モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

59 / 86
英雄→HERO→H・ERO→変態。
つまり英雄派は、変態の集まりだったんだよ!


52話

いや〜、イッセーがあまりにもあんまりな事をしだしてやる気なくなってたけど、これは凄い。

イッセーの中にある『兵士』の駒の特徴である【プロモーション】を、上手いこと活用している。

『僧侶』は強化された魔力を倍加してぶっ放す二門の大砲を備え、『騎士』はそのスピードを生かす為に余分な装甲を削ぎ落とし、『戦車』は逆に装甲を厚くして防御力を上げ、肘の撃鉄で攻撃力も跳ね上がってるのか。

 

あの撃鉄かっこいいな、俺も欲しい。

モグラさんどうにか出来ない?

無理? 残念、ビッ◯・オーごっこがしたかったのに。

ちなみに禁手化は解いた、というか大技連発でモグラさんがバテたので解けてしまった。

 

九重の横に来て観戦モードに入っていると、何やら匙と九尾の御大将が怪獣大決戦をやっている近くの空が歪んできた。

何だろうと思っていると、そこから緑色の細長い龍が現れた。

 

「あ、あれは……!」

 

「知っとるのか、カズキ?」

 

「あぁ、あいつは◯龍って言ってな? どんな願いでも一つだけ叶えてくれると言いながら、出来ない事が割とあるっていう意外と凄いドラゴンだ。願った人を大金持ちにしてくれたり、王様にしてくれたりな。あとギャルのパンティもくれたりする」

 

「全然凄そうに聞こえないのは気のせいかのぅ……」

 

どうやら俺の説明は不評の様だ。

そんな事を言っているとドラゴンから一つの人影が飛び出し、猫の様に静かに着地した。

その人物は金色に輝く体毛に、マラソンランナーがつける様なグラサンと珠のデカい数珠を装備した猿顔のおじいさんだった。

口にはキセルを咥え、肩に見覚えのある棍を携えている。

 

『おいジジィ! なんか俺の事を激しく勘違いしてる奴がいるんだが!?』

 

「若い癖して早々に引退を決め込むから認知度が低いんじゃ、ここで気張って評価を変えろぃ」

 

『そういう問題か!? オイラこの結界破るのでチョーお疲れなんだけど!』

 

テンション高過ぎてメンドくさいな、このドラゴン。

その人物はドラゴンと簡単な会話を交わすと、こちらに向かってゆっくりと歩を進める。

 

「お前さんが、美猴のアホタレが鍛えたカズキって坊やかぃ? 儂は闘戦勝仏……初代孫悟空といった方がわかるかの? 坊やの事は天帝から色々と聞いとるよ」

 

闘戦勝仏と名乗ったおじいさんは、優しい笑顔をこちらに向けながら頭に手を置く。

あ〜何処と無く雰囲気似てるなと思ったら、美猴さんの言ってた初代さんか。

てか天帝って帝釈天さんの事だよね?

あのヤンキー神さま、なにを吹き込んだんだろうか。

 

「初めまして、知ってるみたいですけどカズキです。美猴さんから話は聞かされてました」

 

「カカッ、どうせ酷い事しか言っとらんかったじゃろ」

 

あいつはそういう奴じゃ、初代さんはそう言いながら大きな声で笑い、俺は乾いた笑いで答える。

普段から悪口言ってるの、モロバレですよ美猴さん。

 

「さてカズキよ。聖槍のクソ坊主は儂が面倒見てやるから、お前さんは玉龍(ウーロン)と一緒に九尾を頼むぞぃ。アホタレの仕込みがどんなもんか、拝見させてもらおうかの」

 

「へ? いや俺もうモグラさんが疲れきってて……のわぁぁぁ!?」

 

初代さんは返事も聞かずに俺の服を無造作に掴むと、空高くにいるドラゴン目掛けて放り投げやがった。

俺は綺麗な放物線を描いてドラゴン……玉龍さんの頭の近くに顔から落ちた。

鱗が擦れて痛いよ、さすが美猴さんの一族は人の話を聞かない。

 

「玉龍、その坊やと一緒に九尾の姫さんを頼むぜぃ」

 

『おいおい、こんなチンチクリンなんざ必要ねぇぜクソジジィ! あんなんオイラ一人で……おわ、狐と戦ってんのヴリトラじゃん! 懐かしいな、どれ位ぶりだぁ? まぁいいぜ、とっとと片付けてたらふく京料理を食らってやるぜぇ!』

 

玉龍さんはベラベラと喋りたてながら、長い体をくねらせて九重の母ちゃん目掛けて移動していく。

つーか、モグラさんがガス欠なのに俺にどうしろと。

モグラさんのいない俺にやれる事なんて、味方と相手をおちょくる位しかないんだけど……取り敢えず近付かないと話にならないか。

 

「よし、玉龍さん。俺に考えがあるんで、このまま八坂さんに突っ込んで」

 

『あぁん!? なんでオイラがテメェの言う事聞かなきゃならねぇんだよ!』

 

「まぁまぁ、このチンケな私に龍王の力って奴を見せつけてくださいよ。あの狐なんかよりすごいんでしょ?」

 

『あたぼうよ! 仕方ねぇ、オイラがどんだけ凄いのか! そのちいせぇ目ン玉ひん剥いて、よぉくみてやがれってんだ!』

 

玉龍さんは速度を更に上げ、勢い良く突撃していく。

チョロいな龍王。

 

暫くしてヴリトラさんと八坂さんが暴れている戦場に到着。

辺りの建物はヴリトラさんの黒い炎と八坂さんの吐き出した炎で焼き尽くされ、まさに怪獣大決戦の戦場だ。

八坂さんは近付いてきたこちらに気付くと、その長い尻尾でこちらを絡め取ろうと襲い掛かって来た。

 

『うおぉ!? なかなかやるじゃねぇか狐の姫さん! おいガキ、なんかやるならさっさとしやがれ!』

 

「え、んなもんないよ? 」

 

『はぁ!?』

 

「強いて言うなら、アンタが囮になるのが作戦だ。頑張って八坂さんの攻撃の的になってくれ」

 

俺は手を挙げてそう言うと玉龍さんの頭から飛び降り、八坂さんの身体の上に転がり込む。

しかし身体の上に転がり込むって言葉にすると凄いな、元が美人だから物凄く卑猥に聞こえる。

俺がそんなアホな事を考えている間も玉龍さんに八坂さんの尻尾が襲い掛かり、その長い身体を締め上げていく。

 

『ちょ、テメェ待ちやが……ぐぉ!? ち、力も強ぇじゃねぇかこの姫さん! ちくしょう、あのガキ後で覚えてやがれ!』

 

任せろ、速攻で忘れてやる。

さてモグラさん、疲れてるとこ悪いけど八坂さんと話は出来る?

……会話にならない? て事はやっぱ操られてるのね、先ずは八坂さんを拘束しないと。

でも、あんま派手なことして怪我させるわけにも……ってうおぉ!?

悩んでたら急に黒い炎が降ってきた!

 

「何すんだ匙ゴラァッ!」

 

『い、いや違うんだ! ヴリトラが勝手に……! おい、だからあいつは敵じゃないって!』

 

『我らにした仕打ち、よもやあのまま有耶無耶に出来るとでも思っていたのか? 九尾のついでに貴様も葬ってやろう』

 

俺の抗議も意に介さず、ヴリトラさんは俺ごと八坂さんに黒い炎を浴びせ続ける。

さっきの誤射が余程気に入らなかったようだ。

確かイッセーと匙が『力を奪う炎』とか言ってたっけ?

 

『いいぞヴリトラ、もっとやってやれ! オイラを嵌めた天罰を喰ら、グェ!? ガアァ、急に喉元引っ張るんじゃねぇよ!』

 

玉龍さんはそれを見て囃し立てるも、八坂さんの尻尾と未だに格闘中である。

自分に罰が来てりゃ世話ないな。

 

『おいヴリトラ! お前いい加減に……!』

 

『……我が分身よ、もしや奴は【神秘なる豊穣土竜】の加護を得ているのか?』

 

『えっと、確かあいつの神器であるモグさんの名前がそんなんだったような……それが?』

 

『ふん、我が天敵を手中に収めているが故の蛮行か……!』

 

へ? モグラさんってヴリトラさんの天敵なの?

……あ〜、ヴリトラさんが得意な特殊攻撃を全部無効化しちゃうのか。

ヴァーリさんの半分にする能力も無効化してたもんね、やっぱモグラさんはすごい。

 

まぁでもそれなら安心だ。

幾ら攻撃されようがなんともな……くないね、モグラさんガス欠寸前だったわ。

……あれ? 俺ってば実はピンチじゃね?

 

マズい、このままだとモグラさんの不思議パワーが消えて焼き殺されてしまう。

なぜ俺の命は、いつも味方の手によって危険に晒されるんだろうか。

こうなりゃアレだ、俺も練習していたとっておきを披露するしかない!

 

目を瞑ってから息を細く吸い、精神を研ぎ澄ませていく。

長く長く吸い続け、限界がきた所で息を止め……一気に吐き出すと同時に、足下の八坂さん目掛けて拳を振り下ろす!

 

「……フッ!!」

 

放った拳は乾いた音を立て、八坂さんの腰辺りに命中する。

その打撃を背中を駆けながら、何発も打ち込んでいく。

腰から背中、肩、首、そして最後に身体から飛び降りながら額へ一撃。

 

先程まであれだけ暴れていた八坂さんだが、今は何もせず大人しくなって玉龍さんも尻尾の束縛から解放された。

今のうちにモグラさんに踏ん張って貰って八坂さんの足下に四つ落とし穴を作り、それぞれの足を落としてそのまま固定。

八坂さんは暴れる様子もなく、じっとして動く気配はない。

 

「……よし、捕獲完了だ」

 

 

これぞ石の人に打ち込むために鍛錬し、速攻挫折して小猫ちゃんに泣きついた事により習得した秘技!

◯紋疾走・オー◯ードライブ!

と、心の中で呼んでるただの仙術です。

 

小猫ちゃん曰く、身体の中の気の流れを正す事によりうんたらかんたら。

まぁ話が難しくて、殆ど理解出来なかった。

説明されたのを勘と気合いでやったら即出来てしまい、小猫ちゃんに拗ねられて大変だった事しか記憶がない。

 

なんか魔法で操られてると聞いたので、身体の中の不純物を追い出せば何とかなるんじゃないかと思い敢行。

目はまだ虚ろだし身体も元に戻ってないけど、応急処置としてはこれで良いんじゃないかな?

後は初代さんが何とかしてくれるだろ。

美猴さんの師匠みたいなもんなんだから、仙術だって凄い筈だ。

 

俺が一人満足気に頷いていると、先ほどまで一緒に戦っていた二匹のドラゴンがいきなり体当たりをかましてきた!

 

「うおぁ!? あ、危ないだろ! ヴリトラさんまでいきなり何すんの!」

 

『狐の姫さんはこれで問題ねぇ! 次はテメェだクソガキ!』

 

「あれは適材適所なんだから仕方ないだろ! 丈夫な身体してんだから、あんくらいで文句言うな! 」

 

『我が炎が効かぬなら、直接牙と爪で思い知らせるしかあるまい』

 

「ヴリトラさんはごめんなさい! でも狙った訳じゃないから許して!」

 

当然俺の言葉は受け入れられず、二匹の龍王と追いかけっこする羽目になった。

モグラさんに助けを求めようにも、完全にダウンしてタレモグラさんになってしまっていたので不可能。

でもその姿は可愛くて、命懸けの鬼ごっこ中にもかかわらずほっこりしてしまった。

次の瞬間には玉龍さんのブレスでこんがりしてしまったが。

 

色々と限界になってきた頃に、初代さんが二匹を諌めてくれて助かった。

曹操たちは何時の間にかいなくなっていた。

初代さんがボコボコにして、イッセーが追撃を喰らわせてやったらしい。

ゼノヴィアの仇が取れなかったのは残念だが、まぁ良しとしよう。

俺の修学旅行を台無しにした報いだ、ざまぁ。

 

その後初代さんの力を借りたイッセーが『乳翻訳』とか言うハレンチ技を初めて有効活用して、八坂さんに九重の言葉を直接届ける事により元の姿に戻す事に成功。

元の美人の姿に戻った八坂さんに抱き着き涙する九重を見て、涙腺に響いたのは内緒だ。

 

アザゼルさん率いる事後処理チームも到着し、これで本当にひと段落といったところか。

なんでもアザゼルさんたちは、空間の外で英雄派の構成員たちと戦闘していたそうだ。

 

何はともあれ、これで明日の最終日にはちょっかいを出される事もないだろう。

僅かな自由時間しかないが、それでも最後まで楽しませて貰うとしよう。

あぁ……俺の修学旅行……。




京都編も次で終わり、もうすぐサイラオーグさんとの対戦だ。
原作でも好きな話なので、気合い入れて頑張らねば!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。