明日からは1日1話位で出来たらいいな。
先日、バラキエルさんに連れられて孤児院に到着。
引き取る事についての書類関係の処理と、みんなにお別れをしてきた。
改造人間になったから鍛えてくると伝えたら、とうとう頭が壊れたという素敵な別れの言葉を貰った。
お返しに、パワフルになった身体を生かして砂場に頭だけ出して埋めてあげたら、行かないでくれと泣いて別れを惜しんでくれた。
素直ではないが、いいトモダチだと思う。
そんなこんなでここは《神の子を見張る者》(グリゴリ)の神器研究施設兼俺の自宅。
ヴァーリさんが教えてくれたのだが、どうやら神器と言うのは火がだせたり、氷がだせたり。
はたまた剣やら槍やらが出せる素敵アイテムらしい。
何とも厨二心をくすぐられる一品だ。
ヴァーリさんも持っていて、アザゼルさんは神器を研究するのが趣味なんだとか。
今日はそれの出し方を教えてくれるらしい。
「手を前に突き出せ。いいか、自分の知る中で最も強いと思うものを連想しろ。そしてそれが一番力を発揮している所を強く、強く思い描け。この訓練室は魔力が濃いから比較的神器も出しやすいはずだ」
強いもの……アザゼルさんは強いらしいけど、見たことないから愉快なオジさんのイメージしかないし。バラキエルさんは優しい人のイメージが強すぎる。
そういえば前にヴァーリさんの神器を見せてもらったっけ。
なんたらドラゴンが宿ってて、「白龍皇」とかいう厨二な肩書き持ってるんだっけ?
ドラゴン……龍……竜……そういえばモグラって土竜って書くんだよね。
孤児院の畑で見たことあるけど、鉤爪とかあるし、地面の下だけじゃなくて上でも普通に素早いんだよね。
あとかわいいし、それとかわいい。
む、気付いたら俺の手の上に文字通り掌サイズのモグラさん。
なんか若干デフォルメされて可愛らしさが強調されている気がする。
「それがお前の神器か。以前アザゼルが独立具現型の神器があると言っていたな、恐らくそれだろう」
どくりつ……まぁ要するに生きてる神器って事だな。
難しい事はどうでもいいや、うん。
「これからよろしくね、モグラさん」
「キュ?キュイ」
後脚で立ち上がり、俺に向かってチョコンと頭を下げた後、腕を伝って登っていき頭の上で寝そべった。
かわゆい。
武器っぽくないけどそういう神器もあるのかね?
なんでも《神滅具》(ロンギヌス)とかいう神器の中でもすんごいスペシャルな物があって、その中の一つがそのなんたら型って奴らしい。
ちなみにヴァーリさんのもその神滅具だそうだ。
やっぱイケメンは天に二物も三物も与えられているのか、なんかずっこい。
ヴァーリさんも神器にはそこまで詳しくないらしいので、後日アザゼルさんのところに行って聞いてみるように言われた。
そのまま歩くだけで人混みを二つに分け、ヴァーリさんは去っていった。
何で皆はヴァーリさんを避けるんだろう。
他の人達はヴァーリさんが怖い人だと言うけれど、そんな事ないのになぁ。
色々構ってくれるし。
いつか誤解が解けるといいな。
で、言われた通りにアザゼルさんのところに訪問。
アポ?
そんなものこの人には必要ないんじゃないかな、偉いらしいけどいつも部屋で書類ほっぽって機械弄りしてるし。
その度シェムハザさんに怒られてるけど。
「独立具現型ってまた面白いもんが出て来たな、強く念じれば武器に変わるはずだぜ」
なるほど。
じゃあモグラさん、よろしく。
手に乗せてお願いすると、土竜さんが光り俺の両手にグローブ?手袋?みたいな物が装着されていた。
先端に小さくではあるが鉤爪みたいな物があって、手の甲には宝石みたいなのが付いてる。
うむ、実に厨二くさい。
嫌いじゃないが。
「グローブ……にしてはいかついな。籠手にしては範囲が狭いし。調べてぇが仕事が……くそ、時間が無さ過ぎるっ! 」
手をワキワキしつつハァハァ言いながら近づいてくるアザゼルさん。
怖いので逃げだした。
振り向いたら追いかけてきててビビったけど、偶然遭遇したバラキエルさんとシェムハザさんに捕まって怒られてた。
ざまぁ。
あ、シェムハザさんはアザゼルさんの次に偉い人ね。
モグラさんも怯えていたし、アザゼルさんがマッドなサイエンティストと言われているのを再確認した。あれは怖い。
数日後、ヴァーリさんが友達に会いに行くというので連れて行ってもらった。
ヴァーリさんってやっぱ凄い。
なんとあの有名な孫悟空と友達なのだ。
名前は美猴(びこう)さん。
この人もイケメンで、なんかワイルドだけどいつも笑ってて、とっつきやすい兄貴分な人だった。
イケメンはイケメンを呼び寄せるらしい。
修行とか言ってしこたま如意棒で殴られたけど。
ヴァーリさんといいイケメンはみんなドSなんだろうか。
それからは、俺の訓練に美猴さんの課外実習という名のイジメが加わった。
世界はなぜ俺に厳しいんだろう。
そんなこんなで、色んな事が起きながら俺はここで五年間過ごした。
グリゴリの皆さんが俺の身体を調べてテンション上げてたり。主にアザゼルさんが。
神器であるモグラさんを調べようとして、モグラさんと施設中で追いかけっこしたり。主にアザゼルさんが。
技術者の人達と色々作って暴走させて怒られたり。主にアザゼルさんが。
特訓と称して俺を虐めたり。これはヴァーリさん達もだけど。
そんな様々な体験を経て、俺は現在この人間界の駒王町にいる。
俺が拉致される前に住んでいた場所。
今日からまた、俺が住む事になる街だ。
アザゼルさんの『少しは常識を学んでこい』と言う有難くないお言葉と、バラキエルさんのとあるお願いの為にここまで帰ってきた。
堕天使とかいう非常識な存在に常識を語られたのは納得いかないが、お世話になってるバラキエルさんのお願いは断れない。
そして、ヴァーリさんや美猴さんの特訓地獄から逃げられるっ!!
これはとても大きい。
2人のことは嫌いではないが、とにかく訓練が尋常ではないのだ。
二人は強いからいいが、俺はそこら辺にいる雑魚なんだ。
同じレベルを求めないでいただきたい。
こういう事を言うと向上心が足りないとシゴきが増えるので本人には言えないが。
今感じているうちに自由というものを噛み締めながら、胸ポケットにいるモグラさんと一緒にシェムハザさんとバラキエルさんが用意してくれたマンションへと歩を進める。
「さぁ行くよモグラさん。俺たちは、自由だぁ〜! 」
「キュ〜! 」
周りの人に変な物を見る目で見られたが気になどしない。
せっかく味わえる久々の学生生活だ、たっぷりと楽しんでいこう。
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あいつは、能力はあるのにやる気がない。
いつも逃げ腰な上に、戦い方まで狡い方面にばっかり成長していく。
初見の時はヴァーリや俺まで嵌められる程だ。
身体を弄られているとはいえ、ただの人間が堕天使の総督や白龍皇を出し抜くのだからもはや笑えてくる。
そう、あいつは人間。
俺たちの側に5年もいたのに、人間なのだ。
俺たちみたいな存在になりたいと思わないのか尋ねてみたが、あっさり断りやがった。
あいつは人間である事にこだわる。
身体がどんなに変わっても、人間でありたいのだろう。
だから今回、あいつを元の居場所に送り返した。
朱乃もいるし、理由付けは完璧だ。
バラキエルも娘を気にしていたし、カズキにもいい経験になる。
帰ってきたいならそれなりの仕事を割り振ってやるし、そのまま人間界で過ごしたいなら好きにさせるつもりだ。
俺やヴァーリに扱かれた今のあいつなら、余程のことがない限り大抵のことは対処できるだろ。
問題ないと言えないのが少し情けないが。
さて、そろそろカズキは街に着いた頃だろうか。
少しばかり遅いが、手放してしまった人間らしい生活を送るのも悪くないだろう。
友を作って女を作って、存分に青春って奴を楽しんでくるといい。
あいつがどうなるか、どういう人生を送るのか。
最近は、神器を研究するのと同じ位には楽しんでいる自覚がある。
カズキが堕天使になるのを断る理由
アザゼル「お前を堕天使にしてやろうかぁ!」(某閣下風)
カズキ「羽根の手入れメンドそうだからヤダ。」
アザゼル「」
多分こんなもん。