「あたし、ルーシィ。よろしくね」
「アイ!」
バクバクバク
すぴー、すぴー
「あ~……ナツとハッピーと、レーナだっけ?」
「あんた、バクバク、いい人だな、もぐもぐ」
「わかったから、もっと落ち着いて食べれば?何か飛んできてるし(っていうかお色気代1000Jがパーだな、これ)」
「すぴー」
ルーシィはいまだに寝ている青髪の少女レーナを見た。
道端で寝ている所を何とか起こし、レストランまで連れてきたが、席に着いた途端テーブルに突っ伏して寝始めた。
「えっと、レーナ……ちゃん?何か食べなくてもいいの?」
「ご心配なく。レーナの注文はおいらがしておいたから」
魚を頬張るハッピーが答えてすぐ、ウェイターが料理を運んできた。
「『激辛!炎の激辛ラーメン激辛風味ゲキカラ』、でございます」
「激辛が三つも!っていうか最後の語尾みたいなの何!?」
ルーシィがツッコムもテーブルに置かれたモノを見て言葉を失った。
それは例えるならマグマ。スープは真っ赤に染まりドロドロと揺れている。麺を持ち上げたらさぞかしよく麺に絡みつくことだろう。
「う、見てるだけで辛くなってきた……。ちょっと、注文間違えたんじゃ」
「これでいいんです」
この少女が、こんな辛い物を……?
すると、レーナは鼻をひくつかせてムクリと体を起こした。
レーナはぼーっとした様子で目の前に置かれた料理を見ている。
た、食べるのだろうか……。
ルーシィと、お店にいるすべての人が彼女の動向を息をのんで見守る。
レーナは箸を取ると――
ズゾゾゾゾゾゾ―
思いっきりすすりはじめた。
『う、うわー……』
見てるだけでも辛くなってくる。
「レ、レーナちゃん、辛くないの?」
「?辛いですよ」
「え!?じゃぁ、何で食べてるの?っていうか食べれるの?」
「この、ピリッとした感じが目の覚めるようで……グー」
「寝んのかい!!」
「はっ!」
覚醒したレーナ(若干眠そうだが)はさらにテーブルに常備されている唐辛子をふりかけズゾゾゾゾゾと音を立ててすすった。
それを見て胸やけのする人々。
「レーナの食事は見ない方がいいよ。食欲なくすから」
手遅れな時に忠告するネコちゃんだった。
「それにしても、気前がいいですね。見ず知らずの私たちにこんな御馳走を……ズゾゾゾ」
「え~っと(う、見ないようにしないと)あ、あのサラマンダーって男ね、“魅了”の魔法を使ってたの――」
ルーシィの話によると、非合法の魔法であのサラマンダーを好きになりかけたが、ナツが飛び込んできたおかげで完全にかからずにすんだ、ということらしい。
「なるほど。……しかし、現れただけでチャームが解けるなんて……」
レーナの視線が横にいる、ものすごい勢いで食べ物を掻きこむ人物を見る。
「……惚れたか」
「いやいや、違うから!」
「冗談です」
ズゾゾゾゾゾ
レーナは何事もなかったかのように麺をすするのを再開する。
「くっ……。こう見えても、一応魔道士なんだー、私」
「ふぉう」
「へー」
「まだギルドには入ってないんだけどね。あ、ギルドっていうのはね」
魔道士ギルドとは、魔道士が集まる組合。そこに依頼人が依頼を出し、魔道士に解決してもらう、仲介所のような場所である。
ルーシィは熱く、ギルドへの思いを語り、ナツとハッピーは何とも言えない顔をして見合わせた。
「よくしゃべるね」
「あ、そういえば、あんたたち誰か探してたみたいだけど」
「アイ!イグニール」
「もぐもぐ。サラマンダーがこの街に来るっていうから来てみたはいいけど、別人だったな」
「見た目のことじゃなかったんだね」
「火の竜っつーから、てっきりイグニールのことかと思ったんだけどなー」
「見た目が火の竜って、どうなのよ人間として」
「ん?人間じゃねーよ。イグニールは本物のドラゴンだ」
「はぁ!?」
ルーシィはポカンと口を開けて固まった。
代わりにレーナが「ナツ……」と声をかける。
「ドラゴンがこんなところにいるわけないよ」
「「はあ!!」」
「今気づいたんかい!……ってかあんた汁まで飲んじゃったの!!??」
衝撃を受けるナツとハッピーにツッコムも、赤いところのなくなった器に衝撃を受けるルーシィ。
「レーナ、気付いてたんなら言えよ!」
「話聞いたとき寝てた」
レーナはしれっと言うと、「ではお休み」と言って寝てしまった。
「はぁ……。なんか精神的に疲れた。あたしもう行くね」
ルーシィはテーブルにお金を置いて立ち上がる。
「ごちそうさまでした!」
「でした!」
「すぴー」
去り際、ナツとハッピーは通路に土下座してルーシィに頭を下げる。
「やめてぇ!恥ずかしいから!」
「だけど……そうだ!これやるよ。サラマンダーのサイン色紙」
「いらんわ!!」
「すぴー」
こんな騒ぎにも関わらず、完全に夢の中のレーナなのだった。