モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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本編が上手く書けないので、書きかけだったボツ案を改変して投稿します。
えぇ、その通りです。
時間稼ぎですよ、ごめんなさい。


間話12

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

俺は走り続けた。

足を止めてはいけない。

少しでも緩めれば、彼女たちはすぐに追いついて来る。

油断なんて、出来るはずもない。

 

俺は角を曲がった瞬間、掃除用具なんかの備品が纏めて置いてある物陰に音もなく飛び込み息を殺す。

両手を口に力一杯押し付け、呼吸音すら漏らすまいと必死だ。

そんな俺の横を、一人の女性が通りがかる。

彼女こそ、俺を追い立てる追跡者の一人。

 

「うふふ……カズキくんたら、鬼ごっこの次はかくれんぼ? そんな子どもらしいところも素敵ですけど……私と一緒に、もっと大人の遊びをしましょうねぇ?」

 

追跡者である朱乃さんはどこか狂気すら感じさせる笑みを浮かべ、長く美しい黒髪を左右に揺らしながらゆっくりと歩いてくる。

大人の遊びってなに!?

俺ってば捕まったらどうなっちゃうの!?

やばい、怖すぎて涙出てきた!?

 

「……ここにはいないのかしら? カズキく〜ん、どこにいるの〜? 素直に出て来てくれたら、優しくしてあげますわよ〜……」

 

一通り見渡した後、朱乃さんは再びゆっくりと廊下を歩いて行った。

足音が遠くなってゆき一切の音が消えてから小さく、しかし物凄く深い息を吐き出した。

昔からこういうスニーキングはヴァーリさんに無理矢理やらされてたけど、ここまでプレッシャーを感じるのは初仕事以来だ。

くそ、なんだって俺がこんな目に……!

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

今日の放課後。

俺はいつもの様にオカ研部室へと赴き、イッセーたちと無駄話をしながら駄弁っていた。

女性陣は珍しく遅れていて誰もおらず、木場とギャスパーくんは罰ゲームでジュースを買いに売店へ足を運んでいて。

生徒会の仕事がない匙が、珍しく俺たちの所に遊びに来ていた。

 

「なぁ、そろそろ俺にもカード配らせてくれない?」

 

「お前がカードを配るとありえないくらい偏るから却下だ、なんでお前だけ毎回初手からフォーカード揃ってんだよ」

 

「そりゃそうなる様にシャッフルしてるし」

 

「素直なのは良い事だと思うけど、それが原因だって気付いてくれると尚良いと思うんだ。にしてもぶちょ、じゃなくてリアス達少しおそ……ぅお!?」

 

木場たちを待ってる間にポーカーをやりつつ時間を潰していると、突然大きな地鳴りと共に何かが爆発する様な音が辺りに響き渡った。

暫くすると地鳴りも収まり、すぐに先ほどと同じ静寂が訪れる。

何事かと部室を出て確認してこようとしたその時、何処からともなく声が聞こえてきた。

 

『……よし、繋がったか! おいカズキ、聞こえてるか!?』

 

「うわっ、ビックリした!」

 

「この声は……アザゼル先生?」

 

そう、今回の元凶であるアザゼルさんからの通信だった。

なんでもこの人、最近なんとなく思い付いた『感情を抑制する装置』を開発してたら誤作動を起こして暴走させたらしい。

装置が暴走した時に作業してた異空間からこの旧校舎に転移してしまい、被害が広がらない様に人払いと結界で隔離は出来た。

しかしなんらかの作用で今度は自分が入れなくなってしまったので、中にいる俺たちにその装置を止めるか破壊して欲しいそうだ。

 

装置はそこそこ大きいから見れば分かる筈。

しかし旧校舎内にいる他の連中は装置の所為で何かしら影響を受けてる可能性があるから注意しろ、か。

毎度毎度よく分からないの作ってんな、この人は。

今度は何を見てそんなモン作ろうと思ったんだが……クソが、後でシバいてやる!

 

『にしてもカズキはモグの力で無事だと思ってたが、イッセーと匙も無事な上に一緒にいてくれて助かった。どうにもドラゴンにはこの手のものは効きにくいらしい、いいデータが取れたぜ』

 

「あんた全く反省してないだろ? この件が片付いたらシェムハザさんに言って、研究費用減額して貰うからな」

 

『ちょ、それはひで』

 

そんな事を話していると、突然通信が途切れた。

それと同時に開け放たれる部室の扉。

大きな音と共に開かれた扉に視線をやると、そこにはアーシアさんとリアス先輩が扉を開けたままの姿勢で立ち尽くしていた。

 

「リアス、アーシア! よかった、二人とも無事だったんだぶほぉ!」

 

イッセーが駆け寄ろうとするのを、襟首を引っ掴んで強引に止める。

急に引っ張ったのでイッセーが咳き込んでいるが、まぁ問題ないだろう。

その行動で匙も違和感を感じ取ったのか、二人を観察しつつ身構える。

 

「ぐっ、ゴホッ……カズキ、頼むからいきなり引っ張るのはやめ……ふ、二人とも?」

 

「フフ……どうしたの、イッセー? 私の愛しいイッセー、何故私から離れようとするの……? 私たちは恋人なのだから、一時も離れてはいけないのよ……?」

 

「そうですよイッセーさん。リアスお姉さまと一緒に、私の事も可愛がって下さい……私、イッセーさんになら何をされても……」

 

イッセーが咳き込みつつ抗議していると、二人が怪しげな笑みを浮かべながらイッセーににじり寄っていったのだ。

その雰囲気に流石に違和感を覚えたイッセーは、思わず後ろに下がる。

焦点が定まってないし動きもおかしい、明らかに異常だ。

 

「お、おいカズキ。二人ともなんだか様子が……」

 

「アザゼルさんの言ってた装置の影響って奴なんだろうが……もしかしてアレか? 『感情を抑制する装置』が誤作動起こしたせいで、『感情を増幅する装置』に変わったって事か?」

 

「えっと、それってつまり……?」

 

「捕まったら大変な事になるんだろうな、色んな意味で」

 

匙の疑問に、俺は自身が考えた仮説で答える。

あの二人が口にしてる言葉的にも雰囲気的にも、あながち間違ってない気がする。

そして俺の言葉を聞いたイッセーから、何やら邪な波動を感じた。

こいつ、妄想で鼻の下伸ばしてやがる。

 

「おいイッセー。別にわざと捕まってもいいけどな、あの二人が正気に戻ったら絶対に落ち込むぞ?」

 

「そ、それはダメだッ! エロい事はしたいけど、めちゃくちゃしたいけども! 悲しませるのはノーサンキュー!!」

 

イッセーは頭を振り頰を叩いた後、真面目な表情に切り替える。

よしよし、俺の友達はそこまでゲスではなかったようだ。

俺は正気に戻ったイッセーの腕を掴んだ後、窓を開ける。

うん、準備完了。

 

「つーわけでイッセー、あの二人は任せた。俺と匙は装置を探してぶっ壊してくる」

 

「……へ? あの、カズキさん? なんで窓を開けたの? なんで腕を掴む手に、やたらと力が入ってるの!?」

 

俺はイッセーの言葉を無視したまま、力の限りイッセーをグラウンド目掛けて放り投げた。

 

「ほうら二人とも、取ってこーいッ!!」

 

「カズキィィィッ!!」

 

「待って下さい、イッセーさん!」

 

「逃がさないわよ、イッセー!」

 

俺の目論み通り、二人はグラウンドに投げ出されたイッセーを追って廊下を走って行った。

やっぱり俺たちは眼中にないな、やっぱり俺の仮説通り『感情を増幅する』効果に変わってるみたいだ。

 

「よし、イッセーの自己犠牲の精神を無駄にする訳にはいかない。今のうちに装置を探そう!」

 

「お前って、本当に清々しいほどゲスいよなぁ……」

 

匙のぼやきをスルーしつつ俺たちも廊下を出ると、廊下の端から声が聞こえてきた。

普段から聴き慣れているが今は絶対に聞きたくない、そんな声。

 

「うふふ……カズキくん、やっぱりそこにいたのね?」

 

俺が振り向いたその先には、何時もと雰囲気が違う朱乃さんが立っていた。

前髪が垂れて目は見えないが、そんなもの見なくても異常なのが手に取るように分かる。

アレは、ヤバイ。

 

「よし、匙よ。ここから俺たちは運命共同体だ、共にこの困難を乗り越えようじゃないか」

 

「ハハ、笑わせんな。潔く囮になれ」

 

俺の真摯な想いの籠った言葉は、匙の無慈悲な一言とケツに打ち込まれた蹴りと共に切り捨てられた。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

–––そして、現在に至る訳だ。

ちくしょう匙め、まさか本当にあのまま俺を囮にして逃げるとは、なんて薄情な奴なんだ。

モグラさんもこの雰囲気に怯えてしまい、俺の中に引きこもっちゃって力を貸してくれないし……うぅ、怖いよぅ、怖いよぅ。

 

朱乃さんのあの目は絶対に正気じゃなかった、捕まったら確実にマズイことになる!

とにかく物陰から出て、ひたすら見つからない様に慎重に行動を–––

 

「みぃ〜つけたぁ♪」

 

「ぴぎぃッ!?」

 

ビックリした!

ビックリした!!

ビックリしたッ!!

 

突然後ろから声掛けられるから変な声出たじゃねぇか!

ていうか、いきなり見付かっちゃったよ!?

オマケに急いで飛び退いたから、辺りの備品を蹴散らして大きな音を立ててしまった。

急いで移動しないと、朱乃さんが戻ってきてしまう!

 

驚きつつも四つん這いの姿勢で声のした方を確認すると、ロスヴァイセさんがしゃがんだ状態のまま膝に頬杖をついてこちらを笑顔で見つめていた。

その表情は実に楽しそうで、まるで子どもがオモチャを見つけた時の様だった。

 

「ロ、ロスヴァイセさん……?」

 

「何ですかカズキくん? どうして私のことを見て、そんなに怯えた顔をするんです?」

 

ロスヴァイセさんは笑顔を崩さずゆっくりと立ち上がり、俺に話しかけながら徐々に距離を詰めてくる。

俺もすぐに立ち上がり、いつでも走り出せる様に足に力を貯める。

どんなに普通に見えたとしても、ここに俺たちの味方になってくれる女の人なんていないのだから。

 

「そうそう、さっき朱乃さんとかくれんぼしてましたよね? 実は私も参加してたんですよ、だからカズキくんを見つけた私は……あなたのこと、好きにして良いんですよね!」

 

「良い訳ないでしょ!?」

 

飛び掛かってきたロスヴァイセさんをなんとか躱し、音を立てないとか考えずに全力で走りだす。

後ろを振り返ると歩いて追い詰めてくる朱乃さんと違い、ロスヴァイセさんは走って追いかけてきた!

それにしても怖い、なんかもう目が捕食者のソレだ!

 

「待ってカズキくん! 大丈夫、私も少しだけですが先輩ヴァルキリーから聞き齧った知識がありますから!」

 

「嫌だぁぁぁ! 俺の知ってるロスヴァイセさんはそんな事言わないぃぃぃ!」

 

逃走しながら叫ぶというアホな真似をしつつ全力で逃走する俺だったが、隠れる場所が思いの外多い校舎のお陰でなんとか難を逃れる事が出来た。

もうヤダ、この校舎は今ヘタなお化け屋敷よりおっかない!

このままだと俺、いい歳こいてホントにちびっちゃうよ。

 

息を整えた後に外の様子を伺うと、グラウンドで元気に走り回る匙とイッセーの姿が見える。

イッセーは相変わらずリアス先輩とアーシアちゃんに追い回され、匙の奴は同じ生徒会メンバーである花戒さんと仁村さんに襲われていた。

 

「アハハ、待ってよ元ちゃん!」

 

「そんなに急いで何処に行くんですかぁ? 私たちと遊びましょうよぉ〜」

 

「ひいぃぃ!? 桃に留流子、頼むから正気に戻ってくれ! 死んじゃう、そんな攻撃されたら俺死んじゃうから!? た、助けてくれ兵藤! 主に盾になるとかそういう感じで!!」

 

「ざけんな匙! こっちは掠っただけで大ダメージな滅びの力が、アホみたいにバンバン飛んで来るんだぞ!? お前こそ俺の為に犠牲になれぇ!!」

 

うん、実に醜い押し付け合いだ。

そのくせお互い攻撃はちゃんと避けてるし、あいつらなんだかんだで良いコンビだな。

しかし自分だけが大変な目に合ってる訳じゃないと知ったら、なんだか少し落ち着けた。

 

「うふふ……カズキくぅん、そこにいるのかしらぁ?」

 

俺が呑気にイッセーたちを観察していると、近くから朱乃さんの甘ったるい声が聞こえてきた。

マズい、朱乃さんが追いついてきたのか!?

取り敢えずこの部屋に逃げ込んでやり過ごすしか……!

 

「うぉ!?」

 

そう思い扉を開けた瞬間、何者かに腕を掴まれそのまま部屋に引きずり込まれてしまった!

滑るように部屋の中央に投げ込まれた俺が入ってきた扉の方を見ると、そこにはゼノヴィアと小猫ちゃんが立っていた。

嘘だろ、人の気配なんて……あぁ、小猫ちゃんの仙術で気配を散らしてたのね。

そういやこないだ教えたね、俺が使っても朱乃さんとロスヴァイセさんが何故か見つけてくるからすっかり忘れてたわ。

 

「カズキ、待っていたぞ。さぁこっちに来い、私はお前との子どもが欲しいんだ……」

 

「にゃあ……センパイ……」

 

二人も例に漏れず、やっぱり暴走してる。

小猫ちゃんまでこっちに来るのか……好意が僅かにでもあれば、それが増幅されて暴走するのか?

小猫ちゃんには初代さんから教わった仙術を色々教えてるから、色々と厄介だな。

 

それにしてもこの作戦、小猫ちゃんが考えたのか?

朱乃さんたちに追い立てさせてここまで誘導とか、随分と手の込んだ真似を……あ、ゼノヴィアは論外で。

あのアホの子に、こんな作戦考えられる訳がない。

 

「ふふ……ようやく会えましたね、カズキくん」

 

聞き覚えのある声に反応して振り向くと、そこにいたのはメガネを怪しく光らせながら教室に入ってきた会長さん。

その後ろから、朱乃さんとロスヴァイセさんも続いて入室してくる。

そうだよな、花戒さんたちがいたんだから会長さんがここにいたとしてもおかしくないか。

にしてもマズい、閉じ込められてしまった。

 

「なるほど、これを考えたのはアナタですか会長さん」

 

「私だけじゃないですよ。カズキくんを捕まえたくて、みんなで頑張ったんです。ですから……ご褒美、くれますよね?」

 

俺が話しかけると会長は怪しく微笑み、シャツのボタンを一つ外しながらわざとらしくカチャンと音を立てて扉の鍵を閉めた。

……おい、なんだその異様な色気は。

あなたそんなキャラじゃないでしょう。

 

「俺ってばこんなにモテモテだったのか、ビックリだな」

 

「そうですよ? ですからみんなの気持ち、カズキくんなら応えてくれますよね?」

 

会話をしつつ、俺を包囲する様にみんながジリジリと詰め寄ってくる。

俺自身も軽口を叩きながら、唯一の逃げ道と思われる窓際までゆっくりと後退していく。

まだ装置が見つかってないんだ、ここで捕まる訳にはいかない。

 

「俺には荷が重いので、逃げさせてもらいまぶふぉ!?」

 

俺は窓際に到着した途端、素早く鍵を開けて窓を開け放ち脱出しようと飛び出した。

しかし次の瞬間、何もないはずのその場で壁の様な何かに阻まれ、顔面を強打してしまった。

ぐうぅ超痛い、てか何これ!

何も見えないのに感触だけあるぞ!?

 

「いやですね、そんな逃げやすい場所をそのまま放置なんてする訳ないじゃないですか。この教室の周りには床や天井も含めて術式の壁を張り巡らせてますから、簡単には逃げられませんよ?」

 

会長さんが楽しそうにクスクスと笑いながら、俺に絶望的なネタばらしをしてくれる。

わぁかわいい、でも今はめっちゃこわい。

神器使えない上に仙術は小猫ちゃんに妨害されて使えない。

今の俺に、なす術なんかありゃしない。

 

お願い、助けてモグラさん!

ピンチなの、俺ってば今モーレツにピンチなのぉ!

命の危機より濃厚な危険信号を感じるんだよ、怖いとか言ってないでマジで助けてくれってば!!

 

ちょ、みんな近付かないで!

年頃の娘さんが、おもむろに服をはだけさせるんじゃありません!

や、やめろ!

それ以上近付いたら舌を噛んで、噛んで……イ、イヤァァァァッ!!




この後恐怖に耐えられなかったカズキは身体の中のミョルニルから雷を発生させ、旧校舎を半壊させつつとある教室の一角にあった装置を焼き切り破壊してなんとか無事に助かりました。
全員大切なナニカは守られ、女性陣は暴走時の記憶を失い男性陣は恐怖のあまり記憶を隅に追いやりました。
ただしアザゼルさんに何かとんでもない迷惑を掛けられたのは覚えていたので、後日全員でフルボッコにしました。

う〜ん、なんだか個人的にイマイチの出来。
最近ネタが浮かんでこなくて、書くのが難しくなってきた。
誰でもいいからヘルプミー!

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