モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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私の学校の修学旅行は岩手だったので、未だに京都に行った事がありません。
京都、そこはかとなく憧れがありますね。


47話

「行くわよ、野郎ども!」

 

『おおーっ!!」』

 

桐生の号令に合わせて、班員一同手を掲げて応える。

修学旅行二日目、昨日は色々とゴタゴタがあったがまだまだ元気だぜ!

 

「カズキ、調子はもう大丈夫なのか?」

 

「昨日みたいにハシャギ過ぎて倒れるのは勘弁よ?」

 

「おぅ、迷惑掛けた分はきっちり返済させて貰うぞ」

 

元浜と桐生がカズキの事を気に掛けているが、本当に体調が悪かった訳じゃないから本人も元気に返事をする。

今日はバスで清水寺や銀閣寺、金閣寺といった有名どころを攻める予定で、カズキだけでなくアーシアやゼノヴィアもテンションが高い様だ。

 

九重の母親である八坂さんの事も気になるが、そっちはアザゼル先生の部下やレヴィアタンさまが捜索してくれている。

情報が入り次第連絡をくれるそうなので、今は素直に修学旅行を楽しませて貰おう。

俺たちは京都駅でバスの一日乗車券を購入し、清水寺へ向けて出発した。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

バスに乗車しつつ外の風景を堪能した後、目的地に到着。

少し先に見える坂を登れば、そこが清水寺だ。

いざ登ろうとすると、坂の手前に巫女装束に身を包んだ金髪ロリっ子の姿が。

 

「おぉ来たな、待っておったぞ!」

 

「九重か、本当に案内に来てくれたんだな」

 

「うむ、約束通りキッチリと案内をしてみせるぞ!」

 

「やーん可愛い! 金髪幼女とか貴重すぎだわ!」

 

九重が無い胸を張りながら堂々と宣言し、イッセーはその頭を撫でてやる。

九重は気持ち良さそうに目を細めていたが、興奮した桐生が九重を抱き上げて頬擦りしたりクルクル回ったりし始める。

 

「それでイッセー、その可愛らしい女の子は何処で誘拐して来たんだ?」

 

「失敬なハゲだな!?」

 

「リアス先輩絡みの知り合いだよ、昨日偶然会ったら案内役をかって出てくれてさ。今日と明日、京都の案内をしてくれる事になったんだ」

 

「この辺りには詳しいのじゃ、任せて貰おう! というかくっつき過ぎじゃ、離れろ小娘ぇ!」

 

「あ〜なるほど、先輩絡みなら納得だわ。にしてもお姫様口調とかキャラも完璧ね、最高だわ!」

 

元々が子ども好きなのか、やたらと九重を構う桐生。

そろそろ可哀想なので、九重を肩車して桐生から引き離す。

俺のフリーパスの機嫌を損ねて帰られたら問題だ。

 

「……ちっこくてかわいいなぁ……ハァハァ……」

 

「みんな仲良くしてあげて、あと元浜は近付いたら殺す」

 

「殺っ!?」

 

そう言えばイッセーが、元浜はロリコンだと言っていた。

なにかある前に殺っておこうかと思ったが、時間もないしこのまま九重を確保して進むことにする。

九重は俺の頭の上にいたモグラさんをいたく気に入り、しきりに話しかけていた。

 

「モグちゃん、私とお友達になってくれるか?」

 

「キュイ!」

 

「うはぁ〜! 可愛いのじゃ〜!」

 

九重は感動の声を上げながらモグラさんを抱き締め頬擦りする。

ふ、どうやらウチのモグラさんの魅力に骨抜きにされた様だ。

 

「美少女と小動物のツーショット……やるわね、瀬尾」

 

「別に狙ったわけじゃないが、素直に褒められてやろう。ほら九重、解説解説」

 

「おお、そうじゃった! モグちゃんの可愛さについ……」

 

桐生からのサムズアップを受けつつ、九重に呼び掛ける。

モグラさんは可愛いからな、それは仕方ない。

 

「この坂を登ると清水寺なのは知っておろう? ちなみにこの坂は『三年坂』と呼ばれとってな、ここで転ぶと三年以内に死ぬという言い伝えがある」

 

ちなみに本来の呼び方は『産寧坂』と言うそうだ。

流石現地人、小さいのによく知っている。

アーシアちゃんは九重の話に怯えてイッセーの腕にしがみついている。

何とも微笑ましいが、イッセー爆発しろ。

 

「で、何でお前まで腕に抱き着いてんの?」

 

「カ、カズキが倒れたら大変だから支えてやろうと思ってな……日本は恐ろしい術式を坂に仕込むのだな」

 

後半小声で言ったんだろうが聞こえてるぞ、小刻みに震えてるし。

やっぱゼノヴィアはアホの子だ。

 

「肩に九重ちゃん、腕にはゼノヴィアっち……瀬尾、側から見るとあんたら親子みたいね?」

 

「そ、そうか!?」

 

「娘の髪色が違いすぎるだろ、俺はこんな歳の娘の髪を染めさせたりしないぞ」

 

俺は黒髪、ゼノヴィアは青み掛かった頭髪だ。

どうやっても金髪の娘はうまれないだろ?

まぁ、先祖返りとかで稀にあるそうだけど。

あとゼノヴィア、肩に九重がいるんだから脛を蹴るな。

ホントにコケるだろうが。

 

「おいカズキ、今すぐ九重ちゃんを肩から降ろせ」

 

「お前をここで転ばせて、地獄に送ってやろう」

 

松田と元浜が脚で素振りをしながら物騒な事を言い出すが、当然無視して先に進んでいく。

坂を登りきると、大きな門がそびえ立つ。

 

「この門は仁王門じゃ。一度焼失したが、建て直されて最近解体修理されたの。ここの狛犬が少々変わっておって、本来は口の開いた阿形(あぎょう)と口の閉じた吽形(うんぎょう)の一対なんじゃが……」

 

「あ、どっちも口が開いてる」

 

「そう、どちらも阿形になっておる。お釈迦さまの教えを大声で知らしめているからとか、色んな説があるそうじゃ」

 

『へぇ〜……』

 

九重の本格的な解説に、一同感心してしまう。

本当に詳しいなこのチビっ子、ガイドに連れてきて良かった。

……母親探し、真面目にやってやらないとな。

 

その後清水寺に無事到着し、賽銭箱に小銭を入れて参拝した。

桐生の勧めでイッセーとアーシアちゃんが恋愛くじを引き、俺もゼノヴィアにせがまれて一緒に引かされた。

アーシアちゃんたちは『大吉』を引き当てて喜び、俺たちは『凶』を引き当ててゼノヴィアがその場に崩れ落ちた。

 

俺と桐生の

『凶は大吉よりも珍しいから、逆にラッキーだと考えよう』

と言うアドバイスや、九重の

『凶のおみくじを利き腕と反対の腕でみくじ掛に巻き付けると、困難な行いを達成した事になり凶が吉に転じる』

と言う助言を受け、ゼノヴィアは半泣きになりながらも頑張ってみくじ掛に片手で結びつけていた。

 

その光景を見た松田と元浜に殴り掛かられたが、おみくじの結果は俺のせいじゃないでしょうよ。

 

 

 

 

バスを乗り継ぎ、今度は銀閣寺へとやって来た。

モグラさんとも大分仲良くなり、今は九重の頭に乗せてイッセーと一緒に歩いている。

ちなみに九重の分のバス代は俺が出して、九重本人に使わせた。

何時もは自分で支払いなんてしないそうで、九重は少し楽しそうにバスの支払い箱にお金を入れていた。

 

そして銀閣寺に着いてからゼノヴィアが一言。

 

「銀じゃない!?」

 

どうもゼノヴィアは金閣寺は金色で、銀閣寺は銀色なんだと思い込んでいたそうだ。

ショックを受けるゼノヴィアを、アーシアちゃんとイリナさんが優しく慰めている。

桐生や九重曰く、足利義尚が死んだから銀箔を貼るのを止めたとか、単純に財政難だったからと言われてるらしい。

世知辛いな、銀閣寺。

 

紅葉を楽しみつつ一通り見て回り、軽く昼食をとってから次の目的地である金閣寺へと向かった。

 

 

 

 

「金だっ! 今度こそ金だぞカズキ!」

 

「いや〜凄いな、本当に金ピカだ!」

 

金閣寺に着いた俺とゼノヴィアはメチャクチャはしゃいだ。

自覚できるくらいにテンションが上がってしまったのだ、仕方ない。

金閣寺自体も凄いが、池に映る姿もまた素晴らしかった。

思わず松田と一緒に、何枚も写真を撮ってしまった。

ゼノヴィアも金閣寺には満足したようで、目を輝かせながら九重に質問責めしていた。

 

金閣寺も見て回った後に、お土産を購入して今は茶屋で一休み。

この茶屋は九重の知り合いのお店だそうで、店員さんは人間に化けた妖怪さんらしい。

まぁそんな事お茶が美味けりゃどうでも良い。

 

抹茶は以前朱乃さんに点てて貰った事があるが、こちらも美味い。

一緒に出される和菓子が甘いので、多少苦くても全く気になる事がない。

これが調和って奴なのか、素晴らしい限りだ。

 

抹茶の虜になっていたのでこの時は気づかなかったが、近くで痴漢騒ぎがあったらしい。

こんな所で無粋な真似を働く奴がいるものだ、そいつ実はテロリストなんじゃないかな?

そんなこんなで二日目の見学が終わり、九重とも現地で別れて俺たちはホテルへと戻っていった。

 

実に楽しい時間だった、後で撮った写真を朱乃さんと小猫ちゃんにも送ってあげよう。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

二日目の夜。

豪華な夕食を終えて、今は自室で『作戦前』の待機中だ。

同室のカズキは二度目の風呂へと出掛けてここにはいない。

……頃合いだ、松田と元浜とは話が付いて現地で落ち合う手筈になっている。

何としても……!

 

「女子風呂を覗くのだ……!」

 

この時間帯、女子は大浴場でお風呂タイムだ。

昨日はゴタゴタのせいでタイミングを逃したが、覗きポイントは既に把握済み!

チャンスはカズキのいない今しかない!

何時もバカにしているクラスの女子ども、この俺が全裸を舐めるように見てしんぜよう!

 

期待と欲望に胸を膨らませながら覗きポイントへと歩を進めていく。

この非常階段を降りればすぐそこに……!?

 

「やはり来ましたね、あなたが女子風呂近くに来る事はわかりきっている事です」

 

非常階段の踊り場に、ジャージ姿で凄むロスヴァイセさんが待ち構えていた。

しかしホントにジャージが似合うな、残念な意味で。

まぁバレてるのなんて元から想定済みだ、ここは無理にでも押し通る!

 

「俺は女子風呂を覗く……覗かなくちゃいけないんだ!」

 

「教師として、女生徒の裸は死守します!」

 

こうして火蓋を切った乳龍帝vs百均ヴァルキリーの戦いは、なかなか白熱した物となった。

どちらも派手な技は使えないので俺は小さなドラゴンショットを複数放ち、ロスヴァイセさんは氷の魔術で迎撃してくる。

 

「少しは見逃して下さい! そのぐらい寛容でないと、彼氏なんて出来ませんよ!」

 

「そんな彼氏、こちらから願い下げです!」

 

む、彼氏の事を言えば動揺するかと思ったが効果が薄い。

 

「くっ、何時もより攻撃が鋭いですね! 何と言うスケベ根性! そもそも、あなたはリアスさんやアーシアさんの裸体を何時も拝んでるそうじゃないですか! まだ足りないと言うんですか!?」

 

「それはそれ、これはこれなんですよ!」

 

「この女ったらしドラゴンは! 少しキツいお仕置きが必要な様ですね!」

 

うぐぐ、攻め手が厳しくなってきた!

雷まで使い始めて……ロスヴァイセさんってどれだけの魔術が使えるんだよ!?

だが懐に飛び込めれば、俺には一発逆転の奥の手が……!

 

「そこまでだ、アホイッセー」

 

「んがっ!?」

 

ダメージ覚悟で飛び込もうとした瞬間、聞き慣れた声と共に何かが落ちて来て俺を地面に押し倒す。

それと同時に倒れ込んだ俺の手足と首を、踊り場の石が伸びてきてロックする。

あの声とこの攻撃は……!

 

「カズキくん!?」

 

ロスヴァイセさんが驚きの声をあげる。

やっぱりカズキか!

 

「お前いま『洋服破壊』使おうとしただろ? あれをやろうとすると、お前の鼻の下が伸びるから丸分かりなんだよ」

 

え、俺ってばあの技使う時そんな顔してるの?

まさか『洋服破壊』にそんな弱点があるとは……!

 

「カズキ、お前は風呂に行ったはずじゃなかったのか!?」

 

「お前が大人しくしてるのが怪しかったからな、俺が消えれば動き出すと思ってたよ」

 

あぁ、モロバレだった!?

まんまと騙されてしまったよ!

 

「この俺が、覗きなんていう下手すれば修学旅行が取りやめになる様な不祥事を見逃すとでも? 目的地に向かっている松田と元浜の所にも既に生徒会メンバーを向かわせてある、早々に諦めろ」

 

二手に別れる事までお見通しかよ!

というかお前が生徒会を指揮していいの!?

 

「にしても、覗きポイントまでバレてたのか……」

 

「そりゃあ俺があらかじめホテルの人、というかサーゼクスさんに許可を得てから作った場所だからな」

 

「……え?」

 

「始めからそういった場所を作っておけば、獲物はそこに吸い寄せられるんだよ。罠とも知らずにな?」

 

マヌケな顔をしている俺に向けて、カズキご嫌らしくニヤリと笑う。

……は、嵌められたぁぁぁ!?

最初っから全部カズキの掌の上で転がされてるじゃねぇか!?

 

「『洋服破壊』って確か女性の服を脱がせるハレンチ技……な、なんて事しようとするんですか! このジャージは特売の時に手に入れた上に、カズキくんが買ってくれた大切な物なんですよ!? 資源を大切にしない悪いドラゴンにはお仕置きです!」

 

ロスヴァイセさんは顔を真っ赤にしながら手を頭上に掲げ、俺の体よりも巨大な氷を作り出した!

ちょ、そのサイズの氷塊は流石に!?

 

「くっ!? 惚気られた上にやられるとは……無念だ!」

 

「の、の……惚気てなんかいませ〜んッ!!」

 

くそ!

俺はこんな事で覗きを諦めたりしないぞ!?

いつか必ず女湯を……ギャアァァァァァッ!!

 

 

 

 

 

「……え? もしかして、この血やら氷やらでメチャクチャになった踊り場直すの俺なの?」




昔のエロい人は言いました。
幼女+小動物=最強!

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