3話にいたってはロキさんまで出て来たよ。
バラキエルさんは挿絵通りだったけど、ロキさん。
あんた、あんなぬらりひょんみたいな頭だったのか……
紫藤さんの持ってきた機械から、気の抜けるような音楽と映像が流れていく。
そこに映っていたのは、鎧姿のイッセーが冥界の子供達と一緒に歌に合わせて踊っている姿だった。
作詞:アザ☆ゼル
作曲:サーゼクス・ルシファー
ダンス振り付け:セラフォルー・レヴィアたん
『おっぱいドラゴンの歌』
なんだこれ。
なぁ、なんなんだこれ。
俺、腕取れてもマジメに頑張ってたよ?
イッセー元に戻そうとして頑張ったんだよ?
なのに–––
「うぅ……おっぱい……」
「ッ!? 反応したわ!」
俺の必死な呼びかけには大して反応しなかったくせに、あの歌には頭を抱えて随分と反応していらっしゃる。
これはちょっと酷すぎるんじゃあないですかねぇ!?
俺の呼びかけよりおっぱいか!?
片腕もがれながらも、友達の為に頑張った俺の呼びかけよりもおっぱいですか!?
返せ!
俺のシリアスとか色々な物を返せこの馬鹿野郎ッ!!
てかさ、あのアホなおっさんと魔王二人は何してんの?
お前ら本当に自重しろよ、なんだその間の☆は!?
もぎ取って投げつけんぞクソが!
俺が憤慨している間も歌は流れ続け、イッセーが時折歌の歌詞を呟きながら頭を抱えて苦しみだす。
俺と入れ替わりでイッセーの相手をしてくれていたヴァーリさんは、既に此方に戻ってきた。
俺たちと一緒に、世界一残念な赤龍帝の姿を複雑な気持ちで眺めている。
俺、なんであいつの事助けようとしてたんだっけ……?
イッセーは苦しみながらも何かを求める様に指先をフラフラとさせている。
なぁ木場、あの指へし折ったらダメかな?
ダメか、残念だな。
「ふむ、今なら余裕だな。いくぞアルビオン」
『ドライグが……私の知っているドライグでは無くなっていく……』
なんかアルビオンさんがめっちゃ凹んでらっしゃる。
気持ちは分かるよ、今度愚痴ぐらいなら聞いてあげよう。
『Divid!!』
ヴァーリさんの鎧から音声が響き、イッセーの力を大きく削る。
既に鋭利だった指先は人間のそれに戻り、今なお何かを求めて揺れ動いている。
「今よリアス! イッセーくんはあなたの胸を求めているわ!」
何言ってんの?
ねぇ、何言っちゃってんの朱乃さん!?
あ、朱乃さんが壊れたッ!!
「で、でも私の乳首でイッセーの『覇龍』が本当に解除出来るのかしら……?」
「イッセーくんはあなたの乳首を押して禁手に至った。なら、その逆も可能なはず。あなた達の絆を信じるのよ、リアス!」
おい、そんな方法で禁手習得したのかあのバカは。
まぁ俺もイライラが募って禁手化したけども。
いや、今はそんな事どうでもいい。
あんな乳首とか連呼する朱乃さん、見ていられない!
「ゼ、ゼノヴィアどうしよう。俺のせいか解らないけど、朱乃さんが壊れた……俺はどうすればいいんだ?」
「いや何時も通りだと思うが……そうだな、【何でも言う事を聞く】とか言えばいいんじゃないか? ……余計に壊れるかもしれないが」
最後にボソッと何か言ってた気がするけどまぁいいや。
「朱乃さん! 後で何でも言う事聞くから、ちょっと落ち着いて!」
俺の言葉に体をピクリと震わせ、ゆっくりと此方に顔を向ける。
「……な、なんでも?」
「う……まぁ、俺の出来る範囲なら」
俺の返事を聞くと何故か小猫ちゃんの元まで走っていき、嬉しそうに笑いながら抱き上げていた。
『本当だった』ってなんの話?
なんで小猫ちゃんはこっちを見ながら複雑そうな顔をしているの?
そうこうしているうちにリアス先輩の覚悟も決まったらしく、ゆっくりとイッセーの元まで歩を進めて辿り着く。
こちらには見えないように胸元をはだけさせ、イッセーの目の前にリアス先輩の胸がさらけ出される。
ねぇ、俺もう帰っていい?
アホらしくてやってらんないんだけど。
ヴァーリさんもくだらなすぎて禁手化解いちゃったじゃん。
「お、おれの……おっぱい……」
イッセーはそう言ってリアス先輩の乳首をつつくと、鎧が解除され気を失ってリアス先輩にもたれかかる様に崩れ落ちた。
それと同時に、俺の腕にくっ付いていたドラゴンの腕もポロリと取れて消えてしまった。
やっぱ一時的なモンだったのか。
みんなは騒いでるけど、血は止まってるからまぁいいや。
帰ったら左手でご飯を食べる練習しなきゃな。
「……リアス・グレモリーの胸は兵藤一誠の制御スイッチか何かなのか?」
「あってるんじゃない? 押すと鳴るし」
「カッカッカ! お前ら、それは酷すぎるだろ!」
俺とヴァーリさんの言い草に、美猴さんは腹を抱えて爆笑していた。
俺、今回はもっと怒っていいと思うの。
ムカつくからイッセーの顔でも蹴っ飛ばしてや……おろ?
目の前が急にグニャグニャに……
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「う〜ん……あれ? 何がどうなったんだ?」
なんだ、体がすげぇ痛い……?
禁手が解かれて鎧も消えてるし、何がどうなったんだ?
そんな俺に部長が号泣しながら抱きついてくる。
何が起こってるのか分からずキョロキョロしていると、ゼノヴィアの横にアーシアがいた!
アーシア、無事だったのか!?
アーシアは真剣な表情を浮かべ、誰かの治療をしている様だった。
治療されている人物は……カズキ?
ってカズキの腕がない!?
なんだ!? 何がどうなってる!?
木場が言うには俺が暴走して、シャルバとかいう奴をぶっ飛ばしたまま元に戻らなかったそうだ。
そんな俺を、シャルバの攻撃で片腕を失ったカズキが必死に呼びかけ続けてくれたらしい。
次元の狭間に飛ばされたアーシアはモグさんが結界みたいなのを張って守り、ヴァーリがここまで連れてきてくれたのか。
後でお礼は言わなきゃな。
「アーシアちゃん、呼吸も落ち着いてきたからカズキくんはもう大丈夫ですわ。あなたも疲れているのだから少し休まなきゃ」
「でもカズキさんは私の為に腕を……少しでも恩を返さなければ」
「カズキはアーシアにそんな顔をして欲しくて助けた訳じゃないぞ? 笑っていて欲しいから頑張ったんだ。ほら、イッセーも目覚めた。行ってやるといい」
朱乃さんとゼノヴィアに諭され、アーシアはこちらまでやって来る。
その顔は何やら複雑そうな表情のままだ。
「アーシア、無事で本当に良かった」
「イッセーさん……私、みなさんに迷惑ばかりかけて……」
「そんな顔しないでくれ。みんなアーシアが帰ってきてくれて喜んでるんだ、笑ってくれよ。今回は俺もカズキに迷惑かけまくったみたいだしな、後で一緒にお礼を言わなきゃな」
「イッセーさん……」
「おかえり、アーシア」
俺がそう言うと、アーシアは俺に抱きついて泣き始めてしまった。
服を握り締めながら泣き続けるアーシアを、優しく抱きしめ返す。
アーシアが帰ってきて、本当に良かった!
それにしても、カズキにはまた迷惑をかけちまったな。
なんだかあいつへの借りがドンドン溜まって、借金の様に雪だるま式で大きくなっている気がする。
カズキに借金……なんか背筋が寒くなるな。
ちゃんと返済出来るかな、俺。
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テロリストの襲撃から一夜明けた。
幸い死傷者は無く、被害は試合会場なんかの建造物だけだったようだ。
VIPの方々も無事に帰って行き、不穏分子の炙り出しにも成功。
悪魔側から見れば万々歳なんだろうな、ちょっと気に障るけど。
イッセーの『覇龍』が解けてから気絶してしまったそうで、色々と起こったそうだがまるで覚えていない。
ダメージが素敵に限界突破した様で、只今冥界の施設で療養中です。
モグラさんもアーシアちゃんを守って頑張ったから、精密検査の為にアザゼルさんに預けちゃったし。
「あ〜……暇だ」
無くなった腕はヴァーリさんが拾って朱乃さんに預けてくれたので、サハリエルさんとアルマロスさんがわざわざここまで来てくっ付けてくれた。
俺が気絶している間に手術したのでよくわからないが、あの二人に加えてアザゼルさんまで参加していた時点で何かしら弄られてるのは確実だろう。
自分で色々と試してみたが特に目立った変化はなく、それが返って不安を助長させる。
「やぁカズキくん、具合はどうかな?」
「カズキくんってば自分の腕見てどうしたの? もしかして痛む?」
俺が自分の腕を弄り回していると、何故かサーゼクスさんとセラフォルーさんが正装でやってきた。
「いや別に痛い訳じゃ……つーかテロがあったばかりなのに、護衛も連れずに何やってんですかあんた方は」
俺が半眼でぼやくと、サーゼクスさんは苦笑しながら手に持った花をテーブルに置く。
「友人の病室を訪ねるのに、そんな無粋な真似はしないさ。護衛は外で待機してくれているよ」
「あ、これソーナちゃんからお見舞いの品! 最初は手作りのお菓子を渡そうとしてたらしいんだけど、眷属の子たちに止められたらしくてね? ハイ、果物盛り合わせ☆」
「ドーモデス」
セラフォルーさんが美味そうな果物が入ったバスケットを手渡してくれる。
ありがとう、生徒会の皆さん!
俺の命の為に頑張ってくれたんだね、なんか嬉しくて涙出てきた!
「泣く程嬉しいなんて、ソーナちゃんたら愛されてるわね♪ ソーナちゃんに伝えてあげなきゃ!」
「ふむ、シトリー家の婿か……それなら将来は重役にも抜擢しやすいし、私としても嬉しい限りだな」
「ホントに何しに来たんだあんたら」
俺をそっちのけで何やら不穏な話を進める魔王たち。
しまいにゃ窓から蹴りだすぞ?
しかも婿ってなんだ。
会長さんの意思を無視したら、リアス先輩の時と同じ事になりますよ。
あれ?
その場合って俺がライザーの立ち位置?
匙にぶん殴られるじゃん。
そんな事を考えていると、サーゼクスさんとセラフォルーさんが並んで俺の前に立ち、深く頭を下げてきた。
「今日はね、今回の騒動のお詫びと謝罪に来たの」
「我々悪魔の事情に巻き込んで、君に重傷を負わせてしまった。本当に申し訳ない」
……いや、急にそんなマジメになられるとこっちも困るんだけど。
「あの、そんな気にしないで下さい。昔から怪我は治りやすい体質だし、腕だってほら! もうくっついて何の問題もないですから」
そう言いながら右腕をブンブンと振り回す。
「そうは言っても……そうだ、君にこれを渡しておこう。何かの役に立つかもしれない」
サーゼクスさんは指先に魔法陣を展開すると、何かの宝玉と小ぶりなアタッシュケースが現れる。
「グレモリー領に自由に転移できる宝玉だ。私かグレイフィアに繋がる通信機の役割もある、なにかあったらいつでも連絡して欲しい」
「こんな色々と悪用できそうな物、ヴァーリさんと繋がりのある俺に渡していいんですか?」
俺が尋ねると、サーゼクスさんはニッコリと笑みを返してくる。
「君を信頼しているからね、そもそも悪用しようとする者はそんな事聞いてこないよ」
そりゃごもっともで。
俺だったらワザと聞くけども。
「それとこっちのケースには《悪魔の駒》一式が入っている。この駒を使えば君は悪魔に転生できるし、他の者を眷属にする事が出来る」
そう言いながらケースを開き、こちらに中身を見せてくれた。
ガラス細工のような赤い駒が15個、綺麗に並んで詰められている。
「めっちゃ高価そうですね……なんか貰うの怖いな」
「別に使わなくてもいいし、君の好きにするといい。謝罪と友好の証だと思ってくれ」
サーゼクスさんはそう言うと、俺の前に宝玉とケースを並べて置いた。
まぁ無理に使う事もないし、部屋にでも飾っておこう。
「本当にごめんなさい……そうだカズキくん。なにか欲しい物とか、して欲しい事とかある? 物で釣るみたいでちょっとアレだけど、私にできる事ならなんでも叶えちゃうわよ!」
「女性が男にそういう事を簡単に言っちゃいけませ……あ、そうだ」
胸を張りながらポンと叩いてみせるセラフォルーさん。
軽はずみな言葉をやめるように注意しようとした時、ある事を思い出す。
せっかくだ、簡単な我儘でも聞いて貰おう。
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冥界から無事帰ってきて、今日は駒王学園体育祭当日。
俺とモグラさんは戻ってきたが、イッセーはまだ目覚めていないので冥界に残ったままだ。
おかげでイッセーが出る筈だった競技に俺が駆り出されてシンドイ。
「病み上がりの人間をこき使い過ぎじゃないですかね? 泣くぞ」
「綱引きにリレー、障害物走……殆どコンプリートしてるな。なんでこんなに出場してるんだ?」
ゼノヴィアがプログラム表を見つめながら首を傾げている。
「お前やアーシアちゃんのお友達の桐生さんが、無理矢理ねじ込んだんだよ」
あいつ、俺が一年の時に力加減わからなくて運動系の部活で騒がれてたの覚えてやがった。
お陰で走る系の競技には殆ど出場する羽目になった。
おのれ桐生、お弁当の唐揚げを触った手で眼鏡のレンズをベタベタにしてやる。
「でも大活躍だったじゃないか、うちのクラスの人も騒いでたよ?」
「普段から力セーブしてる人間により絶妙な力加減を求めるなよ、すごい疲れるんだぞ?」
木場は軽く言ってくるが、手加減ってかなりしんどいのだ。
疲れるの嫌いです。
そうこうしているうちにプログラムもどんどん消化されていき、もうすぐ二人三脚が始まろうとしている。
イッセーと一緒に走るはずだったアーシアちゃんの悲しげな顔が、隣に立つ俺の胸に突き刺さってくる。
ん? あれは……?
「アーシアちゃん、大丈夫だよ」
「……? 何がですか?」
俺は足に紐を結ぼうとしているアーシアちゃんに声をかけ、騒がしい方に指を向ける。
全く、来るのが遅い。
「イッセーは馬鹿だけど、約束は守る奴だから」
「アーシアァァァァアアアッ!!」
「ッ! イッセーさん!」
イッセーが叫びながらこちらに走ってくる。
起きたばかりだろうに、あんなに動いて大丈夫か?
「遅いぞイッセー、アーシアちゃんを泣かせるな」
「カズキ……俺、お前にも謝らないと……」
「んなもんどうでもいいから行ってこい。ほら、アーシアちゃんが待ってる」
「……あぁ! ちゃんと後でお礼するからな!」
イッセーは俺に頭を下げてからアーシアちゃんの元へ行き、足の紐を結んだ
いいって言ってるのに、変な所でマジメな奴だ。
すぐにイッセーたちの走る番になり、みんなの応援を受けながら二人は見事一位になった。
一緒に走れて良かったね、アーシアちゃん。
俺がみんなの元に戻ろうとすると、遠くから紫藤さんがこちらに走ってきた。
「あ、カズキくんこんな所にいた! 次の借り物レースがもう始まるわよ、急ぎましょ!」
「ちょ、わかった。行くからそんなに引っ張らないで……!」
紫藤さんは俺の腕を掴むと、グイグイ引っ張って入場門まで連行していく。
幸せそうなアーシアちゃんを見れたから、なんかもうやり切った感じがしてやる気が出ないんだけど……。
その後行われた借り物レースで、メモに『カワイイ女の子』とあったので近くにいた小猫ちゃんを抱き上げて運び一位になった。
メモの内容をみんなに見られ小猫ちゃんは恥ずかしくて真っ赤になり、朱乃さんとゼノヴィアに虐められた俺は血で真っ赤になった。
理不尽だ。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
「おうカズキ、邪魔するぞ」
「別に良いんだけどさ、せめて返事してから入ってきてよ」
「生意気言うな……話、聞いたか?」
「アルマロスさんから簡単にね、難しい事はよくわかんないから」
「ならもうわかってんだろ? これ以上はお前……」
「大丈夫だよ、自分の事は自分がよく分かってるから。だからそんな顔しないでよ、アザゼルさん」
選べぇ!
①シリアス
②ギャグ
③ノリで書いて何も考えてない
※これはアンケートではなく、最後の文章がどれが当てはまる?
という質問のつもりで書きました。
わかりにくくて申し訳ありません。