後悔は(執筆速度的な意味で)してるけど、反省はしてない。
なんだ、俺は何をやられた!?
突然背中に激痛が走ったかと思ったら、いきなり鎧が解除された上に立つ事すらままならねぇ!
遂に膝に来て四つん這いの姿勢で倒れこんでしまい、肩に乗っていたオーフィスを落としてしまった。
無事に着地してくれたみたいだが、生憎と顔をみる余裕もない。
シャルバは動いていなかったし、一体何がどうなってる!?
イッセーたちが駆け寄ってきてるのが目の端に映るが、とにかく今は『見えない何か』をどうにかしないと!
「ぐッ! ぞ、ったれぇ!」
背中のナイフに手を伸ばして引き抜き、叩き折ってから倒れた姿勢のまま後ろへ勢いよく蹴りを放つ。
普通なら空を切るだけの筈のそれは、鈍い音と薄い肉の感触を感じさせて何かに当たった!
足に感じた何かを不安定な体勢のまま力の限り蹴り飛ばし、近くの瓦礫へ叩きつける。
それは瓦礫に叩きつけられ、小さなクレーターを作ると突然その姿を現した。
老人だ。
ボロボロの服を纏った、肌の枯れ果てた老人。
しかしその顔をよく見ると、何処か見覚えがある。
「フヒャヒャ……! やった……やってやったぞ……! これで貴様もおしまいじゃあ……ッ!」
「テメェ……あの時の、老害か……!?」
このカンに触る声……そうだ、新人悪魔の顔合わせで会長さんに絡んできたあの老害だ。
身につけるものも貧相だし、やつれて顔つきも変わっているのでわかりにくいが間違いない。
こいつは『禍の団』に情報を流してたのが露呈して、サーゼクスさんの命でコキュートスに幽閉されてたんじゃなかったっけ?
「ここへ来る前とある用事でコキュートスに行った時、貴様へ怨嗟の声を上げ続けるこの男を見つけてな。貴様へ復讐できるならなんでもすると言うので連れ出してきたのだ、死にかけの老いぼれにしてはいい仕事をしただろう?」
「小僧、貴様の……貴様のせいで儂は地位も、名誉も、財産も、何もかも全てを失ったのだ……! 許さぬ、決して許さぬぞ……ッ! 死ね! 死ね! 死ねぇい! 今度は儂が! 貴様から全てを奪い去ってくれるわ! フヒ、フヒヒ、フヒャヒャヒャヒャッ!」
シャルバが語った後、老害はうな垂れたまま怨みのこもった声を絞り出す。
そして突然空を見上げたかと思うと、ひたすら狂った様に笑い出した。
心底楽しそうに、嬉しそうに、焦がれるように。
その様子は酷く歪んでいて、薄ら寒さすら感じさせるものだった。
「……は、自分のハリボテ全部ひっぺがされてそのザマかよ。お似合いだ……うぐぅッ!」
「カズキさん、動かないでください! 今治療します!」
俺が吐き棄てると、アーシアちゃんが滑り込む様に駆け寄ってくれた。
その手に緑色の光を灯しながら、俺の身体に触れて治療を始める。
他のみんなも俺を庇う様に陣取り、シャルバと対峙した。
結局俺がお荷物になってるじゃねぇか、ちくしょうめ!
「黙れ、貴様の役目は既に終わった。屑は屑らしく、疾く去るがいい」
シャルバは瓦礫にもたれ掛かりながら尚も笑い続ける老害に対して、手から無造作に魔力を放ち消滅させた。
断末魔もなく消える寸前まで狂ったように笑っていた老害は容易く消え去り、その側には帽子の様な物だけが残った。
そうだ、老害が姿を現した時一緒にあの帽子が地面に落ちたのを見た。
あれが姿を消した手品のタネか?
「クハハ、それにしてもよく居場所がわかったではないか。その『ハデスの隠れ兜』を身に付けた者を見つけるのは、本来なら至難の業なのだがね」
「『ハデスの隠れ兜』だと!? あの骸骨ジジイ、俺たちへの嫌がらせの為だけにそんなモンまで持ち出しやがったのか!」
シャルバが嘲笑しながら自慢げに語り出し、それを聞いたアザゼルさんがシャルバをきつく睨みつけた。
つうか居場所なんてわかってねぇよ、適当に蹴ったらたまたま一発で当たっただけだ。
刺してから移動しなかった老害がアホすぎただけだっての。
「先生、『ハデスの隠れ兜』って……?」
「一度被れば姿が全く見えなくなって気配すら完璧に消え失せる、神話の時代の秘宝だ。あの骸骨ジジイが、嬉々として貸し出したんだろうよ……!」
イッセーの質問に、アザゼルさんが簡潔に答える。
なるほど、それで姿はおろか気配すらしなかったのね。
……ヤバい、痛みがどんどん酷くなってきた。
ちょっとこれはシャレになんねぇ……!
「イッセーさん! カズキさんの、カズキさんの傷が塞がらないんです! こんなに力を送っているのに、治る気配すら……! 傷口周辺の肌もどんどん黒く変色していって……どうしたら!?」
「ぐうぅあ、があぁッ!?」
「カズキくん!? お願いアーシアちゃん、私の魔力も使ってちょうだい!」
「仙術の気も何かに阻害されて行き渡らない! このままじゃ……先輩ッ!」
「白音ッ! この子を殺したくないなら集中なさい!」
痛みを我慢出来ずつい声を出してしまうと、アーシアちゃんが悲痛な声を上げた。
小猫ちゃんや黒歌さんが仙術を試したり、朱乃さんもアーシアちゃんを通して魔力を送っているがまるで効果が表れないようだ。
確かに傷口も痛むんだが、それよりも段々と胸の辺りが痛くなってきた。
モグラさんは大丈……あれ、モグラさん?
おかしい、モグラさんと会話が出来ない!
会話が出来ないくらい弱ってるのか!?
というか、何故かモグラさんを遠くに感じるこの感覚はなんだ!?
「英雄派は貴様のことを大層危険視していたようでな、サマエルの毒を貴様専用に調合していたようだ。あのナイフには奴らの施設から拝借してきたその薬品が、たっぷりと塗られてあったのさ」
シャルバが何か言っているが、痛みや焦りでまるで耳に入ってこない!
モグラさん、モグラさん!
くそ、訳がわからない!!
痛みがキツくて意識が飛びそうだし、胸の辺りが熱くて仕方ない。
これは、結構……ホンキでヤバい……!?
「ぐ、うぅッ! なんだ、なんでこんなに熱く……! マズい、なんかよくわかんないけどとにかくマズい! みんな俺から離れ–––」
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カズキが喋り切る前にこいつを中心に物凄い爆風が巻き起こり、その場にいた全員が吹き飛ばされた!
俺も飛ばされつつなんとか体制を立て直し、すぐにカズキに視線を向ける。
そこにはうつ伏せのまま動かないカズキとモグさんが倒れており、側には見覚えのある無地のカードが宙に浮いていた。
あれは……カズキが転生する時に使った『御使い』のカードか!?
「おいカズキ! 無事か!?」
「……」
アザゼル先生がすぐさま問い掛けるが、カズキは倒れ伏したまま反応せず俯き倒れている。
モグさんに向かって伸ばされていたカズキの腕に、空から降りてきたシャルバが着地と同時に踏みつけゴキリと嫌な音が響く。
あいつ、カズキの腕を踏み砕きやがった!
「テメェ……!」
「おっと、それ以上近づかないで貰おうか? 足下に伏しているこのゴミの命がいらないのなら話は別だがね」
俺たちが飛びかかろうとすると、シャルバはカズキの頭に足を乗せてからそう警告してきた。
今度は人質か、とことん腐ってやがる!
カズキは腕を折られたのに悲鳴も挙げず、頭を踏みつけられてもまるで動く気配を見せない。
一瞬最悪の結果が頭をよぎったが、頭を振って嫌な考えを振り切る。
カズキに限って、そんな事あるはずがない!
「ふむ、どうやらあの薬品は対象から外的要因を切り離す作用があった様だな。だからこそ神器である薄汚い獣や、このカードが弾き出されたのだろうよ」
シャルバは鼻で笑い近くに倒れているモグさんとカードを拾い上げ、カードの方を魔力で燃やしやがった!
パラパラと灰が舞い散り、カードは跡形もなく消滅してしまう。
下手に手を出したらモグさんもああなるって警告のつもりか!?
カズキの命は、『御使い』のカードとミョルニルによって支えられている。
周辺にはミョルニルが落ちていないようだし、想定を超えた強大なものには薬が作用しなかったのかもしれない。
たとえカードが消滅しても、まだミョルニルが残っている限り命は保たれているはずだ。
だがこれ以上カズキに何かされたらマズい、モグさんも捕まってるし慎重に行動しないと……!
「本来なら貴様ら全員私の手で血祭りにあげたい所だが、今はそれよりも……オーフィス! 大人しくこちらに来て貰おうか!」
シャルバは手元に魔方陣を展開させながら、オーフィスを恫喝する。
オーフィスはカズキを一瞥した後、抵抗する事なく黙って従いシャルバの元へ向かう。
シャルバが手をかざすと、魔方陣から飛び出た文字列が鎖の様にオーフィスの身体へ巻き付いていく。
「力の不安定な今のオーフィスなら私にでも捉える事が出来る、あの者の情報通りだ! このオーフィスは、私たち真なる魔王の協力者への手土産にさせて貰おう!」
シャルバは自由を封じられたオーフィスを脇に抱えると、カズキから僅かに離れて後退していく。
そして勝利を確信したように、口元を吊り上げ語り出した。
「これは呪いなのだ! 私を拒絶した悪魔など、冥界などもはや必要ない! 私自身が毒となって冥界を包み込み、全てを破壊し尽くす!」
「赤龍帝、貴様の大切にしている冥界の子どもたちも皆殺しだ! 上級だろうと下級だろうと、全てに等しく訪れる滅び! これこそ貴様らのいう『平等』で、『差別のない冥界』というものなのだろう!?」
「このシャルバ・ベルゼブブが! 我が呪いの結晶たる魔獣たちと共に! 冥界を滅ぼしてくれるわぁッ!」
シャルバはそれだけ言うと、盛大に高笑いを始めた。
こいつ、カズキを刺した爺さんの比じゃないくらいイカれてやがる!
何の罪もない子どもたちに手なんて出させるもんかよ、絶対に食い止めてやる!
もう少しだ。
もう少し離れたら、カズキの身柄を確保してすぐにぶっ飛ばしてやる……ッ!
「先ずは手始めに、この小汚いドラゴンからだ。醜く憎たらしいドラゴンよ、真の魔王たるこの私の手で滅ぼしてくれる……!」
「ッさせるかよ!」
シャルバはモグさんを掴んでいる腕を頭上に掲げ、その掌に魔力を集めだした!
それを見てすぐさま駆け出したが、魔力の収束が速い!
ダメだ、この距離じゃ間に合わないッ!!
「我が呪いを浴びて苦しめ! もがけ! どいつもこいつも、のたうちまわって絶息しろッ! フハ、フハハ! フハハハハ–––」
シャルバが嘲ると同時にモグさんを握り締めようとしたその時、何者かがシャルバの腕を掴んだ。
シャルバは邪魔された腕の持ち主、カズキを眼光鋭く睨みつける。
あいつ、あんな身体でまた無茶を!
「貴様、そんな身体でまだ抵抗を……!」
「……せよ」
「なん–––ッ!?」
モグさんを握りしめていたシャルバの腕を、カズキが一息にへし折った!
その衝撃でモグさんはシャルバの腕から零れ落ちたが、地面に落ちるよりも先に脇に抱えられたオーフィスが頭の上で受け止める。
シャルバは突然襲ってきた激痛に戸惑いつつもかずきの腕を振り払い、大きく飛び退いた。
「ぐうぅ! わ、私の腕が……!」
「返せよ……そいつら、俺の友達なんだよ……」
カズキは今にも倒れそうなほどボロボロで、立っているのが不思議なほど脚も震えている。
それでもおぼつかない足取りで、一歩一歩シャルバへ歩を進めていく。
その眼に強い光を宿し、傷だらけの腕を真っ直ぐ伸ばしながら。
その異常な光景にシャルバを含め、俺たちもその場を動くことが出来なかった。
「なんだ、なんなのだ貴様は!? 何故そんな身体で立ち上がってくる! 歯向かってくる!? 今の貴様は堕天使でもなければ神器すら宿していない、ただの人間ではないか!?」
「返せ……返せよ……ッ!」
「クソ! クソ! クソがぁ!! それ以上私に近寄る–––」
シャルバは怯えた様に喚き散らしながら、折れた方の腕に魔力を込めて振り回そうとしたその時。
ジークフリートが両者の間に割って入り、カズキの腹部に一撃を見舞った!
その一撃を受け崩れ落ちたカズキをジークフリートが肩に抱え、同じ様にレオナルドを抱きかかえたゲオルクも現れて即座に連中を霧が包んでいく!
あいつらカズキを攫って逃げる気か!?
「そこまでにしてもらおうか、シャルバ。そのオーフィスはくれてやる、だが代わりにこの男は貰っていくぞ。お前が壊したレオナルドの代わりにな」
「させるかよ!」
「行かせない! 彼を返してッ!!」
「くそ、逃がしてたまるかよ!」
先生と朱乃さんが槍と雷光でほぼ同時に攻撃を仕掛け、俺も少し遅れてドラゴンショットをぶちかます!
しかしいずれの攻撃も、ゲオルクの創り出す霧に阻まれて効果を示さない。
霧が晴れると、カズキもろとも奴らの姿は消えていた……。
「そんな……」
「先輩……いやぁ……!」
「落ち込んでる暇なんてないわよ! あの男がいなくなった所為で、フィールドがもう限界ニャン! 今なら転移出来るはずだから全員こっちに集まって!」
朱乃さんと小猫ちゃんの悲痛な声があがるが、それを掻き消すように黒歌が魔方陣を展開しながら声を張り上げた。
「姉さま……」
「白音、泣き言は後にしなさい。少なくともあの時点で坊やは生きてたわ、それを戦力として連れてったって事はきっと命を取る事はないはずニャン」
黒歌は涙を流す小猫ちゃんにそれだけ言うと、魔方陣の操作に集中していく。
魔方陣の元に集まる俺たちをよそに、遠方にいるシャルバはオーフィスを脇に抱え佇んでいた。
カズキが消えた辺りをジッと見つめ、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべている。
あいつの、あいつの所為でカズキは……!
「イッセー! もう転移するわ、早くこっちにいらっしゃい!」
リアスが俺に呼び掛けてくる。
–––が、俺はそれに応えなかった。
「俺、オーフィスとモグさんを助けてきます。そのついでに、シャルバをぶちのめします」
俺の発した言葉に、全員が驚いた様な表情を向けてきた。
「それなら私も!」
「僕だって戦うよ!」
小猫ちゃんと木場がそう言ってくれるが、それはダメだ。
「みんなはあの魔獣の脅威を冥界に伝えてくれ。この鎧を着込んでる俺だけなら、このフィールドが崩壊して次元の狭間に放り出されても少しの間なら活動出来る筈だ」
「チッ……イッセー! 後で『龍門(ドラゴン・ゲート)』を開いてお前たちを召喚する! それでいいんだな!?」
ここでシャルバを逃すつもりは毛頭ないし、モグさんとオーフィスをみすみす連中に渡す訳にもいかない。
先生が仕方なく出した代案に、俺はゆっくりと頷いた。
本当ならヴァーリや先生は自分が行きたいのを、俺に任せてくれるんだ。
絶対にオーフィスとモグさんを取り戻してみせる!
「ダメよイッセーくん! あなたまでいなくなったら、リアスは……!」
朱乃さんの言葉を聞き、リアスに視線を向ける。
「リアス。俺、必ず戻るから!」
「イッセー……必ず私の所に戻ってきなさい、必ずよ!」
「はい! 行ってきますッ!!」
俺はそれだけ言うとドラゴンの翼を広げてシャルバの元へ突っ込み、同時に転移の光がみんなを包み込んで弾ける。
どうやら転移は無事成功した様だ。
後はシャルバをぶっ飛ばして、オーフィスとモグさんを取り返して、そんでもってリアスの元に帰るだけだ!
俺がシャルバの眼の前まで到達すると、不愉快そうな表情でこちらを迎えてきた。
「今度は貴様か赤龍帝! ヴァーリといいあのガキといい、ドラゴンに関する者は悉く私をバカにしてくれる……ッ!」
シャルバはそう吐き捨てた後、長々と問い掛けてきた。
何が目的だ、力を求めるのか、覇権を狙うのか。
そんな事、俺にとってはどうでもいい。
「……もういい、口を開くな。いくら聞いてもお前の考えはわからねぇし、興味もない」
「なんだと、貴様ァ!」
「とにかく、俺が言いたい事は三つだ。冥界の子供たちは殺させない、オーフィスとモグさんを返してもらう、そして……お前を、思いっきりぶん殴るッ!!」
生憎とこっちは予定が立て込んでるんだ!
お前をぶっ飛ばしたら、攫われたダチを取り戻さなきゃならないもんでな!
お前みたいな志も覚悟も半端な奴相手に、無駄な時間なんざ使ってらんねぇんだよッ!!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
アザゼル先生と元龍王であるタンニーンさま協力の元、龍門の準備が完了した。
魔方陣の作成には小猫ちゃんのお姉さんである黒歌も協力してくれ、ヴァーリも呪いによるダメージに耐えながら魔方陣の隅に加わってくれている。
僕たちはその様子を心配しつつ、ただただ見守っていた。
僕たちより先に転移していった『魔獣創造』によって生み出された魔獣たちは、すでに冥界の各都市部に向けて進撃を開始している。
悪魔と堕天使による迎撃部隊が派遣されたが、規格外の大きさと堅牢さに手を焼いているそうだ。
それに加えてその魔獣たちから更に無数のアンチモンスターが生み出されているらしく、そこに旧魔王派の残党まで合流して進行方向にある村や町を襲撃し始めたという情報まで入ってきた。
各勢力から戦力も派遣されてきているが、やはり決定打には遠いようだ。
……早く戻ってきてくれ、イッセーくん。
今こそ冥界の為に赤龍帝の力を振るう時だ、首都の子どもたちもキミの登場を心待ちにしている!
英雄派に連れ去られたカズキくんも、必ず連れ戻さなければならない!
だから、帰ってきてくれ!
「–––よし、繋がった!」
先生から待ちわびていた言葉があがり、巨大な魔方陣も強く光り輝く。
強烈な閃光が収まり、魔方陣の中央を見つめる。
そこにあったのは僕の親友の姿ではなく、傷付きフロアに横たわるモグラさんと、彼を護る様に囲っている紅い八つの《兵士》の駒だった。
初めは意味がわからなかった。
何故彼ではなく、駒だけなのかと。
しかし力なく膝を着き、フロアの床を殴りつける先生を見て理解した。
理解、してしまった。
部長は呆然としたままその場に立ち尽くし、アーシアさんは理解したくないのか辺りをキョロキョロと見渡している。
レイヴェルさんは小猫ちゃんに抱き着き、嗚咽を漏らし始める。
こうして僕たちは、大切な友人を一度に二人も失ってしまった———
という訳で、カズキを刺したのはターバンのガキではなく、囚人の老害でした。
当たる訳ないって?
そりゃこんなん当てたら変態だもの。
これで11巻終了。
なんか木場くんがカズキまで死んだみたいに言ってるけど、カズキくんちゃんと生きてますからね?
そんでもって次から12巻に入りますが、ここでお知らせ。
次章、最終章です。