モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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書く時間が俺のSAN値と一緒にガリガリ減っていくぅ……


六巻 体育館裏のホーリー
31話


夏休みも終わり、最近は九月に行われる体育祭の準備に忙しくなってきた。

そうじゃなくても、アーシアにプロポーズしてきたディオドラとかいう優男をどうするかで俺はいっぱいいっぱいだ。

 

そんな時に、以前ゼノヴィアと一緒に聖剣の回収にやってきたイリナがこの学校に転入して来た。

神の死を知り、ミカエルさんに仕える事になって、なんと天使としてここに派遣されたのだという。

白い羽と天使の輪が出てきてビックリした。

あの時はギスギスした別れになってしまったが、ゼノヴィアやアーシアとも無事和解できた様で一安心だ。

 

アザゼル先生からも説明やら解説があって、ソーナ会長にも挨拶に行く事に。

俺もイリナに付き添って生徒会室まで行ったが、会長は不在。

カズキと一緒に家庭科調理室にいるそうなので、そちらに向かおうとしたら匙を含む生徒会メンバー全員に止められた。

 

「と言うか匙、カズキと会長さんを二人きりにしていいのか?」

 

「確かに複雑ではあるが……あいつは俺たちの為に不可能に挑戦してくれてるんだ、邪魔なんて出来ねぇ」

 

何でそんな辛そうな顔をしてるんだお前は。

しかしこの学校に天使として転入したのに、生徒会長に挨拶無しはマズいので反対を押し切り調理室に向かい、到着した。

いざドアを開けようとすると何やら声が聞こえてくる。

 

(もうダメですカズキくん……)

 

(何言ってるんですか、手首を使ってやらないから疲れるんです。ほら、頑張って)

 

……ん?

 

(でももう……いいでしょう?)

 

(しょうがないですね、じゃあ後ろから–––)

 

え、何これそーいう事ですか?

お楽しみ中? お楽しみ中なの?

うわ、イリナも顔が真っ赤だ。

てか学校でそんな羨まけしからん事してんじゃねぇ!

 

……後学の為に見学しよう。

音をたてない様にドアをゆっくりと開け、中を覗き込む。

そこにあった光景は–––

ボウルと泡立て器を手にした半泣きのソーナ会長と、腕組みしながら熱血指導しているカズキの姿だった。

 

「紛らわしい会話してんじゃねぇッ!」

 

『はい?』

 

ドアを勢いよく開けながらつい叫んでしまった。

二人して、不思議そうに顔を傾けながらこっちを見ている。

清々しいまでに逆ギレしてしまったが、俺は悪くないと思うんだ。

 

 

 

イリナはソーナ会長に挨拶を済ませ、カズキにも挨拶する。

 

「という訳で、本日からこの駒王学園に通う事になりました紫藤イリナです! お久しぶりね、カズキくん♪」

 

「あ? 知らん、今忙しいから帰れ」

 

バッサリ斬りすぎじゃないかなカズキくん!?

見ろよ、元気の塊みたいなイリナが一瞬でしぼんだぞ!?

 

「違う、粉は最後にゴムベラで切る様に混ぜ合わせるんです。事前に振るっておくのを忘れると、ダマになって口の中に残っちゃいますよ」

 

「それでしたら魔力で……」

 

「ダメです! そうやってすぐ魔力に頼ろうとするから上達しないんです、お菓子作りは繊細なんですから自分でやって身体に覚え込ませてください」

 

「うぅ……カズキくんが厳しいです……」

 

そんなイリナに目もくれず、カズキは会長にお菓子作りの指導を続ける。

熱心に教えてるなぁ。

この間、カズキは会長さんのクッキー食べてエライ目に遭ってたもんな……。

 

安倍先輩のお見合い騒動が終わった後の宴会で、カズキは会長さんからクッキーの差し入れを貰った。

モグさんと一緒に一枚食べた後、カズキは残り全部をいきなり口にかっこんだ。

俺が文句を言おうとしたら、匙が俺の肩に手を置いて涙を流しながら黙って首を横に振った。

 

匙が言うには、ソーナ会長は料理は問題ないが趣味のお菓子作りだけは何故か壊滅的に下手なんだそうだ。

指摘したら会長がショックを受けてしまうし、それを聞きつけたセラフォルーさまが暴れにやってくるから誰も言えないらしい。

だからいつもは匙が気合で完食しているのだとか。

愛の為せる技か……漢だな、匙。

 

そんなクッキーを、カズキは牛乳で何とか胃に流し込んだ。

何が起こるのかと身構えたが、カズキはその後もみんなと普通にパーティーを楽しみ、そのままお開きになった。

みんなを見送るカズキを見ながら

『なんだ、そんなに大袈裟に言う事ないじゃないか』

そう思っていた、その時は。

 

二日後の月曜日、カズキが登校してこなかった。

ゼノヴィアに聞いたらみんなが帰った後、急に謎の腹痛に見舞われたらしい。

カズキはその後一週間学校に来ることはなかった。

 

ちなみにモグさんはグリゴリの施設で精密検査を受けたそうだ。

ヴァーリの半減の力すら防いだモグさんを仕留めるソーナ会長のお菓子……もういっそ武器として携帯するのもありなんじゃないだろうか。

 

後で匙に聞いた話だが、カズキは復活するとすぐに生徒会室に乗り込んで、自分で作ってきたお菓子をソーナ会長に食べさせた。

 

『美味いですか? そうです、正直今の俺の方が会長さんより美味しい物が作れます。だから会長さん、俺と一緒にお菓子作りの特訓をしましょう。今のままでも『倒れる』くらい美味しい会長のお菓子は、まだまだ進化できるんです。遠慮しないで下さい、というか拒否なんて許しません』

 

そしてこんな感じで捲し立て、抗議に来たセラフォルー様まで言いくるめて無理矢理指導する方向に持っていったそうだ。

匙はカズキに後光が差して見えたそうだ。

 

「でも今って体育祭の準備で生徒会も忙しいんじゃないのか? こんな指導してたら業務に支障が出るんじゃ……」

 

「そっちのフォローも俺がやってる……後は焼くだけでキリもいいですし、今日はここまでにしましょうか」

 

「恥ずかしながら、例年よりも順調に進んでいます……私、判子を押すだけしかしてないのに……」

 

カズキが調理器具を片付け始め、ソーナ会長は肩を落としながら答える。

ありゃりゃ、落ち込んじゃってるな。

 

「何言ってるんですか、会長さんが事前に用意してくれていたからみんなも動けるし、あれだけスムーズに事が運んでるんですよ。お菓子作りだってドンドン上達してますし、やっぱり会長さんは凄いです」

 

「そうでしょうか……ですが、そうですね。カズキくんもそう言ってくれているのですから、私もそれに応えなくては!」

 

おぉ、ソーナ会長が元気になった。

落としてから上げる……成る程、これがモテるコツなのか。

カズキはこういう事が出来るからモテるのか……実際ソーナ会長ともお似合いに見える。

別にカズキは会長に惚れてるなんて言ってないが、本当のところは分からない。

匙に頑張るように伝えなきゃな。

 

ほら、イリナも凹んでないで行くぞ。

大丈夫だよ。

今は忙しいからあんなだけど、カズキは優しくていい奴だから。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

しまった、つい会長さんとの特訓が白熱し過ぎて小猫ちゃんにモグラさんを預けるのを忘れていた。

元気のないアーシアちゃんを励ますんだって張り切ってたし、急がなくては。

 

なんでも最近、アーシアちゃんがストーカー被害にあってるんだとか。

ストーカーって悪魔にもいるんだな、やっぱ人間と大して変わらないじゃん。

ちなみに犯人はこないだ駅のホームでアーシアちゃんにプロポーズしてきたディオドラって人。

 

映画のチケットやら高価な宝石やら、イッセーの家に大量に送り付けてきて困ってるそうだ。

面倒なのに目を付けられてアーシアちゃんも大変だ、あんまり酷いようなら俺も相談に乗ってあげようかな。

っとオカ研部室に到着だ。

 

「失礼しま……なんでストーカーさんがここに」

 

部屋に入ると例のストーカー、ディオドラがリアス先輩と何やらお話中だった。

 

「いきなりストーカー呼ばわりか、流石礼儀をわきまえてない人間は違うね」

 

「だろ? 照れるわ」

 

「褒めてないからね」

 

うん、知ってる。

あらら、薄っぺらい笑顔に青筋が浮かんでらっしゃる。

あっ小猫ちゃん、モグラさん預かっててね。

 

「で、どういう状況?」

 

「状況も把握しないで相手を挑発しないでくれないかな……?」

 

木場が笑顔を引きつらせながら言ってくる。

や、だってなんか腹立つ顔してたから。

理由にならない? そうね。

はぁ、遂にプレゼントだけじゃなく御本人まで来ちゃった訳か。

顔はいい癖に必死だな、なんか笑える。

 

話を聞いていると、ディオドラはどうやらアーシアちゃんのトレードについてリアス先輩と交渉しに来たようだ。

見事に突っぱねられてたけど。

ざまぁ。

 

「–––わかりました。今日はこれで失礼しますが、僕は諦めません」

 

いやどう見ても見込みないだろ、諦めろよ。

 

「アーシア、僕はキミを愛しているよ。この世の全てが僕たちの間を否定しても、僕はそれを乗り越えてみせるよ」

 

ディオドラはそう言うとアーシアちゃんの手を取り、その甲に口を付けようとする。

だが、小猫ちゃんの所から飛び跳ねたモグラさんに手を引っ掻かれた上に、イッセーに肩を掴まれ阻止される。

いいぞモグラさん、かっこいい!

あ、イッセーもね。

 

ディオドラは引っ掻かれた手を押さえながら、イッセーの腕を払い退ける。

 

「触らないでくれないか? 薄汚いドラゴンと獣に触られるのはちょっとね」

 

……あ゛?

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

ディオドラ・アスタロトも面倒な事をしてくれる。

アーシアさんをトレードで手に入れようなんて、何を考えているのか。

 

リアス部長がトレードの話を断ると、今度はアーシアさんに直接話しかけてきた。

ディオドラが歯の浮くような言葉を並べ立て、アーシアさんの手の甲にキスをしようとしたその時。

 

モグさんが小猫ちゃんの所から飛び跳ね、ディオドラの手に爪を立ててアーシアさんを庇うように立ち塞がった。

イッセーくんも肩を掴んで、ディオドラを静止させる。

 

「触らないでくれないか? 薄汚いドラゴンと獣に触られるのはちょっとね」

 

そんなイッセーくんの腕をディオドラが払い退けてから、笑顔でそんな事を言い放つ。

イッセーくんが憤慨して一触即発の空気を醸し出した時、彼が喋り出した。

 

「物で女の子にアプローチ……モテない男の典型例だよね」

 

「……何が言いたいのかな、人間くん?」

 

ディオドラが声の主、カズキくんに向き直る。

 

「顔はいいのにその残念な性格のせいでモテないのか、可哀想だなぁディオドラくん?」

 

カズキくんが皮肉たっぷりに笑うと、今まで浮かべていた笑顔が僅かに曇る。

あぁ、これはもう『エンジン』が掛かっている。

僕では止められない。

 

「あれれ? 折角頑張って貼り付けてた薄っぺらい笑顔が剥がれかけてるよ? 愛しのアーシアちゃんにそんな顔見せていいの?」

 

「よくもまぁ口が回るね、君の性格の悪さを表しているようだ」

 

「俺はそういうの隠そうとしないからな、それでもアーシアちゃんとは仲良しだぞ? 誰かさんと違って」

 

「君の様な下等な人間と、薄汚いドラゴンが一緒にいたらアーシアの害に–––」

 

言葉を遮るように、パンッという破裂音と共にアーシアさんがディオドラの頬を平手打ちした。

 

「いい加減にして下さい! お二人の事、何も知らないのにそんな事言わないでっ……!」

 

眼を涙で潤ませながら、しかしはっきりとディオドラを睨みつける。

普段は優しくて手を出した事などないアーシアさんの行動に、僕たちは驚き固まってしまった。

それだけイッセーくんとカズキくんが大切なのだろう。

 

その後、ディオドラがイッセーくんを倒したら愛に応えてくれなんてアーシアさんにふざけた事を言い出して、イッセーくんが即答。

次のレーティングゲームで決着を付ける事になった。

 

アザゼル先生によると、試合は5日後になるそうだ。

今回は特例も何もないので、カズキくんはゲームに参加する事はできない。

 

「俺はリアス先輩の眷属じゃないからゲームには参加できないか。残念だな、そのツラ二度と見なくて良い様にボコボコにしたかったのに」

 

「……あまり調子に乗らない方がいい。儚い人間の命だ、大事にしたいだろう?」

 

「ハッ! まるで三流の小悪党みたいな脅し文句だな、とても名家のお坊ちゃんとは思えない。裏で一体何をやっているかわかんねぇなぁ?」

 

しかしよくもまぁ次々と挑発の言葉を紡げる物だ。

彼はアーシアさんの事になるとやたらと熱くなる様だ。

ディオドラもつられて素が出かかっている。

それが彼の狙いなのだろうが。

 

「……全く、物を知らない奴の相手は疲れるね。失礼するよ」

 

……おや?

ディオドラが急に引き下がった?

まさか本当に裏で何かやっているのか……?

 

「お前が何をしようがイッセーは負けない、こいつは『やる奴』だからな。イッセーとモグラさんを馬鹿にした事、そして何よりアーシアちゃんに粉かけた事を後悔しやがれ」

 

「ふん、精々頑張る事だね。じゃあアーシア、またね」

 

ディオドラはそう言うと、魔法陣を展開して部室を後にした。

カズキくんとイッセーくんが魔法陣のあった所に塩を撒こうとして、部長と副部長に止められていた。

二人ともよっぽどお怒りだったようだ。

 

もちろん僕も怒りを感じている。

アーシアさんを困らせた事。

親友であるイッセーくんを侮辱した事。

今度のゲームで、カズキくんの分まで分からせてやるさ。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

あーくそ、イライラするぅ!

夜になっても怒りが収まらず、ランニングでもして気分を紛らわせようと街を走り回っていた。

 

アーシアちゃんにアプローチするだけなら構わんがな、節度を持ってやれや!

イッセーだってな、仲間想いの熱い奴なんだよ!

モグラさんを馬鹿にしたのも許せん!

 

うがぁぁぁ! また腹立ってキタァ!

もういっそ、あいつブッ飛ばす為だけにリアス先輩の眷属になってもいい!

ちょっとお願いしてみようかなッ!

 

ランニングがいつの間にかダッシュに変わってしばらくした頃、前方にイッセーを発見。

一緒にいるのは……ヴァーリさんと美猴さん?

あ、向こうもこっちに気付いた。

 

「なんだ、カズキじゃないか。トレーニングか?」

 

「俺っちに負けて、リベンジの為に鍛えてんのかぃ? 殊勝なこった」

 

走って乱れた呼吸を整えながら返事をする。

 

「ハァ……ハァ……フゥー。なんで二人してイッセーに絡んでるんですか。あんま俺のパシ……友達を虐めないで下さいよ」

 

「おいコラ、今なんて言おうとした」

 

俺のログには何もないな。

 

「なに、未来のライバルに忠告に来ただけさ」

 

「どうにもあのディオドラって奴はキナ臭くてねぃ。お前さんも絡まれた……いや絡んだんだっけか? まぁとにかく気をつけろってこった」

 

はぁ、親切だね。

てか、テロリストなのにこの街に来てていいの?

あぁ美猴さんの妖術と仙術で誤魔化してんだ。

やっぱ便利だな、仙術。

 

「まぁ俺が伝えたかったのそれだけだ。帰るぞ、美猴」

 

「お、そうだ。カズキ、お前さん飯作ってくれよ。こないだ負かした分の料理作ってないだろ? 今からお前さんの家でご馳走してくれよ」

 

美猴さんは名案のように言ってくる。

ち、覚えてたか。

 

「今日は家に他の人もいるから無理。どっかの店に入るなら奢りますけど」

 

「なら噂のラーメン屋にでも寄ってこうぜぃ。ヴァーリも行くだろ?」

 

「あぁ」

 

ヴァーリさんは短く答えるが、俺にはわかる。

今ちょっとテンション上がったな。

 

「んじゃ行きますか、イッセーも来いよ」

 

「え? ヴァーリ達と一緒にラーメン食べに行ったなんて、部長に言ったら怒られるんじゃ……」

 

言わなきゃいい、バレたら知らんが。

尻込むイッセーをむりやり連行し、四人でラーメン屋に向かった。

いつの間にかイライラも消え、久々にヴァーリさん達と食べたラーメンは美味かった。




会長のお菓子の腕向上と、カズキが会長と仲良くなっていくのを天秤に掛けて悩み続ける匙くんがいますが、無害ですので放っておいてあげて下さい。
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