モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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携帯のメモ帳にチマチマ書いていた話が完成したので、投稿しようとしたら間違えて全削除を二回やりました。
哀しくなり、ふて寝したら首を寝違えました。
病院に行こうと原付に跨ったら、パンツが破けました。
誰かに呪われているんだろうか?


51話

「えっと、あんまし状況がわかってないんで説明してくれる?」

 

匙がカズキの放ったであろうビームの被害を受けて地面に倒れこんで少しすると、肩に九重を乗せたカズキが堕天使の翼を羽ばたかせながらこちらに近づいてきた。

俺は曹操たちを警戒しながらこれまでの事を簡単に説明すると、カズキは何度か頷き肩に乗っていた九重を降ろして曹操たちを指差す。

 

「なるほど。つまりみんながボロボロなのも、九重の母ちゃんが美人から怪物にクラスチェンジしたのも、匙が倒れてるのも全部あいつらが悪いんだな?」

 

「いや、匙をやったのはお前–––」

 

「許さないぞお前たち! 俺の親友(笑)である匙にあんな酷い真似しやがって!」

 

「この男はどこまで行ってもブレぬな……」

 

俺の言葉を遮り、拳を握り締めながら連中に向かって啖呵をきるカズキ。

色々と酷いのはお前だ。

九重もカズキをジト目でみつめている。

 

でもカズキが来たなら勝ち目は……あるのか?

確かにカズキなら連中ともやりあえるだろうが、相手は五人だ。

俺が加勢したとしても五対二、しかも俺は今しがた曹操に手も足も出ずにやられた。

 

みんなは俺を凄いと言ってくれるが、いつも肝心な所で俺は役に立てない。

レーティングゲームではその後にドライグの力を借りて勝ったとはいえ、ライザーに負け匙には惜敗。

禍の団との戦いでも、ヴァーリには敵わずディオドラにアーシアを攫われ、シャルバにはアーシアを殺されかけた。

 

なんで俺はこんなに弱いんだ……。

強くなりたい……あいつらに届かないこの手を、この拳を届かせたい……!

 

《なら、届かせてみせなさい。あなたの中には、その為の力が眠っているわ》

 

突然、俺の中から声が直接響いてくる。

この声は……知っている。

俺が『赤龍帝の籠手』の中に意識を潜らせている時に出会った、元赤龍帝である女性の中で歴代最強だったあの人–––

 

「……エルシャさん?」

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

よくわからない空間から脱出したら、余計によくわからない空間に出てきてしまった。

なんでみんなしてボロボロなんだよ。

まぁそこでたむろしてる奴らがやってくれたんだろうから、今からキッチリお礼はするけど。

 

ていうか、もう夜じゃん!

俺の修学旅行三日目、こいつらのお陰で半分潰れたぞ糞がッ!

自由に動き回れるのは、最終日のほんの少しの時間しかないじゃないか!

なんもかんも全部、こいつらの所為だ!

 

「簡単に終われると思うなよ!? じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!」

 

「お前は何処の宇宙の帝王だ」

 

『それよりもカズキ、話がある』

 

怒りで震えていると、イッセーとドライグが話かけてきた。

なんでも、神器に宿る歴代赤龍帝の中で女性最強の人が力を解放する手助けをしてくれるらしい。

その為の時間が少しかかるそうだ。

 

「よーするに、時間を稼げばいいんだな? 九重、お前はイッセーの側で待っててくれ」

 

「う、うむ。気をつけるんじゃぞ?」

 

九重が心配そうな顔をしながら、イッセーの元へと歩いていく。

任せろ、無駄に時間を浪費するのは得意分野だ。

 

「悪いカズキ、いつもお前に頼ってばかりで……」

 

「なに似合わない事言ってんの? そんな事考えるより、お前はおっぱいおっぱい言ってる方が似合ってんよ」

 

イッセーがらしくもなく暗い顔をしているので、適当な言葉を掛けてから奴らに向き直る。

さて、先ずは九重の母ちゃんをどうにかしないと……お、倒れてた匙がようやく起き上がった。

戦闘中にサボるとかトンデモない奴だな。

 

『カ、カズキめ……なんて事しやがるんだ、あの野郎……』

 

『奴は我が黒き炎で焼き尽くす、絶対だ』

 

なんかヴリトラさんキレてらっしゃるね、こっちまで声が聞こえてくる。

でもその怒りは九重の母ちゃんにぶつけてね、俺は逃げるから。

取り敢えずこれで向こうは匙に任せておける、俺はこの連中の相手をしよう。

 

「まさか、あそこから力技で強引に脱出して来るとは思わなかったよ。待っていれば解放すると言ったのに」

 

「性格悪そうなメガネの言葉は信じない事にしてるんだ」

 

ゲオルグは肩を竦めながら呟き、俺の言葉を聞いた剣士風の男とジャンヌは口を押さえて笑いだす。

–––ん? ゲオルグの隣にいる槍を持った人、どっかで見た様な……?

 

「待ってたぜクソ野郎、それがテメェの禁手か? ちょうどいい、俺が相手してやるよ!」

 

思い出そうと考え込んでいると、バカ……もとい、ヘラクレスが一歩前に出てくる。

 

「あの銀髪姉ちゃん、お前の眷属なんだってな? 歯応えなさ過ぎて物足りなかったんだ、代わりにお前が相手してくれよ」

 

ヘラクレスはニマニマと笑いながら、傷付き倒れているロスヴァイセさんを指差す。

なるほど、生け贄一号はお前か。

他の連中もヘラクレスを止める事はせず、こちらを観察している。

向こうから一対一形式にしてくれるとか、余程自信があるのかただのバカか……。

 

「あの時は捕らえるために手加減した所為でやられたが、今度は全力でやってやるぜ!」

 

なんで禍の団の人達って、こんなに三下臭のするセリフが大好きなんだろう?

ヘラクレスはその大きな腕を掲げ、俺目掛けて勢い良く振り下ろす。

そんな大振りな攻撃が当たる訳もなく、後ろに飛び退いて躱すと拳が地面に激突。

拳が触れた付近が、大きな音と共に爆発した。

 

「見たか! 攻撃と同時に相手を爆破させる俺の神器、『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』! テメェもこの地面みたいに粉々にしてやるぜ!」

 

「地面を砕けるのがそんなに自慢か? そんなん誰でも出来るぞ」

 

俺はその場で脚を踏み抜き、地面に無数のヒビを入れた。

こんなんで自慢げになるとか子供か。

俺の態度が気に食わなかったのか、ヘラクレスはドヤ顔だった表情を再び怒りに染める。

 

「ぐ……こいつを見ても余裕ぶってられるか!? 禁手化ッ! 『超人による悪意の波動(デトネイション・マイティ・コメット)』!」

 

ヘラクレスが叫ぶとその身体が輝き出して皮膚が盛り上がり、腕や足、背中などに無数の突起物が現れた。

うぇ、なんか気持ち悪い。

見た感じミサイルみたいな形状をしてるな、能力的にあれが爆発するのか?

 

「この爆発物の弾幕、お前に耐え切れるか! 喰ら–––」

 

「あ、やっぱ爆発物なんだ。じゃあそのまま自爆しろ」

 

「なッ!? ぐあぁぁぁッ!!」

 

まぁ神器の能力が爆発系なら禁手も爆発系だよね、俺は違うけど。

相手が勝手に全身危険物だらけになってくれたなら話は早い。

指先や手の甲から突起物目掛けてドリルを射出、全弾命中してヘラクレスを中心に残りの英雄派も巻き込んで大爆発を起こした。

 

衝撃と共に付近を吹き飛ばしたが、爆炎から残りの英雄派が飛び出しやがった。

纏めて倒れてくれれば楽だったけど、そんなに甘くないか。

爆炎が収まると、爆心地には焼け焦げたヘラクレスが地面に倒れ伏し時折痙攣を起こして動いている。

ゲオルグはそれを確認すると、ヘラクレスを霧で包んで何処かに転移させた。

多分何処かにあるであろう治療施設へと送ったんだと思う。

 

「チッ、あの爆発で原型留めてやがる」

 

自分には効きにくいのか、それともあいつがメチャクチャ頑丈なのか。

まぁ何はともあれ一匹片付けた、次はどう来るかね?

俺が身構えていると、槍を手にした男が楽しそうに笑いながら話しかけてくる。

 

「流石だね。ヘラクレスを難なく無力化した上に、こちらを纏めて一掃しようとするとは。やはり君は敵に回したくないな、仲間になってくれないのが残念だよ」

 

「なら人様の大切なモンに手ェ出ししてんじゃねぇよ。ロスヴァイセさんの分は終わった、次はゼノヴィアの分だ。やったのはアンタか、そっちの金髪姉ちゃんか、それともそこのスカした態度の剣士か? 誰だろうが、楽に終われると思うなよ」

 

「いいね、なかなかの殺気だ。俺が相手をしたい所だが……申し訳ない。俺は今、君の仲間である赤龍帝が何をしようとしてるのかが気になって仕方ないんだ」

 

曹操は何とも言えない顔をしながら、俺の背後にいるだろうイッセーの方へ顎を突き出し見るように促す。

最初は罠かと警戒していたが、曹操の背後にいる英雄派の連中も信じられない物を見たかの様に眼を見開き固まっている。

あくまで曹操に意識を向けながら、そっと後方で反撃の準備をしているであろうイッセーへと視線を送る。

その視線の先には–––

 

『おっぱい……』

『お、おっぱい』

『おっぱいーん』

『いっぱいおっぱい夢いっぱい』

『すごい、おっぱい』

 

数え切れないほど大量の光る人の形をしたなにかが、なんかすごい事を呟いている光景があった。

……え〜、なにこの変態見本市。

イッセーが手にしてる宝玉から出て来て円陣組んでるんだけど、どういう現象なの?

 

「……おっぱいゾンビか?」

 

曹操の呟きに納得してしまった。

そうね、確かにゾンビにしか見えないわ。

てかなんか俺が真面目に頑張ろうとすると、毎回イッセーが妨害して来る気がするんだけど気のせい?

 

ガンガン落ちていくテンションをなんとか維持していると、イッセーは戸惑いながらも何かを決心した様に表情を変える。

状況は分からないが、準備完了って奴か?

何をするにしても巻き込まれたらマズい、俺は大きく飛び退いて英雄派の奴らから距離を取る。

次の瞬間、イッセーは空に向かって大きく叫んだ。

 

「–––召喚(サモン)ッ! おっぱいぃぃぃぃぃッ!」

 

叫び声と同時に、イッセーの目の前に奇妙な形をした魔方陣が現れる。

魔方陣にどう見てもおっぱいと思わしき形が刻まれており、それが強く輝き始めた。

輝きが一層強くなって閃光を放つと、其処には下着姿のリアス先輩の姿が。

 

あ〜……ゼノヴィア痛めつけた仕返しはキッチリさせて貰うけど……なんかもう、どうでもいいや。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

エルシャさんの助言に従い、展開された魔方陣からお着替え中の部長を呼び出し、その乳首をつつく事によって神器の中に眠っていた新しい力を手に入れる事に成功した。

新しいと言っても、ドライグ曰く神に封じられた天龍本来の力の一部らしいけど。

 

ちなみに部長は俺がお乳さまをつついた途端、光と共に消えていった。

どうにもこの為だけに呼び出してしまったみたいで、後で土下座して謝らなきゃならなくなった。

カズキの向けてくる無気力ながらも汚い物を見る視線も、ザクザク刺さってとても痛い。

 

『貴方の可能性の扉は、リアス・グレモリーのお乳によって開かれたわ。これで貴方は【覇龍】とは違う道を歩んでいける筈よ、頑張りなさい』

 

『……ずむずむいやーん』

 

エルシャさんと、男性の歴代最強赤龍帝であるベルザードさんはそんな最後の言葉を残して神器の中から消えていった。

最強の赤龍帝の、最後の言葉がアレですか……。

俺、わかったんだよ。

赤龍帝になる人って、変な人が多いんだなって。

 

「どうせ俺も変態だよぉぉぉおおっ!」

 

「何を今更分かりきった事を……」

 

「うっさいぞカズキ! えぇい、もうやけくそだ! いくぜ、ブーステッド・ギアァァァァッ!」

 

俺の咆哮と共に、神器から新たな力の使い方が流れ込んできた。

ベルゼブブさまが調整してくれた俺の中にある『悪魔の駒』、赤龍帝の力がその特性を取り込んで新たな可能性を示してくれる!

さぁ、ここから反撃開始だぜ!




京都編も後少しで終了です。
ライザー復活の話と運動会の話は本来京都に行く前のお話だったのですが、やり忘れたので京都編終了後に書かせて貰います。

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