそんな目で俺を見る!?
ちゃんと挨拶したじゃないか。
え? 魔王様をさん付けとかあり得ない?
いや、本人がそう呼べって言ったし。
なんでそこでみんなして溜め息吐くのさ。
おい、何だその『カズキくんだし』って。
なんでも授業参観の為に、魔王のお仕事を休んでまで来たらしい。
休めるのか、魔王。
今度この学園で悪魔、天使、堕天使のトップ会談を行うので、その下見も兼ねているのだそうだ。
仕事も兼ねるという言い訳付きか。
どんだけ授業参観来たかったんだ?
まぁ、俺には関係ないからお好きなように–––
「あぁそうだ。カズキくんには人間代表として出席して貰うからそのつもりで」
……は?
「いや、ちょっと意味が解んないんですけど。俺にそんな阿鼻叫喚で人外魔境な場所に出ろと?」
俺に死ねと申すか。
やはりこの人もドSか。
「なに、座ってるだけで構わないよ。友達の君をみんなに紹介したいだけさ」
え? 俺っていつの間に魔王と友達になったの?
それ勇者になるより難易度高くないですかね?
その後もゴネまくったけど全てスルーされ、その日はイッセーの家に泊まるといって逃げられてしまった。
マジでその場にいなきゃダメなの?
……あれ? よく考えたら来るのってトップだよね?
悪魔はサーゼクスさんともう一人の魔王さん。
堕天使はアザゼルさん。
で、天使はミカエルって人。
なんだ、もう一人の魔王さんに気を付ければ問題ないじゃないか。
仮にも天使って言う人が悪人な訳ないよね!
悩んで損した。
「悩みは解決したのか? じゃあそろそろ夕飯にしようじゃないか」
気付いたら家に着いていて、ゼノヴィアが部屋で漫画を読みながら寛いでいる。
自然過ぎて気付くのが遅れたじゃないか。
「なぜお前は俺の家にいるのか」
「カズキが食事を用意してくれると言ったんじゃないか」
ゼノヴィアがキッチンに向かう俺に声を掛ける。
「毎日毎日たかりに来んな。ホラ、お前も料理を手伝え。そんで覚えろ」
料理は実際にやらなきゃ上手くならないんだ。
あんだけ刃物振り回せるんだ、包丁もなんとかなるだろ。
「お前最近はマンションに寝に帰るだけで、ほぼここで過ごしてるじゃないか。部屋代勿体無いだろ」
「だからここに住むと言ったじゃないか。却下されてしまったけれど」
「なんで却下されたのか理由を考えろよ」
「朱乃先輩が羨ましいからだろう?彼女も一緒に住めば問題ないと思うんだが」
「問題だらけだバカ。そもそも羨む要素がないだろう。ほら、料理出来たからテーブルの上のもん退かせ」
「おお、パスタか。久しぶりだな、美味そうだ」
ん、今日のはちゃんとアルデンテになった。
この間は茹で過ぎて……は!?
普通に作ってしまった!!
ちゃんと二人分!
「……次からはちゃんと料理手伝えよ?」
「皮剥き位なら手伝おう。そうだ、今日の宿題で日本語の解らないところが–––」
最近ずっとこんな感じです。
リアス先輩に訴え様にも、そんな事すれば自然と朱乃さんの耳にも入る訳で……無理です。
さて、夏ですね。
コカビエルが壊した校舎の修繕とかを、生徒会が一手に引き受けてくれたそうだ。
俺も後でお礼言っとかなきゃ。
なのでオカ研は生徒会への借りを返す為に、プール掃除をするらしい。
その後一足先に自分達だけでプール開きをするそうです。
モグラさんがプールで泳ぎたがったので、俺も参加だ。
実はモグラって泳げるんだよ、知ってた?
最近忘れつつある改造人間パワーで手早く掃除を終わらせ、水着に着替える。
モグラさんも白と水色の縞々全身水着を装着済み。
水泳帽と俺が頑張って工作した水中ゴーグルまでして完璧だ!
更衣室で着替えてたら、木場がイッセーに何かを語り始めた。
巻き込まれる前に逃げさせてもらおう。
俺はホモじゃないです。
「お前一人だけ逃げるなよ! 木場がちょっとショック受けてたぞ」
イッセーが慌てて更衣室から出てきた。
どうやら一戦は越えなかった様だ。
「俺にその手の趣味はないから。お前に任せるよ」
「俺だってねぇよ!!」
イッセーが叫んでいる間に女性陣も準備が出来たようだ。
続々と水着姿でプールにやって来た。
イッセーが大興奮している。
気持ちはわかるが、少し落ち着け。
綺麗になったプールに、朱乃さんが魔術で水を溜めて準備完了。
リアス先輩やアーシアちゃんがイッセーに水着の感想を求めていた。
事故に見せかけて沈めてやろうか。
しかしアーシアちゃんと小猫ちゃんのスクール水着が正しい格好の筈なのに、二大お姉様を見た後だと犯罪臭がするのは何故だろう。
「あれ? ゼノヴィアはどこ行った?」
「ゼノヴィアさんは水着を着るのに手間取ってしまって……先に行っていてくれと言われてちゃいました」
イッセーの問いにアーシアちゃんが答える。
そういやゼノヴィアがいないな。
まぁそのうち出てくるだろう、昨日から楽しみにしてたし。
「うふふ、カズキくんどうかしらこの水着?」
朱乃さんが感想を求めてきた。
だから遊ぶならイッセーで遊んで下さい。
「似合ってますし綺麗ですけど、犯罪臭がします」
手を出したら、後から顔にキズのある人が出て来て金品強奪されそう。
実際出てくるのは堕天使の幹部だからもっと恐ろしいけど。
「喜んで……いいのかしら? まぁカズキくんですし」
何かを一人で納得し、満足そうにリアス先輩の所に戻っていった。
だからなんなんだよ『カズキくんですし』って。
その後は自由に泳いで過ごした。
泳げない小猫ちゃんに、イッセーが教えてあげたりしてたな。
モグラさんも、小猫ちゃんの使ってるビート板の上に乗って応援してた。
リアス先輩にオイルを塗ったりもしてたな、死ねばいいのに。
俺も朱乃さんに頼まれたけど、バラキエルさんが怖いのでプールに飛び込んで逃げた。
その際木場と水泳で競ってみたが、僅差で負けてしまった。
改造人間パワーに正面から勝つとか、やっぱ凄いなこいつ。
なんでか勝ててやたらと喜んでたのが不思議だったけど。
泳ぎ疲れてイッセーと休んでいると、ようやくゼノヴィアがやって来た。
「随分時間が掛かったな」
イッセーが驚きながら尋ねる。
ホントにな。
「初めての水着だからな、着るのに手間取った。似合うか?」
「似合うけどなんだその水着。布少なすぎるだろ」
「そうなのか?やはりよくわからないな、こういったものは」
見ろ、イッセーがやらしい目で見てるだろう。
その位際どいってことだよ。
「そうだ二人とも。実は折り入って頼みがあるんだ」
「頼み?なんだよ水臭いな、なんでも言ってくれ」
イッセーが陽気に答える。
あ、メンドくさい気配。
「どちらか、私と子作りをしてくれないキャンっ!?」
言葉の途中で、ゼノヴィアの頭を近くにあったビート板で引っ叩く。
「はい正座しろー。プールに入る前に説教だ」
このアホの子め。
少しは考えてから発言しろ。
女としての喜び?
んなもん他に幾らでもあるわ!
子供を産みたい?
ガキがガキこさえてどうする気だボケ!
「そういうのはな、子供に自分を自慢出来ると思えてからやれ。浅い考えで産んだら、産まれてくる子供が不幸になるだけなんだ」
む、しまった。
ついガチ説教をしてしまった。
ゼノヴィアだけじゃなくて他の人までテンションが……。
「とにかく、そういうのはまだ禁止だ」
「まだ? と言う事はいつかはしてくれるのか。わかった、暫く待つとしよう」
正座しながらうんうん頷くゼノヴィア。
ん?
「あらあら、そんな予定がありますの? カズキくんったらホントーに困った子ですわねぇ」
真っ黒な笑顔で手をバチバチさせてる朱乃さん。
んん?
背中にオイルを塗るので手を打ちました。
ゼノヴィアにも頼まれたので、片方を足で塗ったら怒られた。
効率いいと思ったんだけどな。
朱乃さんにも足でやってみたら、見たことない様な顔になったのでもうやりません。
「足蹴にされるのも……」
なんて聞こえませんでした。
モグラさんをドライヤーで乾かしてから校門に向かう。
気持ち良さそうだな。
みんなには先に行ってもらったから、丁寧にやってやろう。
終わってから校門に向かうと、何故かヴァーリさんの姿が。
すぐにいなくなってしまったが。
オカ研メンバーが絡んでたけど、無駄な事を。
あの人に勝てる訳が無い。
「やめとけって、絶対勝てないから」
俺が声を掛けると、みんなが一斉に振り向く。
「カズキくん、白龍皇を知ってるの?」
「昔、ボコボコにされましたから」
リアス先輩の質問に、頬をポリポリと掻きながら答える。
何でそんなにビックリするかなぁ。
「カズキくんがボコボコ……トンデモないね、白龍皇の力って」
「あ、違うぞ? ボコボコにされたのは素の力でだから。能力を使いすらしないでやられた」
木場の言葉に答えてから改めて思うけど、チートだよねあの人。
おまけに飛ばれて能力使われたらどうしようもない。
「カズキが勝てないって……俺、あいつに狙われてんだろ?」
「平気だろ? 俺の事も助けてくれたじゃん」
ん〜弱い者いじめはしない……かはさておき、無闇に暴れる人じゃないと思うんだけどなぁ。
「とにかく俺はもう帰る。ゼノヴィア、自分の家でメシ食えよ。今日は料理したくない」
「仕方ない、今日は牛丼にチャレンジしてみよう。帰りにヨシギューとやらに寄らねば」
「だから作れよ」
何故か朱乃さんから再び不穏な空気を感じたので、足が痺れてるとか言ってられない。
ダッシュで帰宅した。
「ただいま〜っと「む、帰ったか」……なんでヴァーリさんがここに居るの?」
家に帰ったら、なんでかヴァーリさんが居間に座って読書していた。
白龍皇が待つ自宅……怖すぎるでしょう。
グレモリー眷属の間ではこれ一つで大体通じる魔法の言葉
『カズキだし』