モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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カズキとモグラさんのプロフィールが欲しいと感想にありましたが、どんな事を書けばいいんですかね?


32話

「で、みんなでラーメン食べて帰ってきたのね……イッセーから聞いてたけど、何やってるの貴方達は」

 

リアス先輩が呆れ気味に嘆息する。

そんなにマズイかね?

 

「もう既に朱乃さんからお小言頂いたんで、そろそろ許してくれると嬉しいです……」

 

まぁそのお小言も、ご飯食べてくるなら事前に連絡入れろって物ですが。

奧さんみたいと言ったら何故か上機嫌に。

今度から困ったらそう言おう。

 

「まぁ私が煩く言うような事じゃないわよね……所で、カズキくんはどうするの?」

 

はい?

なんの話かね?

 

「お、そういや言うの忘れてたわ。カズキ、お前今度リアス達と一緒に冥界に行け」

 

俺が首を傾げていると、横で脚を組みながら座っていたアザゼルさんが口を挟んできた。

 

「なんでさ」

 

「お前さんが前回のレーティングゲームで大暴れした所為だよ。リアス達のインタビューと一緒に、お前の取材もやるんだとさ」

 

「聞いてないんだけど」

 

「言ってねぇからな、当然だ」

 

俺とアザゼルさんが殴り合いを始めるのに、時間はかからなかった。

そんな訳で、再び冥界行きが決定した。

所で取材って何やんの?

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

グレモリー眷属として、冥界のテレビ局でインタビューを受ける事になった。

カズキも別口の取材を受けさせられるとかで、ぼやきながらも一緒に冥界にやって来ている。

 

「もうテレビ局まで来ちまったんだから、いい加減諦めろよ」

 

「お前らはインタビューって解ってるから良いけどな、俺は何やるのかすら聞いてないんだぞ? しかも斡旋がセラフォルーさんとか、嫌な予感しかしねぇ……」

 

「あらあら大変。ゼノヴィアちゃん、私たちで励ましてあげましょうか?」

 

「そうだな、私と副部長でご奉仕してやろう。きっと元気が出るぞ、色々と」

 

「そんな怪しいご奉仕要らん。元気じゃなくて内臓とか出そうじゃん」

 

カズキはさっきからこの調子で、朱乃さんやゼノヴィアに何を言われても適当な反応を返すばかり。

何気に凄い羨ましい事言われてないか?

そんな腑抜け状態のまま、迎えに来たテレビ局のスタッフに連行されて行った。

大丈夫かな、あのままで。

 

あいつ、コカビエルぶちのめしてからマジで変わったな。

それが良いのか悪いのか判らないが、のんびりというかマイペースなのがあいつの素なのだろう。

ピリピリしているよりずっといい。

 

スタッフの案内に従って歩いていると、サイラオーグさんに会った。

どうやら向こうもインタビューがあるようで、これから収録だそうだ。

しかし側に控えてた金髪ポニーテールの美人さん、サイラオーグさんの《女王》さんは美人だな。

見惚れてたら部長とアーシアにほっぺつねられたけど。

 

「そういえばカズキが見当たらんな、今日ここに来ると聞いていたのだが」

 

「彼は別口の取材だそうよ。前回のレーティングゲームで大活躍だったもの、当然よね……人間としては異例だけど」

 

部長が肩を竦めながら言うと、サイラオーグさんは身体を揺らしながら笑った。

しかしこの人、ホントにカズキがお気に入りだな。

 

「そうだリアス。お前、カズキを眷属にしたいのなら急いだ方がいいぞ? お前たちのゲームで彼を見た他の連中が、悪魔や天使に転生させようと手を回しているそうだ。サーゼクス様や堕天使の総督殿に、取り次ぎの連絡が多く来ているそうだ」

 

ま、俺もその一人だが。

サイラオーグさんはそんな衝撃的な事をサラッと言い放つ。

そんな事になってんのか!?

 

しかし部長は困った様に笑みを浮かべるだけだ。

部長は以前、カズキが自分から言わない限りはもう勧誘しないと言っていた。

仲間になって欲しいのかもしれないが、内心複雑なんだろう。

 

カズキは……どうするんだろうか?

以前は人間の身でコカビエルを倒す事に執着していたが、今は特にわだかまりもないだろう。

悪魔になるのか、それとも天使になるのか、それとも人間である事にこだわり続けるのか。

どうなろうとカズキはカズキだ、付き合い方を変えるわけじゃないけどな。

 

「カズキだけじゃなく、俺はお前にも期待しているぞ? お前とは理屈なしのパワー勝負がしたいものだ」

 

サイラオーグさんは俺の肩に手を置いた後、部長にじゃあなと言ってから去っていった。

……凄いな。

理屈は判らないが、肩に軽く置かれただけの手が異様に重く、大きく感じた。

 

若手最強のサイラオーグさん。

俺、あの人と殴り合いをなんて出来るのか?

……いや、やってやる!

部長の為にも、そして俺の夢の為にももうゲームには負けられない。

やってやる、やってやるさ!

 

そうこうしているとスタジオに到着し、打ち合わせの後に収録が開始された。

基本は部長が素敵スマイルを振り撒き、高貴な雰囲気を醸し出しながら質問に答えてくれたので助かったよ。

 

朱乃さんに質問がいくと男性の声援があがり、木場に質問がいくと女性の黄色い歓声があがる。

ケッ、イケメンはいいのぅ!

ちなみに俺は『乳龍帝』、『おっぱいドラゴン』として子どもに大人気だった。

これはこれでめちゃくちゃ嬉しいんだが、俺も女性の歓声が欲しいです!

 

ていうか、本当に『乳龍帝』って有名になってたんだな。

ドライグがめっちゃ泣いてるけど。

いや酷い奴とか言わないでくれよ、別に自分でそう名乗った訳じゃないぞ?

 

ここでの取材が終わると、俺だけ別のスタジオで収録を行った。

疲れたけど楽しかったな。

やっぱ子どもはどこでも元気一杯だ。

あんなに楽しそうに俺に話し掛けてくれると、俺まで楽しくなっちまうな。

 

こっちの収録も終わり楽屋に戻ると、みんなして壁にもたれたり机に突っ伏していたり。

みんなそれぞれ緊張で疲れた様だ、俺もだけどな。

部長にどんな事をしたのか聞かれたが、今はまだ内緒だ。

スタッフさんにも放送まで言わない様に頼まれたし、俺もみんなを驚かせたい。

 

そんな話をしながら休憩していると、楽屋に来客が。

以前俺たちが戦ったライザーの妹、レイヴェルが差し入れのケーキを持って訪ねて来てくれた。

木場に聖魔剣のナイフを出して貰ってケーキを食べていると、部屋に置かれていたテレビを誰かがつける。

するとそこから、なにやら聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

『–––はい、じゃあここでこの【なんだかよく分からないマダラ色のお肉】と、【人間が食べたら危なそうな野菜】をフライパンで炒めていきます』

 

全員が一斉にテレビの画面を見ると、モグさんを頭に乗せながら気怠げに鍋を振るっているカズキの姿が。

何やってんのあいつ!?

 

『……え、そういう事言うなって? 知るか、あんたらがこんな所に俺を引きずり出したのが悪い。そもそも名前がわからんし……カンペ? 日本語で書けよ、人間に冥界の文字なんぞ読めるか』

 

カズキが喋る度に会場が沸いている。

なんかすげぇウケてるよ……。

あいつ、周りが悪魔だらけでよくいつも通りに出来るな……いや、小さい頃は堕天使だらけだったんだから今更か。

 

『はい、無駄口叩いてる間に出来ました。これが冥界のよく分からない食材で作った【なんちゃってホイコーロー】です。味は知りません、試食する勇気がないので……やだよ、あんたが食えばいいじゃん。こんだけ会話してたら画面に映るのなんか今更だろ』

 

カズキは傍若無人な態度でスタッフの一人を無理矢理連れてきて、自分の作った料理を口に突っ込む。

スタッフさんは料理の熱さに悶えながら、口の中の物を咀嚼し飲み込む。

 

次の瞬間、そのスタッフは美味い美味いと叫びながら皿に残った料理をかっ込み始めた。

カズキはそれを見てから会場のお客さん達にも小皿に盛った料理を配っていき、それを食べた人達からも歓声があがる。

 

『美味しかったみたいで良かったです。では失礼しますね、モグラさんもお辞儀して』

『キュイ』

 

モグさんが頭の上でお辞儀をすると、観客席の方から女の子の声が響いてくる。

モテモテだな、モグさん。

カズキも頭を軽く下げてから画面から消えていった。

 

「何というか……相変わらずムチャクチャですわね、彼」

 

レイヴェルのポツリと呟いた言葉が、楽屋にいるみんなの心に重く響いた気がした。

ごめん、俺の友達がフリーダム過ぎてごめん。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「待って下さい、次回も是非出演をっ!」

 

「嫌ですよ、ここまで来るのメンドイし」

 

よく分からない取材が終わった後。

生放送で料理をする筈の先生が倒れてしまい、別スタジオで収録のあったセラフォルーさんのお願い(脅迫)によりモグラさんと出演する事に。

普通に話していただけなのに何故か会場は沸き、よく分からない食材で作った即興料理も好評だったようだ。

帰ろうとする俺を、ディレクターみたいな人が引き止めようとさっきから騒いでいるが、まぁ人間が物珍しいだけなのだろう。

 

そもそも前に出たパーティーじゃ普通の料理が並んでたのに、なんで今日のはあんな食材ばかりなのだ。

調味料は大体俺たちが使ってる物と一緒だったから何とかなったが……あぁ、もしかしたらこれが会長さんがお菓子を上手く作れない理由か?

いや、料理は普通に出来てたからそれはないか。

俺はそんな事を考えながら、リアス先輩たちの楽屋に向かっていた。

 

「お、そこか……って、あれはいつぞやのお嬢さん?」

 

事前に聞かされていた楽屋に近づくと、ケーキを頬張るイッセーと金髪を縦ロールにしている奇抜な美少女の姿が。

名前なんだっけ?

 

「カズキ、お前なんでテレビで料理作ってんだよ」

 

「いやセラフォルーさんに脅されて……で、お前が食ってるのは何?」

 

イッセーが呆れる様な口調で話しかけてきて、縦ロールちゃんはイッセーの陰に隠れてしまう。

そういや前に泣かせちゃったままだっけ。

 

「レイヴェルが作ってきてくれたんだよ。ほら、お前も一口食ってみろよ。美味いぞ」

 

「ナイフで刺して渡すなよ危ない……ん、本当に美味いな。こりゃ凄い」

 

最近会長さんの失敗作を匙と一緒に食べてたから、余計に美味く感じる。

チョコケーキだが、男でも食べ易いように甘さを控えているようだ。

これ、イッセーの為に焼いてきたんじゃね?

俺が食べたらマズかったかな。

 

「おぉ、滅多に人を褒めないカズキが素直に褒めた! 凄いなレイヴェルのケーキ」

 

「あ、貴方に褒められても嬉しくありませんが!? 今日は素直に褒められてあげますわッ!」

 

腰に手を当てながらふんぞり返るレイヴェルちゃん。

顔真っ赤だし、声が裏返っちゃってるぞ。

俺とイッセーがお礼を言うと、試合を頑張ってと伝えてから帰っていった。

しかしイッセーはやけにモテるな、真っ直ぐな所がいいのだろうか?

羨ましい、妬ましい。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

ストーカーとのレーティングゲーム前日。

イッセーと小猫ちゃんに頼み込まれたので、訓練に付き合い今日は兵藤家にお世話になる事になった。

話には聞いていたけど、本当にデカいなこの家。

 

地下にプールと大浴場、トレーニングルームまであるとは驚きを通り越して呆れてしまった。

まぁ折角あるのだから利用させてもらおう。

二人を目一杯シゴいてから風呂を借り、案内された部屋に向かおうとすると、未だに剣を振り回しながら訓練を続けるゼノヴィアの姿が。

 

「まだやってたのか、そろそろ休まないと明日に響くぞ?」

 

「む、カズキか。イッセーと小猫にあれだけやっていたお前に言われたくはないが……そうだな、そろそろ止めておこう」

 

なんか含みのある言い方だな、おい。

アーシアちゃんに頼めば大抵は治るんだからいいんだよ、あの位で。

 

「……なぁカズキ、私はどうすれば強くなれる?」

 

「へ? お前今でも十分強いじゃん。これ以上強くなると、俺が泣かされるからそんな事考えないで欲しいんだけど」

 

「茶化すな、マジメに聞いてるんだ……私は、木場よりも弱い。本来の使い手である私よりもデュランダルを使いこなし、頭も切れる。今の私では、彼に勝てない」

 

ゼノヴィアはそう言って自分の掌を見つめ、キツく握り込んだ。

なんか本気で凹んでんな……多分こないだの俺の所為なんだろうけど。

 

「それに今度の戦いではアーシアの人生が掛かっている。もう負ける訳には……」

 

「なんか勘違いしてるみたいだけど、お前は本当に強いぞ。なんでもかんでも全部やろうとするから上手くいかないんだよ、今のお前は考え過ぎてるだけなんだ」

 

「しかし……」

 

「忘れたのか? お前はバカなんだよ。バカは難しい事を考えないで、自分に出来ることをひたすらにやればいい。なんか失敗したら、俺もフォローしてやるよ」

 

お前なら出来るさ、いつも俺の事ボコボコにしてるんだし。

俺がそう言ってゼノヴィアの頭を撫でると、キョトンとしてから急に笑い出した。

 

「……人が落ち込んでいるのに酷い事を言うな、お前は。まぁ、カズキらしいが」

 

ほっとけ。

 

「でも、そうだな……私は、私に出来ることを全力でやる事にしよう。ありがとうカズキ、ちょっと吹っ切れた気がする」

 

「そっか、でも吹っ切れたなんて大概は勘違いだから気をつけ–––」

 

俺の言葉が途中で途切れる。

口が塞がってしまったからだ。

物理的に。

 

「ふふ、相談に乗ってくれたお礼だよ。迷惑だったかな?」

 

「いや、その……ご馳走様です?」

 

何言ってんだ俺。

 

「じゃあ私もシャワーを浴びたら部屋に戻るよ、おやすみカズキ」

 

ゼノヴィアはそう言うと、トレーニングルームから出て行ってしまう。

俺は座ったまま動けない。

俺、女だったら惚れてたかもしれない。

あいつなんであんなにイケメンなの?




ゼノヴィアはヒロインじゃなくてヒーローだと思うの。

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