モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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アニメの方でロキさんやられちゃったけど、シトリー眷属とのレーティングゲームやらないのかね?


43話

あ〜手が痛い、幾ら底上げされても腕力だけだと障壁は流石に硬いな。

まだ痺れてるよ。

 

「くっ……調子に乗るなよ小僧! 転生したての元人間にやられる程、私は落ちぶれてはいないぞ!」

 

ロキは埋もれていた瓦礫を吹き飛ばし、片手で空に上がってから自分の周りに魔方陣を幾重にも展開していく。

いい感じに頭に血が上ってるな。

 

「吠えてないでかかって来いよ。一騎打ちだ、俺はお前が泣くか気絶するまで殴るの辞める気無いからな」

 

「ほざけ! 我が魔術の波動、その身に受けるがいい!」

 

ロキが手をかざすと、周りの魔方陣から様々な色の光弾が雨霰と俺目掛けて降り注いでくる。

辺り一面に撃ち込んでくる攻撃を直撃する物だけ拳で弾いていったが、攻撃の手数は段々と増していき次第に捌くのが難しくなってきた。

 

しかし外れたり弾いたりした奴の魔術が地面に衝突して粉塵が舞い上がり、次第に俺の姿を隠していく。

自分で視界を塞ぐとかバカすぎる、煙が晴れない内に移動しよう。

 

「フハハ! これだけ撃ち込めば跡形もなく–––」

 

「マヌケめ、グミ撃ちは負けフラグなんだよ」

 

「な!? グボォッ!!」

 

俺はその攻撃を地中に潜って躱し、地面を掘り進んでロキの背後に回り強襲。

不意を突かれたロキは顔面を強打され、再び地面を抉りながら吹き飛ばされるも今度はすぐに体制を立て直した。

 

「どうした悪神、こんな手に引っかかるなんて『トリックスター』の名が泣くぞ?」

 

先程と同じ様に俺の挑発に乗ってくるかと思ったが、ロキは口を拭いながら不敵な笑みを浮かべた。

 

「ぐ……ク、クハハ! 調子に乗っていられるのも今の内だぞ、元人間。貴様を殺す準備は既に完了した……!」

 

「お、奇遇だな。実は俺も今さっき仕込みが終わったんだよ、次でお前さんは終わりだ」

 

ロキが何を考えてるのか知らないが、こっちの仕込みも完了した。

思えばこいつが絡んできてから面倒な事ばっかり起きた。

朱乃さんと気まずくなったり、ゼノヴィアに叱られたり……うん、全部こいつのせいだ!

さぁ、最っ高の八つ当たりを見せてやろう!

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

カズキがロキと戦闘を始めた。

俺の役割はアーシアのカバーをしつつ周辺の敵の掃討。

カズキはまだ病み上がりだし、ピンチの時はフォロー出来る様に位置取りに注意しなくちゃな。

アーシアは回復の要で俺の大切な家族で、カズキも今までたくさん助けてくれた大切な仲間だ。

絶対に死守してみせる!

 

ロキの放つ魔術を殴り飛ばしながら戦闘を有利に進めていくカズキ。

しかしロキもやられながら何やら策を弄したらしく、不敵な笑みを浮かべている。

それに対してカズキも何かを仕掛けてるらしいし……腹黒同士、何をするのかわからなくてすげぇ怖いな。

一体これから何が起こるんだ?

 

 

 

 

両者とも警戒しているのか、睨み合ったまま動かない。

周りではみんながミドガルズオルムの量産型と激しく戦闘を行っているのに、あの空間だけ削り取られた様に静かに感じた。

このまま膠着状態が続くかと思ったその時、カズキから動いた!

 

「先手必勝ッ! 先に動いた方が負ける、なんてのは漫画とかの中だけなんだよね!」

 

カズキはそう言いながら距離を詰めてロキに殴り掛かる!

が、それを見たロキは口の端を吊り上げた。

 

「バカめ! 貴様には近距離攻撃しかない事など読めている!」

 

ロキは指をクンッと天に向けて振る。

すると地面から大量の光球が現れ、カズキ目掛けて襲い掛かった!

 

「な!? 何処からこんな物が!?」

 

「先程の攻撃が躱される事など承知の上だ! 全てはこの為の布石ッ! 喰らうがいいッ!」

 

「くそッやられる……!?」

 

カズキが驚愕の表情を浮かべると、ロキは馬鹿にする様に笑いながら攻撃を仕掛ける。

カズキは顔の前で腕を交差させて防御の構えを取る。

ヤバい、カズキが!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うと思ったか?」

 

「なんだと!?」

 

ロキの放った光球がカズキに迫ると、輝くモグさんの群れが地中から現れた!

カズキを庇って光球にぶつかっていき、爆発して相殺していく。

あれは以前カズキがヴァーリに使って見せた、『モグさん大行進』(命名:カズキ)か!?

 

「自分の意思で動くエネルギー体だ。地中に潜った時、そこら中に仕込んでおいた。当然、お前のいる真下にもな!」

 

ロキの足元の土が盛りあがり、そこから輝くモグさんが数匹飛び出てきた!

完全に不意を突いた、これなら!

 

「バカな……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うと思ったかね?」

 

「うぉ!? 」

 

今度はロキの足元から量産型龍王が現れた!?

みんなが戦っているものよりは小型だが、それでもモグさんよりは余裕でデカイ。

そいつはロキに迫るモグさん達を全て丸呑みにしてしまい、爆発して木っ端微塵になった。

オマケにカズキの足下からもう一体現れて、身体に巻き付いて胴体を締め付けだした!

 

「地面に仕掛けをしていたのは貴様だけではない! 小型のミドガルズオルムだ、まぁ小型と言っても充分な大きさだがな。そのまま全身の骨を砕かれるか、それとも丸呑みにされるか、好きな方を選ぶがいいッ!」

 

ロキが喋っている間にも小型のミドガルズオルムはカズキの身体を締め上げ、鈍い音を立てながら口を大きく開いた。

くそ、アーシアのガードで手一杯で助けに行けない!

ロキの奴、俺が助けに入れない様にこっちの戦況も観察しながら戦ってるのか!?

 

「グ……キツ……まっだまだぁ! ゼノヴィア!朱乃さん!」

 

『ハァァァッ!』

 

カズキの掛け声に応え、空からゼノヴィアが剣閃を光らせながら飛び込んでくる。

ゼノヴィアの一撃で巻き付いていた胴体は両断され、残った頭部も朱乃さんが雷光で焼ききって消滅させた。

そのまま二人はカズキの隣に移動する。

 

「お待たせしました、加勢しますわ!」

 

「邪魔はしたくなかったが、そうも言っていられないのでね!」

 

「ぐっ……貴様、一騎打ちではなかったのか!?」

 

「先に蛇使ったお前に言われたくねぇ。そもそもな、敵の言葉を簡単に信じるお前が馬鹿なんだよ」

 

うわぁ、カズキが凄い悪い顔してるぞ!

悪人ヅラを浮かべながら、美人を両脇に侍らせるカズキ。

俺の友達が悪役過ぎる!?

 

「それが正義の口にする言葉か!? 」

 

「正義なんて頭悪そうなもんになった覚えはねぇ。俺はやりたい事をやってるだけだ」

 

おい、ホントにおい。

これじゃあどっちが悪役かわからねぇ!?

 

「私を倒して『神滅具』を名乗るのではなかったのか!?」

 

「あん? そんな面倒臭そうな称号いらんよ、厄介ごと押し付けられそうだし」

 

「はぁ!?」

 

「お前が油断してくれたら儲けモンだと思って適当に言っただけ。引っかかってくれてありがとう、嬉しすぎて腹痛いわぁ!」

 

なんかもう、言動が酷すぎるなあいつ。

 

「とにかくだ、このまま三人でボコボコにさせて貰おうか」

 

カズキ達はそう言うとロキににじり寄り、その三人を見てロキはジリジリと後退していく。

うん、どう見てもカズキが悪役だな!

 

「く、来るな! それ以上こちらに来るんじゃない!」

 

「フハハハハ! これで終わりだクソッタレェ!」

 

ロキの反応が楽しいのか、高笑いまでしてし出したカズキ。

トドメを刺そうと一歩踏み込んだ瞬間、カズキ達の足下に大きな魔方陣が展開した。

 

「へ?」

 

カズキが間の抜ける様な声をあげると同時に、その魔方陣から金属音を響かせながら鎖が現れ身体に巻き付いていく。

 

「ちょ、なにこの鎖!? 力入れても全然ビクともしないんですけど!」

 

カズキが鎖を千切ろうともがいているが、破壊出来る気配がない。

何か特別な呪法でも組み込まれているのか?

 

「だから言っただろう? 『こっちに来るな』と。忠告には耳を傾けるものだ、特に神の忠告はな?」

 

くそ、ロキのドヤ顔がスゲェ腹立つ!

こっちも量産型龍王の相手で手一杯だし……そうだ、あの二人は!?

特に朱乃さんなら魔法とかに詳しそうだし何とか……ぶふぉ!?

 

「……おい。俺は簀巻きみたいに雁字搦めなのに、なんであの二人はあんな卑猥な縛られ方してるんだ?」

 

カズキが半眼になりながらロキに尋ねる。

何と言うかこう、胸とかお尻が強調される縛り方というか……いや、実に眼福ですな!

二人とも縛られて呼吸をするのが苦しいのか、吐息が漏れてなんかこう……とにかくエロエロだ!!

 

「はて、この様な術では無いはずだが……まぁいい。手駒も全て屠られてしまっては今すぐオーディンを害するのは難しいか、今回は生意気な貴様を殺して満足するとしよう」

 

ロキはそう言いながらカズキに手をかざす。

その手からは強い力を感じ、徐々に光を増していく。

うぉぉ、興奮してる場合じゃなかった!

カズキがピンチだ!

 

「お、おいおいそんな不用意に攻撃していいのか? まだ隠し球があるかもしれないぞ? 今素直に帰ったら、特別に許してあげても良いんだよ?」

 

カズキは縛られた足を器用に動かしながら少しずつ後退するが、ロキはそれを許さず鎖を操作して転ばせる。

 

「命乞いか、情けない男だ。散り際くらい潔くするのだな」

 

「潔さなんぞ糞食らえだ、世の中生き残った奴が一番強いんだよ!」

 

「ならばここで死ぬ貴様は弱者だな、つまらない最後の言葉だったよ。さらばだ元人間」

 

「あ、ちょっと待っ……!」

 

ロキはカズキの言葉を最後まで聞かず、その腕から強力な魔術を放った!

くそ、今からじゃ間に合わない!!

 

「カ、カズキィィィィィッ!!」

 

俺の叫び声と共に、辺りに響く爆発音。

宙には粉塵が舞い、カズキ達の姿が見えない。

まさか、カズキがやられたのか……?

そんな考えが頭をよぎるが、煙が晴れた先には予想外の光景が広がっていた。

 

「あ〜、死ぬかと思った……もうちょいで本当に当たるところだったよ」

 

カズキは鎖で縛られたまま、地面に横たわっている。

朱乃さんとゼノヴィアも同様だ。

しかし攻撃を放った筈のロキは吐血しながら膝をつき、脇腹を手で押さえている。

 

そこからは血が滴っており、何かに噛み千切られた様な傷跡が残っている。

そしてカズキの元へと二つの影が近づいていき、カズキを拘束している鎖を噛み砕いた……あれは!?

 

「ゴフゥ……な、何故だ……何故お前達が私を……!!」

 

「間に合ってくれて助かったよ、ありがとう【スコル】、【ハティ】」

 

そう、俺たちが苦戦してカズキが捕らえた筈の二匹の子フェンリル。

『スコル』と『ハティ』だ!

その二匹は尻尾を振りながらカズキに甘える様に体を擦り付け、カズキも頭や顎を撫でてやっている。

一体全体、どういう事だ?

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「さて、あそこで縛られてる二人の鎖も壊してきてくれる?」

 

俺のお願いを聞き、二匹の子フェンリルはそれぞれ朱乃さんとゼノヴィアの元へと歩いていく。

すぐに二人を鎖から解放してくれるだろう。

 

「ぐ……スコル、ハティ! 何故私を裏切ってそんな男に従うのだッ!」

 

ロキがハティに噛み千切られた脇を押さえながら激昂する。

随分と勝手な言い分だな。

 

「お前が先にこの二匹を裏切ったんだろうが。『無能』、『欠陥品』、『失敗作』って貶してな」

 

「それがどうした! 私はあの二匹の主人だ、どう扱おうが私の勝手だろう!」

 

おぉ、素晴らしく三下臭のするお言葉だ。

どんな奴でも追い詰められると素が出るって言うからなぁ、少し笑えてくる。

 

「そんな事を言ってるからお前は見捨てられるんだよ。あの子達の意思を無視して、酷い言葉を浴びせかけて……だから二匹は俺の言葉に応えてくれたんだ」

 

「言葉……説得したというのか? そんな事をする時間など……」

 

「さっき出した『光るモグラさん』、あれは俺の神器を通して声を届ける事も出来る。その一体を捕縛したままの二匹の所に送って、それを通して説得した」

 

ちなみに説得材料は美味しいご飯と毎日のお散歩だ、それでOKした時は涙が出そうになったけど。

モグラさんが二匹に対していかにご飯が美味しいかを力説していたお陰で、戦闘時にモグラさんの力を借りれなくて苦労した。

 

「此処までの流れを全て計算していたというのか……? 元人間の分際で、私の上をいく策略を巡らせていたというのかッ……!」

 

「バカが、人間より悪知恵の働く存在がいるわけないだろう?」

 

まぁ俺はもう人間じゃないけどね?

辺りを見渡すと、もう殆どドラゴンの姿がない。

そろそろ終わりにしよう。

 

「さて、周りの敵も殆ど倒してくれたみたいだな。大人しく捕まるか、それともボコボコにされてから捕まるか。好きな方を選べ、嫌いな方で応えてやるぞ」

 

「ぐ……まだだ! 貴様たちにどんな攻撃をされようと、私はこの場から撤退させて貰う! 例え腕をもがれようが、術式は止めんぞ!」

 

ロキはそう言い放つと、自身の足下に魔方陣を描き始める。

やだなぁ、逃す訳ないじゃん。

 

「じゃあ仕方ない、転移する前に一撃で仕留めよう」

 

俺はそう言ってから、先程イッセーから渡されたある物を取り出した。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

めちゃくちゃ苦戦したあのフェンリルが、凄い大人しくなってる。

ロキとの読み合いにも勝っちゃうし、それもこれもカズキの作戦通りって事なのか……あいつの頭の中はどうなってるんだ?

その当人であるカズキは今まさにロキを追い詰めており、俺が渡した『ある物』を取り出していた。

 

「それは……『ミョルニル』のレプリカか? 成る程、邪な心を持つ赤龍帝では扱えないので、お前に託されたか」

 

ロキが余計な事を言ったせいで、カズキがなんとも言えない視線を俺に向けて来る。

やめて、そんな目で俺を見ないで!

スケベで本当にゴメンなさい!

 

「渡されたのはいいんだけどね。ほら、俺ってば平和主義者だから。武器なんて危ない物持った事ないし、使ったとしても多分お前に当たんない」

 

カズキは首をすくめながら話を続ける。

突っ込まない、俺は絶対に突っ込まないぞ。

 

「だからさ、コレはこうする事にした。モグラさん、【食べちゃえ】」

 

次の瞬間カズキの胸部装甲が開き、中にある結晶体の前に小型化した『ミョルニル』のレプリカをかざす。

すると『ミョルニル』は光に包まれて結晶体の中へと消えてしまった。

……え?

ちょ、あれ借り物なのに!?

 

暫くするとカズキの身体が光り出して、全身がパチパチと帯電している。

あれってもしかして……

 

「ミョルニルを……これは、神の雷を身に纏っている? 貴様、神の力を己に取り込む気か!?」

 

やっぱりこれがミョルニルから出るっていう雷か!

カズキから感じる力も格段に跳ね上がっている!

俺やヴァーリなんて比べ物にならないぞ!?

 

「おぉ、モグラさんがいけそうって言ってたけどマジだった。なんか身体が異常に軽いし、これならお前を殴り飛ばせる!」

 

カズキは身体の感触を確かめる様にその場で数回跳ねた後、ロキ目掛けて駆け出す。

しかし、カズキが辿り着くよりも早く魔方陣が輝き出した。

マズイ、逃げられる!?

 

「流石にその攻撃は受ける訳にはいかないのでね、早々に逃げさせていただく。今度は確実に貴様らを、いや貴様を消してや–––」

 

『ようやく着いたんだ、逃がしてたまるかよ』

 

「な、魔方陣が!? それにこの纏わりついてくる黒炎は……!」

 

ロキがそう言い残して転移しようとした瞬間、誰かの声が響くと奴の周りが黒い炎に包まれて魔方陣が破壊された!

声の主を探して辺りを見渡すと上空に巨大な魔方陣が現れ、そこから黒い炎の塊が這い出てくる。

 

それが段々と伸びていって……あれは、黒い炎のドラゴン?

それにこの聞き覚えのある声はもしかして……

 

「この声、もしかして匙か? お前、グリゴリでマジモンの改造手術されたのか。不憫な」

 

『うるせぇ、今あんま余裕ないから突っ込まないぞ』

 

やっば匙なのか!?

にしてもあの姿は一体どうしたんだ?

 

【兵藤一誠くん、聞こえますか? グリゴリ副総督のシェムハザです】

 

耳につけていたイヤホンマイクから声が流れてくる。

シェムハザさん、確か前にカズキがお世話になったとか言ってたな。

 

【時間がないので手短に。匙くんに複数あるヴリトラ系の神器を全て埋め込んだ結果、あの姿に変化しました。今は精神力で自我がある様ですが、それも長くは持たないでしょう】

 

そ、それって大丈夫なんですか?

元の姿に戻れなくなったりとか……あいつも無茶をするなぁ。

 

【カズキくんの助けになりたくて頑張りましたからね、彼は。今自我を保っているのも、かなり凄い事なんですよ? 】

 

カズキの助けに、か。

匙の奴、カズキに鍛えてもらった事にすげぇ感謝してたもんな。

恩を返す為に、あいつも気合入れて頑張ってるんだ。

 

【もしもの時は力尽くでも彼を止めて下さい。赤龍帝の貴方ならそれが出来るはずだ、お願いします】

 

任せて下さい!

あいつは俺にとってもダチで、ライバルだ。

どんな事をしてでも止めてみせますよ!

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

匙が『怪人丸焦げドラゴン』になってしまった。

これ、アルマロスさん辺りの仕業かな?

せめて人型にしておいてあげて欲しかった。

これじゃ会長さんにアプローチも出来ないじゃないか。

 

『なんかアホな事考えてそうだけど、目の前の敵に集中しろ。俺がヴリトラの炎であいつの行動を阻害してる間にさっさと仕留めろ、腐っても神様だし長くは拘束出来ない』

 

なんでバレたし。

まぁいいや、せっかく作ってくれたチャンスだ、最大限に活用させて貰おう!

 

「く、なんだこの炎は!? 払っても消しても次から次へと纏わりついて……力が抜けて動けない!? これがヴリトラの呪いだとでも言うのか!」

 

『何をしようが逃がさねぇ。俺の気合と根性、舐めんじゃねぇぞ!』

 

お〜カッコイイね、匙。

なら俺もそれに応えて、とびっきりの一撃を喰らわせようか!

 

「突然戦場に現れたかと思えばフェンリルを殴り飛ばし、その息子たちを自陣に引き込み、私に戦術で読み勝つ!? あまつさえ神の雷を身に宿すなど……バカげている! なんだ、なんなんだ貴様は!?」

 

ロキが狼狽えながら、いや怯えながら声をあげる。

そこには最初に感じた余裕のある態度は存在せず、絶対的優位な立場から引き摺り降ろされた恐怖しかない。

なんだと言われてもなぁ?

 

「ただの人間だ、頭に元が付くけどな」

 

ロキの目前まで距離を詰め、雷を纏った拳を振り抜いた。

その一撃はロキの腹部に深く突き刺さり、宿った雷はその身を激しい放電音と共に焼き尽くしていく。

 

「許さん、絶対に許さんぞ! 瀬尾カズキィィィィィッ!!」

 

ロキは叫び声をあげながら身を焦がし、放電が終わると力なく地面に倒れ伏した。

最後にようやく『元人間』じゃなくて俺の名前言いやがったよ、恨み節だけどね。

周りのドラゴンも片付いたみたいで、みんなもこっちに向かってきている様だ。

 

ようやく終わりか、流石に疲れた。

オーディンさんから何か報酬貰わないと割に合わな……おろ?

頭がクラクラして目の前がボヤけて……あ、ダメだこれ。

俺ってば戦闘終わると気絶オチばっかだなぁ。




ヒャッハー! 戦闘終了だぁ!!
もうシリアスなんて二度と書いたりしないんだからねッ!

悪魔化、天使化→堕天使化、そしてミョルニルをパックンチョ。
この巻の話だけで、カズキくんのチート化がハンパないな。

……まぁそんなすんなりチート化なんて出来るわけない。
訓練された読者様ならわかっているね?

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