モグラだってドラゴン名乗っていいじゃない!   作:すこっぷ

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主人公があざとい?
聞こえんなぁ!


9話

なんだかんだで参加する事になってしまった

『リアス先輩と愉快な下僕たちのドキ☆ドキ♪山籠り』

 

モグラさんも、俺の荷物に自分用のお菓子を入れるくらいには楽しんでいる。

内容が特訓じゃなければもっと嬉しかった。

 

登山を手早く済ませ、リアス先輩の家の別荘に到着。

動きやすい服に着替えて、いざ特訓である。

イッセーや木場が出てくるのが遅い。

女性陣はともかく男なら早く仕度しろ。

 

おい、女性陣の方が先にやって来たぞ。

木場も一緒に出てきた。

何故か皆に笑われた。

 

「最初に渋ってたから心配だったけど、何だか遠足ではしゃぐ子供みたいよ? 可愛い所あるじゃない」

 

リアス先輩にそんな事を言われてしまった。

 

待ってくれ、違う。

別に、町から出るのが久々だからってワクワクなんてしていない。

初めて友人と泊まりがけで外出だからって、テンションが高い訳じゃないんだ。

 

いくら説明しても聞いてもらえず、生暖かい目を向けられるだけ。

モグラさんまで溜息を吐いた後に、アーシアちゃんの方に行ってしまった。

う、裏切られた!?

 

 

 

 

リアス先輩のお願いで、初日はイッセーの特訓の補助をやる事になった。

モグラさんは危ないので、今は俺の中で休んで貰っている。

素のイッセーがまだ弱いことは知っているし、取り敢えずは観察だな。

 

最初は、木場と木刀を使っての剣術指南。

流石《騎士》の駒を持つだけあって、剣撃が鋭く正確だ。

イッセーの振り回すだけの剣では掠りもしない上、木場の一撃でイッセーは木刀を落としてしまった。

 

まぁ素人なんだから当たり前だよね。

その後も何試合かした後に、木場に声をかけられた。

イッセーへの見本として、木場と模擬戦をする事に。

木場は木刀だけど、俺は素手。

いや、剣とか使った事ないし。

 

で、試合が始まるともう必死である。

さっきまでより速い、べらぼうに速いのだ。

避けるのに精一杯で、こっちから攻撃なんて出来なかった。

 

セットしていたタイマーが鳴って試合終了。

もうこいつと特訓すんの嫌だ。

怖いよ、途中でなんか笑ってたし。

 

ポカンとするイッセーを連れて、次の場所に避難した。

 

 

 

 

次は朱乃先輩の所で魔術の訓練。

ここでは俺は、イッセーが頑張るのをただ見てるだけ。

魔力なんて人間の俺がどうこう出来る訳がない。

 

魔力を集中する練習らしいが、成果は芳しくない様だ。

アーシアちゃんはこちらの才能がある様で、緑色の球を掌に浮かばせている。

あれが魔力なんだ。

おぉ、イッセーの手にも光の玉が!

……凄い小さいけど。

 

朱乃先輩のアドバイスを聞いて何か思いついたらしく、相談の結果夕飯に使うジャガイモやニンジンなんかの皮を、魔力を使って剥くことになったらしい。

 

なんの練習か先輩に聞いても

「うふふ、内緒ですわ。イッセー君らしい技といえばらしいのですけど」

とはぐらかされた。

 

イッセーが全部剥くまで暇なので、他の材料を使って夕飯のカレーの下拵えを済ませておく。

皆は特訓で疲れるだろうし、作っておいても構わないだろう。

……だからはしゃいでなんかいない。

 

 

 

次は小猫ちゃんとの格闘訓練。

イッセーは喧嘩もした事がないそうだ。

先ずは美猴さんに教わった動作や型を、一つ一つ丁寧に教えていく。

人に教えるのってなんか新鮮で、少し楽しかった。

 

基本的な事を教えたら、後はひたすらに小猫ちゃんとの組み手である。

イッセーが小猫ちゃんに突撃する度に、何度も吹き飛ばされていた。

怪我しても治療してくれるアーシアちゃんがいるのだから、とにかく今は数をこなして訓練あるのみである。

 

小猫ちゃんに頼まれて組み手もしたが、この子もやっぱり強いね。

前に腕相撲をした事があるから力が強いのは知ってたけど、動きも凄い。

なんか速いというより、すばしっこい感じだった。

 

ひたすらに攻撃を受け流したりして、お互いに怪我もしないで済んだ。

俺がまともに食らったら、腕とかもげちゃいそうだ。

おっかない。

 

 

 

本日最後は、リアス先輩と一緒にやる筋トレ。

俺はいつも通り、モグラさんを手に装着してから始める。

イッセーも真似して神器を出そうとしていたが、多分死ぬ程キツイから止めておいた。

 

背中に岩を背負って、山道をひたすら登り下り。

イッセーの岩にはリアス先輩が座り、その分俺の岩は一回りでかい。

シンプルだが、結構効くなこれ。

 

イッセーの脚がガクガクと震えだした所で休憩……はせずに腕立て伏せ開始。

背中は依然、先程と同じ状況。

イッセーは気合いで乗り切った。

 

悪魔の平均がどんなもんなのかは知らないが、こんだけ根性があれば大丈夫だろ。

 

 

 

イッセーの食欲が凄い。

性欲も凄いけど、今は食欲が凄い。

あれだけ身体を虐めたのだから、当然といえば当然だ。

俺が作っておいた大量のカレーを食べきってしまった。

明日の朝はカレーの残りにしようと思っていたから何か用意しないと。

 

ちなみにモグラさんは、小猫ちゃんにジャガイモやニンジンのスティックを食べさせて貰っている。

何でも、呼んだら来てくれるアーシアちゃんが羨ましいらしく、もっと仲良くなりたいそうだ。

 

小猫ちゃんの笑顔が微笑ましくて、凄い癒される。

 

「デザートにシャーベット作っといたんですけど、食べれます? 」

 

「あら、頂こうかしら」

 

「ちなみに、これはアーシアちゃんが凍らせてくれたんですのよ? 」

 

そう、どうせ練習するならと朱乃先輩にお願いして、果物を凍らせて貰っていたのだ。

手間も省けて一石二鳥。

アーシアちゃんが喜んで一石三鳥である。

 

「えへへ、どうですかイッセーさん! 美味しいですか? 」

 

「あぁ、美味いぞアーシア! 最高だ!! 」

 

アーシアちゃんの笑顔が眩しい。

本当にイッセーの事が好きなんだな。

もしアーシアちゃんの事を泣かしたら、こいつは海に沈めよう。

 

食休みした後、今日の反省会。

イッセーは自分の非力を嘆いていたが、そんなの当たり前だ。

単純に他のみんなとは年季が違う。

そんなにすぐに追いつかれたらムカつくわ。

 

女性陣はお風呂らしく、イッセーが露骨に反応して、リアス先輩にからかわれて遊ばれていた。

 

俺と木場がそれを笑っていると、小猫ちゃんが服の袖をチョイと摘んできた。

モグラさんと一緒に入りたいらしい。

 

「桶に入れて、溺れないようにだけ気を付けてあげてね? 」

 

「はい、ありがとうございます」

 

小猫ちゃんは嬉しそうに先輩たちの後についてく。

 

「イッセーくん、僕たちと裸の付き合いをしよう。背中、流すよ」

 

「すまんイッセー。小猫ちゃんのあの眼は裏切れない、大人しく風呂に入るだけにしろ」

 

俺と木場が、それぞれ肩に手を置いてイッセーを諭す。

 

「ちっくしょぉぉぉぉぉっ!! 」

 

イッセーの哀しい遠吠えが辺りに響き渡った。

 

 

 

 

夜になると、みんなはまた行ってしまった。

悪魔は夜の方が活発らしく、まだ訓練を続けるそうだ。

俺は人間なので大人しく寝てもいいのだが、折角なので明日の朝飯用に魚でも調達してこよう。

 

モグラさんにお願いして土からミミズを捕まえて貰い、それを餌に川で釣りを始める。

1人一匹として、7匹か。

夜はまだまだ長いのだ。

のんびりと楽しむとしよう。

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

夜の訓練の最後は、部長たちみんなでランニング。

俺たち悪魔は夜に活動的になるから夜にも訓練を行うが、カズキは人間だから先に休んでいる。

そう、あいつって人間なんだよなぁ。

めちゃくちゃ強いからつい忘れそうになる。

 

「みんな、今日はカズキくんと一緒に訓練してみてどうだった? 」

 

部長がみんなに話を振ってきた。

 

「凄すぎて、どう凄いのか分かんないくらい凄かったです」

 

俺の言葉を聞いて、部長は苦笑している。

し、しょうがないじゃないか。

ホントに分からなかったんだよぅ……。

 

「祐斗の感想は? 」

 

「剣は使えないそうですが、正直想像以上でしたね。死角に回ったり手数を増やしたりしても、全部躱されるかいなされて、無効化されました。当たらなすぎて最後は笑えてきちゃいましたよ」

 

そうだったのか。

言われてみれば、二人とも速すぎて完璧には目で追えなかったけど、動き回る木場に対してカズキはほとんど動かないで対処してたもんな。

俺からすれば、二人とも凄すぎて開いた口が塞がらなかったよ。

 

「小猫はどう? 」

 

「イッセー先輩に、身体の動かし方とか教えるのが凄い上手かったです。イッセー先輩と一緒に、私も型みたいなのを教えて貰っちゃいました」

 

カズキは、身体を動かす時の行動にはちゃんと意味があるって言ってた。

 

速く動きたいなら、踏み込むと同時に爪先を次に移動したい向きに向けておくと、次の動作にスムーズに移せるとか。

パンチを強くしたいなら、脚から腰、肩から腕へと全身を絞り出すように捻って拳に力を伝えるとか。

 

とにかく分かりやすいのだ。

バカな俺でも理解できた。

 

「組み手もお願いしたらやってくれましたけど、攻撃してもコロコロ転がされるだけで相手になりませんでした」

 

小猫ちゃんとの組み手の時は、攻撃されたら受け流してコロン。

服を掴んでも、いつの間にか解かれて仰向けにコロン。

こんな感じで一切攻撃しようとしてなかった。

 

カズキってアーシアと小猫ちゃんには甘いからな。

怪我させたくなかったんだろう。

その分おれには厳しいけども。

型とか何度も間違えると、蹴りが飛んできたし。

あれは痛かった。

 

「朱乃は? 」

 

「魔力に関しては全く。まぁ彼は人間なんですから当たり前ですけど。魔術師としての才能はないようですわね」

 

朱乃先輩の訓練だけは参加しなかったもんな。

そりゃわかりようが無い。

 

俺の秘密の必殺技が完成したらカズキにも見せてやろう。

あいつも男だ、嬉しくない筈はない。

 

カズキって朱乃さんにだけなんか態度が違うよな。

苦手なのか、それとも意識してるから照れてるのかわからないけど。

 

朱乃さんは朱乃さんで、それを愉しんで遊んでるし。

この件についてはあまり踏み込むと、俺が酷い目に遭いそうだからスルーって決めた。

 

「そう……もう無理に悪魔にしようとは思わないけど、やっぱり惜しいわね、彼」

 

確かになぁ。

ただでさえとんでもないカズキが、悪魔になったらもっと歯止めが効かなくなるのだろうか。

なんかおっかないな、それ。

 

カズキ自身、もしかしたらそれが怖いのかも知れないな。

 

 

 

 

ランニングを終えて、別荘に到着。

中に入ると、カズキがなぜかキッチンで魚を捌いていた。

 

「お、おかえり。さっそくで悪いんだけど、小猫ちゃんにお願いがあるんだ」

 

カズキは捌き終わった魚を冷蔵庫に入れ、手を洗うと自分の神器であるモグさんを小猫ちゃんに渡してくる。

 

「今からまたお風呂いくでしょ?モグラさんも連れてってあげて。土に潜って貰ったから汚れちゃって」

 

ついでに今日は一緒に寝てあげて?

カズキはそう言うと、あくびをしながら部屋に戻っていった。

 

「彼、もしかして魚を捕りに行ってたの?……なんだか、普通に楽しんでるみたいね」

 

部長が笑うと、みんなに笑顔が溢れ出した。

 

「彼、ホントに楽しみにしてたみたいですね? 」

 

「お兄……年上みたいだと思っていましたけど、やっぱり普通の男の子なんですよね」

 

「はしゃいでて、ちょっとかわいいです」

 

「嫌よ嫌よも好きの内、やっぱり彼は……うふふふふ♪ 」

 

……最後のは聞かなかったことにしようかなっ!

 

そうだ、あいつは化け物でも何でもない。

俺たちの仲間で、友達だ。

 

「さぁ、明日もキツイわよ。お風呂に入ったらすぐに部屋に戻る事、いいわね? 」

 

部長が仕切ってその場は解散になった。

 

さて、俺たちも風呂に……はっ!

今ならカズキはいない。

つまり覗きが出来る!!

 

「あ、そうだイッセーくん。小猫ちゃんが、『覗いたら恨みます』って言ってたよ? 」

 

ぐあっ!既に予防線が貼られていた!?

 

仕方ないので、素直に風呂に入って今日は寝よう。

流石に疲れてしまった。

明日も頑張って、ゲーム当日にはあの焼き鳥野郎に目にもの見せてやる!!

 




カズキ「仲良くなりたがってたし、小猫ちゃんも喜んでくれるよね? 」

カズキ「しかし、モグラさんがそばにいないのって初めてだな」

カズキ「……寂しい」

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