モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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嵐が……嵐が来ましただぁぁぁ!


38話

今日は休日。

朱乃さんが現地集合がいいと言いだし、女の人を待たせる訳にもいかないので一足先に駅前までやって来た。

モグラさんは事前にアーシアちゃんと小猫ちゃんに預けてきた。

その二人にそうしろと言われたから従ったが、なんでだろう?

 

しかし休日だけあって、周りはカップルでいっぱいだ。

ここで一人立ってるのは中々に苦痛だな、これ実は朱乃さんのSプレイだったりしないよね?

 

「お待たせカズキくん、行きましょうか?」

 

「はい?」

 

声を掛けられ振り向くと、そこには可愛らしいワンピースを着込んでほんのりと御化粧した朱乃さんの姿が。

普段着は家で見慣れているが、なんだか今日は印象が変わって見えるな。

 

「カズキくん? 私、何処か変かしら?」

 

「あぁ、朱乃さんか! なんか普段と印象違って一瞬わからなかった。いや似合ってますよ、元が綺麗だし」

 

「うふふ、ありがとう♪」

 

朱乃さんが笑顔で応えてくれてから、二人でデパートに向けて歩き始める。

いやぁ女の子って怖いわ、本当に化粧や服装だけで印象がガラリと変わる。

いつもは綺麗だけど、今日はなんか可愛い感じだな。

 

「どうしました? そんなに見つめられたら照れちゃいますわ」

 

む、いかん。

マナー違反って奴か。

女の子と二人で買い物なんて初めてだから勝手がわからん。

あっても食材の買い出しくらいだし。

 

「いや、随分と楽しそうだなって……」

 

「それはそうですわ、二人きりでお出掛けなんて初めてですもの。デートみたいで嬉しいですわ」

 

朱乃さんはそう言いながらこちらに優しく微笑んでくる。

なんだこれ、ドッキリ?

カメラどこよ?

 

朱乃さんが優しすぎる。

いや普段から優しくはあるんだけど、またちょっと違うというか……よくわかんないな。

 

「俺なんかとデートして楽しいですかね? それじゃあ買い物は手早く済ませて、適当にそこら辺で遊びましょうか」

 

「えぇ、ちゃんとエスコートして下さいね?」

 

「自信ないけど了解です」

 

朱乃さんはそう言うと俺の腕にくっついて来た。

やーらかい物が当たって気持ちいい。

なるほどこれがデートか、素晴らしい!

役得すぎる、もうドッキリでもなんでもいいや。

 

 

 

 

修学旅行に必要な物はパパッと購入し、荷物をコインロッカーに預ける。

その後は朱乃さんが俺の服を選んでくれたり、逆に俺が朱乃さんの服を選んだり。

まぁ朱乃さんに『どっちがいい?』って聞かれて選んだだけだけど。

 

デパートの近くで熱帯魚や深海魚みたいな、小さい魚のみの水族館が期間限定で開かれていたのでそこにも行ってみた。

朱乃さんが深海魚を見て『のんびりしてるところが貴方に似てる』とか言われた。

何それ、悲しめばいいの?

 

ゲームセンターの前を歩いていると、朱乃さんがUFOキャッチャーのぬいぐるみを見つめていたので二千円掛けて無事GET。

やった事ないから下手なんだよ、ほっとけ。

一緒に落ちてきた変な顔した小さな虎のぬいぐるみは、ゼノヴィアのお土産って事にしておこう。

 

そんなこんなで存分に楽しみつつ、昼食を取ってからまたあても無くブラブラと歩き続ける。

朱乃さんも終始笑顔で満足そうだ。

 

「久しいの、カズキ坊ではないか。昼間から女連れで楽しそうじゃのぅ」

 

急に話掛けられ声のした方に二人で振り向くと、そこにはラフな格好をして帽子を被ったお爺さん、オーディンさんがいた。

いつもの美人さんも一緒で、今日はパンツスーツ姿だ。

 

「お久しぶりです、オーディンさん」

 

「ところでお主、何故その娘を庇うように立っているんじゃ?」

 

「あんたが朱乃さんにセクハラかましたら、俺が痛い目に合うからだよ」

 

俺は朱乃さんの一歩前に出て、オーディンさんと朱乃さんの間に立っている。

とばっちりは御免なんだ。

 

「ほぅ? そう言われると是が非でもやりたくなるのぅ」

 

ん?

何だろう、オーディンさんの気配がブレた?

そのまま朱乃さんの後ろに……っておい。

 

「言った側からセクハラしようとすんな」

 

「え!?」

 

俺は朱乃さんの後ろ、というかお尻の辺りに手を伸ばし、そこにあるであろうオーディンさんの腕を握り込む。

お、めっけた。

 

「うぉ!? お、お主、人間の癖によく儂の動きが追えるのぉ……」

 

「知らん、何となくです」

 

最近気配とかに敏感になって来てるんだよね、理由は知らんけど。

朱乃さんは突然の出来事に驚いた様に振り向き、オーディンさんもこちらをビックリした顔で見つめている。

 

 

「すごい……じゃなくてオーディンさま! 神さまがセクハラなんてしたらいけないと、何度も言っているではないですか!」

 

「そう騒ぐでない。お主は本当に堅いのぅ、ロスヴァイセ」

 

美人さんがオーディンさんを叱っているが、当人は全く悪びれる気配もなく髭を弄っている。

その美人さん、ロスヴァイセって言うのか。

何回も会ってるのに、今日ようやく名前がわかった。

 

「てか、なんでこんな街中で主神さまがブラブラしてるんですか。護衛の人が迷惑でしょうに」

 

俺の言葉に美人さんがうんうんと頷いている。

 

「お前さんまで固い事を言うでないわ。赤龍帝の小僧の家でアザゼル坊と待ち合わせしとるんじゃが、ちょっとした寄り道じゃよ」

 

イッセーの家で?

またなんか厄介ごとか?

 

「そう言うお主こそ、昼間からこんな通りを歩いてるではないか」

 

オーディンさんが辺りを見渡しながら言ってくる。

まぁ確かにこの辺りはそういう通りだから、その手のお店や休憩ホテルが乱立している。

 

「勘違いせんで下さい。俺らは昼飯食った帰りに、大通りまでの近道で通っただけだっての。ねぇ、朱乃さん?」

 

「え、えぇそうね……?」

 

……朱乃さん?

なんで目を見て話してくれないの?

なんでそんなに汗かいてるの? ねぇなんで?

 

俺が朱乃さんを問い詰めていると、路地から体格のいい髭をたくわえた男性が現れた。

 

「オーディン殿、こちらにいらしたのですか。あまり勝手に動かれては……朱乃?」

 

「あ、あなたは……!」

 

朱乃さんが驚きながらその人物、バラキエルさんを睨みつける。

バラキエルさん、なんでここに……うぉ!?

 

「カ、カズキくん! これはどういう事だ!? なんで君と朱乃がこんないかがわしい場所で一緒にいる!」

 

「ちょ、バラキエルさん落ち着いて!?」

 

バラキエルさんが俺の肩を掴みながら物凄い勢いで前後に揺さぶってくる。

うぷ、飯食ったばっかでこれはキツい!?

 

「朱乃、お前もお前だ。なぜこんな所に……お前にはまだ早い」

 

「あなたには関係ないでしょう! カズキくんを離して!」

 

俺が吐き気と戦っていると、朱乃さんが俺を庇ってバラキエルさんの手を払いのける。

バラキエルさんも語気が荒くなってきている。

あの、お互いもう少し穏便に……。

 

「カズキくん! 確かに君には朱乃の事をお願いしたが、このような事を許した覚えは–––」

 

「……お願い? 一体、なんの話ですか?」

 

バラキエルさんの言葉を途中で遮り、朱乃さんが俺とバラキエルさん、二人を見つめながら尋ねてくる。

これは……なんかマズい?

 

「……カズキくんがこの地に来る際、私が彼に頼んだのだ。『朱乃の事を護ってやってくれ』、と」

 

バラキエルさんの言葉を聞いた朱乃さんはその場でたじろぎ、手を口元に当てて目を潤ませる。

 

「じゃあカズキくんが今まで私と一緒にいてくれたのは、身体を張って助けてくれていたのは……その約束の為? 本当は私の事なんて、どうでも……」

 

「え!? いやそんな事な……!」

 

「……ごめんなさいカズキくん。私、先に帰ります」

 

朱乃さんは俯きながらそう言うと、魔法陣を展開して消えてしまった。

ちょ、これどうすんのよ!?

朱乃さん泣いてたじゃん!

と、とにかく謝らないと!?

 

「落ち着かんか小僧。詳しい事情はわからんが、あの娘は今すぐ消えてしまう訳ではなかろう? 痴情の縺れと言う奴は、少しばかり間を空けぬと纏まらぬ物よ。今はそっとしておいてやる事じゃ」

 

俺が一人でアワアワしていると、オーディンさんが諭すように話し掛けてくれる。

な、なんだこの説得力は……これが神の御言葉って奴なのか……!

今ほどこの人が神様なんだと実感した事はないッ!

 

「……わかりました。オーディンさんはイッセー、赤龍帝の家に行くんですよね? 良かったら案内しますよ」

 

「うむ、ではそろそろ向かおうかの。よろしく頼む」

 

オーディンさんは俺の言葉にゆっくりと頷く。

俺はその言葉を聞いた後に、朱乃さんが消えた場所を見つめるバラキエルさんの元に向かう。

 

「バラキエルさん。後で朱乃さんの誤解を解くの、協力してくださいね?」

 

「あぁ……その、すまなかった。急な事だったので気が動転してしまって……君を認めない訳じゃないんだ。ただそう言う事はもう少し大人になってから–––」

 

「大丈夫です、バラキエルさんがいい人なのはわかってますから。そもそも誤解ですからね?」

 

「……すまん」

 

バラキエルさんは頭を下げてから謝ってくれ、オーディンさんの元に戻っていった。

俺もオーディンさんを先導しながら、イッセーの家へと向かって歩いていく。

その道中で、ロスヴァイセさんが俺の隣に来て心配そうに話し掛けてくる。

 

「その、大丈夫ですか? ごめんなさい、折角楽しんでいたのに私たちが声を掛けた所為で……」

 

「いえ、悪いのは隠し事をしていたこっちですし……まぁ説得できる様に頑張ります。大切な先輩で、一緒に住んでる家族ですから」

 

さてどうやって話そうか……はぁ、どうしてこうなった。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

オーディン様が人間界の日本に、神々との会談の為赴く事になった。

私、ロスヴァイセも御付きの戦乙女(ヴァルキリー)としてそれに同行する事になっている。

オーディン様には、職場の隅で埋もれていた私を拾い上げて貰った恩義がある。

全力で警護させて頂く。

 

そう意気込んでいたけれど、オーディン様は寄り道が大好きなので彼方此方いろんな場所へと行ってしまう。

その度に、私や今回堕天使側から送られてきた警備の者を撒こうとするからタチが悪い。

今回見つけた時には、何やらいかがわしい看板が乱立した路地にいましたし。

 

「オーディン様、勝手にいなくならないで下さいとあれ程言ったのに! 今はテロリストの行動が活発になっていて、とても危険なんですよ!」

 

「あ〜わかったわかった、そう大声で叫ぶ者ではないわ。本当に堅物じゃのぅお主は、そんなだから勇者の一人も導けんのじゃ」

 

「い、今は関係ないでしょう!?」

 

私だって好きで独り身な訳じゃないです!

好きで彼氏いない歴=年齢な訳じゃないんですぅ!

 

「そんなに怒らんでも……そうじゃ、今度『瀬尾 カズキ』という小僧でも見てみるといい」

 

「瀬尾……あぁ、以前冥界でお会いした。彼は英雄や勇者足り得る存在なのですか?」

 

「どうじゃろうな。勇気ある者という感じではなかったが、なかなかどうして。最近の人間にしては、それなりに見所はあると思うがの?」

 

オーディン様がこんなに人を褒めるのは、私が仕えてから初めてだ。

そういえば以前のテロでは、オーディン様と共に戦ったと聞いた。

通路ですれ違い、軽く挨拶した程度にしか彼の事は知らない。

その時は礼儀正しい普通の男の子にしか見えなかったが……オーディン様が気に入る程の人間、きっと只者ではないのだろう。

 

「まぁどうするかは自分で決め……おぉなんじゃ、丁度そこにおるではないか」

 

オーディン様はそう言うと、また一人で歩いて行ってしまった。

私も後に続くと、そこには例のカズキくんと可愛らしい女の子の姿が。

も、もしかしてデート中なのでは……?

 

オーディン様が声を掛けるとこちらに振り向き、なんでもない様に会話をし出した。

しかもオーディン様をさん付けな上、所々タメ口である。

色々と凄い少年だ。

 

オーディン様はそれを特に気にする事もなく、笑いながら会話を続けている。

というかオーディン様、貴方以前この女の子にセクハラしたんですか。

全く、主神としての立場という物を少しは自覚して頂かないと……!?

 

私がそんな事を考えていると、目の前で驚く事が起きる。

今まで彼らの前にいたオーディン様が一瞬で二人の背後に回っている。

これも確かに凄い事だが、彼の方は仮にも北欧の神々の主神なのだから不思議な事ではない。

魔術か何かで、知らぬ間に背後に回ったのだろう。

 

驚いたのはその魔術に惑わされず、女の子のお尻を触ろうとしたオーディン様の手を掴んでいた事だ。

人間の身でありながら、神の動きについてくるとは何とも凄い少年だ。

これにはオーディン様も驚いたようで、何で解ったのか尋ねていた。

本人の答えは『何となく』という、少々アレな答えだったが。

 

成る程、これは確かに英雄の素質があるかもしれない。

用事が片付いたら誘ってみようかな?

 

 

 

そう思っていたが、何やらゴタゴタしてきた所為で暫くは無理そうだ。

折角の英雄候補なのに……グスン。




さぁギャグは倒れた!
次は貴様の番だ、シリアル!
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