「ふん。いくら神器を持ってるからって、ただの人間が至高の堕天使たる私に勝てるつもり? 」
こっちを舐めきって、余裕たっぷりに講釈を垂れ流している堕天使。
たしか、レイナーレとか言ったっけ。
「全くこれだから「黙れよ小汚いカラスの癖に」っ! 貴様っ! 今何と言ったっ!! 」
ちょっと挑発したらすぐに乗ってきた。
やっぱ三下か。
手を出してもアザゼルさん達には迷惑かかんないよね、多分。
かかってもこいつは潰すけど。
久々に改造人間の本領、見せてやる。
「ギャーギャーやかましい。いいからかかって来いよ、全部正面から潰してやる」
「人間風情が馬鹿にしてんじゃないわよ! 」
激昂したレイナーレが光の槍を投げつけてくる。
何時もなら受け流すんだけど、今日は俺もモグラさんも機嫌が悪いんだ!
「なっ! 私の槍がそんなに簡単に!? 」
「遅いな、おまけに脆い。やる気あんの? 」
右手で掴んでそのまま握り潰す。
この間のおっさんよりはマシだけど、大差はない。
無駄にハイスペックなこの身体の前では、余りにも遅すぎる。
錯乱した様に槍を連続で投げつけてくるが、馬鹿め。
グミ撃ちは負けフラグなんだよ。
全部殴り落としながらゆっくり近づいて、一気に踏み込む。
「まず一発!! 」
その場で悶絶して、膝つきやがった。
休んでんじゃないよ。
さて、次はモグラさんの分だ。
さっき一緒に倒す数に入れなかったからちょっと怒ってるけど、その怒りもあいつにぶつけてね?
神器に気合いを込めると、右手の甲にある宝玉に《凸》の字が浮かび上がる。
「おら、まだ寝るな。次は俺の中の友達の分だ」
「な、何言って……ぎゃあっ!? 」
レイナーレの言葉を待たずに、俺は右手を地面に打ち付ける。
次の瞬間、レイナーレの真下の地面が隆起して顔面を強打し、その勢いで空中に跳ねあげた。
ん?なかなか落ちてこないな。
あいつ、そのまま飛んで逃げる気か?
逃がしはしない。
まだ、兵藤の分が残っているのだ。
足下に右手を叩きつけ、今度は自分の足場の地面を隆起させてレイナーレの上を取る。
「簡単に逃げられると思ったか? 笑かすな、三下」
次は左手に気合いを込める。
浮かび上がるのは《凹》の文字。
そのまま拳をレイナーレの背中に打ち込む。
レイナーレが落下していき、地面にぶつかる筈が地面にどんどんとめり込んで行く。
地面に着地した後に、再び右手の力で強引に自分の手前まで無理矢理引き戻す。
打撃のダメージだけでなく、強引な上下の動きにより翼が折れているようだ。
「あぐ、がっ……! か、回復が追いつかないっ!? なんで……なんで人間なんか、にぃ……! 」
いい具合にズタボロだな。
まだやり足りないが、このくらいにしとかないと。
俺よりも激しく力を、怒りを溜めてるやつが待っている。
「兵藤、あとは頼んだ」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
凄ぇ、瀬尾……。
あのレイナーレの槍を簡単に掴み取ったうえに握りつぶしちまった。
俺は簡単に刺されて殺されかけたのに。
連続で投げられても、歩みを止めずに全部正面から叩き潰して、そのまま腹に強烈なのをお見舞いした!
『Boost!! 』
俺の神器から音声が流れ、俺の中に力が溢れる。
まだだ、まだ我慢するんだ。
今は殴る時じゃない。
瀬尾の右手が輝き、その拳を地面に向かって叩きつける。
次の瞬間、地面が盛り上がってレイナーレの顔面を打ち付けてあいつを空に舞い上げた。
『Boost!! 』
再び俺の神器から響く音声。
俺の中で更に力が湧き上がる感覚が襲ってきた。
今迄と少しだけ姿を変えた俺の神器。
お前も怒ってくれているのか……?
もうすぐだ、もうすぐお前をあの堕天使にぶち込んでやるからな!
瀬尾はレイナーレが落ちてくるのを待てないのか、今度は自分の足元を隆起させて空中に躍り出る。
今度は左の拳を輝かせながら、レイナーレの背中に打ち込んで地面に叩き落とした。
レイナーレは地面に叩きつけられず、そのまま地面に吸い込まれる様に減り込んで行った。
なんだあれ!? どういう能力だよ!!
あんなに色々出来るのかよ、瀬尾の神器って……?
瀬尾が地面に着地して、再び右の拳で床を叩くとレイナーレが人形の様に飛び出て、地面に堕ちる。
脳でも揺れたのか、足下がおぼつかない様でフラフラとしている。
カズキは短く息を吐き出すと、此方を振り向いた。
「兵藤、あとは頼んだ」
「待ってたぜっ!! 」
『Explosion!! 』
瀬尾に返事をするかの様に、神器からも音声が流れ、今迄感じたことのない力が身体中から一気に噴き出してきた!
これなら……やれる!
「サンキュー瀬尾。いや、カズキ! これであいつを……殴り飛ばせるっ!! 」
「っ! あんたまで!? なんで……なんで下級悪魔がそんな魔力をっ!! 」
あいつの言葉を無視して俺は走り出す。
あいつを……俺の友達を殺した堕天使をぶっ飛ばす為に!!
「や、やめろぉ……私は、私は至高のっ! 」
レイナーレが飛んで逃げようともがき始める。
逃すわけねぇだろうがぁ!!
「知るかそんなもんっ! 吹っ飛べクソ天使ぃっ!! 」
兵藤の渾身の一撃を受けたレイナーレは、吸い込まれる様に窓から外へと放り出された。
「すげぇぶっ飛んでったな、あいつ」
ほんの少しだけ気持ちが軽くなった。
ざまぁみろだ。
兵藤が力を出し尽くし、身体が崩れ落ちそうになるが、何処からともなく木場が現れて、兵藤に肩を貸している。
「なんだ、木場もいたのか」
「ちなみに私達もいるわよ? 」
俺が呟きに後ろから返事が返ってきた。
驚き振り向くと、オカ研の部長であるリアス・グレモリー先輩が悠然と此方に歩いてきてくる。
少し遅れて姫島朱乃先輩も、何故か巫女服で登場。趣味か?
外からは塔城さんが、気絶したレイナーレを引き摺りながらやって来た。
オカルト研究部勢揃いじゃないか。
「お久し振りね、瀬尾一輝くん? 」
グレモリー先輩がイイ笑顔で言ってくる。
「な、なんか怒ってます? 」
「あら、別に私達の誘いを散々断っておいて、なんでこんな所に……なんて全然思ってないわよ? 」
「じゃあその笑顔を止めてください……」
美人の笑顔は凶器なんだぞ、いろんな意味で。
「ほらほら部長? 早くイッセー君のところに行ってあげませんと」
姫島先輩に促され、納得いかない様な視線を向けながらグレモリー先輩は、兵藤の方へと足を向け移動していく。
俺はふいにアーシアさんを見つめてしまう。
あんなに優しくて、あんなに明るい笑顔を見せてくれたあの子は、もう動く気配がない。
「うふふ、大丈夫」
俺の視線に気付いたのか、姫島先輩が話し掛けてくる。
「あのシスターは、きっと部長が何とかしてくれますわ。イッセー君と、貴方のお友達ですもの」
私達の《王》を信じて、と笑顔で言われてしまった。
ほら、グレモリー先輩これですよ。
美人の笑顔はこうやって使って下さい。
カズキ「シリアスは疲れるからキライ。しかし兵藤凄いな、あんなに強かったんだ」
モグラさん「キュイ! キュキュイ!! 」
カズキ「そうだね、モグラさんも凄かった。だから髪を引き抜かないで、将来泣いちゃうから」