モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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なんかアニメが話をかき混ぜてきて焦ってます。



39話

オーディンさんを無事に兵藤家まで送り届けて帰ろうとすると、リアス先輩に声を掛けられた。

どうやらあの後、朱乃さんはリアス先輩の所に行っていた様だ。

朱乃さんのいる部屋まで行って声を掛けてみたが、顔を出すどころか返事すらして貰えなかった。

 

「すみませんリアス先輩……朱乃さんの事、よろしくお願いします」

 

「貴方には何度も助けられたもの、出来る事はなんでも協力するわ。朱乃も少し落ち着けば、ちゃんと話を聞いてくれるわよ」

 

俺が玄関で頭を下げると、リアス先輩は苦笑しながら励ましてくれる。

 

「小猫ちゃんも、モグラさん預かってくれててありがとうね」

 

「カズキ先輩。私、何も出来ないけど……あまり落ち込まないで下さい」

 

小猫ちゃんが悲しそうな顔で言ってくるので、何も言わずに頭を撫でておく。

気を使わせちゃってごめんね。

 

自宅に帰って、朱乃さんとゼノヴィアの帰りを待つ。

モグラさんも空気を読んでくれているのか、俺の中に引っ込んでくれている。

一人リビングで何もせずに待っていると、玄関からガチャリという音が聞こえてきた。

そのまま廊下を歩き、このリビングへと入ってきた……が。

 

「あれ……朱乃さんは?」

 

「その……暫くは、イッセーの家で世話になるそうだ」

 

朱乃さんが出て行ってしまった。

正確に言えば、イッセーの家の以前住んでいた部屋に暫く泊まるそうだ。

 

「あのな、カズキ。朱乃さんもお前に会うのが嫌な訳じゃないんだ、ただ気持ちの整理をだな……」

 

ゼノヴィアが物凄く頭を使いながら、言葉を選んで俺を励まそうとしてくれる。

そこまで俺は凹んで見えるのか。

 

「わかってる、お前にも気ぃ使わせて悪い。もう少しだけ我慢してくれ」

 

「いや、私が言いたいのは–––」

 

「飯は食べてきたんだろう? ゴメン、今日はもう休む。おやすみ、ゼノヴィア」

 

「……あぁ、おやすみ。今日はゆっくり休むといい」

 

ゼノヴィアの優しい言葉を背中で受けながら、俺は自分の部屋へと戻った。

何やってんだろ俺。

折角ゼノヴィアが気遣ってくれてるのに、最低だ。

明日、ちゃんと謝らないと……

 

その日の夜。

一人いないだけなのに、家の中がやけに静かだった。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

最近カズキと朱乃さんの雰囲気が気まずい。

どうにもこの間の休日に二人で出掛けた時、なにかあった様だ。

朱乃さんはなにも言わないし、カズキも自分が悪いからとしか話してくれない。

ゼノヴィアは二人を仲直りさせようと、アーシアと小猫ちゃんにも協力して貰って色々と頑張っている様だ。

 

俺もそれに協力する為に、気晴らしになるかと思ってカズキを冥界のグレモリー領地下に作られた訓練場に連れてきた。

アザゼル先生とサーゼクスさまが用意してくれた、俺たち専用の頑丈な訓練場だ。

今日はグレモリー眷属の男たちだけでここに来ている。

女性陣はゼノヴィアの呼びかけで朱乃さんの方に行っている様だ。

 

ここでなら多少暴れても問題ないからな、身体を思いっきり動かせば少しはスッキリするんじゃないか?

そう思ったんだけど……

 

「うごご……」

 

「カ、カズキくん!?」

 

ダメだった。

何時もなら全て受け流してカウンターすら決めているカズキが、木場のフェイントに簡単に引っかかる。

反撃しようとカズキが攻撃しても、逆に木場がカウンターを決めてしまう。

頭に直撃を喰らい、カズキの上半身がギャグ漫画の様に地面に埋まっている。

重症だな、こりゃ。

 

 

 

 

 

「悪いなみんな、最近はオーディンさんの護衛で忙しいのに俺に時間使わせちゃって……本当はもっと特訓したいだろうに」

 

少し休憩する事にしてみんなで地べたに座っていると、カズキが急に謝り出した。

 

「何言ってんだよ、仲間が悩んでるなら力になる。それがグレモリー眷属だ!」

 

「僕たちは君に何度も救われている、今度は僕らが君を助ける番さ。個人的にもいつか恩返しがしたいと思っていたしね?」

 

「カズキ先輩はリアス部長の眷属じゃないですけど、僕たちの仲間だもん。それに、小猫ちゃんにも頼まれてますから!」

 

俺、木場、ギャスパーが口々にカズキに話しかける。

カズキは困った様に笑い、ギャスパーの頭をグリグリと撫でている。

 

「おーおー、青春してるねぇ」

 

俺たちが悩んでいると、アザゼル先生が差し入れを持ってやって来た。

先生はカズキの前に胡座をかいて座ると、深く頭を下げた。

 

「すまなかった、俺たちのせいでお前に迷惑かけてる。あのバカ、自分で秘密にしてた事をあっさりばらしやがって……バラキエルも反省してたし、許してやってくれ」

 

「いや、それはもういいんだけどね。バラキエルさんが全部悪い訳でもないんだし……」

 

「それでも秘密にさせてたのは俺とバラキエルで、それで朱乃と揉めてんのも俺らのせいだ。せっかく上手くいきかけてたんだがな……」

 

アザゼル先生が嘆息しながら呟く。

うぅ、内容がわからないから話についていけない……。

 

「なぁカズキ、そろそろ話してくれないか? どうしてこうなったのか」

 

俺がそう聞くと、カズキはみんなに事の顛末を話してくれた。

どうもバラキエルさんが興奮しすぎたのが原因、って事なのか?

でも、娘である朱乃さんが心配なのもわかるしな……

 

そうだ、過去にハーレムを何個も作ったという先生なら、何かいいアドバイスをくれるかもしれない!

 

「お前は難しく考えすぎなんだよ、もっと単純に考えろ。好きだと言ってキスの一つでもしてやれば、それで万事解決ってもんだ!」

 

アザゼル先生は堂々とそんな事を言う。

あれ、あんまり参考にならなそう?

 

「何でいきなりそんな話になる、つーか仮に告白したとしてだ。それで、何か変わるか? 今だって同じ家で寝起きしてるんだ、それってもう恋人以上じゃない?」

 

「変わるぞ! 堂々とエロい事が出来る!」

 

「お前恋人でもないのにリアス先輩にいつもしてるし、して貰ってるじゃないか」

 

ぐはっ! 俺の理論が速攻で論破された!

 

「ぶっちゃけるとな……この歳になるまで異性の友達なんていなかったから、どうすればいいのか分からないんだよ。もうホント助けて、モテモテのみなさん」

 

メッチャ綺麗に土下座してる!?

カズキ……お前今、本気で追い詰められてるんだな……。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

オーディンさんに頼まれて、イッセーたちと護衛の任務に就く事になった。

朱乃さんと話す機会があるかと思って了承したのだが、なんか避けられちゃって無理っぽい。

ホントにもう、どうすればいいんだろう。

 

今は『スレイプニル』というオーディンさんの軍馬が引いている馬車で、夜空を移動中だ。

みんなは馬車に乗り、俺はスレイプニルくんに頼んでその背中に乗せて貰っている。

動物はいい、実に癒される。

いつもなら嫉妬するモグラさんも、高い所が苦手なのか俺の中に引っ込んだままだ。

 

スレイプニルくんが大きいのもあって馬車も巨大な造りになっており、外には木場、ゼノヴィア、イリナさん、そしてこちらを申し訳なさそうに見つめているバラキエルさんが護衛として、空を飛びながら警護している。

 

かなり高い所を飛んでいる事もあり、涼しくて夜風が気持ちいい。

 

「このまま風と一緒に……消えてなくなりたいなぁ……」

 

「カ、カズキくん、そんな事言わないで……」

 

俺の声を聞き取った木場が、こちらに近づいてくる。

いいんだ木場、ほっといてくれ……。

 

「カズキくん、本当に大ダメージ受けてるわねぇ……」

 

「色々と難しく考えすぎてるんだよ、暫くは放って置くしかない」

 

イリナとゼノヴィアが何か言ってるけど、ここからじゃよく聞こえない。

悪口かな、悪口だろうな。

 

「すまない……本当に……」

 

貴方はもう謝らなくていいから、朱乃さんと早く仲直りしてください。

いや、俺の言えた事じゃないな。

未だにちゃんと仲直り出来てないし。

あ、また凹んできた……

 

「はぁ……どうしようかなぁ……」

 

「ふむ、取り敢えず死んでみてはいかがかな?」

 

ほぇ? おたく誰よ?

ってうぉ!?

ちょ、スレイプニルくん!?

急に止まったら危ないって……あ。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

突然馬車が停まり、その衝撃が俺たちを襲ってきた!

何があったのかと窓を開けてみると、見知った顔が目の前あった。

え、なんでカズキがこんな近くに?

 

「……ぁぁぁああああぁぁぁぁぁ……!」

 

いや違う、落ちてる! 落ちてるよあいつ!?

 

「ちょ、カズキが落ちた!?」

 

あいつ俺と一緒で飛べないのに!

た、助けないと!

 

「あいつにはモグがついてる、こん位じゃあ死にやしねぇよ。それよりも……ちっ、面倒な奴が来やがった」

 

アザゼル先生が上を見ながら毒づいている。

俺も一緒に見てみると、黒いローブを着込んだ、悪っぽいイケメンが佇んでいた。

その男をバラキエルさん達が取り囲んでいる。

 

「何やら勝手に一人消えてくれたな。まぁいい、初めまして諸君! 私は北欧の悪神、ロキだ!」

 

ロキと名乗ったその男は、アザゼル先生やオーディンの爺さんと何やら言い合っている。

どうにもこの男は、爺さんがこちらの陣営と仲良くやるのが気に食わないらしい。

そのため、今度行われる日本の神々との会談を破綻させる為にやってきたそうだ。

なんて迷惑な!

 

「……なるほど、貴方の考えはよく分かった、我らが主神よ。–––もはや話し合いなど不要、ここで黄昏を行おうではないか」

 

マジかよ……今度の相手は北欧の神様か!?

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいッ!

この速度で落ちたら幾ら何でもシャレにならん!?

 

「モグラさん、禁手化ッ!」

 

『キュイ!』

 

モグラさんに頼んで即禁手化し、背中のブースターを全力で吹かして落ちる勢いを少しでも殺す。

地面が迫ってきている、このまま着陸は無理か。

最後は受け身をとりダメージを他所に流したが、地面に小さなクレーターが出来てしまった。

 

「あ〜、死ぬかと思った」

 

下が河川敷でよかった、民家とかだと大変な事になってたよ。

さて、なんか襲撃っぽいから急いで戻らないといけないんだけど……どうしよ?

俺、空なんて飛べないんだけど。

 

いつもみたいに土の柱を伸ばしてもいいけど、川とかの近くでやると後が大変なんだよな。

決壊して川の水が溢れでもしたら大変だし。

 

「上でお前のお仲間が頑張ってるってのに、お前さんはこんな所で何やってんだぃ?」

 

俺がどうしようかと悩んでいると、金色の雲に乗った美猴さんがこちらを呆れた目で見ながら現れた。

 

「お、美猴さんいい所に。ちょっと上まで乗っけてって!」

 

「おま、『觔斗雲(きんとうん)』をタクシー代わりにすんな! てか、なんで俺っちの出した觔斗雲をカズキが動かせんだよ!?」

 

知らんよそんなん。

とにかく急いで、ハリーハリー!

 

結局美猴さんが觔斗雲を操りみんなの元に駆け付けると、バカでかい犬がリアス先輩に襲いかかっていた。

それを小猫ちゃんとゼノヴィア、そして朱乃さんが身体を張って庇おうとしている。

 

「ありゃあ『神喰狼(フェンリル)』か? また厄介なのが暴れてやがんな」

 

美猴さんが觔斗雲を停止させ、目元を僅かにヒクつかせてから呟く。

よくわからないが、美猴さんの反応と名前を聞いただけでヤバさが伝わってくる。

あそこまで如意棒を伸ばして貰って……いや、それじゃ間に合わない。

 

「美猴さん、よろしくッ!」

 

俺がそう言ってからその場で軽く跳ねた。

それだけで察してくれた美猴さんは、俺の足裏目掛けて如意棒を横薙ぎに振り抜く。

 

「人使いが荒いねぃ、まぁ気張ってこいよ……ハイィィ、ヤァ!!」

 

美猴さんの掛け声と共に如意棒に押し出された俺は、フェンリル目掛けて猛スピードで突っ込んでいく。

その間にもフェンリルがみんなに襲いかかろうとしているが……これなら間に合う!

 

「だっしゃらぁぁぁッ!」

 

体勢を変えて足を前に突き出し、勢いに任せて突撃してフェンリルの身体を吹っ飛ばす。

効いていないかもしれないが、これで距離は取れたのでイッセーなり木場なりがみんなを護ってくれる筈だ。

取り敢えずこれで少しは……あ。

 

「蹴った後のこと考えてなかったぁぁぁぁ!?」

 

「ちょ、カズキくん!?」

 

また落ちると思い身構えたが、身体が引っ張られて落下が止まる。

というか、誰かに抱えられてる?

 

「飛べないくせに、何をやっているんだお前は」

 

「あ、ヴァーリさん」

 

鎧を着込んだヴァーリさんが、落下する前に腰のベルトを掴んでくれていた。

そのままオーディンさんがいる馬車まで放り投げてくれ、その屋根に着地する。

マジ助かった、でもなんでヴァーリさんや美猴さんがここにいるんだ?

 

「初めまして、悪の神ロキ殿。俺は白龍皇ヴァーリ、貴殿を屠りに来た」

 

ヴァーリさんは、ロキという男に堂々と宣戦布告する。

あのロキって人、悪の神様なのか。

確かに性格悪そうな顔をしてらっしゃる。

 

「勝手に自滅した奴が戻ってきたかと思ったら、一緒に白龍皇まで現れたか。二天龍を見られた、今回はそれで満足だ。一旦退かせて頂こう」

 

ロキは楽しそうに笑いながら羽織っていたマントを翻し、空間を歪めて撤退を始めた。

 

「だがこの国の神々との会談の日、またお邪魔させて貰う! オーディン、次こそは我と我が子フェンリルが主神の喉笛を噛み切るだろう! あの赤龍帝のようにな!」

 

ロキは最後にそう言うと、完全にその場から消えてしまった。

は? あいつ今なんて……?

その時、俺が座っている馬車の中から慌しい声が聞こえてくる。

 

「イッセー!」

 

「イッセーさん! ? しっかりしてください、イッセーさん!!」

 

「血が流れすぎてる、早く治療を! 小猫も仙術でイッセーの治癒力を高めろ!」

 

「はい!」

 

禁手化を解除した俺が馬車の中に移動すると、懸命に治療を行うアーシアちゃんと、アザゼルさんの指示を受け額に汗を浮かばせながらその補助をしている小猫ちゃん。

それを心配そうに見つめるリアス先輩と、そんなリアス先輩を抱きとめている朱乃さんの姿があった。

 

そして、腹に大きな穴を開け血だらけになっているイッセーが仰向けに寝かされている。

これ、ロキって奴にやられたのか?

それともあのフェンリルに……なんでイッセーがこんな事に–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の所為だな、カズキ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肩が、ビクンと跳ね上がった。

 

「お前はロキが襲撃してきた時、何をしていた?」

 

振り返ると、禁手化を解いたヴァーリさんが壁にもたれながらこちらを見つめていた。

 

「その……オーディンさんの馬に乗ってて、突然現れたロキに驚いて急に停まって……」

 

「それで落下した、か? 普段のお前ならその程度でバランスを崩したり、ましてや落ちるなどありえない筈だぞ」

 

「それは……」

 

それは……何でだろう。

突然の事だったから?

油断してたから?

考え事をしていたから?

 

「まぁ理由はこの際どうでもいい。本来なら倒れずに済んだかもしれない仲間が、お前の過失で死にかけている。それが今の現状だ」

 

「おい! イッセーの事は、何もカズキのせいではないだろう!」

 

「確かに彼は強いけれど、今回は空の上での戦闘だ。飛べない彼がいただけで、そこまで戦況が大きく変わったとは思えない」

 

ヴァーリさんの言葉に、ゼノヴィアと木場が反論する。

 

「カズキは空を飛べないが、禁手化すれば縦の移動は難しくても、短時間ならブースターで横の移動は出来たはずだ。スレイプニルを使ってもいいし、お前たちの仲間のいずれかが協力していれば上手く立ち回れたろう」

 

ヴァーリさんはそう言いながら、ゆっくりと俺に近づいてきた。

 

「確かにお前だけの責任ではない、兵藤一誠もアーシア・アルジェントの力で完治するだろう。だがな、余計な事を考えて肝心な時に力を発揮出来ない奴は、仲間を殺す事になる」

 

額と額が触れるような、そんな至近距離で言い放たれる言葉。

ヴァーリさんが掌をこちらに向けると俺の意識は段々と意識が薄れていったが、最後の一言だけがやけに頭に響いた……

 

「無駄に命を散らす前に、戦場から去れ」

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「イッセーさん! 良かった!」

 

う……俺、また気を失ってたのか。

俺が起き上がると、アーシアが涙ぐみながら抱きついてくる。

腹に空いた穴も痛みごと消えている。

そうか、またアーシアが治療してくれたのか。

小猫ちゃんも猫耳が出ているという事は、一緒に仙術で助けてくれていたようだ。

 

「アーシア、小猫ちゃん、二人ともありがとう。お陰で助かったよ」

 

お礼を言うと、二人とも笑顔で答えてくれる。

心配かけて申し訳ない。

 

「ところで他のみんなは? ロキはどうなったんだ?」

 

「皆さんは外でお話しています」

 

外って事は、もう地上に降りてるのか。

どの位気を失ってたんだ?

 

「ロキはカズキ先輩とヴァーリが現れたら撤退しました」

 

ヴァーリ!? あいつが来てるのか、一体何しに来たんだ?

取り敢えずみんなと合流しよう。

 

外に出てみるとそこは駒王学園の近くにある公園で、ここから少し離れた所にみんながいた。

俺がそこに向かうと、ヴァーリとアザゼル先生が何かを話し合っていた。

ん?

ベンチに横になってるのは……カズキか?

動く気配がない、気を失ってるのか?

 

「アザゼル、後は頼んだ」

 

「お前な……態々嫌われる様な真似する必要あったか?」

 

「その方がカズキも踏ん切りがつきやすいだろう」

 

「……不器用な奴だね、お前も」

 

アザゼル先生はヴァーリと会話した後に頭を掻きながら、溜息を吐く。

状況がまるで分からないぞ。

 

「イッセー! 怪我はもういいの?」

 

「はい、二人のお陰でもう大丈夫です。ところでこの状況は……?」

 

俺が部長に返事をしながらヴァーリを見ると、あいつが何かを喋るより早くゼノヴィアが口を開いた。

 

「さぁアザゼル先生、イッセーも目覚めたのだから説明してくれるか。何故カズキがこんな目に遭わなければならない」

 

ゼノヴィアはアザゼル先生を睨み付けながら尋ねる。

どうしたんだゼノヴィア。

ヴァーリだけじゃなく、先生に対しても殺気みたいな物が滲み出てるぞ……!

 

「あの……アザゼル先生、どういう事ですか?」

 

俺が尋ねると、先生は背中越しにヴァーリを親指で指しながら答えてくれた。

 

「実はさっき、ロキとの戦闘に対してヴァーリから共闘の提案を受けてな」

 

共闘!?

ロキと戦うのに、あいつが手を貸してくれるってのか!?

みんなも驚愕としている。

 

「正直俺たちだけで悪神と戦うのは厳しいからな。で、その条件が『カズキをこれ以上戦わせない事』だったんだよ。カズキはこいつが適当に理由こじつけて魔術で眠らせた」

 

話がムリヤリ過ぎたけどな。

アザゼル先生がそう言うと、ゼノヴィアは再び食って掛かった。

 

「何故そんな必要がある。カズキを戦わせない事に、なんの意味があるんだ」

 

そうだ、なんでカズキが戦っちゃいけないんだ?

ロキなんてとんでもない奴と戦うなら、強い奴は一人でも多い方がいいはずなのに。

 

「……アザゼル、こいつらにカズキの事を伝えていないのか?」

 

「本人の意思で伝えないでくれって言われてたんだよ。だがもう限界だ、これ以上は隠し通せねぇ」

 

「何を言ってるんだ? 私たちにもわかる様に説明してくれ」

 

ゼノヴィアがキレ気味に尋ねると、アザゼル先生は真剣な顔でゼノヴィアに、いや俺たち全員にある事実を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カズキは、もうすぐ死ぬ」




次回はなるべく速く投稿したいと思いますが、少し遅れるかもしれません。

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