モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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小猫ちゃんの発情期ですが、この作品では起こりません。
身近でイッセーとリアスが付き合っていますが、カズキが誰かとくっついてる訳ではないので。
せいぜい『羨ましいな』くらいの認識だと思われます、ご了承下さい。


62話

「突然で申し訳ないですが、数日の間お世話になります。家事なんかは手伝わせていただきますので、遠慮なく言いつけて下さい」

 

「あらあら、瀬尾くんは本当にマジメね。でも気にしなくていいのよ、そういうのは私に任せて合宿頑張って? でもアーシアちゃんは連れて行かないでね」

 

「そうだぞ? 君の事はイッセーやリアスさんから聞いてる、ここを自分の家だと思って寛いでおくれ。でもアーシアちゃんは連れて行かないでね」

 

学校が終わった後、荷物を纏めて兵藤家を訪問。

ご両親に挨拶したら、いきなりこれである。

イッセーの親御さん、俺がイッセーに呼ばれて家に遊びに行った時もやたらと警戒してくるんだよね。

 

どうも兵藤家にいた女の子が次々俺の家に越していってしまうので、自分たちが実の娘の様に可愛がっているアーシアちゃんまで連れて行ってしまうのではないかと心配らしい。

違うから、俺は御宅の息子さんと違ってハーレム作りたいとか思ってないから。

確かに我が家は御近所の奥さま方に『ハーレム御殿』と呼ばれているが、そんな大層なもんじゃないから!

だからそんなに怯えた目でこっちを見ないで下さい!

 

 

 

そんなこんなで荷物も運び込み、夕飯も終えて兵藤家に設けられた俺の私室で寛いでいる。

みんなは試験勉強やら昇格試験の対策やらで、リビングに教科書を広げて勉強会をしている。

俺もさっきまで参加していたが、悪魔の試験じゃ役に立てないので先に休ませてもらう事にしたのだ。

決して話に加われないから拗ねた訳ではない、決してだ。

 

しかし改めて見るとこの家すごいな、アホみたいに広い。

何時もは一回のリビングにしかお邪魔しないからいまいち実感がなかったが、この家一体部屋いくつあるんだよ。

合宿という形で泊まらせてもらう俺たちまで全員個室だし、どうしようか迷っていたスコルとハティまで自由にしていいという高待遇だ。

 

そのスコルとハティは、モグラさんと一緒に小猫ちゃんやアーシアちゃんの所で遊んでもらっている。

今日はアーシアちゃんとイリナの夢だった『ワンコと一緒におやすみ』を実現するべく、一緒に寝るそうだ。

モグラさんは久しぶりに小猫ちゃんと寝るらしい、おかげで俺はひとりぼっちです。

そんな事に思いを馳せていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

誰だろ、イッセーか?

 

「はいはい、っと……朱乃さん?」

 

俺がドアを開けると、そこには飲み物を二つ乗せたトレーを手にした朱乃さんが。

既にパジャマという事は、もうお風呂に入った後か。

男湯と女湯で別れてる一軒家とか、きっとここぐらいなんだろうな。

 

「うふふ、お邪魔してもいいかしら?」

 

「夜中に美人が訪ねてきたら、誰も追い返したりしないでしょうよ」

 

「あらあらお上手。私ったら、ここで襲われちゃうのかしら?」

 

「むしろ俺が襲われない様に気をつけます」

 

俺は朱乃さんからトレーを受け取り、部屋に入る様に促す。

中央に置いてあるちゃぶ台に飲み物を置いて腰を下ろすと、朱乃さんはコップを握りしめながら話し出した。

 

「私、堕天使の力を一段階あげようと思っているの」

 

「堕天使の? それはどういう……?」

 

「悪魔のまま堕天使の力を高める、というのかしら? 簡単に言うと今までよりも堕天使寄りに、カズキくんに近くなるといった感じですわ」

 

朱乃さんはそういった後、こちらに笑顔を向けてくる。

ぶっちゃけ、俺は堕天使になった実感まるでないんだけどね。

背中に翼が生える様になって、手入れメンドクセェぐらいにしか思ってない。

具体的にはお風呂の時間が倍になった。

 

「まぁ難しい事はわかんないけど、おめでとう?」

 

「……反応が薄いですわね。これでも私、それなりに緊張しつつ話したのですが」

 

「いや、そうは言っても俺自身堕天使の自覚ないんだから仕方ないじゃん。どうなろうが朱乃さんは朱乃さんだし、別にどっかいっちゃう訳でもないしなぁ」

 

強くなったの? よかったね!

ぐらいの感想しか出てこないのよ。

ボキャブラリーが貧相で申し訳ない。

ん? なんでそこで嬉しそうな顔してるの?

 

「うふふ……そうね、カズキくんはそうよね」

 

「あの、朱乃さん?」

 

俺が困惑していると、朱乃さんは俺の横に来て肩に頭を寄せながら体をもたれかけてきた。

あの、色々柔らかくていい匂いするからやめて?

なんか滾ってきちゃうから、なんか溢れてきちゃうからぁ!

 

「そうです、私はどこにも行きません。だから、あなたも私を置いてどこにもいかないでね?」

 

朱乃さんはそう言うと、俺の手を優しく握り込んでくる。

なんだこれ、なんだこれ!?

ドッキリか、最近油断してたけどついにドッキリ企画か!?

だけど手ェ柔らかくて気持ちいいな、うわぁい!

 

「おいカズキ、みんなでトランプでも……あ〜! また朱乃さんが抜け駆けしている! 私も混ぜうおぉぉ!?」

 

なんだか妙な空気になりかけたその時、トランプを手にしたゼノヴィアがノックもせずに部屋に突入してきた。

何時もだったらデコピンの一つでもお見舞いする所だが、今日は許す!

むしろ褒めてやろうと一心不乱にゼノヴィアの頭を撫で回す。

 

「よく来たな、でかしたゼノヴィア! マジで偉いぞ、めいっぱい褒めてやる!」

 

「そ、そうか!? なんだかよくわからないが、素直に褒められてやろう!」

 

「よしよし、トランプだったか? 今行こうすぐ行こうさぁ行こう!」

 

ゼノヴィアは急に頭を撫でられ何が何だかわからない様子だったが、取り敢えず褒められて嬉しそうに笑っている。

ゼノヴィアがアホの子で助かった、とにかくこのまま脱出だ!

俺がゼノヴィアの背を押しながら部屋を出ようとすると、朱乃さんがクスクスと笑いながら声を掛けてきた。

 

「うふふ、続きはまた今度ですわね。でもカズキくん? さっきの言葉だけは、絶対に忘れないで下さいね?」

 

朱乃さんはそれだけ言うと、俺たちと一緒にみんながいるリビングへと歩いて行った。

なんだろう、いつもと様子が……気のせい?

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

一夜明けた休日の朝。

今日がアザゼル先生の言っていた訪問者がやってくる日だ。

唐突に鳴らされたインターホンにより、待機していた俺たちは混乱に見舞われた。

玄関を開けたその先に立っていたのは、黒いゴスロリ衣装を身に纏った細身の女の子。

 

「久しい、ドライグ」

 

そう、俺たちが敵対している『禍の団』のトップであるオーフィスその人だった。

 

「オ、オ、オ、オーフィスゥゥゥッ!?」

 

俺が叫ぶのと同時に、一緒に玄関まで来ていたリアスたちが一斉に戦闘態勢に移行する。

俺もすぐに籠手を出現させて、禁手になる為のカウントダウンを開始しようとした。

そんな俺たちを止めようと先生が間に入り込んだり、その先生をリアスが問いただしたりと騒いでる中、さりげなくカズキがオーフィスに近付いていた!

 

「なんだイッセー、知り合いか?」

 

「ちょ、そんな簡単に近づくなカズキ! そいつは『禍の団』の親玉、オーフィスだぞ!?」

 

「オーフィス? なんだかよくわかんないけど、ただのちみっ子じゃん。ホレ、飴でも喰う?」

 

なんで廻りがこんだけ騒いでんのに、お前は通常運転なんだよ!?

てゆーか、こないだオーフィスについて説明したろうがっ!

また聞き流してやがったな!?

 

「我、飴もらう」

 

「よしよし、いい子っぽいから二つやろう」

 

そんでお前ももらうのかよ!?

なんでリアスと先生が殺伐としてるのに、こいつらだけほのぼのしてんの!?

先生とリアスの話が済みオーフィスがカズキから貰った飴を握りしめた所で、玄関前に魔方陣が出現した。

 

そこから現れたのは京都で俺たちの援護をしてくれた魔法使いの少女ルフェイと、小猫ちゃんのお姉さんである黒い和服を着崩した黒歌。

そしてあの見覚えのある灰色の大型犬、間違いない!

サイズは大分縮んでいるが、ロキ戦の時の親フェンリルだ!

 

「ごきげんよう、皆さん。ルフェイ・ペンドラゴンです。京都ではお世話になりました、こちらはフェンリルちゃんで……あら?」

 

ルフェイが挨拶していると、家の奥からスコルとハティが飛び出してきた。

俺たちの間をすり抜けると、一目散に親フェンリルの元に駆け寄り甘える様に体をこすりつけている。

そうか、こいつらにとっては久しぶりの再会なんだよな。

 

「あらあら、フェンリルも満更でもなさそう? みんなお久〜、黒歌ちゃんだにゃん♪」

 

「黒歌、我、飴もらった」

 

「あら、よかったじゃない。大切に食べるのよ?」

 

オーフィスはカズキに貰った飴を黒歌に見せ、黒歌はそれを見て笑いながらオーフィスに話しかけている。

ヴァーリや美猴がいないところを見ると、女性陣だけで来たのか?

なんかもう、大変な未来しか見えないぜ……!

 

 

 

 

一先ず全員で来賓用のVIPルームに移動して、それぞれの席に着く。

朱乃さんが淹れてくれた紅茶から湯気が立ち昇り、沈黙した空間に漂っている。

ど、どうすればいいんだ?

俺から話を切り出せばいいのかな?

 

「えっと、それで。俺に用ってなんでしょうか……?」

 

ぎこちない事を自覚しつつも、ムリヤリ笑顔を作って尋ねる。

怖がっちゃダメだ、とにかく相手の要件を聴き出さないと。

 

「ドライグ、天龍やめる?」

 

……うん?

い、いまいち要領をえないぞ?

 

「えっと、言ってる意味が……」

 

「宿主の人間、今までと違う成長してる。我、とても不思議。今までの天龍と違う。ヴァーリも同じ。我、不思議。とても不思議」

 

俺とヴァーリの成長?

それが不思議って……どういうことだ?

悩む俺を無視して、オーフィスは言葉を続けた。

 

「曹操やバアルとの戦い。ドライグ、違う進化した。鎧、紅色になった。我の知っている限り、初めての事。だから、訊きたい。ドライグ、何になる?」

 

オーフィスは最後に首を傾げながら訊いてきた。

随分と可愛らしい仕草をするなとつい思ってしまった。

しかしなるほど、なんて答えたらいいのかまるでわからないな!

 

俺がもういっそ『乳を求めてたらこんな風になってました』と答えようかと思っていると、籠手が急に現れて俺の代わりにドライグが話し出してくれた。

二人がなにやら小難しい話を続け、ドライグがオーフィスに『乳龍帝になる? 乳を司るドラゴンになる?』と言われて体調を崩すまでそれは続いた。

慌てて宝玉に薬を掛けると途端に落ち着いていくドライグを見て、胸を締め付けられる様な感覚に襲われる。

無理させてゴメンね、ドライグ!

 

「我、もう一つ訊きたい。そこで戯れてる、飴の男」

 

「んあ? 俺?」

 

オーフィスに話しかけられ、首だけこちらに向けるカズキ。

大人しいと思ったらこいつ、部屋の隅でルフェイや親フェンリルと一緒に遊んでやがった。

スコルやハティも親フェンリルから離れようとせず、モグさんは相変わらずカズキの頭から離れようとしていない。

なんで俺が緊張しながらオーフィスの相手してるのに、こいつはほんわかしてんだよ。

 

「なんだちみっ子、俺に聞きたいことでもあるのか? 俺は今、スコルたちの親に近況報告してて忙しんだが」

 

だからなんでそんな態度なの!?

だんだんムカついてきたんだけど!?

ああくそ、マジメに考えてるのがアホくさくなってきた!

 

「飴の男、体に何か、宿してる?」

 

「宿す……モグラさんの事? それともビリビリハンマーの事言ってんの? あと俺のことはカズキでいいよ、飴の男はなんかヤダ」

 

おい、ミョルニルの事ビリビリハンマーって言うな。

途端におもちゃみたいに思えてくるだろうが。

 

「違う。飴の……カズキの中、何かいる。我、それ知らない。カズキ、何者?」

 

「え、やめてよ怖いから。憑かれてるの? 俺ってば何かに憑かれてるの?」

 

「憑かれる、違うと思う。我、よくわからない。不思議。ドライグと同じくらい、とても不思議」

 

「おいちょっと、マジでやめようよそういうの。今夜から一人でトイレ行けなくなるじゃん、イッセー叩き起こさなきゃいけなくなるじゃん!」

 

オーフィスはそう言いながら、カズキの胸の辺りをペタペタと触る。

あれで何かわかるんだろうか?

それからカズキ、さりげなく俺を巻き込むな。

 

「カズキ、自分でもわからない?」

 

「そんなん俺ごときにわかる訳ないだろ、グリゴリの定期検診でもなんも言われてないし。ねぇ、アザゼルさん」

 

「そうだな、特にこれといって報告は上がってきてねぇ。だがオーフィスのいう事だ、観測できないレベルの何かがあるのかもな」

 

話を振られた先生は、手元の紙にメモを取りながらカズキに答える。

カズキの中のなにか、か。

ぶっちゃけこいつの中は今でさえ神器、『御使い』のカード、ミョルニルと凄まじいごちゃ混ぜ具合だしな。

今更何かが増えても不思議じゃない気もする。

 

「ん〜……でもまぁ特に悪影響もないんだし、あんま気にしない方向で」

 

「お前、自分の事なのに軽すぎないか?」

 

「ンな事言っても分からないんだから仕方ないじゃん、まぁなんとかなるって。どうなろうとモグラさんが護ってくれるし、ね?」

 

「キュイ!!」

 

俺が呆れながら尋ねるとカズキは呑気にそんな事を言い、モグさんもカズキの頭の上で得意げに胸を張る。

確かにモグさんなら大抵の事からは護れるよな、ヴリトラの呪いも無効化にするくらいだし。

 

「我、見ていたい。カズキ、ドライグ、その所有者。我、もっと見たい」

 

ドライグとカズキだけじゃなく、俺もか?

オーフィスの眼が興味津々に見つめてくる、どうしたらいいんだ?

俺が困惑していると、先生がオーフィスたちを数日この家に置いてくれないかと頼んできた。

話し合いでテロリスト組織が止められるなら俺は構わないと思うし、リアスや他のみんなも賛同してくれた。

 

「いいんじゃね? スコルたちも久しぶりに親と会えて嬉しそうだし、俺はもう少し一緒にいさせてやりたい」

 

最後にカズキが親フェンリルを撫で回しながら賛同した。

お前本当に動物好きだな、親フェンリルも気持ちよさそうに目を細めてるし。

そんな光景を見ていると、先生は申し訳なさそうに俺の頭に手を置いた。

 

「悪いなイッセー、大切な試験前に面倒かける。それからお前ら、俺が言えた義理じゃないがこいつらは大事な試験前なんだ。邪魔だけはしないでやってくれ」

 

「わかった」

 

「適当にくつろぐだけにゃん♪」

 

「あ、あの! サインをお願いするのは邪魔になってしまうんでしょうか!?」

 

オーフィスと黒歌は即答し、ルフェイは色紙を握り締めながら困った様な顔をしてそんな事を言い出した。

そういやこの子、俺のファンだったね。

そんなに時間のかかる事ではないので、渡された色紙に最近書くのも慣れてきたおっぱいドラゴンのサインを記入して手渡してあげた。

 

ルフェイはサインを頭上に掲げながら小躍りし、フェンリルはスコルとハティにじゃれつかれてその相手をして。

黒歌はカズキにちょっかいを出そうとして、小猫ちゃんに叱られていた。

ヴァーリのチーム、自由すぎやしないかね?

 

こうして俺たちは、とんでもない来客を迎えつつ試験日まで共に過ごす事になったのだ。




撮り溜めてた仮面ライダードライブを一気見しました。
あまり好きではなかったマッハが超カッコ良かったです。
最終回より、最終回の手前が一番熱いのは何故だろう?

いくら調べても自動ログインの不具合の原因がわからない。
誰かタスケテー!

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