モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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待ってくれてる人がいるかはわかりませんが、投稿遅れて申し訳ありません。


49話

イッセー達が店を出てから暫くするとロスヴァイセさんは酔いが回って眠ってしまい、しょうがないのでアザゼルさんに後を任せて俺はイッセー達を追った。

ロスヴァイセさんをアザゼルさんに任せて平気なのかって?

色々とだらしないけど、そこまで下衆じゃないよ?

 

イッセー達を探して走っていたら急に霧が出てきて、気付いたら周囲が京都の街並みから霧が立ち込めるだけの殺風景な場所へと変貌していた。

何が起きたのか分からず辺りを見回していたら、急にこの筋肉達磨が襲い掛かって来たので拘束して今に至ります。

 

「挨拶が遅れた。俺はゲオルグ、隣の女性はジャンヌ、そして君の下にいるのがヘラクレスだ」

 

ゲオルグはわからないが、他の二人は物語で聞いた事がある名前だ。

厨二病なのかな?

にしても名前負けし過ぎじゃないかね?

 

「オラ! 解ったんなら早く離しイダダダダッ!?」

 

「突然襲い掛かって来といて、随分と態度がデカイな? 態度と一緒に、その図体も折り畳んでコンパクトにしてやろうか?」

 

極めていた関節を更にキツくすると、ヘラクレスが騒ぎだす。

いくら筋肉が凄かろうが、一度関節を極めてしまえば簡単には解けない……筈。

 

「あ〜……すまない、彼に代わって私から謝罪させて貰う。こちらに戦う意思は無いし、話を聞いて貰えれば返事がどうでも元の場所に帰す。だから彼を離して、話を進めさせてくれないか?」

 

ゲオルグが軽く頭を下げてくる。

こいつは話が出来そうだけど、頭良さそうだし相手するのが面倒っぽい。

 

「ゴメンなさいね? こいつってば脳みそまで筋肉だから、かなりおバカなのよ」

 

で、最後の一人がこの金髪ねぇちゃん、ジャンヌか。

この人はあれだな、自分が可愛いのを理解して動く人だ。

ちょっとオツムが弱そうだし、正直メガネさんよりこっちの方が扱い易そうだ。

 

ヘラクレスは論外。

交渉相手にいきなり襲いかかるとかバカすぎる。

 

「まぁ話くらいは聞いてやるよ。なんだっけ、勧誘だっけか?」

 

このままじゃ埒があかないので、拘束していたヘラクレスから飛び退いて少しだけ距離を取る。

ヘラクレスはこちらを睨みつつ、仲間の元へと移動していった。

 

「話が早くて助かるよ。我々は人間の身で何処まで悪魔や天使、ドラゴン達とやりあえるかを追求している。こちらのリーダーが君をえらく評価していてね、良かったらこちら側に来ないか?」

 

「断る、一昨日来やがれ」

 

「てめぇっ!」

 

「ヘラクレス、もうお前は黙っててくれ」

 

俺の返答が気に入らないヘラクレスが吠え、ゲオルグに嘆息混じりに窘められる。

沸点低いな、やっぱ三下か。

 

「君の事は以前から目を付けていたんだが、接触しようとする度にヴァーリに妨害されてね。今でこそ堕天使になってしまった様だが人の身で堕天使の幹部を撃破した人材だ、是非仲間になって欲しかった」

 

「そう、そこだよ。集めてるの人間なんだろ? もう堕天使になったんだから、俺なんて用無しじゃん」

 

「そうでもない、我々には転生悪魔を人間に戻す技術がある。元の技術が同じなのだから、転生した堕天使も同様に戻せる筈だ。もう一度人間に戻り、我等と共に人間の力を悪魔や天使たちに示してみないか?」

 

ゲオルグは笑みを浮かべながら、こちらに手を差し伸べてくる。

色んな陣営の技術が集まってるのは聞いてたけど、そんな事も出来るのかこいつら。

まぁ何されようがこいつらの提案なんて乗らんけども。

 

「何を言おうがお断りだ、俺の修学旅行を邪魔したお前らは許さん」

 

「……仕方ない。勧誘は諦めて、君には暫くここにいて貰うとしよう」

 

ゲオルグはそう言って手元を動かすと、三人を霧が包んで姿が霞んでいく。

 

「……おい、無事に帰してくれるんじゃなかったの?」

 

「帰すさ、『京都での仕事が終わったら』ね。君の力は厄介だ、此処で大人しくしていてくれ」

 

「じゃ〜ね〜♪」

 

ゲオルグは眼鏡をクイっと押し上げ不敵な笑みを浮かべ、ジャンヌはイイ笑顔でこちらに手を振っている。

そんななか、消えかけた体でヘラクレスはこちらを指差した。

 

「てめぇは俺が殺す、覚え–––」

 

あ、キリッとした顔で言い切る前に消えた。

アホすぎる。

あいつ、テロリストよりコメディアンの方が向いてるんじゃなかろうか。

 

こうして見事に置いて行かれた訳だけど、別に焦る必要はない。

こんな事もあろうかと、収納機能があるモグラさんの石に転移装置を用意して……あ。

モグラさん、九重に預けっぱなしだった。

 

……あれ?

これ、もしかして詰んだ?

 

「……へ、へるぷみ〜ッ!!」

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

最強の神滅具である『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の所有者、曹操。

禍の団の『英雄派』という今まで戦っていた旧魔王派やヴァーリ達とはまた違う派閥のトップで、九重の母親を攫った犯人。

アザゼル先生相手に互角に渡り合える、そんな奴が仲間と一緒に俺たちを襲ってきた。

 

複数の魔剣と神器を持ち、木場とゼノヴィアを同時に相手にして互角以上にやり合える剣士ジークフリート。

自身の想像した怪物を幾らでも生み出せる上位神滅具『魔獣想像(アナイアレイション・メーカー)』の所有者で、様々な種族の弱点を突けるアンチモンスターを生み出す事に特化した少年レオナルド。

 

数は其処まで多くは無いけど、一人一人の強さが厄介なほど強い!

 

俺たちが苦戦しつつも戦っていると、突然俺たちと英雄派の間に魔方陣が展開された。

そこからやって来たのはヴァーリチームの魔法使いである『ルフェイ・ペンドラゴン』。

彼女は何やらヴァーリの邪魔をした曹操に報復する為にやって来たそうで、古の神が量産した破壊兵器『ゴグマゴグ』を引き連れ英雄派に大打撃を与えてくれた。

オマケに酔いが覚めきっていないロスヴァイセさんまでやって来て、魔法を大量にブチ撒けて更なる損害を与えていく。

 

ちなみに俺、というか『おっぱいドラゴン』のファンだそうで、握手を求められて応えたら嬉しそうに喜んでくれた。

なんともマイペースな子だ。

 

その後ろでロスヴァイセさんは吐いてたけど。

実際凄い事をしているのに素直に凄いと思えない、流石はカズキの眷属だと何故か納得してしまった。

 

「曹操、貴様ら英雄派の目的はなんだ? 先祖の様に英雄にでもなるつもりか?」

 

構成員の大半を撃破して落ち着いてきた戦場に、さっきまで『肩慣らし』と言いながら山や川をド派手にブッ飛ばして戦っていたアザゼル先生が曹操に問い掛ける。

 

「別に大層な事を考えてる訳じゃ無いさ、『人間』のままどこまでやれるのか–––ちっぽけでよわっちい人間のささやかな挑戦だ」

 

曹操は肩に槍の柄をトントンと当てながら、笑みを浮かべて答える。

 

「そう言う意味では君たちの仲間である瀬尾一輝は素晴らしかったよ、何度勧誘を試みた事か。その度にヴァーリに妨害されたし、既に堕天使に転生してしまったがね」

 

確かにカズキは今でこそ堕天使だけど、まだ人間だった頃にコカビエルを倒してる。

あいつが大雑把な性格だから忘れがちになるけど、よく考えたらそれってすごい事なんだよな。

ていうかカズキの奴、勧誘なんていつの間に?

 

「ならなんでこのタイミングでカズキを捕らえた。堕天使になったあいつは、お前らにとっちゃ用済みだろう?」

 

「そうでもないさ、彼には色んな価値がある。何せ人間の身でありながら歴代最強と言われる白龍皇や孫悟空の子孫、さらには堕天使総督やその幹部たちと渡り合った逸材だ。彼の身体を探れば、彼と同じ戦力を持った戦士を量産できるかも知れない」

 

アザゼル先生の問い掛けに、曹操は楽しそうに笑う。

つまりこいつも、コカビエルと同じ様な事をしようとしてんのか!

というか、大量のカズキを相手にするとか悪夢以外の何者でもないぞ!?

勝てる気がまるでしねぇ!!

 

「させねぇ、お前は俺が潰す!」

 

次の瞬間、アザゼル先生から感じる力がが跳ね上がった!

表情は人工神器の一部である兜の所為で伺えないが、確実にキレている!

 

「これが聖書に記されし堕天使総督の力か、流石に恐ろしいな。だが、俺もまだとっておきが–––」

 

「曹操、退くぞ。こちらは終わった」

 

曹操が槍を構え直すと、その横に突然ローブを羽織った青年が現れた。

この霧、あいつが『絶霧』の所有者か!

 

「ゲオルグ、彼はどうなった?」

 

「失敗だな、素直に言う事は聞いてもらえなかったよ。取り敢えず異空間に閉じ込めたから、解析するなり洗脳するなり後でどうとでも」

 

「そうか、ではそろそろ撤退するとしよう」

 

ゲオルグと呼ばれた男は、曹操の問いに淡々と答える。

彼ってもしかしてカズキの事か!?

あいつがそんなに簡単に捕まるなんて!

 

「アザゼル総督! 我々は今夜この京都の二条城で、九尾の御大将を使い一つ大きな実験を行う! 制止するために、是非とも我らの祭りに参加してくれ!」

 

曹操が楽しそうに笑いながら宣言すると、立ち込めていた霧が一層濃くなり視界が真っ白になって辺りが何も見えなくなった。

先生から空間が戻ると声を掛けられたので、みんなそれぞれ武装を解除する。

暫くすると霧は晴れ、観光客で溢れる渡月橋周辺へと変わっていた。

 

松田や元浜たちの姿も見える、元の空間に戻れたみたいだ。

俺たちは桐生に『先生から呼び出されたから先に行っていてくれ』と伝えて、一旦人気の無い路地裏へと移動した。

 

「くそ! カズキが攫われただと!? 朱乃さんに何て言えば……!」

 

「ケホッ、はぁ〜吐いたら少し楽に……え? カズキくんが、どうかしたんですか?」

 

この事態に憤るゼノヴィアと、何が起きたのか把握し切れず周りに説明を求めるロスヴァイセさん。

って、のんびりしてる場合じゃない!

 

「先生! 早くカズキを助けに行かないと!」

 

「場所がわからなけりゃどうしようもない。あのゲオルグとかいう『絶霧』所有者を捕まえるしか方法がねぇ……おまけに京都で実験だ? ふざけやがって……ッ!」

 

先生は怒りに身を震わせ、ここまで聞こえる程強く歯を噛み締めた。

こんなに怖い先生を見たのは久しぶりかもしれない。

 

「母上もカズキも、何も悪い事してないのに……どうして……」

 

九重が涙を零しながら呟き、それを見た俺は頭を撫でてやるくらいしか出来なかった。

二条城で行われるという実験。

そこで曹操たちを捕らえて、必ずカズキと八坂さんを助け出してみせ……ん?

九重の身体、なにか光って……ッ転移されようとしてるのか!?

 

「九重ッ!!」

 

「な、なんじゃこれは!? 一体どうい–––」

 

九重に伸ばした俺の手は、気付くのが遅れた所為で何も掴めずに空を切る。

マズい、九重まで敵に攫われちまった……!

 

「……いや、あの魔方陣からドラゴンの魔力を感じた。もしかしたらカズキが何か細工してたのか?」

 

「そう言えばあの魔方陣、カズキが家で練習していたものに似ていた気がするぞ。ホラ、修学旅行前にフリーパスにかけてた奴だ」

 

アザゼル先生が顎に手を当てながら呟き、ゼノヴィアもそれに追従する。

そう言えば顔を青くさせながらかけてたな……つまりその魔法を九重にも掛けてたのか?

本気で九重の事をフリーパス扱いしてるな、あいつ。

 

「じゃあカズキくんは、状況を打開する為に九重さんの力を借りたくて召喚したんですね!?」

 

酔いが少し醒めて思考が働く様になったロスヴァイセさんが、希望を見つけた様に顔を明るくさせる。

 

「正直九重の力を借りるだけで上位神滅具である『絶霧』をどうにか出来ると思えないが、あいつが捕まってて大人しくしてるとも思えん」

 

「カズキなら自力でどうにかして、すぐに私たちの所に帰ってくるさ」

 

2人の言葉を聞き、他のみんなも表情を変える。

そうだ、悩んでたって仕方ない。

カズキも状況を打破しようと動いているなら、俺たちも目の前の障害を打ち破っていくだけだ!

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「……で、なんで私はこんな所におるのじゃ?」

 

「テンパってたのが落ち着いたらなんか急に寂しくなって、お前を呼べるの思い出してつい呼んじゃった。……ゴメンね?」

 

「カズキのアホーッ!」

 

思いつきで人質増やしちゃったぜ、テヘベロンチョ★




誰か私にケーキを五時間も持ち歩くお客様の気持ちを教えてくれー!

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