拙い文章では御座いますが、これからもよろしくお願いします。
いやぁ、モグラさんがいない事に気付いたら気が動転してしまった。
暫くして落ち着いたけど何もなくて暇だし寂しくなってきた時に、九重に転移の魔法を掛けてたのを思い出して衝動的に起動。
京都の姫さまを思いっきり巻き込んじゃったぜ!
その姫さまである九重は、地べたに座り込んでいる俺の頭をプンスカ怒りながらはたいている。
「このおバカッ、アホッ、ポンポコピーッ!」
「落ち着けケモミミ姫。今光るモグラさんに出口探して貰ってるから、すぐに出られるって」
「なんじゃケモミミ姫って、そんなん知らんぞ! 私の名前は九重じゃッ!」
「自分の長所を『そんなん』呼ばわりは良くない」
手違いとはいえ合流出来たので、モグラさんに預けていた転移装置を使ってみたが何故か起動しない。
この空間が特別なのか、普通の方法じゃ脱出出来ない様だ。
嫌らしい事をしてくれるな、流石はメガネキャラ(偏見)。
ヴァーリさんと美猴さんに躾けられたせいで、訓練を続ける身体にされているお陰で習得した禁手の部分展開。
以前は腕や脚だけしか出来なかったそれが発展していき、今では胸部装甲だけを出現させて光るモグラさんを大量に生み出す事に成功した。
一匹の大きさを出来るだけ小さくして数を増やし、全方位に展開して出口がないか探って貰っているのだ。
「うぅ……早く母上を助けなければいけないのに、何故こんなおマヌケな状況に……」
「嘆くな九重。どんな失敗をしても、次に活かせばいいんだよ」
「なんで私をここに連れてきた元凶に励まされなきゃならないんじゃぁ……」
はたき疲れたのか、九重は力なくその場にへたり込む。
その後連絡が来るまで暇だからと地面にマスを描いてから能力で白と黒の石を作り、陣取りやらオセロやら将棋やらをしながら暇潰しをしたがそれも飽きてきた。
う〜ん、気を紛らわせるのもそろそろ限界っぽいしモグラさん達からも連絡が来ない。
これはちゃんとした出口はないパターンかな?
「仕方ないな、このままここにいると連中が帰ってくるかもしれない。これ以上九重を危ない目に合わせられないし、強引に行ってみよう」
「……その心は?」
九重は座り込んだまま、此方に疑いの眼差しを向けてくる。
段々俺の事を把握してきた様で、まるで信用がない。
「ガイドは手元にいるし、ここに飽きたから多少危険でも早く戻って観光の続きがしたい」
「フンガーッ!」
胸を張って答えたらむき出しの腕を噛まれた。
手加減はしてくれてる様だが、地味に痛い。
九重『で』遊ぶのは結構楽しいが、ここには九重の母親の手掛かりもないみたいだし早くみんなのところに戻ろう。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
曹操が待つ二条城に向かった俺たちグレモリー眷属 + 匙とイリナとロスヴァイセさん一行は、再び強制転移させられた空間で禁手に至った刺客を送り込まれるもそれを撃破。
そのまま本丸である二条城の敷地内へと歩を進め、曹操たち『英雄派』の幹部たちと操られているのか意識がない八坂さんと対面した。
曹操の合図と同時に八坂さんは巨大な金色の狐–––九尾の狐へと変貌し、夜空に向かって咆哮をあげる。
曹操たちの目的は、京都という特殊な都市の力と伝説の妖怪である九尾の狐の力を使ってグレートレッドを呼び寄せる事だった。
俺たちはその目的を阻止して八坂さんを救う為、英雄派の幹部たちと戦いを始める。
木場とゼノヴィアは同じ剣士であるジークフリートと。
イリナはジャンヌと呼ばれた金髪のお姉さんと。
ロスヴァイセさんは、ヘラクレスと呼ばれた巨漢にカズキの眷属だと知られた途端に絡まれていた。
あいつ、捕まってる間に何かしたのかな?
そして匙はロキ戦で体得した技、『龍王変化(ヴリトラ・プロモーション)』により龍王ヴリトラへと変身して巨大化した八坂さんの相手を。
そして俺は曹操とやり合う事になった。
ゼノヴィアの強化されたデュランダルによる先制攻撃が引き金となり、それぞれの戦闘が始まった。
しかし始まってみればみな一様に苦戦し、俺も曹操にやられ放題で大きなダメージを受けてしまった。
こいつら全員強い上にどいつもこいつも禁手だらけ、禁手ってのは珍しい現象じゃなかったのかよ!
おまけに貴重品であるフェニックスの涙まで持ってやがるし……手強いにも程がある。
これからどうしてやろうかと苦慮している時だった。
英雄派の幹部たちがそれぞれ戦っていた木場やゼノヴィア、イリナにロスヴァイセさんを抱えてやってきて、こちらに向かって乱雑に放り投げてきやがった。
みな一様にボロボロにされていて、遠くからはヴリトラの苦しそうな咆哮も聞こえてくる。
嘘だろ……みんなやられちまったのか……?
「悪いな赤龍帝、これで詰みだ。キミたちは充分強かったけど、英雄の力を持つ俺たちには勝てない。–––ゲオルグ、魔方陣はどうだ?」
「もう少しだな、グレートレッドがくるかはわからないが」
……くそ、こいつら俺たちの事を無視して実験に意識を集中させてやがるな。
アーシアはみんなの所に駆け寄り、涙を流しながら回復させようと頑張ってくれている。
それでもダメージが大きいようで、みんな目を覚ます気配はない。
ちくしょう……俺、赤龍帝なんだろう?
天龍を宿した悪魔なんだろう?
なのに、仲間一人守れない……なんでこんなに俺は弱いんだッ……!
「–––む? 空間に歪みが……?」
「始まったか?」
……なんだ? あいつらがざわついている。
何が起こるのかと思っていると、空間に裂け目の様な物が生まれつつあった!
あれは、以前グレートレッドが現れた時と同じ現象か!?
「いや、まだ時間が掛かる筈だ。これは……?」
『兵藤、どうやらあいつが来たみたいだぜ?』
神器を通して、九尾の御大将と激闘を繰り広げている匙から声が掛けられた。
そう、あの亀裂からは俺たちのよく知る力を感じる。
亀裂から感じるその力が次第に大きくなっていき、それにつれて空間の亀裂も大きくなっていく。
「これはグレートレッドではない。まさか彼が?」
「それこそまさかだ、『絶霧』で隔離した結界内に幽閉しているんだぞ? 神滅具でもないただの神器にそんな真似が–––」
曹操と霧使いが何やら話し合っていたその時、裂け目が一段と大きくなった。
全く……毎度毎度、登場するタイミングが出来過ぎてるぜ!
「やったったぞ、オラァァァッ!!」
亀裂を破壊しながらビームが飛び出てきて、そこから曹操たちに捕まっていた筈の仲間、カズキが変な掛け声と共に肩に九重を乗せてこの場に現れた!
あのビーム、コカビエルやサーゼクスさまにぶっ放してた奴か!?
空間を突き破ったビームはそのまま一直線に飛んでいき–––
『カズ……ギィヤァァァァッ!?』
九尾の御大将に拘束されているヴリトラ化した匙に直撃した。
……さ、匙ィィィィィッ!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
「九重、危ないから少しだけ離れててくれ」
「んあ? わかったのじゃ」
俺の言葉を聞くと、噛み付いていた口を素直に放してからトテトテと歩いて距離を取る九重。
離れたのを確認してから、俺は全身から蒸気を噴き出しながら通常の禁手化の鎧を身に纏った。
どうも俺の禁手はロボっぽいからか、装着時に周りにいると衝撃の余波やら排熱する時の蒸気やらが襲ってくるらしい。
アザゼルさんで実験したから間違いない、その後殴り合いに発展したけど。
「おぉ〜……赤龍帝の鎧は赤く美しかったが、お主の銀色の鎧は無骨だが力強さを感じる。あれとはまた違った魅力があってカッコイイのぅ」
装着が終わったのを確認した九重が近くに寄ってきて、ペチペチと鎧を触っている。
そんなん言われたの初めてだな。
おっと、始める前に九重をモグラさんの力で保護しなくては。
モグラさんにお願いすると、九重の身体を薄い膜のような物が包み込む。
「な、なんじゃこれは!」
「モグラさんが作ってくれた防護膜、その中にいれば大抵の事からは護ってくれるってさ」
「ふぇ〜、モグちゃんって凄かったんじゃのぅ……おぉ、伸びる伸びる」
自分の周りに出来た不思議な物質に興味津々なのか、九重は手で摘んで引っ張って遊んでいる。
さて、これで準備完了だ。
「よし九重、今から少し無茶するからしっかり掴まってろよ。俺から離れたら丸焦げになるかも知れん」
「な、何をする気なんじゃ?」
俺の肩に乗せると九重は頭にしがみつき、少し怯えた様に此方を見つめてくる。
なに、ちょっと暴れるだけだから。
「取り敢えず、辺り一面吹き飛ばす」
「……へ?」
九重の声を掻き消すように、遠くで大きな爆発音が辺り一帯に鳴り響く。
俺の指示を受けた光るモグラさん達が、一斉に爆発したのだ。
しかし地面が揺れるだけで、周りに変化は起こらない。
これじゃあ足りないか、なら次だ。
手脚と背中のタービンを起動、段々と回転数を上げていく。
次第に音が大きくなって振動も激しさを増し、火花と放電で辺りが煌き出す。
バイザー越しでも結構眩しいな、これ。
「な、なんか光っとる! なんかバチバチしとるぞぉ〜!?」
「あんまそこで暴れると、落っこちて丸焦げになっちゃうぞ?」
「うひぃ!? おっかない、カズキはおっかないのじゃあぁぁぁッ!!」
九重の悲鳴をBGMにタービン音を一段と激しく響かせると手脚から雷撃が迸り、その場で大きく跳び上がる。
リアス先輩から任された仕事をすっぽかした罰として、イッセー、木場、ゼノヴィアの三人と同時に組手(リンチ)をさせられた時に編み出した無差別攻撃!
喰らうがいい、アザゼルさんの厨二センス光るネーミング技!
「閃光! 雷、刃、撃ィィィィィッ!!」
咆哮と共に両手脚から放たれた雷撃が、辺りの空間を手当たり次第に焼き尽くし崩壊させていく。
今回はミョルニルの力も借りているので、イッセーたちに放った物より凶悪になってるな、予想よりも凄すぎて自分がビビった。
ってうぉ、なんか辺りがグネグネし始めた!
「こ、今度はなんじゃ!?」
「あ〜……やり過ぎて空間が歪んだのかも?」
「お主やっぱり阿呆じゃろう!?」
やっぱ神様の武器って凄いね、おっかないからこの技はあまり使わないようにしよう。
にしてもこの惨状、一体どうしようか。
このままだと俺たちも危険な気がしてきた。
ん? 目の前がヒビ割れ何かが見えて……なんかやたらと大きな金色の狐? が見える。
尻尾が九本もある、九尾の狐って奴か。
一人納得していると、肩に乗っている九重が身を乗り出して騒ぎ始める。
「母上!? 何故母上があの様な場所に!」
はい? あれお前の母ちゃんなの?
俺が教えられたのはボンキュッボンなパツキンのチャンネーで、あんなおっそろしい顔した狐じゃないんだけど。
「カズキ、早くあそこに! 母上の元に!」
「いや待て、あれ本当にお前の母ちゃん? 写真写りがいいにも程があるだろ、別人じゃねぇか」
写真と全然違うじゃん、見せられた写真どんだけ補正されてたんだよ。
美人の救出とバカでかい妖怪の捕獲じゃ、大分テンションに違いが出るんだけど。
「何でもいいから早く! お願いじゃ!」
「わかった、わかったからそんな眼で見ないで。なんか自分が物凄く汚いものな気がしてくるから」
涙で眼を潤ませながら懇願する九重を見ては、流石に言う事を聞かざるを得ない。
手脚から放っていた放電を停止し、各所の排熱装置が空気の抜ける音を立てながら蒸気を勢い良く吐き出す。
さて、あそこを通るにはもう少し穴を大きくしないと無理だな。
「大技連発だけど、いける?」
『キュイ!』
「おし、じゃあやってみよう。九重、手脚に力入れて踏ん張れよ?」
「母上に会う為じゃ、どんな事でも耐えて見せる!」
モグラさんからのGOサインを頂き、九重も俺の首をへし折る気かと言うくらい力を込めてしがみ付いてくる。
必死なのはわかるけど、もう少し手加減して下さい。
少し息苦しくなりながらも、タービンを再び始動させエネルギーっぽい何かを溜めていき胸部装甲を展開する。
さて、死なない程度にぶっ放してみようか!
「いくぞ必殺! 『胸からドーン』!」
「え、それ技名なのか?」
九重の呟きを聞かなかった事にして、空間の亀裂に向けて構わずビームを撃ち込んだ。
コカビエルの時は生命エネルギーとかいう不可思議パワーを使って威力を底上げしていたが、今はミョルニルからエネルギーを借りてるから倒れたりしない……筈!
てか、ビームは直撃してるのに少ししかヒビが入らないんだけど!?
「ングガァァァ……! くそが、何で壊せないぃぃぃ!?」
「頑張れカズキ! ホレ、気合いじゃ気合い!」
九重がしがみ付きながら応援してくれるが、俺はロリコンじゃないからそこまで元気になれないです。
あ、ヤバい。
なんか段々力が抜けてくる感覚が……
「九重、ごめん。ちょっと無理っぽい……」
「お願いじゃ、もう少しだけ頑張ってくれ! 無事に騒動が済んだら、え〜と……き、京の者しか知らないマル秘スポットや、美味しいお店に連れて行くのじゃ!」
「任せろ九重! お前の母ちゃんと京都はこの俺がマルッと救ってみせるから!」
「……自分で言っておいてなんじゃが、最低じゃのお主」
うおぉぉぉ、やる気がみなぎってきた!
行くぞモグラさん!
俺たちの素晴らしい京都見学の為に!
気合いと共に、身体中から力を捻り出す!
するとビームの勢いが増し、コカビエルに放った時以上に大きく膨れ上がった!
その直後、空間の亀裂が大きく広がっていきピキピキという音が辺りに響き始める。
「おぉ、いけそうじゃ! それゆけカズキ!」
「ふんぬぅあぁぁぁッ! ブ・チ・抜・けェェェェェッ!!」
次の瞬間ガラスが割れる様な音が鳴り響き、霧が立ち込めるだけの空間が弾けた!
「やったったぞ、オラァァァッ!!」
よし、脱出成功!
辺りを見渡すと京都の夜景と大きな城が見える、あれは二条城かな?
その城をバックに金色の大きな狐がこちらを睨みつけていて、足元には大きな黒い蛇が伸びて……あれ、あの黒いのって匙だよね?
なんで伸びてんのあいつ?
今までで一番印象に残ったお客さまとのやり取り。
すこっぷ「いらっしゃいませ〜」
客A「シュークリームちょうだい」
すこっぷ「カスタードのみとカスタードと生クリーム両方入ったものが御座いますが、どちらになさいますか?」
客A「だからシュークリームよ! 何聞いてるの!?」
すこっぷ「シュークリームは二種類御座いまして……」
客A「もういいわよ! あんた名前は!?」
すこっぷ「スズキ(仮名)です」
客A「サトウね! 憶えてなさいよ!」
憤慨して出ていく客A。
私は頭を下げてありがとうございましたと言い、客Aの後ろで待っていたお兄さん大爆笑。
クレーム入れたかったんでしょうけど、『サトウって誰だ?』と現場が混乱するので名前くらいは憶えて下さい。