カズキ「野郎ども! 俺たちの特技はなんだ!?」
堕天使's「殺せ! 殺せ! 殺せ!」
カズキ「俺たちの目的はなんだ!?」
堕天使's「殺せ! 殺せ! 殺せ!」
カズキ「俺たちはグリゴリを愛しているか!? アザゼルさんを愛しているか!?」
堕天使's「いや、そうでもない」
「はぁ、三大勢力対抗で行う運動会……それに俺も出ろと?」
「おう、もちろん俺たち堕天使側でな!」
ライザーたちを山で鍛えてから数日後。
突然家に押しかけて来たかと思うと、文字がビッシリと書かれた紙を突きつけながらそんな事をのたまうアザゼルさん。
朱乃さんたちはその様子を興味深そうに見つめている。
「なんでまたこんな時期に……それも随分と急だね?」
「まぁぶっちゃけると、運動会とは名ばかりの代理戦争だ。現状に不満のある連中に対する、ガス抜きってやつさ」
オリンピックを物騒にした感じだな。
アザゼルさんはそう言いながら笑っている。
嘘はついてないみたいだけど……胡散臭ぇ。
つうか、この人が運動会如きでここまで本気になる事自体が怪しすぎる。
おっさんの目的がイマイチわからない。
オマケに––––
「まぁまぁカズキちゃん? 怪しむのはわかるけどさ、減るもんじゃないしここは素直にサインしてちょうだいな♪」
堕天使幹部の紅一点、ベネムネさんまでわざわざ連れて来やがった。
ちなみにイッセーたちを鍛えた時のやり方を教えてくれたのもこの人だ、というか実際に体験させられた。
アザゼルさんめ、俺がベネムネさんに逆らえないのを知ってて連れて来やがったな……!
「最近私たち幹部はカズキちゃんと絡む機会もなかったしさ、いい機会だし子どもの頃みたいに私たちと遊びましょうよ〜♪」
「ええい、いい年した男の頭を撫でんでください!」
「いいじゃない、私からしたらカズキちゃんはまだまだ子供よ?」
撫でられた手を払いこそしないが、気恥ずかしくて語気が少々荒くなる。
まだグリゴリに来たばかりの時、俺を一番面倒を見てくれたのがベネムネさんだ。
一人でいると話し掛けてくれたり、シェムハザさんに叱られた時に慰めてくれたり等々。
おかげで何時までも子供扱いされ続けるので、どうにも調子が狂う。
「カズキくんが子どもの頃は、よく遊んだんですか?」
「小さい頃のカズキか、私も興味があるな」
ちょ、ロスヴァイセさん!?
余計な事聞かないで!
ゼノヴィアも話に乗っかるんじゃない!
二人の反応を見たベネムネさんはイタズラを思い付いた様な表情を浮かべると、どこからか薄い機械の様なものを取り出し、っておい!
それは……!
「あら、それなら実際に見てみる? 実はここに小さい頃のカズキちゃんの映像が–––」
「わかった! 運動会でも何でも出るから! だからそれだけは勘弁してぇぇぇ!?」
「そう? 快諾してくれて私も嬉しいわ♪」
くそぅ! これだからこの人には逆らえないんだ!
昔の俺のバカ野郎!
素直に映像なんて撮られてんじゃねぇよッ!
そして朱乃さんは、さりげなくベネムネさんの隣をキープしないで下さい!
絶対に見せないからね!?
三人からブーイングを受けつつも、アザゼルさんが持って来た書類にサインする。
うぅ、幾つになってもこの人には勝てない気がする……。
「そんなに落ち込まないでよ。そうねぇ、じゃあ真剣になれる様にご褒美をあげるわ!」
「へ? ご褒美?」
なんだろ?
アザゼルさんだったら綺麗なお姉さんとか言い出しそうだけど、ベネムネさんからのってあんまり想像出来ない。
ベネムネさんは先ほど取り出した映像媒体をヒラヒラと振り、笑顔で話し始める。
「もし堕天使側が優勝出来たなら、この映像媒体をカズキちゃんにあげる」
「マジで!? ベネムネさんサイコー! 愛してるッ!」
うぉぉぉ、メチャクチャやる気出てきた!
これでこの人に頭が上がらない日々から解放される!
「でももし悪魔側が優勝しちゃったら、この媒体はバラキエルの娘である朱乃ちゃんにプレゼント。鑑賞するなりコピーしてばら撒くなりお好きにどうぞ♪」
なん……だと……?
ショックのあまり固まる俺。
その周囲にいるゼノヴィアたちは、今の話を聞いた途端明らかに目の色が変わった。
「ざけんな、このぶあはぁぁぁッ!!」
「汚い言葉を使うんじゃないの。アザゼルみたいなロクデナシになるよ、若干手遅れな気もするけど」
「おい、なんで俺に流れ弾が飛んできてんだ。ついでで俺に攻撃するんじゃねぇよ」
俺が言い切るよりも早く頰に鋭い平手打ちを喰らい、部屋の端まで吹き飛ばされた。
流石堕天使の幹部、超痛い。
アザゼルさんの抗議はどうでもいいが、この流れはマズい!?
「あ、朱乃さんは堕天使側で戦うよね? お父さんのバラキエルさんがこっち側だし、ね?」
「初めからリアスの《女王》として悪魔側で参加するつもりでしたが、負けられない理由が増えましたわ……!」
ダメだ、やる気に満ち満ちていらっしゃる!
「ぐぅぅぅ! ゼ、ゼノヴィアは俺の困る事しないよね!?」
「勝負に全力で挑まないのは失礼というものだ、全身全霊で勝ちに行く! 映像媒体は私が頂くぞ……!」
くそぅ、この単純おバカめ!
目に炎を宿す勢いで燃えてるじゃねぇか!
「ロ、ロスヴァイセさんは俺の眷属だもんね? 当然俺の手助けを–––」
「運動会という事は、人間界の物が参考にされてる可能性が高いかしら。違うパターンも考慮しつつ対策を……あ、私は転生悪魔ですから当然悪魔側ですよ?」
あかん、この人ガチだ!
ガチで勝ちを取りに行ってるよ!?
ちくしょう!
同居人に味方が一人もいねぇ!
「うふふ、面白くなってきたわねぇ♪」
その様子を見ているベネムネさんは、終始笑顔のままだ。
ちくしょう、見てろよ!
絶対に優勝して、映像は俺が死守する!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
今日は三大勢力が開催する運動会。
天使や堕天使、悪魔の人たちもたくさん来ていてかなり盛況のようだ。
会場となるこのゲームフィールドでは、盛り上げる為に空砲も上がっている。
ちなみにみんなジャージだ。
「凄い盛り上がってるね、みんなやる気みたいだ」
「ああ。それにこんなに多くの天使や堕天使の人と会うなんて初めてだから、新鮮だし少し緊張しちまうぜ」
今回は天使側として参加するイリナを探す為に隣にいる木場と話ながら進むと、俺たちを見た周りの人たちからの声がチラホラと聞こえてくる。
結構好意的な声で安心した、それ以上に木場への黄色い声が多くてムカついたけど。
イリナはすぐに見つかり、一緒にいたミカエルさんに挨拶をする。
少し会話していると、後からやってきた超絶巨乳金髪美人であるガブリエルさんまでやってきた。
さすがセラフォルーさまにライバル視され天界一の美女と言われている方、顔も身体も眼福です!
「なんか俺、ガブリエルさんを見れただけで今日は満足しちまったよ」
俺の言葉を聞いて木場は苦笑しているが、それだけの物を拝めたんだから仕方が–––
「何を言ってるんだイッセー! 今日の勝敗は大事な物が掛かっているんだ、気合をいれろ!」
ゼノヴィアは俺の肩を掴むと、思い切り握り込む。
痛い、痛いし怖いよゼノヴィアさん……!?
「そうですわ、今日は負けるわけにはいかないんです……!」
「会場のスタッフに確認してきましたが、やはり競技は人間界の物を参考に考えられているようです。予定通りに行きましょう!」
それに負けないくらいの気炎を吐きながら力む、朱乃さんとロスヴァイセさん。
なんでもこの運動会で悪魔勢が一位になれたら、堕天使幹部であるベネムネさんからカズキの子どもの頃の映像が貰えるらしい。
俺も部長やアーシアたちに小さい時のアルバムを見られたから気恥ずかしさはわかるが、女の子ってそういう昔の写真やら映像をそんなに見たい物なのかな?
まぁカズキはそれを見られるのを嫌がって堕天使側で参加するくらいだし、弱点には違いないんだろう。
俺もカズキに無茶振りされた時の保険の為に、全力で頑張ろう!
木場にカズキの腹黒さが移ってきたとか言われたけど気にしないもんね!
「お〜、お前らみんな揃ってんな!」
そんな俺たちの前に、黒いジャージを着込んだアザゼル先生たち堕天使チームがやってきた。
朱乃さんのお父さんであるバラキエルさんと、妙に気合の入っているカズキも一緒だ。
バラキエルさんが朱乃さんに話し掛けようとして、朱乃さんがわざとそっぽを向いて弄んだりと、二人の関係が改善されているようで安心した。
けど……カズキが妙だ。
何時もなら挑発の一つや二つしそうなもんなのに、先生とミカエルさんがプレッシャーを放ちながら挨拶している時にも一切喋らず黙ったままだ。
ゼノヴィアも違和感を感じたようで、警戒するようにカズキをジッと観察している。
結局アザゼルさんが去っていくまでカズキは一言も喋らなかった。
あいつ、何を企んでるんだ……?
結局疑惑が晴れる事はなかったが、選手宣誓も終了しそれぞれの勢力で円陣を組んでバイオレンスな掛け声と共に運動会は開催された。
既に何個か競技は終了しており、それぞれの陣営に点数が加算されていく。
それぞれの陣営が頑張っているが、なかでもカズキはかなり目立ってるな。
出場制限数ギリギリまで競技に参加している様で、同じ堕天使陣営の人たちに細かい指示を出している。
みなさんと顔馴染みなお陰もあってか連携も素晴らしく、一糸乱れぬ行動でどんどん点数を稼いでいる。
ルールにギリギリ引っかからないグレーゾーンを攻めてくるのも恐ろしい。
そんなに映像媒体を渡したくないのか、あいつは。
俺も悪魔陣営に貢献する為に、今から【障害物競争】に参加する所だ。
どうも俺は一組目みたいだな。
一緒に走るのは各勢力から二名ずつの計六名で、天使の女の子に堕天使の男性に……げ、カズキまでいる。
あいつもこの競技に参加するのか、ちょっと離れてるから声を掛けられないが油断しないようにしよう!
疑問に思いつつも、俺は走りだす構えを取り……
『位置について、よーい……ドン!』
審判の掛け声と共に走り出す!
障害物は人間界の物と一緒で、平均台を渡り、ネットを潜り、それぞれ異なる球技のボールを手でついたり蹴ったりして突き進んで行った。
心配していたカズキからの妨害もなく順調に進んでいき、とうとう最後の障害物へと辿り着いた–––
「ギャオオオオオンッ!」
「キュエエエエエッ!」
「ゴワンゴワンッ!」
と思ったら、何故か恐ろしそうな怪物のオンパレードだった。
え、何これ?
『最後の障害物はモンスターの群れ! 危険極まるこの子たちから逃げるも良し、退けるも良し! 各自の判断で挑んで下さい!』
あまりの出来事に選手一同呆然としていると、なんとタンニーンのおっさんまで登場!
おっさんモンスター枠なのかよ!?
他の選手もモンスターに襲われて、阿鼻叫喚の地獄画図と化している!
そう言えばさっきからカズキの姿が見えな……あ!
あいつ並走してた悪魔側の選手をモンスター目掛けて投げ込んで、襲われてる隙に脇を通ってゴールしやがった!
き、汚ぇ! つうか酷すぎる!
あいつには血も涙もないのか!?
くそ、俺も早くゴールに辿り着かないと!
でもおっさんが俺に狙いを定めてるから、上手く前に進めない!
ちょ、おっさんその威力のブレスは洒落にならな……!
ギャアァァァァッ!?
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
ふ、事前にモグラさんを通してモンスターくん達と話をつけておいた俺に隙はない。
全く狙われないのも怪しいから、一人生贄になって貰ったしこれで完璧だ。
その次に参加した『綱引き』でも俺の秘密のテコ入れにより堕天使陣営が勝利。
参加していた小猫ちゃんに疑わしい目を向けられたが、証拠はないので追及されても躱せるから問題ない。
この後も幾つかの競技を行い、俺たちは好成績を残していく。
他二つの陣営を離して単独トップだったのだが、『玉入れ』でバラキエルさんが暴挙に出た。
朱乃さんからの【父さま、助けて!】というラブコールにより、悪魔側に寝返ったのだ。
オマケにアザゼルさんはミカエルさんに昔の恥ずかしい厨二病を暴露されて役立たずに成り下がり、この競技では悪魔、天使両陣営に大きく差をつけられてしまった。
この玉入れは入れた個数がそのまま点数になるので、ぶっちゃけ既に崖っぷちである。
くそ、朱乃さんへの対策なんて考えてなかったっての!
後でバラキエルさんには『父親が活躍する事が、何よりも娘には誇らしい事なんだ』と洗の……ゲブンゲフン、よく言い聞かせておかないと。
とにかく、今は少しでも点を稼がねば!
堕天使陣営のみんなの頑張りにより少しづつではあるが、差は縮まっていく。
それでも玉入れの得点差は厳しく、未だ三位のままだ。
なんとか玉入れと同じく討伐数がそのままポイントになる『騎馬戦』までに、もう少し差を詰めておきたい所だ。
次は俺も出場する『借り物競争』か、この競技は学校の運動会でも出たな。
あの時はお題が【カワイイ女の子】で、小猫ちゃんを抱っこして一位だった。
まぁ今回はあんなイミフなお題はないだろ。
そして競技が始まり、俺の組が走る番になった。
同じ組に障害物競争の時と同じくイッセーがいるが、今は無視だ。
スタートの合図がなり、一斉に駆け出してお題の書かれたメモを手に取る。
そこに書かれていたのは【メガネっ娘+ネコミミ】の文字。
これを書いた奴を思いっきり殴りたい衝動に駆られながらも、急いで探すが見つからない。
出来れば知り合いを避けたかったがそうも言っていられないので、小猫ちゃんとその近くにいた会長さんを両脇に抱えてゴールしたら何故か反則扱いにされた。
連れてくる物や人は一つじゃないといけないそうだ、ならルールに書いとけや!
審判に抗議している間に、サーゼクスさんを連れたイッセーに一位を奪われてしまったのが大変悔やまれる。
結局会長さんのメガネを小猫ちゃんに掛けることで妥協とし、なんとか二位になった。
それとゴールに連れてくる際急いだせいで変な所を触ったらしく、二人に怒られたのだが『ごめん、どこを触ったのか気付かなかったんだ!』という、今考えたらあんまりな言い訳をしてしまったせいで頰に綺麗なモミジを二つもこさえてしまった。
匙にも殴られ蹴られでボコボコにされた。
匙くんや、なんかいつもより強くなかったかね?
その後の競技でも朱乃さん、ゼノヴィア、ロスヴァイセさんが妨害工作をしまくってくれたお陰で、俺の考えたイカサマが事前に潰されるし散々だ。
俺のやり口知ってるせいで、敵に回すと面倒すぎるぞあの三人。
そしてとうとう運命の分かれ目である『騎馬戦』が始まろうとしている。
差は期待ほど縮まってはいないが、とにかくここで何とかポイントを荒稼ぎしてやる!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
今日のカズキ先輩は何やら必死です。
何でも負けたらカズキ先輩の小さい頃の映像が流出するそうで、それを阻止する為に一生懸命みたい。
でも私とソーナ会長に失礼な事をした事は忘れません、後でまたお説教します。
モグさんも暫く私が独占します。
逆に朱乃さんやゼノヴィアさんは、その映像を見る為に頑張っています。
私も興味はあるので頑張っているけれど、何故カズキ先輩はそんなに嫌がっているのだろう?
確かに小さい頃の自分を見られるのは恥ずかしいかも知れないけど、カズキ先輩がグリゴリに来たのは十歳前後と言っていた。
その年齢ならそこまで酷い失態なんてそうそうしないだろう、しっかりしてるカズキ先輩なら尚の事だ。
もしかして何か秘密があるのかも……そんな事を考えている間に、騎馬戦が始まった。
何というか、各勢力やりたい放題でした。
みんな光やら魔力やらを手当たり次第に乱発して、まさに戦場そのもの。
そんな混戦の中でも、イッセー先輩はブレません。
敵勢力の女性騎手の身体にタッチしていき、セクハラ技『洋服破壊』で次々戦闘不能にしていきました。
私が騎馬の人にお願いして突っ込んでもらい、イッセー先輩を鉄拳制裁したのは間違っていないと思う。
そもそもあれじゃあ帽子も破いてしまうから、こちらの点数にならな–––ッ!
「はい、小猫ちゃんの帽子頂き!」
イッセー先輩を仕留めて油断した瞬間、背後からカズキ先輩に帽子を奪われてしまった!
振り返ると、カズキ先輩の手には大量の帽子が確保されている。
「あの状況でよくそんなに集められましたね?」
「あの状況だからこそ、だよ。騎馬戦の必勝法なんて背後からの奇襲なんだから、やり合ってる連中を襲うのが一番だ。アザゼルさんがイッセー焚き付けてる間に、大分仕事が出来たよ」
カズキ先輩が指差す先を見ると、堕天使陣営の騎馬が大量に帽子を奪っているのに気が付いた。
何とも抜け目ない人だ。
そのまま終了の合図が入り、堕天使陣営の圧勝で騎馬戦の幕は閉じました。
「そんなに昔の映像を見られるのが嫌なんですか?」
いい機会だし、騎馬から降りて陣地に戻る時に聞いてみた。
カズキ先輩は少し動きを止めると、何とも言えない表情を見せる。
「ただの映像なら、まだ良いんだけどねぇ……」
先輩はそれだけ言うと、そそくさと去って行きました。
……どういう事だろう?
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
フハハハハ!
快勝ッ! 圧勝ッ! 大爆笑ッ!
アザゼルさんが良い感じに場をかき乱してくれたおかげで、優勝にかなり近づいた!
卑怯だって?
バカめ、【卑怯汚いは弱者の戯言】という名言を知らんのか!
勝てばよかろうなのだぁッ!
これであの恥ずかしマル秘映像を処分出来る!
あそこに写っているのは十歳の俺ではなく、アザゼルさんの発明品の暴発により幼くなった四〜五歳の俺なのだ。
しかも思いっきり甘ったれな性格になっていて、恥ずかしい事を平気で口走っている。
あんなもんイッセーや朱乃さん達に見られたら、俺は間違いなく【恥ずか死】する。
だがそんな心配とはこれでサヨナラだ!
この最後のリレーで俺たち堕天使陣営が最下位にならない限り、俺たちの優勝は揺るぎはしないッ!
これぞ完全勝利ッ! 明日からは安全な生活が俺を待ってい–––
『おーっと、ゴール前でアザゼル総督とおっぱいドラゴンが対決だーっ! そしてその隙にガブリエルさまが横を通り抜けて今ゴール! 続いて総督の攻撃で吹っ飛ばされたおっぱいドラゴンがゴールを通った! 今回の三大勢力対抗大運動会、優勝は天使チームだーっ!』
………………は?
後日映像媒体は爆笑するベネムネさんからイリナの元へ送られ、そこから朱乃さん達も鑑賞しました。
それをネタに暫くの間カズキはからかわれ、敗北の原因となったアザゼルさんを見かける度に襲い掛かるようになります。
ちなみに渡したデータは複製品で、オリジナルは未だにベネムネさんが所持している事をカズキは知りません。
ベネムネさんの一人勝ちですね!