モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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どうやらここの読者様には呪術師がいるようだ。

前回ふざけて妹の事を言っていたら、本当に足を捻挫しました。
小心者な私は、妹の通院のアッシーとして日々車を走らせています。
読者こわい。


56話

オカ研部室での騒動から数日経ち、今日はサイラオーグさんとのゲーム当日。

俺たちはリアス先輩たちのゲームが行われる冥界の都市、アグアレスへ訪れていた。

なんとこの都市、謎のステキ技術により空に浮かぶ島の上に造られている。

 

島の端から流れ落ちる数々の滝がなんとも幻想的で、今まで冥界で見た何よりもファンタジーに溢れていた。

日本のサブカルチャーに詳しい小猫ちゃんと一緒に『バ◯ス』と唱えた俺を、一体誰が責められようか。

今はその都市に入る為、ゴンドラに乗って移動中だ。

今回はサーゼクスさんの許可を得て、スコルとハティも一緒にきている。

 

「いやぁ冥界にいい思い出ってなかったけど、これは凄い。素直に感動したわ、満足したからもう帰ってもいいくらい」

 

「お前は一体何しに来たんだよ……」

 

「え、観光じゃないの?」

 

「俺らの試合の応援に来たんだろうが!」

 

そういやそんな目的もあったね、思いっきり忘れてたわ。

イッセーが俺に吠えてくるのをスルーして子犬状態のスコルたちを抱えたまま、再びゴンドラからの景色を堪能する。

他の面々もそれぞれ楽しんでいて、イッセーとリアス先輩もそこまで気まずくはないようだ。

 

朱乃さんから聞いたんだが、俺がリアス先輩と話した後に女性陣が総出で慰めてあげたらしい。

そのお陰で多少ギクシャクしてこそいるが、ゲームに支障はないだろう。

話の流れで俺まで責められたのはイマイチ納得いかなかったけど。

 

俺がそんな事を考えながら景色を眺めている間、アザゼルさんが試合が決まるまでの経緯なんかを話していたらしいが、話が長い上に興味がないので殆ど覚えてない。

思えばこの時、ちゃんと話を聞いておけばあんな面倒には巻き込まれなかったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

絶景が望めるゴンドラも遂に終点へと到着。

ゴンドラから降りるとそこには、応援やらマスコミやらの人たちでごった返していた。

これみんな、リアス先輩たちを見に来てんのか?

人気っぷりがヤバいな、ヘタな芸能人より凄いんでない?

 

魔王の妹なのに加えて、イッセーも冥界では大人気だからな。

おまけに美男美女だらけのグレモリー眷属は何かと話題になりやすいって、アザゼルさんが言ってたっけ。

まぁ今日の俺には関係ないし、用意してあるって言ってたリムジンにさっさと乗り込–––

 

「あ、モグラさんだ! て事は、この人が『グランモール』!?」

 

人混みの中にいたお父さんだろう男性にに肩車された女の子が、目をキラキラさせながら大きな声と共に俺、というか頭の上にいるモグラさんを指差した。

それに反応して、人混みの何割かが俺目掛けて雪崩れ込んできた!

 

「本当だ! あの、いつも番組見てます! 握手して下さい!」

 

「本日はリアス・グレモリー様のゲーム観戦ですか!? ソーナ・シトリーさまは一緒にいらっしゃらないんですか!? 」

 

「キャー! 生モグちゃん、かわいい! 握手して〜っ!」

 

「脇に抱えてるワンちゃんは新しいペットですか!? 番組に出演の予定は!?」

 

「う、うおぉぉッ!?」

 

なんだこの圧力!?

こ、怖い!

人の波が押し寄せてくるぅ!?

 

あ、俺が襲われてる間にイッセーたちがリムジンに乗り込んでる!

ちょ、あいつら俺を置いてく気か!?

があぁ! いい顔して手ぇ振ってんじゃねぇよ!

 

アザゼルさんのドヤ顔がマジでうぜぇぇッ!

うわ、マジで行っちまいやがった!?

この騒ぎ、俺一人でどうしろと……!

 

「みなさん落ち着いてください! 質問にはお答えしますので、どうか一人ずつゆっくりとお願いします!」

 

頭にモグラさん、両手にスコルたちを抱えたまま困惑していると、後ろからロスヴァイセさんが声を張り上げてくれた。

この場に残っていたスタッフの人たちの手伝いもあり、なんとか落ち着いていく現場。

その間にもスタッフさんたちに的確に指示を飛ばしていくロスヴァイセさん、マジカッケェ。

 

「リアスさんたちの会場入りが遅れるわけにはいきませんから、ここは私たちが受け持ちましょう。アザゼル総督には連絡済みですから、会場に向かうのは一段落着いてからですね」

 

「あ、どうせならそこら辺見て回ってから行こう! お祭り騒ぎのお陰で出店もあるし、二人で歩いて回るだけでも結構楽しそう」

 

状況説明してくれるロスヴァイセさんに、そんな提案をしてみる。

応援ももちろん大切なんだけど、そこら中からいい匂いを漂わせてくる出店にも興味津々なのだ。

何やら色々と出し物もあるみたいだし、滅多にない機会だからどうせなら自由に動き回りたい。

 

まぁロスヴァイセさんは真面目だから、この提案に乗ってくるかは正直望み薄なんだけど。

そう思い顔色を疑うと、何やら顔を赤くしていらっしゃる。

オウフ、これは怒らせてしまったか?

 

(二人で……これはつまり……デートの、お誘い……!?)

 

「……あの、ダメだったら別に–––」

 

「いえ、ダメじゃないです! 是非デー……ゲフンゲフン、一緒に見て回りましょうそうしましょう!」

 

「お、おぉう……」

 

なんか凄い喰い気味に返事をしてきた。

なんか必死で少し怖いけど、ロスヴァイセさんもお祭り好きなのかね?

まぁ許可が下りたならそれでいい。

この場を速やかに収束させて、早々に祭りへ繰り出そうじゃないか!

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

試合の行われる会場、『アグレアス・ドーム』の横にある高級ホテルに無事到着した俺たち。

試合が行われるのはナイター、つまり夜だ。

今はそれぞれの陣営に与えられた控え室で、ゲームに向けて各々が準備をしている。

 

到着した矢先ハデスの骸骨ジジイと出くわしたのは予想外だったが、あの場にカズキがいなくて助かったぜ。

あのバカが堕天使になってミョルニルを取り込んでからコッチ、色んな勢力からカズキについての資料を請求されてるからな。

あんな面倒な奴、会わないに越した事はねぇ。

 

「う〜ん、本当にカズキをあそこに置いてきて大丈夫だったのかな?」

 

木場と一緒に身体をほぐしているイッセーが、そんな事を呟く。

他の連中も気になっていたのか、今やっていた作業を止めてしまう。

あそこは人通りの多い場所だし、ロスヴァイセも付いてる。

それに今日に限っては『アイツ』も来てるからな。

最近はそうでもないが、カズキに関しては基本過保護だしなんかありゃ助けるだろ。

 

「ロスヴァイセだって付いてんだ、心配ねーよ。それよか自分たちの試合の事に集中しろ、相手は若手最強と名高いあのサイラオーグ・バアルだぞ」

 

「……そうね。せっかくカズキくんが時間を作ってくれたのだから、私たちもも万全の態勢で臨みましょう」

 

『はいッ!』

 

主であるリアスと俺の言葉を受け、改めて気合を入れ直す。

へっ、やる気満々ってツラだな。

試合じゃあ俺も解説席に座る予定なんだ、ツマンネェ試合にはしてくれるなよ?

まぁどうせイッセーがまた訳のわかんねぇ事をして、楽しませてくれるんだろうがな。

 

そしてイッセーの他にも、楽しみなのはもう一つ。

カズキが勿体振りやがって俺には話さなかった『隠し球』。

はてさて、一体どんな突飛な事をしてくれるのやら……。

お前の授けた策って奴がどんなもんか、拝見させて貰おうじゃねぇか。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

カズキくんは、とにかく凄い人だと思う。

今でこそ堕天使になっているが、人間なのに冥界で活躍していたり、堕天使の幹部を倒したり、魔王さまとお友達だったり。

果てには神の一柱であるロキまで打倒せしめた。

オマケに今リードを繋いで一緒に歩いているのは、神さえ殺せる牙を持つフェンリルの子供だ。

 

本来なら、伝説や英雄になっていてもなんら可笑しくない凄まじい活躍をしている。

そう、そんなすごい人なのに。

 

「ウッヒャッヒャ! 大量じゃーッ!」

 

今は、出店の射的で大はしゃぎしている。

『角を狙うのが基本』と言いながら、両手にコルク銃を構えて次々に景品を落としていく。

周りにはその腕前に感心した一般客たちが集まっており、ちょっとした騒ぎになっている。

 

折角途中までは二人で色んな出店を回れて、半分ずつ食べ物を食べたりとデートみたいだと思っていたのに……。

もう!

こんなに騒ぎを起こしたら、ゴンドラ乗り場と同じ騒ぎになっちゃうじゃないですか!

 

「おうにいちゃん、そろそろ勘弁してくれねぇか? このままじゃ景品が全部なくなっちまうぜ」

 

とうとう店主から待ったの声が掛かる。

まぁ確かにあれだけ景品を取って行かれたら、商売上がったりでしょうね。

しかしカズキくんは笑顔を浮かべながら、撃つのを止めようとしない。

 

「まぁまぁおっちゃん、小さい事言うなよ。どうせ大物は取れないように細工してんだろ?」

 

カズキくんの言葉にその場の空気が凍る。

店主の方も、明らかに目付きと声色を変えてきた。

これは……?

 

「……にいちゃん、言い掛かりはよしてくんな。現にお前さんは、そんなに大量に取れてるじゃ–––」

 

「景品が乗ってる台、高価な物が乗ってる所だけ少し分厚くない? 台の中に磁石が入ってるとああなるらしいね。オマケにこの銃、銃身が曲がってる上に引き金のバネまでいじっちゃってまぁ、手の込んでるこって」

 

「う、ぐ……」

 

「バカめ、この程度の細工で俺を誤魔化せると思うなよ? いつか行ってみたいと憧れ続けた夏祭り、その中でも特に心惹かれた射的に関しての不正は見逃さん! 伊達に一人寂しくイメトレなんかしてないぜ!」

 

うん、なんだかカッコいいのか悪いのか分からなくなるセリフです。

カズキくんは銃を肩に引っ掛けながら喋り続ける。

あそこが可笑しい、ここが怪しい。

カズキくんの言葉の無駄な説得力で次第に周りの一般客の方達も怪しみ始め、段々と店主が追い詰められていく。

最後には誰かが係員に通報したらしく、何処かへと連行されてしまった。

 

「ふん、折角の祭りでアホな真似しやがって。よしちびっ子ども、一列に並べ。どうせ持ち帰れないから、俺が獲ったこの店の景品を一つずつくれてやろう」

 

カズキくんはそう言うと、近くにいた子供達にぬいぐるみやオモチャなどの景品を配り始めた。

お礼を言った子供の頭を笑顔で撫でているのを見て、なんだか嬉しくなった。

こういう所も、彼の凄い所なんですよね。

 

ヴァルハラの花形、安定職であるヴァルキリー。

それも主神の護衛役という大役を担っていたが、それに未練はない。

あの時は家に帰っても誰もいなかったが、今では『おかえり』と声を掛けてくれる人たちがいる。

実家を出てから感じられなかった、暖かさを感じられる。

私はきっと今、とても幸せなんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、オーディンさんが見た事ない美人さん連れて歩いてる」

 

「カズキくん、今こそ約束の時です! あの腐れジジイに天誅を下す手助けを!」

 

なんですその隣にいるヴァルキリーは!

私はちゃんとヴァルハラに連絡を入れたというのに、そっちは連絡一つ寄越さずソレですか!?

ここであったが百年目、簡単に許すと思わないで下さい!

私とカズキくんの連携、とくと味わうがいいです!




今回はロスヴァイセさんとのぶらり屋台めぐりです。
この騒動の後もお祭りをエンジョイするカズキくんですが、彼の幸せな時間が長く続く事はないと読者はみんな知っている。
しっぺ返しはいつ来るのかな?

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