シリアスは書きたくないけど、どうしようかなぁ。
61話
サイラオーグさんとの試合の後、正式に付き合う事になったイッセーとリアス先輩。
昼休みにベタベタ、放課後にベタベタ、家に帰ってもベタベタ……正直ウザい。
家では好きにすればいいと思うけど、人前ではやめてくれないかね?
最初の頃はようやく付き合えたんだし仕方無いと納得していたが、しょっちゅう目の前でイチャつかれると殺意が湧いてきても仕方ないと思うんだ。
わざわざ俺たちを昼飯に誘うな、二人で隠れてイチャコラしてろ。
それを見たゼノヴィアのおバカが『私たちも付き合って見せつけてやればいい』とか言い出すし、本当に迷惑なんだが。
アーシアちゃんも対抗心を燃やしているのか、教室ではいつも以上にイッセーにくっついてるし。
松田や元浜じゃなくても恨みがつのり、体育中に男子全員がイッセー目掛けてラフプレーを乱発しても仕方ないことだ。
「はぁ? 暫くイッセーの家で過ごせ?」
「数日だけでいいんだ、頼む」
そんな騒がしい日々を過ごしていた、とある夜。
夕飯時にちょくちょくやってくるアザゼルさんがその日もやって来て、突然こんな事を言い出した。
人ん家の飯を食いながら、いきなり何言ってんだこの人。
「私は時々アーシアやイリナの部屋に泊まりに行っているし、いまさら構わないが……」
「明後日からとは、随分と急ですわね」
「大丈夫なんですか? イッセーくんのご両親もいらっしゃるのでしょう?」
「そこら辺は考えてるし、イッセーやリアスには了承済みだ。お前らには申し訳ないんだが、協力して欲しい」
アザゼルさんは茶碗と箸を置き、テーブルに額が付くくらい深く頭を下げてきた。
あ〜……こりゃなんかあるな、マジメな方で。
「理由は聞いても?」
「近いうち、イッセーの家にある奴を呼ぶ。今は誰が来るのか教えられないが、お前らはほぼ間違いなく不満を漏らすだろう。下手すりゃそのまま戦闘開始になるかもしれない」
なんだその聞くだけでやる気が削がれる事態は。
面倒な匂いがプンプンするぞ。
「だがな、これが上手くいけば今まで抱えてた問題が一気に解決するかもしれねぇんだ。無茶をする価値があると、俺は思ってる」
「で、防波堤代わりに俺もいろって事か。それなら当日行けばいいんじゃないの?」
「それでもいいんだが、実は朱乃に中級悪魔への昇格試験の推薦が来ててな。正式な通知は後でサーゼクスから来るだろうが、イッセーと木場にも話が来てるしどうせなら纏めて対策した方が効率的だろう?」
なるほど、効率厨のアザゼルさんらしい考え方だ。
しかし中級悪魔試験か、なんか車の免許更新みたいだな。
つくづく俺の中にある悪魔のイメージが壊れていく。
「私には昇格の話はなしか……だが、めでたい事に変わりはない。おめでとう朱乃さん、合格目指して頑張ってくれ」
「おめでとうございます。しかし中級悪魔ですか、主が悪魔でない私も昇格などするのでしょうか?」
ゼノヴィアは少し悔しそうにしつつも朱乃さんを応援して、ロスヴァイセさんもお祝いしつつ顎に手を当て首を捻っている。
ゴメンねロスヴァイセさん、なんかややこしい立場にして。
「よかったね朱乃さん。悪魔の試験じゃ俺は手伝えそうにないけど、全力で応援するよ」
「そう、私が中級悪魔に……ありがとうカズキくん、みんな。グレモリー眷属の《女王》として、絶対に合格してみせますわ」
朱乃さんは俺たちの声援を受け、拳を握りながら笑顔で応えてくれた。
しかしアザゼルさんの話している日程だと、ロスヴァイセさんは応援には来れないかな?
「ロスヴァイセさん、この日付だともう里帰りしちゃってるよね?」
「ええ、残念ながら。実家から、一度顔を見せに帰ってこいと再三言われてまして。カズキくんのマネージャーと教職も落ち着いてきましたし、一度帰らせていただこうと思っています。ですが朱乃さんにとって大切な試験なのですから、帰る日をずらしても……」
「大丈夫ですわ、ロスヴァイセさん。私の事は気にせず、故郷でお待ちになっている家族の方たちに顔を出してあげてください」
「そうだぞロスヴァイセさん、応援は私たちに任せておくといい」
「みなさん……ありがとうございます」
うんうん、いい光景だ。
やっぱ家族は大切にしないとね。
俺もロスヴァイセさんの雇用主として、一度お伺いした方が良いんだろうか?
……なんか恐ろしい目に会う未来が見えた気がするので、また今度にしよう。
「試験が大切なのはごもっともなんだが、俺の頼み事忘れちゃいないか?」
「ああごめん、朱乃さんの方が大切でつい」
「おいコラ。いや俺が大切とか言われたら、それはそれで気持ちワリィけどよ」
「まぁとにかく了解。向こうの許可が出てるなら、荷物まとめて明後日から兵藤家のお世話になるわ」
俺が了承の意を伝えるとアザゼルさんは細く長い溜息を吐き、椅子の背もたれに背を預ける。
誰が来るんだか知らないが、別に俺なんかいなくても問題ないと思うんだけどなぁ。
仮に恨みのある奴が来たとしても、イッセーたちもそこまで喧嘩っ早くないだろうし。
「すまねぇな、面倒をかける」
「お互いに迷惑かけるのなんざ今更でしょ。それより朱乃さんの昇格試験、フォロー頼むよ」
「おう。といっても、筆記も実技もほとんど問題ないと思うがな。イッセー以外は」
言わなくてもわかる、イッセーが問題なのは筆記の方だろう。
あいつも割とおバカだし。
ちなみに実技は余裕だろうから問題ないらしい、やっぱグレモリー眷属ってぶっ壊れ性能の集まりなのか。
ロスヴァイセさんはどうせ家を空けるならと予定を早め、今日の夜に北欧へ旅立つことになった。
キチンと中間テストの問題も作成して提出しており、学校側も問題なく休暇を出してくれたらしい。
普段からマジメだと、要望も通りやすくてお得だねぇ。
「なぁカズキ、ここの公式なんだけど……」
「お前数学苦手だよな、これはな–––」
「すまないカズキ、それが終わったら私たちに古典を教えてくれ」
「すみません、カズキさん……」
「はいはい、気にしなくていいから教科書持ってきなさい」
「古典なら私が教えてあげるわ!」
今は昼休み。
教室で教科書を広げながら唸っているイッセーやみんなと一緒に、中間テストの勉強中だ。
特にイッセーは昇格試験の対策もあるから、今回はかなり辛そうだ。
イリナは何気に成績優秀なので今回は教える側で頑張ってくれている、アーシアちゃんも古典以外は優等生なんだけどなぁ。
「なんだなんだ、今回のテストはみんな気合い入ってんな」
「あのイッセーまで勉強してるとは、明日は槍が降るな」
頭から湯気を出しているイッセーを横目に、松田と元浜が茶々を入れてくる。
まぁイッセーは普段勉強なんかしないもんな、何を言われても仕方ない。
しまいには松田が懐からエロDVDを取り出しイッセーを誘惑する始末だ、お前も簡単に誘惑に負けるなっての。
「なるほど、男とはこういうのが好みなのか。カズキの部屋にあったものとは少し違うな」
「おい待てゼノヴィア、お前いつの間に俺の部屋に入った」
聞き捨てならんよ、そのセリフ。
男のトレジャーを発掘するのは、そいつの男友達だけに許された権利だからね?
「えぇ!? カ、カズキさんまでそんなものを!?」
「ほほぅ? ゼノヴィアっち、そこのところ詳しく聞かせて貰おうじゃないの」
「なんてハレンチな! で、でも私も年頃で興味もあるし……堕ちちゃう、私堕ちちゃうぅぅ!?」
ゼノヴィアのトンデモ発言に各々反応する女性陣。
しょうがないじゃない、俺だって男の子だもの。
そういうものの一つや二つ必要なんだよ。
というか桐生、いつの間に湧いて出た。
「取り敢えずゼノヴィア、それ以上いらん事喋るなら後でお仕置きな」
「なるほど、つまり瀬尾が持ってるのはSM系……」
「桐生さん、ちょっと黙っててくれませんかね?」
ホントやめて。
こんな話を朱乃さんに聞かれようものなら、俺の大切なナニカが散らされてしまう。
主にムチとかローソクで。
その後も俺とイッセーの秘密が暴露されかけたりして、俺は耐え切れずイッセーと一緒に逃亡した。
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「ちくしょう、みんなして俺たちの事オモチャにしやがって!」
「お前はリアス先輩と付き合ってんだからいいだろ、その気になれば手ェ出せるんだから。俺なんて誰にも手を出せない上でこの仕打ちだぞ、俺が普段どれだけ気を張ってお宝を見ていると……」
俺とカズキはそれぞれ愚痴りながら、家庭科室に逃げ込んでいた。
ちょうどドライグの薬の時間になったので、何故かカズキが鍵を持っていた家庭科室に行き洗い場で籠手に薬を振りかける。
「どうだ、ドライグ?」
『……あぁ、気持ちが和らいでいくようだ』
俺が薬をかけながら尋ねると、ドライグは安らいだ様な声で答える。
この液体の薬をかけると、ドラゴンの気分を落ち着かせてくれるらしい。
ドライグは俺が乳関連でパワーアップを続けたせいで心を病み、疲弊してしまったのだ。
なのでこうして、先生が紹介してくれたカウンセラーの人から貰った薬を定期的に与えている。
「にしても伝説の二天龍が薬漬けとか、お前ドライグの事イジメすぎだろ?」
「うぐっ!?」
カズキの鋭い指摘に、思わず言葉に詰まる俺。
そうだよな、俺はドライグに物凄い迷惑を掛けてるんだよな。
本当にごめんよ、ドライグ!
俺、日に三度の薬も忘れずに守るから!
頑張ってお前を見守るから!
『ククク、ありがとう相棒。あぁ、後一万年も薬漬けの毎日か……』
ゴメンよ、ホントにゴメンよぉぉぉぉ!!
ドライグの言葉が胸にドスドスと音を立てて突き刺さりつつも、薬を与え終えたので家庭科室から出る。
俺たちが鍵を閉めていると、遠くから聞き慣れた声で話しかけられた。
「兵藤にカズキか、そんなトコでなにやってんだ?」
「あ、匙」
「ドライグの心からの訴えと、イッセーの懺悔を聞いてた。正直こいつからドライグを引き離してやりたくて仕方ない」
「……おまえ、そこまで天龍を泣かしてたのか?」
匙は俺たちを確認した後、カズキの言葉を聞くと途端に俺へ厳しい視線を送ってくる。
うぅ、ごめんなさい反省します。
匙は生徒会の仕事を終えた後らしく、そのまま生徒会室に戻るというのでカズキと一緒にお邪魔する事にした。
俺とカズキは出してくれたお茶を啜りながら、匙の話を聞く。
「兵藤は中級か、おめでとう。飛び級でいきなり上級でもおかしくないと思ってたんだけどな、おまえら強さだけでいったらバケモノみたいなもんだし」
「黒焦げドラゴンになれる匙にバケモノって言われるとか、イッセーも本当に規格外だよなぁ」
「カズキはその中でも特別異常だって事、そろそろ自覚しような?」
そんなたわいのない話をしていると、カズキが思い出した様に話を切り出す。
「そういや匙、お前らシトリー眷属は最近アザゼルさんの実験に付き合ってるんだって?」
「おう、今は人工神器の実験をしてるんだ。シトリー眷属の非神器所持者に取り付けて、出力の安定なんかを調べてる。今はまだ回数制限もある未完成な技術だけど、色んな神器を見られて結構楽しいぞ?」
なんと、シトリー眷属はそんな事をして戦力増加を図っているのか!?
前に戦った時の『反転(リバース)』とかもそうだけど、シトリー眷属ってそういう新しい取り組みに積極的な気がする。
「へ〜、個人的には使用回数があるってのもメリットがある気がするけどな。あらかじめ複数実体化させて装備しておけばいいし、イッセーならエネルギーを倍加させていざとなったら使い捨ての爆弾としても使えそうだし」
「お前の発想は相変わらずエグいな……それ、一回限りで次からは通じないだろ?」
「そんな事するなら、あらかじめ爆発物持ってた方が良くないか?」
俺たちがそんな話をしていると、生徒会室に他のシトリーメンバーが続々と帰ってきた。
みんな俺を見るなり口々に祝いの言葉を投げかけてくれる。
匙は《兵士》の仁村さんと《僧侶》の花戒さんに呼ばれて、生徒会の仕事を片付けに二人を引き連れて部屋を足早に出て行った。
実はこの二人、匙を巡って水面下で激闘を繰り返しているのだとか。
なんだかんだあいつもモテるんだよな、本命の会長さんとは相変わらずみたいだけど。
その後も《戦車》の由良にサインをねだられたり、副会長の真羅先輩が木場に本気だとしらされたり色々あった。
暫くするとソーナ会長がやってきて、みんなに指示を出すと即行動していき部屋には俺とカズキ、そしてソーナ会長の三人になった。
「会長さんも大変ですね、生徒会の仕事も忙しいのにアザゼルさんの実験に付き合ったり。無理なら断ってもいいんですよ?」
「いいえ、アザゼル総督の実験は私たちの力になりますから。私たちに不足しているパワーを得るためには、必要な事です」
「それならいいですけど無理はダメですよ、最近テレビでも頑張ってるじゃないですか。料理の腕も上達してますし、この調子でお菓子も上達できる様お願いします」
「だってお菓子はカズキくんが合格をくれないじゃないですか、私だって色々作りたいものもあるんですよ?」
「俺も会長さんのマトモなお菓子を早く食べたいです、いやホントに」
「マトモって、それは酷くないですか?」
……なんていうか、仲良いよなぁこの二人。
ソーナ会長がこんなに笑顔で話してるの、リアス以外だと見た事ない。
これで付き合ってないんだから、この二人の価値観はわからない。
いや、くっついたら匙が泣き崩れるだろうけど。
実際カズキはソーナ会長の事をどう思ってるんだ?
少なくとも悪くは思ってない筈なんだけど……もしかして、匙に遠慮してるのか?
だから踏み込まないで距離をとってる?
でもそれは……う〜ん……
「–––ッセーくん、イッセーくん?」
「は、はい!?」
うおぉ、ビックリした!?
考え込んでたせいで、ソーナ会長に話しかけられてるのに気付かなかった!
「推薦おめでとう。それから……リアスを、よろしくね?」
「え、よろしくって……リ、部長から聞いたんですか? それともカズキ?」
「リアスから通信用の魔方陣越しに、毎日惚気話を聞かされているのよ。これでも幼い頃からの友人、親友ですから」
ソーナ会長は嬉しい様な、それでいて困った様な、そんな複雑な笑顔を浮かべている。
それはなんとも、ご迷惑?をおかけしております。
俺が引き攣った笑みを浮かべるなか、会長は俺の目を真っ直ぐ見ながら言葉を続けた。
「あなたは私が出来そうになかった事を、すべて叶えている。婚約–––ライザー・フェニックスの件や木場祐斗くんの件、ギャスパーくんの件。リアスの抱えていたものを、あなたが全部軽くしてくれた」
「私はリアスの友人なのに、既存の概念に囚われて何も出来なかった。『上級悪魔だから』、『悪魔のしきたりだから』……周囲の視線と自分の立場を鑑みて、何もしようとしなかった」
「でもあなたはそんな事を意にも介さず解決していった。私に出来ないことを難なくやってしまう貴方を妬みもしたけど、何よりもリアスを救ってくれて感謝しています。わがままで、直線的で、短気な所もあるけれど。誰よりも素敵な私の親友を、これからも護ってあげてください」
ソーナ会長は自分の抱えていた物を全て吐き出した様にスッキリとした表情をした後俺に深く頭を下げてきた。
ソーナ会長は、俺がいないずっと昔からリアスの事を見ていたんだな。
そしてリアスを取り巻く環境を、とても心配してくれていたんだ。
「いつもリ、部長の事を見ていてくれてありがとうございました。これからは、俺が部長の事を隣で支えていきます!」
当然だ!
リアスは俺の、大切なヒトなんだから!
「私の前ではリアスと呼んでいいわ、彼女の想い人なら私にとっても友人だもの。なんなら私の事もソーナと呼んでもいいのよ?」
「そ、それは恐れ多いといいますか……!」
「……あなた、プライベートの時にリアスから話し方について不満を漏らされたこと多いでしょう?」
「何故わかるんですか!?」
会長は大きく溜息を吐きながら首を横に振る。
だ、だって匙もカズキも名前呼びしてないのに俺がする訳には……!
「公私をわけて女性に接する男性の方が、女性にとっては素敵ってことです」
「は、はぁ……そういうものですか……」
人差し指をピンと立てながら、注意する様に俺の前に突き出してくるソーナ会長。
その様が普段のクールな態度とギャップがあって、すごい魅力的にみえた。
なるほど、匙が惚れるのもわからなくはない!
「つまり俺は素敵な男性って事ですか?」
「あなたはどんな時でもマイペースを崩さないじゃないですか、その方が私も楽ですが。ハァ……私も彼氏作ろうかしら」
カズキの言葉に、ソーナ会長は笑いながら返した後、頬に手を当てながらため息まじりにそんな事を言い出すソーナ会長。
ここは匙をアピールするチャンス!
「匙とかどうなんでしょう?」
「弟、といったところかしら。それにあの子を慕う眷属の子たちがいるのだから、手なんて出せないわ」
キョトンとした顔をした後、苦笑しながら答える。
あ〜、こりゃ現時点で脈ないな。
匙、もっと積極的にいかないと恋の成就は厳しいぞ!
それならもう一つ確認しておこう。
「あの、じゃあカズキは? 二人とも仲良いですよね?」
「それ、俺の前で聞くか?」
あ、確かに。
どうだろうと、本人の前じゃ言いにくいか。
「カズキくんですか? 彼とは友人ですが……そういえば、以前プロポーズされた事がありましたね?」
そう思っていると、ソーナ会長は特に悩まず普通に答えてくれた。
そうか、友人か……ん?
いま、なんかすごい事言ってなかった?
「あ〜、ありましたね。チェスの十本勝負で勝ち越したらって奴。時々やって、未だに一本も取れないですけど」
「ふふ、まだまだ負けてあげられませんよ?」
「ははは、努力させていただきます」
え、なんかすごい和やかに話してるけど……え?
なんだ、俺の理解出来ない何かがおこなわれているのか?
「それではイッセーくん、昇格試験頑張ってください。中間テストもね」
「ほら行くぞイッセー、長居して仕事の邪魔しちゃいかん」
思考の働かない俺をカズキが引き摺りながら、生徒会室を後にした。
俺の意識がハッキリしたのは、家に帰ってしばらく経ってからの事だった。
「–––そう、ソーナとそんな話をしたのね。流石にカズキくんがプロポーズしてたってのは驚いたけど」
夕食の後、リビングで寛ぎながらリアスに昼間の出来事を話した。
リアスにカズキの話をした途端に通信用の魔方陣を展開して、やたらと興奮しながらソーナ会長と話し出したのには驚いたが。
やっぱり女の子は他人の恋愛話が大好物なんだなぁ。
結局カズキが熱にうなされてる時に冗談交じりに約束しただけだとわかり、すぐに落ち着いてくれたけど。
「以前はソーナにも婚約者がいたけど、カズキくんと同じ様にチェスの十本勝負を申し込んで破談にしたのよ。それの真似事なんでしょうけど……案外、ソーナもカズキくんを意識してるのかしら?」
「俺が聞いた時は友人って言ってましたけどね」
「本人の前で素直に言うわけないじゃない。これは椿姫と一緒に、ソーナを問い詰めるしかないわね……!」
あぁ、またリアスの目が爛々と輝いてらっしゃる。
ソーナ会長とカズキの迷惑にならなければいいけど……無理そうだなぁ。
「イッセーさま! 昇格試験用の教科書や参考書を出来る限り集めてきました、こちらは駒王学園の中間テスト対策の資料ですわ!」
俺が黄昏ていると、レイヴェルが大量の本を手にやって来た。
先日サーゼクスさま直々に俺のマネージャーへ任命されたレイヴェルだが、やる気満々で非常に助けられている。
そうだな、いまの俺に余計な事を考えてる余裕はない。
目指せ中級悪魔、目指せ中間テスト突破ってな!
ロスヴァイセさんは悩みましたが、原作通り北欧へ旅立たせることにしました。