という訳で投稿です。
「飛ばないんですか、空」
「このぐらいはハンデをやらないと、勝負にならないだろう?」
ヴァーリさんは地に足を着いたまま、此方にゆっくりと歩いてきた。
俺も合わせてゆっくりと歩き出す。
「全く、此処まで壊れちゃって……何処で頭のネジ落としてきたんですか」
「そんな事はないさ、俺はいつも通りだ。いつも通り強い奴と戦いたい、それだけだ」
一歩ずつ歩みを進めながら、いつものような会話を続ける。
「強い奴なんてここにはサーゼクスさん達位でしょ?」
「俺の目の前にいるじゃないか、俺の手を離れて禁手にまで至った強者が」
少しずつ歩くスピードが上がり、次第に駆け足になる。
「目の前にいるのは、いつもあんたに泣かされてた弱っちい人間だ!」
「自分をしっかり評価できる奴は、それだけで十分強いのさ!」
互いに拳を握り、眼前まで接敵する。
「今日は俺があんたを泣かしてやる!」
「カズキ! お前は何処まで強くなれた!?」
振り上げた拳を、俺たちは同時に振り下ろ–––
「なんちゃってぇ!」
「何!?ぐっ!」
踏み込んだ瞬間、ヴァーリさんの体重を支えている後ろの方の足に細工する。
足裏の土をモグラさんに持ち上げて貰ったのだ。
ここのバランスを崩せば姿勢も崩れる。
前のめりになったヴァーリさんの顔面を思いっきり殴り飛ばした。
すぐに態勢を整えられてしまったが、取り敢えず一発入れた。
「やっぱ大してダメージないか、貧弱すぎんだろ俺」
「いや、今のは驚いた。そうだな、お前はそうやって意表をつくのが得意だった」
全力で殴って兜が割れただけ。
それもすぐに作り直された。
自分の非力が嫌になる。
しかも、ヴァーリさんはまだ能力を使っていない。
「さて、此方からも行かせてもらうぞ」
「全力で拒否しますっ!」
地面を殴り、先程テロリストを襲撃した土の獣を繰り出して襲わせる。
んでもって両方の掌からドリルを出現させ、それを連続で射出。
大きな土の塊と、無数の掘削金属に襲われようとものともしない。
そんな事は知っている。
土煙と金属音に紛れて、脚のタービンをタイヤ代わりに一気に近づく!
向こうからは見えなくても、こっちはモグラさんのナビゲートでバッチリだ。
そのまま突撃して通り抜けざまに一発。
足でブレーキを掛けて、すぐに飛び掛かる。
互いの拳が交差する。
ヴァーリさんの右を、左のタービンを回転させて流してそのまま肘を腹に叩き込む。
踏み込もうと持ち上げた足を踏みつけ、タイミングのズレた拳をギリギリで避けてから、顎を拳で強打。
ヴァーリさんが迎撃しようと身体を此方に向けるが、モグラさんに腰周りまで土を伸ばして貰って固定。
一瞬動きが止まり、拳を後頭部に勢いよく打ち下ろす。
「がっ!? く、アルビオン!」
『Divide!』
やば!
……あれ? 何ともない。
あ、モグラさんの不思議フィールドが護ってくれてるのか。
ホントに凄いな、モグラさん。
ヴァーリさんも驚いている様だ。
「まさか、防がれるとは思わなかったな」
『流石は【神秘の豊穣土竜】か。こと守護に関しては我等二天龍とすら張り合う』
「なら、直接殴ればいいだけだ」
いや殴らないでよ、死んじゃうから
モグラさんのお陰で半減能力は効かないみたいだけど、それだけだ。
どうしても攻め手に欠ける。
生命エネルギーとかいうのは使えない。
次に使ったら確実に命を落とすと朱乃さんに釘を刺された。
ま、使い方なんてわからないんだけど。
悩んでいると、ヴァーリさんから声を掛けられる。
「カズキ。俺は、手加減して勝てる男か? 俺は、その程度の男なのか?」
「……ずるいなぁ」
そんな事言われたら、やるしか無いじゃないか。
モグラさん、また倒れちゃうかもだけど許してね。
意識を集中して、気合を込める。
手脚のタービンが回転を始め、エネルギーを生み出していく。
「コカビエルを倒した『アレ』か……赤龍帝のブーストなしで通用すると思っているのか?」
んなもん知らん。
胸の装甲が開き、そこに内蔵された結晶体からビームが……放たれなかった。
そこから出てきたのは、少し小さい光輝くモグラさん。
それが結晶体からポコポコと生み出される。
暫くすると、俺の足下には光るモグラさんで溢れかえった。
何このビッ◯リドッキ◯メカ。
メカの素なんて食べてないぞ。
心が癒されちゃうじゃないか。
「……何だそれは」
ヴァーリさんが怪訝な視線を向けるが、俺に聞かれてもわかりません。
おかしい、シリアスな空気が吹っ飛んだ。
このモグラさん達、エネルギーの塊の様だ。
そういやヴァーリさんの翼って……。
あぁ、なるほど。
「いくぞモグさんズ! 突撃っ!!」
俺の号令に従って、光るモグラさん達は一斉にヴァーリさんに飛び掛った。
何気に空飛んでるのまでいる。
流石モグラさんの分身、ハイスペックだ。
「当たると思うか? アルビオン!」
『Divide!』
大量のモグラさんの半数が消える。
しかしまだ数は十分に多い。
何より、もう届く。
「っ!? こいつ、噴出口に!」
モグラさんが余剰エネルギーの噴出口に身体をねじ込む。
エネルギーの塊であるモグラさんがそこに入れば、エネルギーを排出出来ず……。
ドカン!!
背中の翼が爆発を起こし、大きく体制を崩す。
その隙に残りのモグラさんがヴァーリさんの身体中に貼りつき、そのまま起爆。
爆煙が晴れると、鎧が剥がされ地に膝をつくヴァーリさんがいた。
あんだけやってようやくダメージかよ。
こっちはもう無理。
「ここまでやれるならもう大丈夫だな……」
「はい? 今なんて……っと」
あぁ、禁手化も解けてしまった。
何とかグローブ状態を保ててはいるけど、これも長くは持たない。
「カズキ! 大丈夫か!?」
イッセーが加勢に来てくれた。
てか、もっと早く来いよ。
え? 手を出しちゃいけないかと思った?
なんでさ。
「今のは危なかった。アルビオンがモグのサイズを半分にしなかったら、腕や足が吹き飛んでいたかもしれない」
ヴァーリさんが手をフルフルと振りながら呟く。
え? あれそんなに凄いの?
よ、よかった防いでくれて。
流石にそこまでする気はないし。
「サイズを半分? どういう事だ?」
「白龍皇には物を半分にする力が……え〜と、わかりやすく言うとあれだ。ヴァーリさんは、リアス先輩の胸も半分に出来るって事だ」
多分、俺のこの一言は言ってはいけなかったんだと思う。
リアス先輩の胸を半分にする。
これは、イッセーには何よりも許せなかったんだろう。
ヴァーリさん、そんな事するなんて一言も言ってないんだけどね。
イッセーは怒りに任せてなれなかったはずの禁手になり、ヴァーリさんはヴァーリさんで急激に力の跳ね上がったイッセーに興奮して殴り合い始めるし。
俺はモグラさんをグローブから元に戻して、頭にのせながら体育座りで勝負を見守っている。
俺ってばスゲー蚊帳の外。
イッセーがぶっ壊したヴァーリさんのコアを自分の腕に移植したのは驚いた。
あんなことできるんなら、俺らもイッセーから貰ってやってみる?
あ、凄い痛いの? ならいいや。
ヴァーリさんが奥の手使おうとした所で、新たな乱入者。
中国チックな防具に身を包んだイケメン。
美猴さんだった。
手を振ってきたから振り返しておいた。
やっほー。
ヴァーリさんと何やら話すと、地面に如意棒を突き立てて二人して地面に沈んでいった。
忙しないなぁ、美猴さん。
ヴァーリさんがこっちを見ながら何か言ってたけどよく聞こえなかった。
イッセーは追いかけようとしたが、限界だったようで鎧も解除されて地面に倒れこんでしまった。
リアス先輩が駆け寄って抱き上げている。
爆発しろ。
「さて、これからどうするかねぇ」
アザゼルさんが頭を掻きながら近寄ってきた。
っておい。
「ちょ! 腕どうしたの!?」
「ちょっとトチってな、自分でぶった切った」
「アホかっ! チョロいとか言っといて何してんの!? 油断してんなオッサン!」
「あ? 誰がアホだ、俺はきっちり倒したぞ。お前は結局やられてんじゃねぇか」
「やられてねぇから、イッセーに乱入されたから無効になっただけだから」
「ハッ! 負け犬の遠吠えが聞こえるなぁ〜? 成果が出せなきゃ負けなんだよ、負け犬ぅ〜!」
「泣かすぞ、オッサン!」
「逆に泣かせてやる、クソガキ!」
向こうではイッセーがいい感じに話を締めようとしているのに、こっちでは片腕のオッサンと疲労困憊の高校生が殴り合い。
後でグレイフィアさんに怒られました。
ごめんなさい。
「で、何でまた俺は拘束されてるの?」
俺を取り囲むように立つオカ研メンバー。
今日はもう疲れたから休みたいんだけど。
「ごめんなさい。疲れてるのはわかるけど、どうしても聞きたい事があって」
リアス先輩が申し訳なさそうに聞いてくる。
「貴方、本当に何者なの? お兄様と仲が良さそうなのも驚いたけど、堕天使の総督であるアザゼルとも親しいみたいだし」
「仲がいいかは置いとくとして。まぁ俺を助けてくれたのって堕天使の人たち、というかヴァーリさんですし、5年くらい一緒にいましたから」
「なんで黙ってたの?」
いや、聞かれてませんし。
こう言ったら怒るよね、多分。
「いや、ほら。悪魔と堕天使って仲が悪いって聞いたし、アーシアちゃんの事もあったから……」
まぁ流石にそれで攻撃してくるとかは思わなかったけど。
「……ヴァーリを兄と呼んだのは?」
「えっと、その……何というか……すみません、言いたくないです」
腹立って勢いで言っちゃったとか、恥ずかしくて言えない。
「そうよね、ごめんなさい……貴方も気を使ってくれてたのに、聞き方がキツかったわ」
ん? なんの話?
と、とにかく勢いで乗り切ろう!
「それにほら、俺自身はただの人間ですから!」
別に堕天使の言うことは絶対だ〜!
なんて教育もされてない。
「だから、その……今まで通りに接してくれると嬉しいな〜って……」
あれ? なんでみなさんまた哀しそうな顔を。
ちょ、アーシアちゃんがまた泣いちゃった!?
「当然よ。貴方は眷属じゃなくても、大切な友人だもの」
「あぁ! 俺だっていつまでもお前と友達だ!」
リアス先輩とイッセーの言葉に、周りのみんなもうんうん頷いている。
小猫ちゃんは涙目になりながら俺の手を握ってくれた。
よくわからないが、満足そうだしまぁいいよね。
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カズキくんが堕天使側の人間。
最初にそう思った時、頭の中が真っ白になって最悪な想像が幾つも浮かんできた。
戦闘が終わり、落ち着いた頃に私たちグレモリー眷属はカズキくんに尋ねた。
貴方は何者なのか、と。
何故あんなにアザゼルと親しいのか、と。
彼を施設から救出したのは、堕天使陣営だった。
そこで暮らす五年の内に、アザゼルやヴァーリと親しくなっていったのだろう。
しかしヴァーリを兄と呼んだ事に関しては、喋りたくないと何も答えなかった。
もしかして、彼は本当にヴァーリの弟さんなのかもしれない。
人間であるから、ルシファーの血族では無く
父違いの異父兄弟になるのか。
その兄が誘拐された自分を助けてくれた。
小さいながらにさぞ嬉しかったことだろう。
今まで家族がいなかったのだから、尚更だ。
そんな兄が、この様な凶行に出たのだ。
心境として複雑なのだろう。
だからアザゼルに八つ当たりの様に殴りかかったのかもしれない。
その後に彼は言った。
『自分はあくまでただの人間』
『だから、今まで通りに接してくれないか』
目が、不安を抱えているのがわかった。
彼は、私たちが、仲間がいなくなるのを恐れているのか。
なんだ、深く考える必要などなかったのだ。
彼はどこまで行っても彼のままだ。
優しくて、優しすぎる彼のままなのだ。
リアスやイッセーくんの言葉に、みんなも一様に頷いた。
小猫ちゃんは、自分の姉も同じ様な形で別れてしまっているので、強く共感したのでしょう。
目に涙を含ませながら、カズキくんの手を強く握ってあげていた。
貴方は一人ではないと言い聞かせるように。
でも、一つだけ気がかりがある。
私の父、バラキエル。
5年も堕天使の施設にいたのだ、顔を合わせた事もあるかもしれない。
私について、何か言っていたかもしれない。
何か聞いていたかもしれない。
私に優しくしてくれてるのは、それが理由?
怖くて聞けなかった。
もしそうだったら、私は……。
感想でも言われましたし、そろそろ勘違いタグ外した方がいいですかね?
無理にそこにこだわる必要もないですし。