モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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久しびりに間隔空けずに投稿。
このペースを保っていきたいなぁ……死ねるけど。
そして止まらないヘラクレスの小物っぷり。


72話

ジークフリートを打ち破った僕たちグレモリー眷属は、現在別行動をしているゼノヴィアたちと合流する為に再びグレモリー城へ帰還した。

本当ならすぐにでも首都へ向かい、現地で集合したい所だがそうもいかない。

サイラオーグ・バアルの敗北と共に伝えられたのは、その下手人が英雄派に連れ去られたカズキくんだという信じたくない現実だった。

黒い鎧に身を包んでいて顔は確認出来なかったそうだが、直に戦ったサイラオーグ・バアルの確信と随伴していた曹操もそれを肯定したらしい。

 

覚悟はしていたが、彼と敵対しなければならないとは……この報告を聞いたときには、朱乃さんと小猫ちゃんも流石に表情を曇らせてしまった。

しかし今は気を持ち直し、無事合流出来たゼノヴィアとイリナさんに現状を説明している。

やはり二人とも心が強い、これもカズキくんの影響なのかもしれないな。

 

「……なるほど、イッセーの方は何とかなりそうか。あいつなら生きてさえいれば、部長の乳恋しさに自分で帰って来れるさ。問題はやはりカズキだな、面倒ばかり掛けてくれる」

 

「ゼノヴィアったら無理しちゃって。天界でカズキくんの話を聞いた時は、涙と鼻水で顔中汚しながら私に抱きついて来た癖に」

 

「す、すぐに立ち直ったんだからいいじゃないか!」

 

やはりゼノヴィアも心配だった様で、イリナさんに醜態をバラされて膨れっ面をする。

その背には布に包まれた獲物を携えており、イリナさんも腰に新しい剣を携行していた。

ゼノヴィアの方は修復したエクス・デュランダルだろうが、イリナさんが持っている剣はなんだろう?

力強いオーラを感じるが、これがアザゼル先生が仰っていた天界で行われていたという実験の成果なのかも知れない。

 

『ご覧ください! 魔王アジュカ・ベルゼブブさま率いるベルゼブブ眷属が構築した対抗術式により、【豪獣鬼】にダメージを与える事に成功しております!』

 

僕らが準備を進めていると、テレビから興奮気味のレポーターの声が聞こえてくる。

アジュカ・ベルゼブブさまは僕らと別れた後に組み立て途中だったアンチモンスターたちに対抗する術式を一気に組み上げ、それを前線で戦う悪魔や堕天使、『御使い』などの連合軍へ伝えたそうだ。

押され続けていた連合軍も、この術式により各所で押し返し始めている。

 

『ソーナちゃんのお友達に酷い事して、あなた達許さないんだから! 大怪獣vsレヴィアたんなのよ〜!』

 

『母上、がんばってくだされー! イッセーやカズキのアホもきっと見ていますぞ!』

 

『ふふ、せやね。わらわもこの連中にはちぃとばかり頭に来とるんよ……思いっきりいくでぇッ!』

 

【豪獣鬼】を広大な荒地ごと氷漬けにするセラフォルー・レヴィアタンさまや、妖怪の大軍団を引き連れ援軍にやって来てくれた京都の八坂さんとその娘である九重ちゃんの姿が映っている。

九重ちゃんの様子を見るに、どうもイッセーくんたちの現状を八坂さんから聞いていないのだろう。

代わりに八坂さんは九尾の大狐の姿をとり、口から吐き出す炎で辺りの敵を燃やし尽くしている。

その様はまさに大妖怪そのものと言った風貌だ。

 

「どうやら【豪獣鬼】の一体を討伐したそうです、この分なら半日と経たずに駆除出来るでしょう。問題は【超獣鬼】でしょうね」

 

聞き覚えのある声に反応し振り向くと、そこには戦乙女の鎧を纏ったロスヴァイセさんがいた!

北欧から遠路はるばる、ここまで駆けつけてくれたのだ!

 

「イッセーくんとカズキくんの事は聞きました。イッセーくんの事ですから、リアスさんの胸を求めてそろそろ帰ってくるでしょう」

 

……ゼノヴィアと同じ事を言われてるよイッセーくん、正直僕も同意見だけど。

ロスヴァイセさんはうんうんと頷き少し部長と会話をした後、朱乃さんたちの元へ歩を進めていった。

 

「そしてカズキくんは必ず取り戻します……たとえ命を落としたとしても」

 

「それでは意味がありませんわ。みんなで無事に、あの家に帰るんです」

 

「朱乃さん……そうですね、その通りです」

 

深刻な表情で呟いたロスヴァイセさんに、朱乃さんが頭を軽く叩いて優しく諭す。

ロスヴァイセさんは同意してくれていたが、どうか無茶な真似だけはしないで欲しい。

あと離れているのはグリゴリで特訓中のギャスパーくんだけだが、彼もすぐに合流してくれるはずだ!

次第に集まっていく仲間を見つめ一人気合を入れ直していると、先ほどお茶を淹れに行ってくれたレイヴェルさんが慌てた様子で部屋に飛び込んできた。

 

「み、皆さま大変ですわ! 首都で活動中のシトリー眷属の皆さんが、都民の避難を護衛中に『禍の団』の構成員と戦闘に入ったそうです! そしてその中に、カズキさんらしき人がいるとの報告が……!」

 

レイヴェルさんの言葉を聞き、この場の全員に緊張が走った。

来た、来てしまった。

覚悟はしていても、あって欲しくはなかったその時が。

僕らはこれから、とてつもない強者と戦わなければならない……!

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

高層ビルが立ち並ぶ区域で、俺たちシトリー眷属は避難バスの先導を行っていた。

大半の避難は完了しており、今先導しているバスに乗っているのが最後のバスだ。

このバスに乗っているのは、本来なら最優先で避難させなければならない子供たち。

出発してすぐに機械トラブルが起こってしまい、結局避難するのが最後になってしまったのだ。

 

「前方に異常なし、と。これなら無事に避難出来そうだな」

 

「匙、油断してはいけませんよ。この子たちを守れるのは、私たちしかいないのですから」

 

「はい、会長!」

 

会長の言葉に、力強く返事をする。

『禍の団』の連中は大体追い払ったが、それでも安全とは限らない。

この子どもたちも、俺たちの建設する学校に通うかもしれないんだ。

教師になった時の予行演習だと思って、きっちり護り切って見せるぜ!

 

「ふふ、元ちゃん張り切ってますね……ッ会長、上空に魔力反応!」

 

「こちらも魔方陣を視認、何者かが転移して来ます!」

 

「了解よ桃、椿姫! 留流子は軍に救援要請! バスを停車させたら、他のみんなは囲うように陣形を取って!」

 

『はい!』

 

周囲を警戒していた桃の報告と、椿姫副会長の声が響き渡る。

そしてすぐさま飛んでくる会長の指示に従い、俺たちは行動を開始した。

ついに来やがったな、クソッタレなテロリストどもめ!

この子ども達には指一本触れさせねぇぞ!

 

俺たちがバスを囲うように陣取った直後に、輝く魔方陣から一つの人影が降りてきた。

着地と同時に舗装された道路を砕き、その下の大地から土埃が盛大に舞い上がる。

風により土埃が晴れその姿を視認すると、そこにいたのは意外な人物。

攻撃に備え身構えていた巴柄と翼紗からも、間の抜けた声が上がった。

 

「あ、あれ? あの人って……」

 

「カズキ……くん?」

 

そう、そこに立っていたのは英雄派に連れ去られた俺の師匠で親友!

あいつ、マジで一人で帰って来やがった!

まったく、心配しがいの無い野郎だぜ!

 

「カズキ! お前やっぱり無事だったん–––」

 

「待ちなさい、匙! どうも様子が変です!」

 

俺がカズキに駆け寄ろうとしたその時、会長からの待ったの声が飛んできた。

変って何が……いや、確かに変だ。

あいつにしちゃ、どうにもおとなしすぎる!

 

「いつものカズキなら、助けに来なかった俺たちをボロクソに言った後に俺をどつき回す筈! それが暴言の一つも吐かないとか、お前さては偽物だな!」

 

「あの、匙……そういう事ではなく……」

 

俺が指を突きつけながらそう言い放つが、何故か会長に呆れられてしまった。

あれ、なんか間違えたか?

 

「ククク……どんな反応をするのか観察したかっただけなんだが、これはいささか予想外過ぎる」

 

何処からか笑いを噛み殺した様な声が聞こえたかと思うと、空に残っていた魔方陣が再び輝きそこから更に何人か現れる。

筋肉質な大男と華奢な少女、そして先ほどの声の主であるローブを羽織り眼鏡を掛けた男。

報告書で見た特徴と一致する、こいつらが英雄派の主要メンバーか!

 

「ゴホン、いや失礼。余りにもあんまりな評価に、つい笑いが抑えられなかった」

 

眼鏡の男、確かゲオルクとか言ったかな?

そいつが口元を拳で隠しながら、そんな事を言ってくる。

何がおかしいのかわからないが、なんとなく腹が立つ。

 

「わざわざカズキの偽物を用意するとか、胸糞悪い真似しやがって! テメェら、本物のカズキは無事なんだろうな?」

 

「何を言っているんだ、ちゃんと目の前にいるだろう?」

 

「だからこいつじゃなくて本物の……!」

 

「彼が偽物だなんて、我々が一言でも言ったかい?」

 

俺の言葉を遮り、ゲオルクは尋ねてきた。

何を言ってるんだこいつは。

こいつが本物のカズキなら、こんな無反応な訳が無い。

これじゃあまるで……。

 

「お前らの知ってるこいつじゃ無い、か? そりゃそうさ! なんせこいつは、身体も人格も散々弄くり回されてんだからなぁ!」

 

俺が呆然としていると、大男が小馬鹿にする様に語り出した。

 

「死に掛けのこいつをゲオルクが回収して来て、身体の秘密や頭の中身を調べ尽くしたんだよ! まぁ大した事は分からなかったそうだがな!」

 

「俺はぶっ殺してやりたかったんだが、他の奴らが戦力として使おうって言い出してよ? 洗脳して俺らの兵隊に仕立て上げてやったのさ!」

 

「こいつはいいぜ? いくら殴っても死にやしねぇ、目減りのしないサンドバッグだ! まぁ最近は殴り過ぎて、ちっとばかし飽きて来たけどなぁ!?」

 

心底楽しそうに語ってくる大男、ヘラクレスは横にいるカズキを目の前で殴って見せた。

反動で地面に倒れこんだカズキだが、表情一つ変えずにゆっくりと立ち上がる。

顔に出来た痛々しい痣も、目に見えるスピードですぐに消えてしまった。

あいつら、ようやく症状の収まった命を削るあの体質まで……なるほど、取り敢えずこいつはブチ殺す!

 

「ッ待ちなさい、匙!」

 

会長の制止も聞かずに飛び出し、神器も出さずにヘラクレスに殴り掛かる!

しかし俺の拳はあいつに届く事はなく、逆に殴り飛ばされ元の位置まで押し戻されてしまった。

ヘラクレスにやられたのでなく、間に割り込んだカズキによって……!

 

「ケッ、余計なことしやがって。あんな奴に俺がやられる訳ねぇだろうが!」

 

「この、カズキちゃん殴ってんじゃないわよ! そもそもアンタ、カズキちゃんに守られといてその態度は何!? いい加減にしないと、私がアンタを切り刻んで殺すわよ!?」

 

「やってみやがれ、このクソアマが!」

 

守られた筈のヘラクレスは気に食わないのかカズキの頭を殴りつけ、それを一緒にいる少女に咎められている。

どうも向こうは一枚岩と言った感じではなさそう、つうかカズキ『ちゃん』ってなんだ。

カズキ、マジでこんな奴らに洗脳されてんのかよ……!

 

「シトリー眷属の男……テメェ確か龍王の一角を宿してる奴だよな? ちょうどいい、この場で俺たちと戦え。勝てればこいつを解放してやるぜ?」

 

「なんだと……?」

 

「別に断ってくれてもいいぜ? その場合は–––」

 

そう言いながらヘラクレスはバスに向けて手をかざす。

そして身体が光ったかと思うと、掌の一部が盛り上がりそこからミサイルの様な物が打ち出された!

桃が防ごうと魔力で障壁を張ったが難なく貫通してしまい、バスの近くに着弾してタイヤ周りが破壊されてしまった!

バスだけでも逃がしたかったが、それすら出来なくなってしまった!

 

「後ろにいるバスを攻撃させて貰う。 あぁそうだな、それをこいつにやらせるのも面白いかもしれねぇなぁ?」

 

「この……ッ!」

 

ヘラクレスはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべ、カズキの肩を叩きつつそんな事を言い出した。

二重の人質って事か、とことん屑だなこの野郎……!

 

「ヘラクレスってばマジで屑ね、最悪だわ」

 

「全く、彼には品性が足りないな……まぁヴリトラと戦うのが目的で、我々も立ち塞がっているのだが」

 

他の二人もやんわりとしか止めないところを見ると、どうにも本気っぽい。

けど、カズキにそんな真似させらんねぇ。

俺は素早く神器を発現させ、前に出ようと飛び起きる。

だが、そんな俺よりも早く前に出る人がいた。

 

「そんな事、やらせはしません」

 

力強く踏み込み、奴らを睨みつける会長。

周囲には大量の水が溢れ出し、それがうねりつつ様々な姿を形成していく。

 

「カズキくんは私たちの大切な友人です。彼に対する卑劣な行いの数々……決して許せるものではないと知りなさい!」

 

会長の怒号と共に、一斉に襲い掛かる水で象られた偶像たち。

その攻撃は全員にあっさりと躱されてしまったが、一人ずつ分散させる事は成功した。

なるほど、各個撃破するって事ですね会長!

 

「行きますよ匙、椿姫! 私たちで敵を殲滅します! 他のメンバーは結界を張り、バスの警護を!」

 

『はいッ!』

 

会長はゲオルク、副会長はジャンヌに飛びかかっていく。

となれば俺の相手はヘラクレスと、未だ動きを見せないカズキ。

モグさんは小猫ちゃんが預かってるらしいし、何とかしてみせる!

 

「お前の相手は俺がやってやるよ、筋肉ダルマ」

 

「口だけは達者じゃねぇか、精々楽しませろよ。おい、テメェは手ェ出すんじゃねぇぞ」

 

「……」

 

ヘラクレスに言い付けられたカズキは、返事もせずに後方に退がった。

どうやら二対一で戦う気はないようで、こちらとしては助かる限りだ。

俺は先ほどからずっと続けている作業を行いつつ、会話を続ける。

 

「いいのか? 二人で来なくて」

 

「お前なんざ俺一人で十分だからな」

 

「そうかよ、そいつは助かる。お前だけなら俺でも何とかなりそうだ」

 

「あ? 調子乗ってんなよ……未成熟な龍王モドキの分際で、俺に勝つつもりかよ?」

 

「当然だ。カズキに比べりゃお前みたいな脳筋野郎、余裕過ぎて笑えてくるぜ」

 

「チッ、どいつもこいつもあいつを持ち上げやがって……! 気にくわね–––」

 

『我が分身よ、そろそろだ』

 

ヘラクレスを引きつけていると、俺の中にいるヴリトラから知らせが来た。

それと同時に、俺の身体の至る所から黒い炎が漏れ出してくる!

よっしゃ、待ってたぜッ!

 

「行くぞ! 『龍王変化(ヴリトラ・プロモーション)』ッ!!」

 

俺の掛け声に呼応し、漏れ出た黒炎が一気に噴き出し俺の身体を包み込んでいく。

そして次第に変化が生じていき、俺の身体は呪いの炎を撒き散らす黒き龍王と化した!

 

「匙、いつでも構いません! 思う存分おやりなさい!」

 

それを確認した会長達は事前に打ち合わせた通り、敵を一箇所に押し込むと一斉に飛び退きバスの結界内に避難する。

未だにこの姿を長時間保つ事は出来ないんだ、一気に方を付ける!

 

『一人ずつなんてまだるっこしい事はしない! カズキには悪いが、全員纏めて呪いの炎で燃え尽きろ!』

 

全てを出し切る勢いでヘラクレスたち目掛けて呪いの黒炎を撒き散らし、眼前を文字通り火の海にする。

崩壊しかけていた建造物も、火の勢いによりガラガラと音を立てて崩れていく。

カズキの回復力なら耐えられるだろうが、これならあいつらも多少は……いや、どうにもおかしい。

炎が一箇所に集約されている、あれは……ゲオルクか!?

 

「未成熟とはいえ流石に龍王か、凄まじい濃度の呪いだ。直撃していれば厳しかったが、事前に相手の特性を知っていればどうとでもしてみせるさ」

 

ゲオルクは俺の吐き出した黒炎を一纏めにすると、手元の魔方陣と共に掻き消されてしまった。

くそっ、今の俺の全力だったのに……ヴリトラの呪いをああもあっさり消されるなんて!

ゲオルクは細く息を吐き出した後、自身の腕を見つめる。

僅かにだが、その腕には黒い炎が揺らめいて見えた。

 

「しかし予想以上に強力な呪いだ、あの術式でも完璧な解呪が出来ないとは……ヘラクレス、ジャンヌ。すまないが残りは頼むよ、俺は異空間でこの呪いをどうにかする」

 

ゲオルクはそう言い残すと、霧と共に何処かへ行ってしまった。

それとほぼ同時に、俺はドラゴンの姿から元に戻ってしまう。

くそ、ペース配分を間違えた!

そんな俺を尻目に、ヘラクレスとジャンヌはそれぞれの獲物である剣と拳を構える。

 

「そういう訳で、また私たちが遊んであげるわ。今度は何人がかりでもいいのよ?」

 

「ではお言葉に甘えて……椿姫、翼紗、巴柄! 一気に行きますよ!」

 

会長の呼び掛けに応え、三人はジャンヌに肉薄し会長も魔力で次々に攻撃していく!

結界を維持する数を減らしても、人数で押し潰す作戦か!

 

「なら俺はドラゴンを貰うぜ? 力を出し切った絞りカスでも、そこの女どもよりはマシだろうしな!」

 

ちくしょう、わかってたけどこっちの限界までバレバレかよ!

それでもここで退くって選択肢はない。

俺たちの後ろには、たくさんの子ども達がいるんだ。

今ここでこの子達を守らなきゃ、胸張って教師になんてなれないもんな!

 

「腐っても龍王みたいだからな、俺も禁手化してやるよ!」

 

ヘラクレスが叫ぶと身体が発光し、身体の至る所に無数の突起物が出現する!

あれは確か最初にバスを攻撃した、突起物を飛ばして爆発させる技。

でもスピードはそれほどでもなかったし、躱してから接近してラインを張り付けてやる!

 

「そら、喰らいやがれ!」

 

ヘラクレスが腕をかざし、ミサイルを飛ばしてくる。

やっぱりそこまで速くない、これなら–––

 

「いいのか? 『その位置』で躱しても……」

 

何を言って……ッそう言うことかよ!?

駄目だ、今からじゃ間にあわねぇ!

 

「「「キャアァァァッ!?」」」

 

俺の躱した攻撃は、俺の後方……桃たちが守ってくれているバスに命中した!

バスは結界のお陰で無傷だが、肝心の結界の強度がかなり不安定になっている。

そんな攻撃を、もし連続で撃たれたら……!

 

「ハッハッハ! どうだ、かなりキクだろ俺の神器は!?」

 

「テメェ……俺じゃなくて、バスを狙いやがったな……!」

 

「変な言いがかりは止めてくれねぇか? 俺は禁手の力を使っただけだ。だがお前がもし避けようとしたら、また『不幸な事故』が起こるかもしれねぇなぁ!?」

 

ヘラクレスは嘲笑いながら、再びミサイルを発射してくる。

今度は明らかに俺ではなく、俺の後方にいるバスを標的にして!

そうかよ……そっちがそう言うつもりなら、こっちも腹括ってやるさ!

 

俺はミサイルの前に飛び出し、腕を交差させ防御の姿勢を取った!

ミサイルは当然直撃し、凄まじい爆風と爆炎に襲われ身を焼かれる!

 

「ぐうぅぅぁぁああッ!?」

 

「元ちゃんッ!?」

 

「先輩っ!? いやぁぁぁ!」

 

あまりの衝撃に思わず絶叫してしまい、結界を張っている桃と留流子から悲鳴が上がる。

情けない声だしてたし、心配かけちまったかな。

勢いが収まった頃には身体中に激痛が走り、腕に取り付けられていた神器『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』は粉々に砕けていた。

うわぁ、これちゃんと直るよな……ああくそ、なんだか思考が纏まらない……。

 

「よく凌いだじゃねぇか! 全身がバラバラになりそうな衝撃はどうだ!?」

 

「……ハッ、大した事ないな。これで禁手とか、信じらんねぇ貧弱さだ……」

 

「……吹くじゃねぇか、強がりでも大したもんだ。だがその口、何時まで持つか見ものだなぁ!?」

 

怒りに顔を歪めたヘラクレスから、今度は複数のミサイルが同時に放たれる。

あ〜……絶対痛いよな、あれ。

でも、避けらんねぇんだよなぁ……。

あぁもうわかった、わかったよチクショウめ!

こんなしみったれた攻撃、幾らでも耐え切ってやろうじゃねぇかッ!

 

限界だろうがなんだろうが知ったことか!

こいつらは倒す、子どもは守りきる!

そんでもって俺がこんなにシンドイのに、無表情で突っ立ってる俺の親友も取り戻す!

やってやるぞ、クソッタレッ!




ようやく登場、主人公。
なお一切喋らないので、はっちゃけられない。
主人公、マジ無能。

今回事故と言いつつバスを狙ったヘラクレス。
でもウチの主人公、グレモリーvsシトリーのレーティングゲームで似た様な真似してた記憶が……うん、細けぇこたぁいいんだよ!

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