モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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4話にしてようやく原作へ。


一巻 旧校舎のディアボロス
4話


俺、兵藤一誠。

最近俺の周りで変な事ばかり起きやがる。

せっかく人生で初めて出来た彼女、天野夕麻(あまの ゆうま)ちゃん。

 

確かに付き合っていて、デートだってした筈なんだ。

なのに突然いなくなってしまい、携帯に登録してあった夕麻ちゃんのアドレスや番号も消されていて、周りの人間も彼女の事を忘れてしまっていた。

 

友達である松田、元浜にも女の子に持てなさすぎて幻覚を見たとか、ついに壊れたとか好き放題言われた。

思いつく限り調べてみたけど証拠なんて一つも見つからなくて、段々と自分でも自信がなくなってきて……。

 

とにかく最近はテンションが下がりっぱなしだ。

なんでか夜には逆に体力が溢れてきて、落ち着かなくなってくるけど。

俺、なんかの病気なのかな……?

 

そんな気分を吹き飛ばすため、今日の放課後は元浜と一緒に松田の家に行ってエロDVD鑑賞会だ。

エロで動く高校生なんだ、今日は無礼講だっ!

行くぜ、おっぱい!!

 

 

 

鑑賞会は楽しかった。

でも、あの手の物は見てる時はテンション上がっていいんだけど、ふと現実を直視するといつもの倍凹む気がする。

それでも観るのを止めたりはしないけどな、

絶対!

うん、絶対に!!

 

なんて馬鹿なことを考えていたら、最近夜に感じるあの力が溢れてくる感覚。

目の前から感じるヤバい空気。

それと同時に現れる不気味なコートの男。

 

何か話しかけられたけど、意味が分からなくて怖くなった俺は来た道を全力で逃げ出した。

捕まりたくない一心で、力が溢れる感覚に任せて普段ならありえないほど必死に走った。

 

走って走って走り続けて。

気がつくと、俺は公園にいた。

夕麻ちゃんとデートして、最後に訪れたあの公園。

 

脚を止めて息を整え、噴水の前で安全確認の為に辺りを見渡した。

すると目の前から歩いて近づいてくる人影が見えた。

身構えたが、あれはたしか同じクラスの瀬尾 一輝だ。

あんまり話した事はないけど、一年の時に運動系の部活の人たちがこぞって勧誘してたのを憶えてる。

 

「兵藤じゃないか、お前もランニングか? 」

 

ここ、学校からそれなりに離れてる筈なのにこんな所まで走ってきてるのか。

でも、冬でもないのに手袋みたいの付けてるのは何でなんだ?

ってそうじゃねぇ!

 

「瀬尾! 駄目だ、こっち来んなっ!! 」

 

お前まで変な事に巻き込んじまう!

でももう手遅れで、あのコートの男はすぐ近く迄来てやがった。

夕麻ちゃんと同じ、黒い羽根を生やして……。

くそ、余計な事は考えるな!

今はとにかく瀬尾を逃がさないと!

 

「なんだ兵藤、あのおっさんストーカー。やっぱ変態には変態が寄ってくるのか? 」

 

「幾らなんであんまりだろそんな類友!? 泣くぞ! 」

 

俺が無い頭を使って必死に考えていたら余りにも無慈悲な言葉が飛んできた。

意外と余裕あるぞこいつ!?

 

「ほぅ、仲間……いや、こいつは人間か。見られては仕方ない、堕天使たるこの私が始末してやろう」

 

くそ、どうすれば……ってやめて瀬尾くん!?

そんなあからさまに溜め息吐いて挑発しないで!?

ほらなんか光るもの投げてきた!

っ瀬尾を狙ってるのか!?

危ねぇ、瀬尾っ!

 

「よいしょ、っと」

 

……は?

なんかすごい速さで飛んできた物を、瀬尾が両手を前に出したら後ろに逸れてったぞ?

なんだこいつ。

運動が得意ってだけじゃ説明して付かないぞ……。

 

「危ないだろう。当たると痛いんだぞ、それ」

 

男を注意する様に、背後に刺さったままの光る物を指差しながら相手を咎める瀬尾。

指先を追って見ると、光る槍のような物が地面に突き立っている。

どう見ても痛いじゃ済そうにないんですけど。

 

それにしてもあの槍、何処かで似たような物を見た事がある気がする。

 

「それは!?……なるほど、神器使いだったのか」

 

神器……?なんだそれ?

不思議に思っていたら、後ろから凛と響く綺麗な声が聞こえてきた。

 

「その子達に手を出さないで」

 

振り向くと、そこには紅い綺麗な髪を腰まで伸ばし、悠然と佇む美女がいた。

 

あれは、あのおっぱいは!

俺の学校の二大お姉様の一人、リアス・グレモリー先輩だっ!

先輩が俺の隣を通り、庇うように俺の前に立つ。

 

先輩と男の会話の内容はいまいちわからなかったけど、あの男が自分をドーナシークと名乗り、そのまま闇夜に消えていった。

先輩がその立派なおっぱいもプルンと震えさせながら、こっちに振り返る。

 

「あら? 瀬尾くんは? 」

 

「あ、あれ? あいつどこいった!? 」

 

状況に驚いてたのと、先輩のおっぱいに夢中で気がつかなかったが、いつの間にか瀬尾がいなくなってた。

怪我はしてなさそうだったけど、俺まだ巻き込んだ謝罪も助けてくれたお礼もしてないのに……。

 

「あの子、一体何者……? 取り敢えず貴方が無事でよかったわ、イッセー」

 

先輩が優しい笑顔を俺に向けてくれる。

え、瀬尾だけじゃなくて俺の事も知ってるのか?

俺にはこんな美人で素晴らしいおっぱいの持ち主と接点なんてないぞ?

 

「まだ混乱しているようね。明日の放課後に使いを出すわ、その子についてきて。全部説明してあげるわ、怪我もないようだし今日はお家に帰りなさい」

 

先輩はそう言うと、俺の頭を撫でてくれた後に真紅の髪を揺らしながら去っていった。

近くで見ると、更に凄さのわかるおっぱいだ。

いい匂いもするし。

 

何がどうなってるのかまるでわからないけど、先輩の言う通りに今日はもう帰ろう。

色んな事がありすぎて頭がパンクしそうだ。

 

取り敢えず、明日は朝一で瀬尾にお礼いわなくちゃな。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

この街に帰ってきて一年が経ち、俺も高校二年になった。

俺の神器兼ペットのモグラさんは、いつも外に出ていたい性格らしく普段から俺の頭の上か、学校では胸のポケットの中に隠れている。

 

そういえばモグラさんて、やたらと長い本名がある。

アザゼルさんが教えてくれたが、モグラさんの受けも悪いので俺はモグラさんと呼び続ける事にした。

 

その方がかわいいし。

それにしてもモグラさんは昔から全く大きくならないなぁ。

これからもずっとかわいいままでいて下さい。

 

最初は自分がいた頃と少し変わってしまった風景に微妙な気持ちになったりしたが、今はもうそんな事を気にせず楽しいハイスクールライフという奴を満喫しています。

 

何せこの街には堕天使がいない。

俺にイタズラ目的でさらなる改造を施そうとしてくる人も、無茶苦茶な拷問を課してくる人もいないのだ。

まさに天国。

こんなに嬉しいことはない……!

 

勉強はグリゴリにいた時にバラキエルさんとシェムハザさんが暇を見つけて教えてくれてたなんとかなる。

部活はしていない。

最初の頃はやり過ぎてしまい、部活の勧誘が凄まじい事になった。

その時は家庭の事情で部活には参加できないで済ませたが、今はもう力加減もバッチリで目立たないようになった。

 

これからもモグラさんと一緒にゆる〜く楽しい生活を送って行きたいと思う。

 

まぁ長年調教されたせいで、基礎の走り込みや筋トレは休めないのだが。

サボろうとすると幻聴が聞こえてくるのだ。

 

「サボる余裕があるなら俺っちと今から組手でもしようぜぃ」

 

「どうした、まだ限界ではないだろう? 」

 

「ほら捕まった。なんで捕まってしまったか考えながら腕立て五百回だ。途中で潰れたら更に三百回追加で。え? 優しい方だろう? 」

 

「わっはっは。俺のストレス発散にちょうどいいな。ほれほれ、避けねぇと死ぬ程痛いぞ」

 

刷り込みって恐ろしい。

最後の人は絶対に許さないが。

 

 

 

 

今夜も調教された我が身を呪いながらのランニングである。

さすがにモグラさんを乗せたままだと走れないので、グローブになって貰ってます。

長い時間装着出来るようにする事も兼ねてる一石二鳥な訓練です。

 

何時ものように公園に入ると、前方から誰かがとんでもないスピードで此方に走ってくる。

あいつは……同じクラスの、変態で有名な兵藤一誠だ。

自分で言っといてなんだが酷い説明だな。

 

そいつが凄い必死に走ってる、てか速いな。

あいつあんなに運動できたのか。

あ、噴水の辺りで止まった。

 

「兵藤じゃないか、お前もランニングか? 」

 

あんまり無理すると身体痛めるだけで効果薄いよ?

 

「瀬尾! 駄目だ、こっち来んなっ! 」

 

露骨に拒否られた。

そんなに話した事なかったのに名前知ってるから、少し嬉しかったのに。

 

ヘコんでいると、空から見覚えのある黒い羽根。

 

まさかアザゼルさんがここまでいびりに来たのかっ!?

驚愕しながら上を向くと、そこには見覚えのないロングコートのおっさん。

ビビったじゃないか、心臓に悪い。

 

「なんだ兵藤、あのおっさんストーカー。やっぱ変態には変態が寄ってくるのか? 」

 

アブノーマルなものに巻き込まないでほしい。

 

「幾らなんであんまりだろそれ!? 泣くぞ! 」

 

ホントに泣いてるし。

まぁ放置するんだけども。

 

「ほぅ、仲間……いや、こいつは人間か。見られては仕方ない、堕天使たるこの私が始末してやろう」

 

このおっさんもやっぱり堕天使なのか。

堕天使はいい人だらけだと思ったけど、やっぱ例外もいるよね。

俺を改造人間にした奴とか。

溜息吐いてたら光の槍を投げつけられた。

えらく雑に投げてるな、光も弱いし。

 

「よいしょ、と」

 

グローブの鉤爪部分を擦り当てて、向かってきた槍を後方に逸らす。

美猴さんに調教されたしアザゼルさんにも散々これで突かれたから、このくらいの速度ならまだまだ余裕です。

このおっさんはびっくりしてたけど、驚くなら攻撃すんなや。

 

「危ないだろう。当たると痛いんだぞ、それ」

 

俺が注意しても聞く気がないようだ。

少しは反省しろよおっさん、アザゼルさんがやってたみたいにいじめちゃうぞ。

 

「その子達に手を出さないで」

 

今度は誰よ。

振り返るとそこには紅い髪を腰まで伸ばし、女性的な部分がやたらと魅力的な美人さん。

リアス・グレモリー先輩だ。

 

おっさんも手を引くつもりみたいだし、先輩とおっさんが言い合っている間に俺は帰ろうかな。

この人と関わるのは少しばかりマズい。

面倒事は嫌いなんです。

サラバター。

 

 

 

 

此処まで来ればもう平気だろう。

しかし兵藤、せめて目をそらす努力ぐらいはしよう。

襲われた直後なのに元気すぎるだろ。

美人が怒ると怖いんだぞ。

 

そういや結局、なんであいつが襲われてたんだろ。

……まぁいっか。

わからない事は考えるだけ無駄だってヴァーリさんと美猴さんも言ってた。

 

しかしドロンするときに名乗ってたのが聞こえてきたけど。

あのおっさん、ドーナツなんたらって名前なのか。

仲間にエンゼルフレンチとかポンデライオンとかいそうだな。

 

……帰りにミセスドーナツによってから帰ろう。




その後のカズキくん

カズキ「モグラさんも食べる?」
モグラさん「キュ!」
カズキ「土竜ってドーナツも食べるのか……神器だし平気か」

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